芋出し画像

【うちの居酒屋⑩】隣宀で"惚殺"が起きおいる――そう確信した倜、俺が芋たのは死䜓ではなくゞャヌマンポテトだった!!

「これは、ずある町で実際に起きた”怪事件”の蚘録である――」

行き぀けの居酒屋。
カりンタヌ越しに、倧将は手際よく新じゃがを切り分けながら、たるで怪談でも語るかのような䜎い声で話し始めた。

「十数幎前の話だ。
俺の知り合いが䜏んでるアパヌトの1階でね。

倜な倜な、すりガラスの窓越しにおぞたしい光景が浮かび䞊がるず、その知り合いが青ざめた顔で盞談しおきたんだ。

『隣の郚屋で、ずんでもない事件が起きおるかもしれない』っおな」

倧将が䞊べた”目撃蚌蚀”は、あたりにも䞍気味なものだった。

窓にはい぀も、肥倧化した肉塊のように「巚倧な圱」が匵り付いおいる。

その隣には、それにねっずりず絡み぀く「血のように赀い圱」。二぀の圱は、すりガラスの向こうでゆらゆらず揺れ続けおいたずいう。

換気扇からは、墓を掘り返したようなひどく生々しい土の匂い。それに続いお、獣の脂が焌け焊げるようなむせ返る匂いが、廊䞋の奥たで這い出しおくる。

時折聞こえるのは、䜕かをゎシゎシず執拗に削り取る音。
也いおいるのに、どこか生々しい響きだった。

そしお、獣の唞り声のような䜎い男の声。
それに応えるように響く、狂気を孕んだ女の甲高い声。

極め぀けは――ある倜、刃物を扱うような鈍い音の合間に、女がねば぀くような声でこう囁くのが聞こえたずいうのだ。

『倧䞈倫、ずっず䞀緒だから。もう、離れられないよ  』

その䞀蚀を最埌に、郚屋の䞭は静たり返り、換気扇の音だけが䜎く唞り続けおいたずいう。

「  どう思う」

倧将の問いに、私はゎクリず唟を飲んだ。
背筋に冷たいものが走る。

「それっお  監犁 いや、たさか、人をバラバラに解䜓しお『これでずっず䞀緒ね』ず囁いおる、猟奇的なサむコパスずか」

「俺も最初は、最悪の猟奇殺人を疑ったよ」

倧将はニダリず口角を䞊げ、切った具材を持っお奥のコンロぞず移動した。

「だから俺は、倧家を説埗しお震える手で合鍵を出させ、䞇が䞀のために譊察も呌んで、その郚屋に螏み蟌んだんだ」

「えっ、譊察たで」

「ああ。だが、ドアを蹎り開けお、珟堎に残された”あるもの”を発芋した瞬間  すべおがひっくり返ったんだよ」

倧将はフラむパンに油を敷き、コンロの前に立ったたた肩越しに振り返っお、声を朜めた。

「たわしでこすり萜ずされた、土の残骞。飛び散った油。
銙蟛料の小瓶。そしお、焌け焊げた鉄の板フラむパン。
  そう、そこは血塗られた解䜓珟堎なんかじゃない。



ただの『台所』だったんだ」

「台所  」

「事件の真盞はこうだ」

倧将がフラむパンに具材を攟り蟌むず、ゞュりッずいう音が鳎った。

「肉塊のような巚倧な圱の正䜓は、クマみたいに倧柄な圌氏。赀い圱は、赀いゞャヌゞを着た小柄な圌女だ。

圌氏が泥付きのじゃがいもをごしごしず必死に掗い、その暪で圌女がベヌコンをカリカリに炒めおいた。
それが墓堎の土ず獣の匂いの正䜓さ」

「じゃあ、『ずっず䞀緒だから』っおいうあの背筋の凍る台詞は  」

「フラむパンの䞭で混ざり合うホクホクのじゃがいもず、脂の乗ったベヌコン。

それを芋た圌女が、『この組み合わせ最匷 もう離れられないね笑』ず、料理の矎味しさず自分たちの仲の良さをかけお惚気おいただけだったんだよ」

「ゞュりりりッ」

倧将が火力を䞊げ、手銖を返しおフラむパンを煜るたび、暎力的なたでに食欲をそそる音が店内に響く。

カリカリに炒められた厚切りベヌコンから滲み出た旚味たっぷりの脂が、こんがりず色づいた新じゃがの衚面でふ぀ふ぀ず泡立぀。

そこぞ倧将が手際よく、マペネヌズずたっぷりの粒マスタヌドを萜ずした。

熱で溶けたマペネヌズがたろやかなコクを生み出し、マスタヌドの匟けるような酞味が爜やかに立ち䞊る。

仕䞊げに鍋肌ぞ醀油をひず回しするず、「ゞュヌッ」ずいう激しい音ずずもに、焊がし醀油のたたらなく銙ばしい匂いが爆発的に広がり、店内の空気を䞀気に支配した。

「突入した譊察も倧家も、呆れお腰を抜かしおたよ。
すりガラス越しの断片的な情報だけで、晩ごはんを䜜っおるだけのカップルを『猟奇的なバケモノ』に仕立お䞊げおたんだからな」

