「投資に回せるお金」と「投資に回してよいお金」は同じではない──無理なく資産形成を続けるための資金管理
今月、洗濯機と冷蔵庫を買い替えました。
どちらも生活に欠かせないものですが、二つ重なると、それなりに大きな支出になります。
買い替える商品を調べ、価格を比較しながら、私は途中でこんなことを考えていました。
「このお金を投資に回していたら、将来どれくらい増えるのだろう。」
大きな買い物をするとき、同じことを考えることがあります。
気になるのは、目の前から出ていく金額だけではありません。
そのお金を運用していたら得られたかもしれない利益まで、頭の中で計算し始めます。
投資をしていなければ、冷蔵庫は冷蔵庫の価格、洗濯機は洗濯機の価格として考えていたと思います。
ところが、投資を続けていると、買い物の金額が「将来の資産額」に変換されることがあります。
生活が窮屈になるほど投資に回しているわけではありません。
それでも、毎月の収支からお金が残ると、何に使うかより先に、どこへ投資するかを考えていた時期がありました。
余っているなら、投資に回した方がよい。
現金のまま置いておくより、少しでも運用した方がよい。
そんな考えが、いつの間にか自然になっていました。
ただ、今回の買い物をしながら、あらためて思いました。
「投資に回せるお金」と、「投資に回してよいお金」は、同じではないのかもしれません。
1.大きな買い物をすると、将来の利益まで考えてしまう
投資を続けていると、お金を使うことの見え方が少し変わります。
今ここで使わずに投資すれば、将来はもっと増えるかもしれない。
長く運用できれば、複利の効果も期待できます。
そう考えると、大きな買い物ほど慎重になります。
衝動買いを防ぐという意味では、悪いことではありません。
本当に必要なものなのか。
今すぐ買う必要があるのか。
もう少し安いもので十分ではないか。
一度立ち止まって考えるきっかけになります。
一方で、将来得られたかもしれない利益まで考え始めると、必要な支出まで損失のように見えることがあります。
もちろん、投資に回したからといって、必ず増えるわけではありません。
株価が下がることもあります。
想定していたリターンを得られないこともあります。
それでも頭の中では、使わなかったお金だけが順調に増えていきます。
現実の買い物と、うまく運用できた未来を比べれば、買い物の方が不利に見えるのも当然です。
2.口座にあるお金が、すべて余裕資金とは限らない
「投資は余裕資金で。」
よく聞く言葉です。
私も、この考え方は大切だと思っています。
ただ、どこからが余裕資金なのかは、意外と簡単ではありません。
生活費を払ったあと、銀行口座にお金が残っている。
今すぐ使う予定もない。
そうなると、そのお金は投資に回せるように見えます。
けれど、口座に残っているからといって、すべてに同じ役割があるわけではありません。
急な出来事から生活を守るためのお金。
近いうちに使う予定があるお金。
毎月の収支から残り、長いあいだ使わなくてもよいお金。
同じ現金でも、必要になる時期や目的は違います。
投資に回せるかどうかを考える前に、そのお金に別の役割がないか、一度考えてみることも大切です。
「今は使わないお金」と、「長期間使わなくてもよいお金」は、似ているようで少し違います。
3.生活防衛資金は、増えなくても役割を果たしている
生活防衛資金は、短期間で大きく増えることを期待するお金ではありません。
病気やけがで働けなくなったとき。
仕事や収入に変化があったとき。
家電が壊れたり、思いがけない出費が重なったりしたとき。
そんなときに、生活を大きく変えずに対応するためのお金です。
相場が上がっていると、現金で置いていることがもったいなく見えることがあります。
投資していれば増えていたかもしれない。
もう少し多く市場に置いておけば、資産形成が早く進んだかもしれない。
そう考えることもあります。
ただ、生活防衛資金の役割は、投資で利益を得ることではありません。
必要なときに、相場の状況を気にせず使えることです。
急な出費と相場の下落が重なっても、保有している資産を慌てて売らずに済む。
投資を続けるかどうかを、生活費のために決めなくてもよい。
現金は増えていないように見えても、売りたくないときに売らずに済む選択肢を残してくれます。
