ソフトウェア設計のおすすめ本5選 全体像の把握から結合の管理まで
エンジニアとして設計を任されたとき、困ったことがあります。自分の案と他の人の案を並べたとき、どちらが良いのかを根拠を持って示せませんでした。
なんとなくこっちの方がきれいだと思う。この分け方だと後で困りそうな気がする。そういう感覚はあるのに、なぜそう思うのかを言葉にできない。感覚で決めた設計は、指摘されたときに守れませんし、他の人に説明もできません。
設計の本を読み始めたのは、その根拠を論理立てて説明できるようになりたかったからです。読んでみて分かったのは、私が感覚で捉えていたことの多くには、ちゃんと名前と理由がついていたということでした。
ソフトウェア設計の本は、いま自分がどの段階にいるかで選ぶべき一冊が変わります。この記事では、実際に読んだ5冊を「全体像を掴む」「コードの良し悪しを判断する」「構造を設計する」の段階別に紹介します。
迷ったらこれ 段階別の3冊
設計そのものが初めての人 → 図解即戦力 システム設計のセオリーと実践方法
自分のコードの何が悪いか分からない人 → 改訂新版 良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門
基礎を押さえて次に進みたい人 → 現場で役立つシステム設計の原則
自分の現在地に一番近いものから読めば失敗しません。以下、5冊を段階順に紹介します。
全体像を掴む1冊
図解即戦力 システム設計のセオリーと実践方法がこれ1冊でしっかりわかる教科書

システム設計の全体感を掴むための一冊です。
とても分かりやすく整理されています。特に、要件に基づいてどういう設計にすべきかという全体設計が重要だという点が、詳しく書かれていました。私が根拠を示せなかったのは、目の前のクラスやメソッドばかり見ていて、要件から設計に落とす流れを捉えていなかったからだと気づかされます。
エンジニアはもちろん、エンジニアでない人が設計について学びたい場合にも、一冊目としておすすめできます。全体像がないまま個別の技法を読むと、どこの話をしているのか分からなくなります。まずここから入るのが順番として自然です。
特に全体設計の章が参考になりました
エンジニアとして働いていれば、基本設計以降の設計書には嫌でも触れることになりますが、全体設計レベルの資料に体系的に触れることはあまりないです
とても参考になりました
コードの良し悪しに気づく1冊
改訂新版 良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門 ── 保守しやすい 成長し続けるコードの書き方

サンプルコードをもとに、何が問題でどう直せば良くなるかを示してくれる一冊です。
具体的なコードを見ながら進むので、非常に分かりやすい。正直に書くと、この1冊で設計ができるようになるわけではありません。ただ、アンチパターンには気づけるようになります。それだけでも十分に勉強になりました。私が感覚で「なんとなく良くない」と思っていたものに、名前がついていく感覚があります。
実装例はJavaですが、基本的な部分が多いので他の言語を使っている人でもなんとなく読めて理解できると思います。
専門的な設計本を読む前に、本格的なソフトウェア開発を始める人に向いています。
オブジェクト指向そのものに不安がある方は、オブジェクト指向のおすすめ本5選も先に読んでおくと入りやすくなります。
設計に関する本は難解な本が多いですが、最後までスラスラ読むことができました。変更容易性に関する設計手法を学ぶことができます。初心者にもおすすめです。
実践に進む1冊
現場で役立つシステム設計の原則 ── 変更を楽で安全にするオブジェクト指向の実践技法

オブジェクト指向を活用したドメイン駆動設計について解説した一冊です。
オブジェクト指向の良さを生かす設計をするにはどうすればいいかが、具体的な場面を想定して説明されています。抽象論で終わらず、こういう状況ならこう設計する、という形で進むので、自分の現場に当てはめながら読めます。
基礎を押さえたうえで、設計の二冊目や三冊目として選ぶといいと思います。前述の「良いコード/悪いコード」でアンチパターンに気づけるようになった後、では実際にどう組み立てるのかを扱うのがこの本です。
ドメイン駆動がさっぱり分からない未経験者でしたが、くどいくらいに口を酸っぱくして要点を解説してくれるので、とても分かりやすかったです。特にドメインオブジェクトの項を実践してからは、目に見えて設計が良くなりました。
AIを組み込む1冊
生成AIによるソフトウェア開発 ── 設計からテスト、マネジメントまでをすべて変革するLLM活用の実践体系

