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【考える#7】飛騨市薬草で地方創生がすごい(事例4)

前回は、愛知県岡崎市本宿町の地方創生についてまとめました。【発見】→【事業化】→【交流】→【再投資】。大企業を呼び出す地方創生でした!

そして今回取り上げるのは、岐阜県飛騨市。今回の地域資産は、「そこら辺に生えている草」です(笑)。『薬草を食べる人びと』を読むと、行政の関わり方が見えてきました。

◾️薬草の先生が飛騨にやってきた

岐阜県飛騨市は、市域の9割以上を森林が占める山間のまちです。昔から地域の人々は、野山の植物を採り、食べたり、煎じたりしながら暮らしてきました。

転機は、飛騨市が誕生する前の旧古川町です。2001年ごろ、町は「薬草をまちづくりに活かせないか」と考えます。そこで頼ったのが、薬学博士の村上光太郎先生でした

村上先生は徳島大学薬学部で長く薬用植物の研究・教育に携わり、その後は崇城大学薬学部附属薬用植物園の教授も務めた、薬草のプロ。

研究室の中だけで植物を研究するのではなく、実際に地域を歩き、どんな植物が生えているのかを調べ、地域の人々が昔から植物をどう使ってきたのかを聞いて回る。そんなフィールドワークを各地で続けてきた先生でした。

その村上先生が古川町を歩いて調べてみる。すると、245種類もの有用植物が見つかった

昨日までと何も変わっていません。新しい植物が生えてきたわけでもない。そこら辺にずっと生えていた草です。

でも、薬草を知り尽くした大学の先生が見ることで、「そこら辺の草」→「245種類もの薬草が自生する町」に変わった。これこそ【発見】なのだと思います

◾️先生の「見る目」が町に広がっていく

さらに面白いのは、村上先生が「245種類ありました」と調査報告して終わらなかったことです。

村上先生は地域の人たちに、薬草の見分け方、採り方、食べ方、活用方法を伝えていきます。その知識を受け取った人たちが、今度は自分たちで薬草を使い始める。

ある人は薬草料理をつくる。
ある人はお茶にする。
ある人はお菓子にする。
ある人は入浴剤にする。
ある人は薬草を学ぶ体験をつくる。
そして、その人たちがまた次の人に薬草を教えていく。

村上先生が見つけて終わらず、先生が持っていた「薬草を見る目」そのものが、少しずつ地域へ移っていったのです。

現在では、市が登録しているだけでも16事業者・56もの薬草商品があります。一つの会社が巨大な薬草ビジネスをつくるのではなく、町のあちこちで、同時多発的に【事業化】が起きているところが、今回、特に面白いところです。

◾️今回の【発見】は、みんなのものだった

なぜ、こんなことが起きたのでしょうか。これまで取り上げた事例と比べると、違いが見えてきます。

【考える#4】でまとめた上川大雪酒造では、上川の水や寒さを酒造りのプロが【発見】し、酒蔵という一つの事業になりました。
【考える#5】でまとめた佐嘉平川屋では、温泉湯豆腐を平川氏が見つけ直し、一つの会社が事業化しました。

でも飛騨は違います。町が大学の先生に調査を依頼して、発見した。

つまり、「飛騨には245種類もの薬草がある」という発見そのものが、最初から町のみんなに開かれていたのです。

特定の会社だけがその価値を知っていたわけではない。町の人なら、誰でも使える。だから一つの大きな【事業化】ではなく、小さな【事業化】が町のあちこちから生まれた。

ここで、これまであまり考えていなかった「行政」の役割が見えてきます。

◾️行政が担った役割とは

最初にやったのは、「そもそも、うちの町には何があるんだ?」を専門家に調べてもらうことで、つまり、行政が「地の探索」をしたのです。

そして「245種類ある」と分かれば、
その知識を地域のみんなに開放する。
薬草の使い方を学ぶ機会をつくる。
フェスティバルを開催する。
商品を紹介する。
体験拠点をつくる。
地域おこし協力隊を呼ぶ。
色々と周辺を公共の立場から整えていかれたのです。

行政自身が【事業化】するのではなく、地域の人たちが【事業化】できる土壌をつくった。これは行政だからこそできる地方創生なのかもしれません。

◾️そして町ぐるみの【交流】へ

2014年、飛騨市で第3回全国薬草シンポジウムが開催されます。全国から薬草に関わる研究者、自治体、事業者、愛好家が飛騨へ集まる。翌年からは薬草フェスティバルも始まりました。

ここまで来ると、【発見】→【事業化】→【交流】が、一企業ではなく、町全体で起きています。そして【交流】によって、また新しい人や知識が飛騨へ入ってくる。そこで得た人・知識・経験を地域へ【再投資】し、また次の【事業化】が始まっていく。

つまり飛騨では、町ぐるみで【発見】し、同時多発的に【事業化】し、町ぐるみで【交流】し、また町へ【再投資】している。一つの巨大なスパイラルが回したというわけですね。

今回の事例を見て、「誰が【発見】するか」で、その後の地方創生の形が変わるという格好の事例なのだと思います。

企業が発見すれば、一つの大きな事業になるかもしれない。地元の起業家が発見すれば、その人を中心に事業が広がっていくかもしれない。

一方、行政や大学の先生のような公共的な存在が【発見】すれば、その知識を地域のみんなに開くことができる。すると、小さな【事業化】が、地域のあちこちから生まれる。飛騨の薬草は、その典型なのかもしれません。

次回は千葉県流山市を取り上げます。行政そのものが、地方創生の主役になったらどうなるのでしょうか?かつて東京へ通勤する人が住む郊外のまちだった流山市が、子育て世代から「選ばれるまち」へと変わっていきます。

これまで考えてきた【発見】→【事業化】→【交流】→【再投資】というスパイラルは、自治体経営にも当てはまるのでしょうか?

★コメントお待ちしております!
(つづく)



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