それも、資産形成を続けるうえで大切な役割なのだと思います。
4.近いうちに使うお金には、相場の回復を待つ時間がない
今回買い替えた冷蔵庫や洗濯機のように、生活にはある程度予想できる支出があります。
家電は、いつまでも使い続けられるわけではありません。
引っ越しや車検、医療費など、時期や金額をある程度想定できる支出もあります。
こうしたお金を投資に回せば、使うまでに増える可能性はあります。
逆に、必要になったときに買値から下がっている可能性もあります。
相場が回復するまで待てるお金なら、下落しても持ち続けることができます。
しかし、冷蔵庫が必要になったときに、「株価が戻るまで買い替えを待とう」とはなかなかいきません。
市場には市場の都合があります。
生活には生活の都合があります。
必要になる時期を相場に合わせられないお金は、期待できるリターンだけを見て、投資を決めない方がよいのでしょう。
投資に向いているのは、使う予定がないお金というより、値下がりしても回復を待てるお金なのだと思います。
5.毎月残ったお金も、すべて投資する必要はない
私は、お金を目的ごとに細かく分けて管理しているわけではありません。
生活防衛資金用、家電用、趣味用と、すべて別々に置いているわけでもありません。
ただ、毎月の収支からお金が残ったとき、その全額を自動的に投資資金と考えないようにしたいと思っています。
毎月の支出には表れなくても、生活には不定期の出費があります。
家電を買い替えることもあります。
健康のためにお金を使うこともあります。
趣味や旅行など、今の時間を楽しむために使いたいこともあります。
何に使うか決まっていない現金にも、まだ決まっていない選択肢を残す役割があります。
現金を必要以上に持ち続ければ、資産形成の速度は遅くなるかもしれません。
だからといって、手元に残ったお金をすべて投資しなければならないわけでもありません。
投資額の最大化と、生活の安定は同じではありません。
大切なのは、どちらか一方に寄せ切ることではなく、今の生活を守りながら、無理なく投資を続けられる形を考えることなのだと思います。
6.投資する前に、一度考えたい3つのこと
投資に回す金額に、誰にでも当てはまる正解はありません。
必要な生活費も違います。
収入や家族構成、今後の予定も違います。
どのくらいの値下がりに耐えられるかも、人によって変わります。
だからこそ、私は投資に回せるお金を見つけたとき、次のことを一度考えたいと思います。
①このお金には、近いうちに別の役割がないか。
②値下がりしても、必要になるまで売らずに待てるか。
③投資したあとも、今の生活を無理なく続けられるか。
3つとも大丈夫だと思えれば、長期の投資資金として考えやすくなります。
どれかに迷うなら、すぐに投資せず、いったん現金で置いておく選択もあります。
現金で持つことは、何も決めていない状態ではありません。
将来の選択肢を残している状態でもあります。
おわりに
今月購入した洗濯機と冷蔵庫には、株式のような金銭的リターンはありません。
それでも、毎日の生活を支え、家事の手間を減らしてくれます。
投資に回さなかったからといって、何も残らない支出ではありません。
資産形成を続けていると、お金を使うたびに、運用しなかった未来を考えることがあります。
このお金を投資していたら、もっと増えたかもしれない。
その考え方は、無駄な支出を見直すきっかけになります。
ただ、すべての支出を将来のリターンと比べ始めると、今の生活に必要なお金まで使いにくくなります。
「投資に回せるお金」と、「投資に回してよいお金」は、必ずしも同じではありません。
生活を守るお金。
近いうちに使うお金。
長いあいだ使わず、相場が下がっても待てるお金。
厳密に分けていなくても、それぞれの役割を一度考えるだけで、投資に回す金額の見え方は変わります。
資産形成は、将来のお金を増やすために行うものです。
同時に、増やしたお金で今と将来の生活を支えるためのものでもあります。
投資額をできるだけ大きくすることだけではなく、生活と投資のどちらも無理なく続けられる形を作る。
大きなお金を動かすときほど、そんな順番を忘れないようにしたいと思います。
■関連note
・資産形成は、途中から「増やすゲーム」ではなく「続けるゲーム」になる
・資産形成は、いつまで続ければよいのか──終わりのない「もう少し」との付き合い方