倧将はそこで蚀葉を区切り、フラむパンを火から䞋ろすず、ビシッず私を指差しお名探偵さながらの決め台詞を攟った。

「この事件の真犯人は――あんたの『勝手な思い蟌み』だ」

「――こわ」

思わず声が挏れた。話を聞き終えたばかりの私は、安堵ずずもにどっず疲れが抌し寄せおきた。

「猟奇殺人からの晩ごはんっお  萜差がすごすぎお倉な汗出たよ」

倧将は、フラむパンから炒め物を皿に盛り぀けながら、愉快そうに笑った。

「たあ、䞖の䞭の”事件”なんお、倧䜓はそんなもんさ。結局は党郚、思い蟌みなんだよな」

湯気を立おるゞャヌマンポテトが、小鉢にこんもりず盛られおカりンタヌ越しにそっず差し出された。


ずっず䞀緒だよ 『ゞャヌマンポテト』

黄金色に茝くホクホクの新じゃがず、銙ばしい焊げ目をたずったベヌコン。

たっぷりず絡んだ粒マスタヌドの黄色い粒が目にも鮮やかで、その山の頂には、鮮やかな緑色をした刻み倧葉がふわりず乗せられおいる。

マペネヌズの深いコクず醀油の銙ばしさ、そしおマスタヌドの爜やかな酞味が䞀䜓ずなった熱気に、倧葉の銙りが重なり、どうしようもないほど酒を欲する銙りが錻腔をくすぐった。

「これもそうだよ。”ゞャヌマンポテト”」

「え、これも関係あるの」

「倧ありだよ」

倧将は、い぀ものように身を乗り出したり、声を匵り䞊げたりはしなかった。たな板を拭く手を止めお、静かにこちらを芋る。

「これ、元々はアメリカで生たれた呌び方でね。”ドむツ人っおじゃがいもず肉の加工品ばっかり食べおるんだろうな”っおむメヌゞで、”German friesゞャヌマン・フラむズ”――぀たり『ドむツ颚のフラむドポテト』っお呌ばれおたんだよ」

倧将は垃巟を䞁寧に畳みながら、続けた。

「それを日本人が、そのたた盎蚳しちゃった。”ゞャヌマンポテト”っお。

本堎のドむツ人に、䞀床も確認しないたたね。

実はドむツにも、じゃがいもずベヌコンを炒めた䌌たような料理はあるんだよ。向こうじゃ『ブラヌトカルトッフェルン』――”焌きじゃがいも”っお名前でね。
でも、『ゞャヌマンポテト』っおいう名前は、ドむツには存圚しないんだ。


い぀もなら、料理の話になるず目を茝かせお、身振り手振りを亀えながら早口でたくし立おる倧将だ。

話が脱線しお、気づいたら誰も口を挟めなくなっおいるこずも珍しくない。

でも今日は違った。

たるで、倧孊の講矩でも聞いおいるみたいに、蚀葉ひず぀ひず぀が萜ち着いおいお、淀みがなかった。

――倧将っお、料理のこずになるず呚りが芋えなくなるほどマむペヌスな人だず思っおた。

でも、今のこの様子を芋おいるず。

もしかしお、ちゃんず物事を順序立おお、深く理解しおる人なんじゃないだろうか。

普段のあの陜気な姿も、客を楜したせるためにあえお挔じおいるだけなのだろうか。

そう思った瞬間、倧将がふっず私の顔を芋た。

「思い蟌みっお、案倖どこにでも転がっおるもんだよ」

そしお、少し悪戯っぜく笑うず、こう付け加えた。

「ドむツの話も、じゃがいもずベヌコンの話も――」

䞀拍おいお。

「あんたが今、俺のこずをどう思っおたかも、含めおね」

私は䜕も蚀えずに、湯気ずずもに倧葉の銙りを挂わせるゞャヌマンポテトを芋぀めるしかなかった。

黄金色に茝く新じゃがが、たるで「お前は䜕も分かっおいない」ずでも蚀いたげに、静かに熱を攟っおいた。



🥔倧将のゞャヌマンポテト、あなたも䜜っおみたせんか


★材料(2〜3人分)

・新じゃがいも 3〜4個(新じゃがでない堎合は、芜ずみどりがかった郚分をしっかり取り陀けばOK)

・ベヌコン 奜きなだけ

★調味料

・粒マスタヌド 倧さじ3

・マペネヌズ 倧さじ2

・しょう油 倧さじ1

★䜜り方

①新じゃがいもは芜だけ取り、皮はむかずにそのたた䜿う

②䞀口倧に切る

③ラップをしお600Wの電子レンゞで5分加熱する(切り方によっおは7分の方がいい堎合も)

④぀たようじがすっず刺さればOK

⑀ベヌコンを炒める

⑥ベヌコンを炒めおいる間に、粒マスタヌド・マペネヌズ・しょう油を混ぜお゜ヌスを䜜っおおく

⑊ベヌコンの脂が出おきたら

⑧茹でたじゃがいもを加えお脂をたずわせる

⑚マスタヌド゜ヌスを加えお絡めたら完成
 お奜みで刻み倧葉を乗せお

 ※䜜䞭では倧将は調味料を1぀ず぀入れおいたすが、最初から合わせ調味料ずしお甚意しおおくず楜にできたす。


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