【10回目】ブドウ糖はどこから来るのか?勝手に出来るって?どういうこと?
最初にひとつ聞きたい。 こね終えた直後の生地に、ブドウ糖はあると思いますか。
前回、イーストのエネルギー源はブドウ糖だという話をしました。 ではそのブドウ糖はどこから来るのか。
お砂糖を使わないハード系のパンの場合、答えはデンプンです。
デンプンとは何か。 ブドウ糖が数千から数万個繋がったものです。 つまりデンプンはブドウ糖の塊です。 小麦粉にはこのデンプンが大量に含まれています。
ただしデンプンのままではイーストは使えません。 ブドウ糖の形に分解される必要があります。
ではどうやって分解されるのか。
小麦には元からアミラーゼという酵素が含まれています。 このアミラーゼがデンプンをマルトース(麦芽糖)まで分解します。 次にイースト自身が持つマルターゼがマルトースをブドウ糖に分解する。
デンプン → マルトース(アミラーゼ) → ブドウ糖(マルターゼ)
この分解が何段階にもわたって起きてはじめて、 イーストが使えるブドウ糖になります。
つまりこね終えた直後の生地には、 まだブドウ糖はほとんどない状態です。 これが前回の話、こね直後にいきなり40℃にしても意味がないという理由です。
材料がない状態でいきなり全力で動かそうとしている。 起きてすぐフルマラソンに出場させられるようなものです。 顔も洗っていない、お腹も空いている。 それでも働けとむちを入れている。 あなたがイーストなら従いますか。
ではバゲットと砂糖入りのパンでは何が違うのか。
砂糖が入っているパンの場合、 イースト自身が持つインベルターゼという酵素が ショ糖をブドウ糖と果糖に分解します(一応、単糖類だと果糖も吸収します) これは一回切るだけでブドウ糖ができる。 デンプンからの多段階の分解と比べると圧倒的に早い。
つまり砂糖入りのパンは まずインベルターゼによって砂糖からブドウ糖を作り使い、 後々に小麦デンプン由来のブドウ糖も使っていく(2つのエネルギー供給源がある)
バゲットはこの砂糖からのブドウ糖がない。 デンプンからの多段階の分解だけが頼りです。 だから発酵が始まるまでに時間がかかります。
これがバゲットにより低温が必要な理由です。 ストレート法であれば24℃以下、できれば20〜22℃の範囲が理想です。 急いでも意味がない。 ブドウ糖ができるまでの時間が必要なのだから。
ここまでの話をまとめると、 イーストが動くためにはブドウ糖が必要で、 そのブドウ糖が準備されるまでには時間がかかる。 温度を上げることは速さを変えるだけで、 この順番を変えることはできません。
「発酵とは、化学反応が順番に起きていくことです。」
