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音が鳴る小説──中山七里『さよならドビュッシー』

朝はSpotifyで「朝のクラシック」、
家事をする時は「やる気の出るクラシック」、
読書中は「Classical Reading」。

私の日常は、クラシックのプレイリストにお世話になることがしばしばある。
しかし正直なところ、ひとつひとつの曲名まで意識して聴いてはいなかった。

(↓寝起きが悪い私の朝に欠かせないプレイリスト)


そんな私に、文字だけで何度も「この曲、聴いてみたい」と思わせてくれた作品がある。
それが中山七里作『さよならドビュッシー』だ。

みかさんの感想記事を拝読して、興味を惹かれ手に取った。
(みかさんの記事へのリンクは文末に)

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タイトルの響きから、当初は「上流階級の優雅な日常」を描いたストーリーを想像していた。

確かに主人公は、音楽科のある高校への特待生入学が決まっている資産家の孫である。
しかし物語の序盤、彼女を凄まじい災厄が襲う。

身体に大きな障害を負いながらも、過酷なピアノコンクールに挑む……というのが大まかなあらすじである。



こうして書くとあっさりしているが、主人公に降りかかる困難の描写は、何ともヒリヒリとする。
今風の言葉で言うなら「エグい」となるのだろうか。とにかく胸に突き刺さるのだ。

ただ人物設定は
資産家の祖父、イケメンピアニスト、クールで毒舌すぎる名医など、やや非現実的な要素も多い。
だからこそ「これはフィクションだ……落ち着け……」と、自分を保てる部分もあった。

特に主人公のピアノ教師を務める岬先生は
司法試験にトップで合格した一流ピアニスト。
イケメン。ヒロインのピンチを必ず救う王子様。
絶対にフィクションにしか存在しない。
(イラストはイメージです )


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本作最大の見どころは、困難に直面したヒロインが、あえて茨の道を選び立ち向かう姿にあると思う。

事故で不自由になった手でコンクールを目指す道程は、決して平坦ではない。
裕福な育ちゆえの嫉妬、松葉杖をついていることへの奇異の目…

「頑張れ」「気合いだ」という声かけは良しとされない時代だが、フィクションの世界ぐらいは困難を気合いで乗り切ろうともがく若者がいてもいいと思う。私が昭和脳なだけかもしれないが。

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また、劇中に登場する数々のクラシック音楽の描写も圧巻である。
不思議なことに、文字を追うだけでその旋律や曲調が強烈に伝わってくるのだ。

中山七里さんの表現力があまりに豊かすぎて、本物を聴かなければ気が済まない。
気づけばYouTubeで実際の楽曲を検索していた。

演奏シーンの筆致に引き込まれすぎて、途中、これが「このミステリーがすごい!」大賞の受賞作であることを忘れていたほどである。

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しかし、最後には「このミス」大賞の看板を思い知らされることになる。
ラストのどんでん返しは見事であった。

結末を知ると、何気なく見落としていた登場人物の設定や仕草にも意味があったことに気づく。
そして全貌が明らかになったとき、物語は鮮やかにタイトルへと繋がっていくのだ──。



このシリーズは、他にも多くの作品が刊行されている。
『おやすみラフマニノフ』
『いつまでもショパン』
『どこかでベートーヴェン』etc……

また「いつか読む本リスト」が増えてしまいそうで、音楽ものだけに(?)戦慄している今日この頃である。


本作を読むきっかけを下さったみかさんの記事。無駄な描写がないのに魅力がしっかり伝わってきて、思わず読みたくなってしまいました!


【2026.2.20 追記】
ふあふあころねさんに当記事をご紹介頂きました!たくさんのnoterさんの記事を読まれていることが伝わる圧巻の内容です。
癒される素敵な記事の数々と並べていただき感謝です。


📚読んだ本
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