見出し画像

世界はまだEVOで三度優勝した男のことを知らない①

この画像をご覧頂きたい。

FUCK YOU

ポップなカラー、そして実際のゲームではポップな音と共に見知らぬキャラクターから登場する「FUCK YOU」の文字。モラルと配慮が全盛期の令和の時代に到底登場してはいけないゲーム画面であることがわかる。そして上下のゲージを見るとどうやら格闘ゲームらしいこともわかる。

このゲームの名前は『Invincible VS』という。はっきりいって今初めてタイトルを聞いた人がほとんどだろう。正直いっておれもこのゲームについても、登場するキャラクターの版権もまったくわからないままこの記事を書きだしてしまっているのだが、いやしかし、このゲームには重大な事実がある。

今年のラスベガスで行われた格闘ゲームの伝統的な大会の『EVO2026』。恐らくはスト6全盛のこの時代には多くの人たちが知っているだろうあの『EVO』の、メインタイトルの一つなのだ。

嘘ではない

そしてもう一つ重大な事実がひとつ。このゲームは日本語がサポートされていないのにも関わらず、今年のEVO2026の優勝者は日本人だった。ご存じだっただろうか?きっと多くの人は知らないと思う。なにせ、誰も注目していないタイトルだったから。

優勝した日本人の名前は『AKURI__という。この人間のことを正確に表現するのは難しい。なにせゲーム大会にでるたびに名前が変わるし、インターネット上でも目立った活動をしていないからである。あるときは『kikyochan』、あるとき『shinanochan』、そしてあるときは『へいほぉ』として、意味不明の対戦ゲームを発見しては意味不明の強さを示し続ける男が、今回『AKURI__』として優勝した。便宜上、当人の希望もあってこの記事では『へいほぉ』として扱う。

この男、名前が変わっているからイマイチ認知されていないのだが、実はEVOを三度優勝している。(『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』、『HUNTER×HUNTER NEN×IMPACT』、『Invincible VS』。)この手の話になると非メインタイトル、つまりは規模がさほど大きくないメインタイトルに選ばれなかったタイトルでの優勝をもって「EVO優勝」を掲げる裏技の使い手が現れるのだが、この男ははっきりとメインタイトルで三度優勝している点が凄まじい。

おれがなぜ彼のことについてこんなに詳しいかと言えば、単に知り合いだからである。何を隠そう、象先輩をesportsオリンピックに送り込んだ意味不明のゲーム、『Tic Tac Bow』を一緒にやりこんだ人間の一人なのだ。

EVOを三度優勝し、そしてこの手の空中制御があるチーム戦の格闘ゲームはもっぱらNAの選手が強いとされてきた土壌の中で日本人選手優勝の快挙、そしてなんといっても『Japanese Secret Tech』(後述)、すなわち多くのプレイヤーが気づけなかった隠されたテクニックを使って優勝した点。こんなに面白い話があるのに全然世界に伝わっていないのがあまりに勿体ないと感じたから、記事にしたいからDiscordで話を聞かせてくれと連絡した。

以下はそうした経緯から行われたインタビュー……というにはあまりに雑談の書き起こしになる。ある程度前提を共有した意味不明ゲーマー同士の雑談がベースになっているから、本文中に補足が必要な点がたくさんある。適宜おれが補足を入れていくので、その点ご了承願いたい。


本編

ちょもす:EVO優勝おめでとうございます。

へいほぉ:ありがとうございます。ちょもすさんこういうのやりだすの珍しいと思うんですけど、どうしたんですか。

ちょもす:怒り……は言い過ぎですけど、まあいうたら結構な偉業じゃないですか。EVO優勝って。おれの気のせいかもしれないけど、それがあんまり世間が評価していると感じられないのがなんかちょっと嫌だなと思ってるところはあるかも。

へいほぉ:言いたいことはなんかわかります。

ちょもす:いやまあそのね、へいほぉさん名前変わりすぎて傍から見てるとよくわかんないし、Xのアカウントも当然名前と紐づいてないからどうやって連絡するんだみたいな話はもちろんあるからへいほぉさんも大分悪いと思うんだけど(笑)、それにしたって無風すぎてさあ、みたいな。せめて自分はなんかしようと思った。

へいほぉ:そこらへんの話でいうと、日本のメディアからはインタビューとか今のところないですけど、終わった後に現地の開発ブースでインタビューみたいなのはありましたね。

