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女子になった俺に、犬と狼が懐いてくるんだが。⑪


前回はこちら!


さて、どんな風に大上に言い訳をするか。
見切り発車でとりあえず開いた口は、パクパクと音を発さず、目も泳ぎに泳いでしまう。

焦りと共に、無意識に汗が出てきてしまうし、その状況が更に焦りを引き起こす。

大上は、あいも変わらず、こちらを待つように、壁に寄りかかりながらポケットに手を入れ、無表情ながらも柔らかい眼差しで、こちらが何かを言うのを待っている。

とりあえず言葉を発さないと。

「……えっと、どのあたりを聴いたの?」

「…俺が目をつけてたとか、取られてたまるかとか、そんなところか?」

本人が聞いたといっていたのだから、大凡分かっていたことだが、改めて確認すると、頭が痛くなってくる。

いつもの癖で眉間に手がいきかけるが、ハッと堪えると、大上へ問い直す。

「………どう思った?」

まずは、大上がこの状況について、どんなふうに考えているのかを知っておかなければならないだろう。

「どうって、まあ、いいんじゃないか?いつもの七瀬とは言動も雰囲気も違っていたが。」

いつもの俺?つまり、俺が成り変わる前のこの子のことを指しているのだろうか。

「いつものって、例えば?」

すると、大上は顎に手を添え、空を見ながら考えるそぶりを見せる。

「いつもは、何というか、周りから一歩引いているイメージだな。一言で言えばクールだ。だけど、さっきの七瀬は少し熱かった。お前があんなに熱くなるところを、俺は見たことがない。」

なるほど、いつもはもっとクールキャラなのか。
思わぬところで情報を得たが、こいつはこの子とどのような関係なのだろうか。
いつもは、などという感想が出るのだから、それなりに親しい間柄だったに違いない。
少し慎重に話を進めないとな。

「私だって熱くなることくらいあるよ。…えっと、それで、………何でそんなに私に詳しいの?」

いや、違う。違うんだ。
ダメだ、コミュニケーションって難しすぎないか?

大上はピクリと眉を動かし、顎に添えた手をゆっくりと下ろし、腕を組んだ後、気まずそうに頬を掻いた。

ほら、なんか警戒してるっぽい。
間違えた!

「いや、別に詳しいわけじゃない。…ただ、部活でよく見るお前と違うから、気になっただけだ。」

部活?
そうか、こいつ俺と同じ部活なのか。
それなら言い分も納得できる。
しかし、よりにもよって、それなりに近しい奴に聞かれるとは。

「それに、今日竹刀持ってきてなかっただろ?昨日持って帰ると言っていたのに、朝は持ってきていなかったからな。…そう、様子が変だったから気になっただけだ。」

どうやら剣道部らしい。
こいつ、必要な情報ポロポロ落としてくれるな。
俺も昔剣道をやっていたし、部活に参加しても不自然にならないだろう。
これは大きな収穫だ。

「あ、そう言えば忘れちゃった!今日どうしようかな?」

少し白々しいが、とりあえずそう言っておく。

「まだ使ってない新品の竹刀が予備であるから、それを貸してやる。」

「え、いいの?何から何まで悪いね〜。」

「いいさ。困った時はお互い様だからな。」

「今度、もし忘れたら、私の竹刀使う?」

「いや、遠慮しておく。」

「えー?恥ずかしがらなくてもいいのに。」

「うるさい。ところで、一人称は私でいいのか?」

「いや、それについては忘れてください。」

そんなやり取りをしながら、階段へ腰を落ち着ける。
まぁ、こいつは何となくだが、周りに有る事無い事言いふらすようなやつではないだろう。

そう飲み込み、少し安心すると、急にお腹が空いてきたので、パンの包みを開け、トリュフたまごサンドを口にする。
やっぱり、食べるならば先にしょっぱいものからだろう。

「教室に戻らないのか?」

「いいじゃないたまには。こういうところで食べるのもさ。ほら、一緒に食べよ?」

「あ、あぁ。」

大上はそう答えると、俺の隣に座り、自分のパンの包みを開ける。
すると、出てきたのは太めのカツサンド4切れ。
これも美味そうだな。次はこれを買うか?

そんなことを一瞬考えたが、同時に自身の懐事情と、購買でのあの惨状を思い出し躊躇する。

流石にまたあれに飛び込むのはなぁ。
カツサンドが取れる保証もないしなぁ。

「………………………食べるか?」

あら、そんなに表情に出てましたか?
見かねた大上が、カツサンドを取れるよう、こちらに差し出してくる。

「いいの?」

「あぁ。」

「じゃあ、これあげる。交換しよ!」

そう言って、二切れあるトリュフたまごサンドを差し出す。
これを差し出すのは少し残念だが、代わりにカツサンドが食べられるのだ。
我慢するとしよう。

「なら、二切れ取るといい。じゃないと釣り合いが取れない。」

いいんですか!なら遠慮なく二切れいただくとしよう。

そんなこんなで、談笑をしながら2人で食事を終えたわけだが、まさか登校初日に、教室ではなくこんな場所でご飯を食べることになるとは。

この先が思いやられる。



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