生成AI・LLM・エージェントを、設計からテスト、運用・保守までの全工程、さらにマネジメントにまで組み込むための手法を扱った一冊です。
良いところは、従来の開発手法からドラスティックに変えようとしていない点です。既存の手法に対して、AIを使ってどう効率化するかという書き方になっています。だから今の現場にそのまま持ち込める。
ソフトウェア開発にAIを導入してみたい人の、一冊目としておすすめです。
設計を学んだうえでこの本を読むと、AIの出力の精度が設計の精度に引きずられることがよく分かります。仕様が曖昧なら曖昧なまま実装される。だからAIを使う時代ほど、設計を言葉にできることが効いてきます。
AI駆動開発そのものについては、AI駆動開発のおすすめ本5選で詳しく書いています。
入門書として捉えると良書の類かと思います。
標準的な開発ドキュメントを生成AIで作成するプロンプトなどは比較的参考になります。
構造の判断軸を持つ1冊
ソフトウェア設計の結合バランス ── 持続可能な成長を支えるモジュール化の原則

結合という概念を、正面から扱った一冊です。
コンポーネント間の結合は悪とされがちですが、この本はそう単純に切りません。どういう戦略で管理するかが重要だという立場です。強さ・距離・変動性という三つの軸を、どう組み合わせるかを考えられるようになります。
私が求めていた「根拠を持って説明する」に、いちばん近づけてくれた本でした。この設計は結合が強すぎる、という指摘に対して、どの軸でどう強いのかを分解して話せるようになります。
ただし専門性が高いので、ある程度経験を積んでから読むことをすすめます。順番としては最後で構いません。
今まで「結合は低ければ低いほど正義だ」と盲目的に信じてきましたが、この商品を読んでその常識がひっくり返りました。 単なる理論の羅列ではなく、コナーセンスやクネビンフレームワークといった難解そうな概念を、現代の複雑な開発現場にどう当てはめるかが非常に具体的に書かれています。
まとめ
ソフトウェア設計の本選びも、自分の段階で決めるのが失敗しないコツです。全体像を掴みたいなら「図解即戦力 システム設計」、自分のコードの何が悪いか分からないなら「良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門」、実践に進むなら「現場で役立つシステム設計の原則」、AIを組み込みたいなら「生成AIによるソフトウェア開発」、判断軸を持ちたいなら「ソフトウェア設計の結合バランス」。
設計で困るのは、手が動かないことより、選んだ理由を説明できないことでした。感覚で決めた設計は、指摘されたときに守れません。そして人に引き継げません。
本を読んで変わったのは、設計が上手くなったことより、自分が何を良いと思っているのかを言葉にできるようになったことです。言葉にできれば議論できますし、議論できれば直せます。現在地に合う本から始めてみてください。
コードそのものを改善する方法は、リファクタリングのおすすめ本7選もどうぞ。
ドメインから設計を組み立てる考え方はドメイン駆動設計のおすすめ本5選、サービスの分割はマイクロサービスのおすすめ本5選を。AIに設計を手伝わせる使い方は、Codexのおすすめ本3選もどうぞ。
本で押さえたら、実践の型を固める
設計は、本を読むだけだと抽象的なまま終わりがちです。要件定義から設計、実装までを一度通しでやってみると、それぞれが何のためにあるのかが繋がります。動画で学びたい場合は、こちらの講座がつながりが良いです。
【ひぐま流】ソフトウェア開発入門講座 ── 要件定義や設計などのソフトウェア開発工程を幅広く学び、成長するための土台を築こう

実際にJavaやSQLを動かしながら学べるので勉強になりました。新人研修や後輩育成にもそのまま使えそうな内容です。本で考え方を押さえた後、工程の全体を通して体験したい方に向いています。
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