ちょもす:見たよ。なんかコスプレのおっさんが「なんでおれを使わないんだ」みたいなこと言っててへいほぉさんが「調整で弱くなっちゃったんで……」って言ってたやつでしょ。あれいいよね。

へいほぉ:それですそれです。

ちょもす:EVO3回優勝してるってやばいんだけどな。これはAI調べだから半信半疑で聞いてほしいんですけど、三回優勝したリスト出させたらときどさんとかAlex Valleとかヌキさんが並ぶからね。格ゲーレジェンドばっかり。あと、4回優勝にMenaRDがいるんであと一回優勝するとMenaRDに追いつけます。

へいほぉ:(笑)

ちょもす:まあ当然MenaRDには追い付いてほしい。

へいほぉ:他人事すぎない???って感じですけど(笑)

ちょもす:他人だし。

へいほぉ:それ系の話で言うとここにきてようやくあのFuriousが僕の名前を挙げてくれたんですよ。

ちょもす:おおー。実際どう呼んだらいいかわからない問題ありながら、触れてくれるのは熱いね。……ところで、今回の名前『kikyochan』と『shinanochan』はVRchatの有名アバターから取ってきてるってのはわかるんだけど、『AKURI__』ってのはなんなの?アバターじゃないよね?

へいほぉ:今回はVRchatのユーザーの名前です。結構一時期遊んでたりした子なんですけど、気づいたらアカウントとかXのアカウントとか、インターネットのアカウントとか全部消えたんですよ。消えた人なら使っても怒られないかなと思って。

ちょもす:なにそれ。怖。おれがインターネットから消えたらちょもすとしてへいほぉさんにEVOに出られる可能性があんの?

へいほぉ:結構おもろいやつだったんですよ。いろんな意味でというか。(コアすぎる話がでてきたので中略)、それがあまりにも未知の体験でおもろかったんで、印象に残ってる人の名前つけたかったみたいな。

ちょもす:全然大衆に理解されなそうなエピソードが出てきて困惑してるけど。なるほどね。……そもそもなんですけど、なんで名前変え続けてるんですか?

へいほぉ:なんか昔からこれなだけなんですよね。

ちょもす:そもそも同じのでやる文化がないみたいな。

へいほぉ:そうすね。その時いいなって思ったキャラ名とかを十何年前からつけ続けてるってだけで。

ちょもす:昔のハンドルネーム文化みたいな話よね。あくまでインターネットやゲーム上の自分とは切り離されてるというか、ハンドルネームとは一期一会というか。

へいほぉ:むかし、推しキャラを名前にする文化みたいなのなかったですか?

ちょもす:あ~~~あったね。確かに。ゲーセンで行われてるタイプの格ゲーの大会で良く見た気がする。

へいほぉ:なんかそういう人減ったことないすか?

ちょもす:今はもう自分と名前が紐づいちゃってる人も多いしなあ。文化が変わったよね。そういう一貫性で名前が変わり続けてるのはなんか納得した。多分この文脈の話だと思うんだけど、へいほぉさんってすごい昔のオタクの側面があると思うんですよね。推しキャラの誕生日に毎年関東来て聖地巡礼してるじゃん。

へいほぉ:行ってますね。そのキャラの名前はプレイヤーネームとしてはほぼ一回も使ってないですけど。

ちょもす:それはなんでなの?今の話なら使ったほうがよくない?

へいほぉ:そのキャラと自分を紐づけたくないんですよね。そのキャラの名前を誰かから聞いたら自分のイメージがちょっとでもちらつくのが本当に嫌で。

ちょもす:あ~。じゃあキャラの名前は聞かないほうがいいんだ。

へいほぉ:言う気もないですね。

ちょもす:まじで硬派なんだよな。

へいほぉ:こじらせてますよね。

ちょもす:貫いてるのおれはめっちゃいいと思いますけどね。そういう人すごい減っちゃった気がするし。

きっかけ

ちょもす:そういやなんで『Invincible VS』はじめたんですか?おれはなんとなく想像ついてるけど、一応聞いときたくて。

へいほぉ:大会に出るのが好きなんすよね。『HUNTER×HUNTER NEN×IMPACT』でEVO FRANCE優勝して、次のゲームなんかないかなってなった時に思ったのは、これからEVO増えるじゃないですか。

