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けったいな何かが漏れてたのかもしれん

 朝九時ごろ、僕は池袋にいた。人生初の池袋である。目的地はジュンク堂池袋本店で開催される「人文系リトルプレス市」。目的はnoteで知り合ったコハクシスさんに会うこと。
 待ち合わせは十四時。せっかく初めて来た街なのだから、五時間もあれば池袋という街をだいたい理解できるだろうと、何の根拠もなく観光していた。

 その道中、noteを開くと諏訪さんが記事を投稿があった。

 ……どうやら、参戦するらしい。

 記事の中では、初対面だから緊張するとか、お土産どうしようとか、会う前からずいぶん忙しそうだ。そして、普段noteでは好き勝手に喋っている人なのに、実際に会うとなると「い、い、いつもお世話になっております」と謙虚になると言っている。

 まぁ、僕も人のことは言えない。観光中もメガネの人とすれ違えばコハクシスさんなのではないかとドキドキしていた。喫煙所に入れば、IQOSを吸っている人の銘柄までそれとなく確認してたし。

 観光を終え、ジュンク堂の前にある「カフェ・ド・クリエ」でコメントを返していたら、諏訪さんからDMが届いた。僕が「ジュンク堂の前にあるカフェにいます」と返すと、「ヴェローチェに行ったのですが、どこですか?」と返ってきた。

 ……なんでやねん!

 ポケベルの時代やない。お互いスマホを持ち、リアルタイムでDMまでできる。それなのに、ジュンク堂までたどり着いたおっさん二人が、最後の数十メートルで東口と西口にでも分断されたかのように、別々のカフェへ入っている。

 通信技術はここまで進歩したのに、おっさん二人の待ち合わせ能力はたいして進歩していなかった。

 ヴェローチェへ向かうと、諏訪さんはすぐに見つかった。諏訪さんは顔を公開している。知っている顔が椅子に座っていた。それだけのことである。

 ところが諏訪さんは、僕を見るなりすぐにわかったらしい。僕は自分の顔を公開していない。noteのアイコンと実物に共通している要素を無理やり探せば、白髪くらいである。しかし池袋なんて、白髪のおっさんで溢れている。

 そんなことを思いながら諏訪さんと喋っていたら、コハクシスさんからDMが届き、今からヴェローチェまで来ると言う。

 ただ、僕はコハクシスさんの顔を知らない。noteのアイコンは何度も見ている。クリエイター図鑑のイラストも見た。しかし本人いわく、アイコンは実物とはまったく似ていないらしい。僕は会う前から、かなり無駄な作戦を考えていた。それは昨日投稿したやつを見てくれ。

 ヴェローチェのドアが開くたび、なんとなく入口を見る。

 一人入ってきた。
 ……ちゃう。

 また一人入ってきた。
 ……ちゃう。

 そして、もう一度ドアが開いた。
 ……あっ、コハクシスさんや!

 考えるより先に、そう思った。ほんまにアイコンとは似ても似つかない。それなのに、一目でわかった。しかも向こうも、僕を見てすぐにわかったらしい。

 ……なんでやねん!

 僕らはまだ知り合って二週間ほどである。顔も声も身長も歩き方も知らない。それなのに、コハクシスさんは、アイコンの顔ではなく、文章からずっと滲み出ていた何かをそのまま纏って、ヴェローチェへ入ってきた。

 文章は、思っている以上に書いた人間を隠してくれないらしい。

 考えてみれば、僕はこの二週間でコハクシスさんの顔より先に、ずいぶん余計なものを知っている。健康診断の日にもタバコを吸うこと。自らを日陰者のナメクジと呼ぶこと。恥ずかしい話を拾っては、必要以上に膨らませること。

 顔は知らなかったのに、その人が何を面白がるのかは知っていた。

 顔写真一枚より、そっちのほうが本人を見つける手がかりになることもあったのだ。

 それなら、諏訪さんとコハクシスさんが僕をすぐ見つけた理由も同じなのだろうか。僕の文章からも、アイコンより強力な何かが漏れ続けていることになる。昨日から少し気になっているが、二人には聞いていない。

 顔を知らなくても一目でわかるほど、けったいな何かが漏れているのなら、知らないほうが幸せである。


 🌟あとがき

制作:コンパスみきさん✨


 最後の最後に、コンパスみきさんから「け」のバトンが飛んできました。

 「31日までということで、最後を締めくくってもらいたく🎉」

 ……締めくくれと言われたので、締切ギリギリに本当に締めくくりました。そして、素敵なイラストまでありがとうございます🤗✨

☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩

 8月12日に始まった「 #エッセイしりとり コンテスト 夏の陣

 僕ができたのは、最初の一本を投げたことくらいです。そこから600本を超えるエッセイへとつないでくれたのは、参加してくださった皆さんのおかげです。

 振り返って印象に残っているのは、その本数ではありません。

 「この賞を取りにいくぞ」というより、それぞれが回ってきた一文字を面白がって、自分なりの一編を楽しそうに残していってくれたことです。

タイトルで無茶をする人もいれば、そこから思いがけず真面目な話を書き始める人もいた。何本も走る人もいれば、バトンを持っていないのに勝手にコースへ入ってくる人もいた。

 僕が見たかったのは、こういう光景だったのだと思います。

 バトンを受け取ってくださった方。勝手に拾って走り出した方。何本も走ってくださった方。コメントやスキで一緒に盛り上げてくださった方。そして審査員、スポンサーとして支えてくださった皆さん。

 本当にありがとうございました🤗🤗🤗

 現在、8月31日23時59分。もう次の走者はいません。って思ったら、ギリ滑り込みがありました😆

 どちらにせよ最後は、堂々と「ん」で終われました。これにて「#エッセイしりとり」、終了🎉
 後は、結果発表を楽しみにお待ちください🏆

 それでは最後のバトンを置いおきます。

 「ん」

 P.S💌
 この企画、前夜祭って覚えてる人、どれくらいおるかな!?
 9月1日から始まる「まき&須川の文藝大賞2026」が本番ですよ〜📣
 ぜひぜひ、ご参加ください。賞金は本番の方が豪華です♪

 まきさん、諏訪さん、コハクシスさん、天界さん、そして〇〇さん、審査員引き受けいただきありがとうございました♪
 おかげさまで600本超え👏
 文庫本10冊以上の文字数となりますが、審査のほどよろしくお願いします🙇

 📖こちらのマガジンから参加者のエッセイが読めます。

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