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水分の里

日記(2026年7月17日)

「両脚の機能が全廃になる」と告げられていた年齢を過ぎてから、腕の力で滝を巡りはじめた。

 ところが、「大和国」で山に分け入ると、神域に身を置くこととなる。

 行く先々に現れるのは、「大和の出雲」。
 また、それらの地で祀られるのは、「出雲神族」。

 本日、「金剛山」へ向かったのは、
『葛木水分(かつらぎみくまり)神社』で手を合わせるため。

 国域を東西南北から囲んでいる『大和国四所水分神社』のうち、そこにはまだ、身を置いていなかった。

 参拝が「四所」の最後になったのは、
「信仰の原初の形は、ここに残っている」という気がしたから。

 なぜか、他の「水分(みくまり)神社」は、大和盆地に水を配らない。
『葛木水分神社』の傍らを流れる水だけが、大和盆地を潤している。

 ふとおもいついて、まず、分水嶺の反対側まで走ってみた。
 県境を越えて、「河内国」の方へ。

 古代出雲王国の領域には各地に「神の山」があり、
「大和の葛城」では、『葛木山(現在の金剛山)』が神奈備だった。

 そこから、東へ流れ出るのは、大和盆地を潤す「葛城川」。
 そこから、西へ流れ出るのは、「水越川」。

「水越川」に沿って山を下ると、「河内国」側にも、水分神社がある。

[注:神域は参拝を済ませてから撮らせていただき、『note』の記事では、最後に撮った写真を最初にして並べています。]


◇◇建水分神社(大阪府 南河内郡 千早赤阪村水分)◇◇

建水分神社

『建(たけ)水分神社』の神階は、最高位である正一位。

 ここには、『瀬織津姫』も祀られている。
 その名が残っているのは、「大和国」では、ごく限られた場所なのに。

拝殿の後ろ

 本殿は、樹々に隠されている。
 その背後の「金剛山」が、この神社の「神体山」だという。

 金峯神社

 末社の千木は、「出雲式」。「縦削ぎは男千木」という説もあるけれど、
『金峯神社』の御祭神は「天照大神」なのに、「女千木」でもない。

振り返って

 長い階段を両腕の力で上ってきたが、下りようとしたとき別の道があると気づいた。そちらは坂道で、足を置いた所が地面だから、楽に下りられた。

南木神社

 坂道を下って、摂社『南木神社』へ。

 こちらが参道の正面なので、境内に入ったとき、
「どちらから参拝すれば……?」と、しばらく迷ったのだった。

右が南木神社

「南木神社」の御祭神は、『楠木正成』。
 神となった出雲神族。

 手を合わせると、頭の右側が、微細な光の粒に変わった。
 温かい手が、そこに置かれたようだった。

 大和盆地には、「事代主」の慈愛が満ちているように感じる。
「クシヒカタ(事代主の子)」が居た所には光が満ちているように感じる。

「楠木正成」を祀った所には、慈愛と光が満ちている。

 分水嶺の向こう側で、「楠木正成の騎馬像」を見たことがあった。
『高鴨神社(奈良県 御所市 鴨神)』の参道で。

高鴨神社の参道(2024年6月12日に撮影)

 55年ほど前、担任の先生が授業中に、「楠木戦法」を語ってくれたため、暗記しづらい名前の多い時代でも、その名だけは記憶に深く刻まれていた。

 出雲の伝承によると、楠木正成は、河内国方面の出雲散家の頭だという。

 出雲王国が滅ぼされた後、各地に散った「出雲兵」は、
「出雲散家(サンカ)」と呼ばれるようになった。

 出雲散家の美点が伝えられている。
〇自分の行いに厳しい。
〇常に自分の頭で考えて工夫する。
〇自ら率先し、手足を使って行動する。
〇他人、とくに弱者に対して優しく接する。

 そういった心根は、この国の基盤。
 どれも当たり前のことで、心ある者なら、息をするように行っている。

菊水紋(注連縄の上)

 楠木正成に帝が感謝の気持ちを込めて下賜したのは「菊の紋」だったが、それは身に余ると考え、「流水」を加えて家紋としたそうだ。

 花が静かに流れゆく先を視ていたのだとおもう。 
 五穀豊穣と民草の幸せが、ずっと先ではなく岸辺にも在ることを願って。

 伝承に触れるたび、この人物の様々な面が、清冽な水のようだと分かる。

 社会を濁らせるのは、虚言と虚勢。
 それは、他者の時間と労力を(たいていはお金も)空費する。

 けれども、自他を豊かにする生き方は、数百年の後にも規範となる。

 命を支える水は、「水分の里」で、公平に分配された。
 分水嶺の反対側では、「名柄村」で、吉野川分水計画が始まった。

「水分の里(河内国)」の領主は、楠木正成。
「名柄村(大和国)」の庄屋は、高橋佐助。

 一昨年(2024年3月4日)、名柄の「長柄神社」に参拝した。
『長柄首は、事代主の末裔』と、『新撰姓氏録』には記されているそうだ。

 出雲の魂は、「水分神(みくまりのかみ)」とともに、慈愛を広げる。

吉野川分水の水路(2025年9月16日に撮影)


◇◇葛木水分神社◇◇

葛木水分神社

  ふたつの山の源流が、ここで縒り合わさって、大和盆地に流れ出る。

 水の音がずっと聴こえている。

『大和国四所水分神社』のうち他の三社も、「最初に祀られた場所」では、
祭祀者が水の音と響き合って、水分の神と祈りを縒り合わせたのだろうか。