ちょもす:ああ増えますね。

へいほぉ:EVO増える前にもう一個タイトル獲れたら面白くね(優勝の価値が薄まる前に勝ちたい、の意)ってのがあって、短期間で遊べるゲームが『Invincible VS』でした。

ちょもす:なんかそもそも人いなすぎてあんま対戦できないみたいな話聞いたけど。

へいほぉ:毎日対戦はできてましたよ。毎日絶対20:00に『Invincible VS』を配信してくれる人がいて、そのタイミングでランクマッチ潜れば高確率で対戦できたのでありがたかったです。あと、EVO行くくらいやりこんでくれてる知り合いが一人いたので、ラスト2~3週間は二日に一回くらいは対戦してもらってました。

ちょもす:話聞く限り日本人は10人とかそんな感じだよね。ローカライズすらされてないわけだし。

へいほぉ:5人くらいじゃないですか。たぶん。

ちょもす:それで勝てるのがすげえよ。どうなってんだ。絶対アメリカの人たちの方が研究進んでそうなもんだけど、それであの話に繋がるのか。『Japanese Secret Tech』。実況解説みてました?

(補足:今回のEVOの『Invincible VS』部門で氏が優勝した大きな要因の一つとして、一般には知れ渡っていないテクニックを用いた点が挙げられる。テクニックを要約すると、本来、相手の挙動に合わせてボタンを押すことで返すことが可能な読み合いとなるはずのシステムの攻撃が、特定の条件を満たすと返せなくなる仕様が存在した。それを利用することで本来出すことが不可能なありえない火力を出すことができ、相手には出せない意味不明のダメージを一方的に出せる状態で戦うことができた。情報共有されていた日本勢の二人から本当に意味不明のダメージが出るので、海外の実況解説陣はやけくそ気味に『Japanese Secret Tech』とその技術を称していた。)

へいほぉ:チラっとだけ。

ちょもす:Top8の試合見返したんですけど、あまりに一方的に強いからちょっと冷めてるまであったよ。すごいことなんだけどね。しまいには、決勝で対戦相手とコミュニケーション取るのにスマホ開いて翻訳するシーンがあったと思うんですけど、へいほぉさんが突然スマホ開いてポチポチする様子がカメラに写ってるから、実況解説が「Japanese Discord Tech!?」とか言い出して大分面白かった。

へいほぉ:(笑)。その話は知りませんでした。

ちょもす:なんかそのテクニック自体は直前まで知らなくて、教えてもらったみたいな話があったと思うんですけど、そのへんの話を聞いてもいいですか?

へいほぉ:さっき言ったEVO行くくらい熱心に遊んでた人がいて、その人は結構前にこのテクを見つけてたっぽくて。で、このゲームって開発のやる気がすごい高いから、ネット対戦に載せたら絶対修正されるなってわかってたらしいんですよ。だから自分と対戦する時は使ってなくて、リモートシェアプレイでオフ対戦してリプレイを残さず使ってた、みたいな話がまずあって。

ちょもす:現代の人口多いゲームじゃあんま聞かない話が出てきてわくわくするね。

へいほぉ:EVOに参加する過程で移動とか空き時間あるじゃないですか。何日かあるし不安で前日とかに手を動かしておきたいから、その仕組みを教えて対戦したかったってのがあると思うんですよ。その相手してて教えてもらえたっていう感じですね。

ちょもす:教えてもらえたまではまあいいけど、向こうで練習ってどうやってやったんですか。

へいほぉ:その人がノートパソコン持ってきてたんで、その人が服のクリーニングとか行ってる間にひたすらトレーニングモードやらせてもらってました。やってるうちにキャラ限で難しいキャラがいたりするのもわかりましたね。

ちょもす:ごり押しすぎて笑うけど、そのへんのあらゆる適応力の高さがへいほぉエピソードって感じがする。それでいきなり出来るようになるのがすげえよなあ。

 

続きます。


ここから先は

0字
月10本以上の更新で運用していましたが、今月の7月をもって不定期更新に変更します。

ちょもマガ

¥500 / 月

人よりも少しだけゲームに触れる時間の長い人間が、ゲームやそれにまつわる話について書いています。昔プロゲーマーだったりしました。たまに無料で…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?