をかしな4,280円
「パパ、これ読んでみて」
娘がスマホを差し出してきた。
「もうちょい離して」
「なんで?」
「見えへんねん」
娘がスマホを遠ざけると、ようやくピントが合った。
『4,280円』
「よんせんにひゃくはちじゅうえん」
「やっぱり! 言えないんだ!」
娘が吹き出した。どうやらパパの視力検査ではないらしい。
「言えたやろ」
「言えてないよ」
「よんせんにひゃくはちじゅうえんやろ?」
「だから、それが違うの」
「それ!」
「どれやねん」
娘がスマホを向けた。
「だから見えへんて」
「これは読まなくていいの!」
どうやらXで、「関西人は4280円を標準語で言えない」という遊びが流行っているらしい。
関西人は「4,280円」を標準語で言えないってやつ…
— あおさわ (@Blue20Lee) August 22, 2026
ほんまに言われへん…。頭おかしくなりそうw
「ほな、標準語ではどう言うん?」
娘の標準語講座が始まった。
「よんせん……」
「訛っとるやんけ!」
開講三秒である。
「え? 今の標準語だよ!」
「ちゃうわ」
「よんせん……」
「なんやねん!そのエセ関西弁は」
「パパが悪いんじゃん」
パパの関西弁講座が始まった。
「よ・ん・せ・ん」
「よ・ん・せ・ん」
「ちゃう。よ・ん・せ・ん」
「よ・ん・せ・ん」
「全然ちゃう。“よ・ん・せ・ん”や」
音程なのか、アクセントなのか。娘の4280円は、何度挑戦しても関ヶ原を越えられない。
「もう一回。よんせんにひゃくはちじゅうえん」
「よんせんにひゃくはちじゅうえん」
「ちゃう」
「よ・ん」
「“よ・ん”や!」
傍から聞けば、4,280円をめぐる価格交渉に失敗した客と店員である。
「もう、ええわ。標準語で言うてみ」
「よんせんにひゃく……」
娘が止まった。
「……あれ?」
「どないしてん?」
「ちょっと待って。よんせんに……なんか、わかんなくなってきた」
「ほら、パパのせい!」
「知らんがな。そもそも関西の4,280円も言えてへんやんけ」
「だって、ずっと変なの聞かされてたらわかんなくなるじゃん!」
「誰が変やねん」
このまま、娘がエセ関西弁を喋られても困る。関西人はエセには厳しいのだ。幸い、我が家には適任者がいる。東京生まれ、東京育ちの妻である。
妻に、「これ、読んでみて」とスマホを見せると「見えないって」とスマホを遠ざけられた。
「よんせんにひゃくはちじゅうえん」
僕と娘は顔を見合わせた。
「……え?」
「今のも、なんか変じゃなかった?」
「何が?」
娘がもう一度、妻に読ませた。
「だから、よんせんにひゃくはちじゅうえん」
「……やっぱりなんか違う」
「何よ!」
妻はスマホを遠ざけたまま、僕らを睨んでいる。
我が家のピントが合うのは、もう少し先らしい。
私の出番か… https://t.co/gd1d1y28jh pic.twitter.com/tRXxIuhcxB
— mayo 🖤🧸 声優・ナレーター (@mayoworks) August 23, 2026

天野雫さんから課された命題は、「を」から始まるエッセイを3本。
一本目は、仕方がないので平安時代まで遡った。
まぁ、『をかし』を見つけてしまえば、こっちのものである。
をかし。
をかしな。
をかしき。
……ということで雫さん、楽勝です😁✨

そして、あきまむさんが、エッセイしりとりに追われる僕を見かねて、こんなイラストを作ってくれた。
「ほげーーーー💦」
……だいたい合ってる😂
あきまむさん、優しい労いをありがとうございます。おかげさまで、少し元気が出ました。そんな優しいあきまむさんに、僕からも何かお返しがしたいです🎁
『をかしな4,280円』
……『円』
あきまむさん、『円』で一本どうぞ😁✨
P.S💌
ちゃめさん、こはるさん、あきまむさん、ユキトさん無茶振りなバトンを受け取っていただきありがとうございます😊追加のイラストまで感謝です。保存しておきました🙌
