見出し画像

君たちがそんなに言うなら、ピッチクロック、やってもいいよ

NHK
NPB=日本野球機構とプロ野球の12球団による実行委員会が都内で開かれ、大リーグや国際大会で導入されている投球間の時間制限=ピッチクロックを導入することを全会一致で承認しました。導入の時期に向けては球場の一部改修や要員の育成も必要になるため、今後、検討するとしています。
ファーム・リーグでは、すでに実験的にピッチクロックを導入していたこともあり、既成事実化していた印象がある。
それにしても、この問題をめぐっても、NPB球団の経営者は「まるで他人事」である。

検討はしてきたが

この問題が「喫緊の課題」となったのは、この3月のWBCがきっかけだ。ベネズエラ戦で、伊藤大海が「遅延」でボールを宣せられるなど、日本人投手が不利な立場に置かれたこと。そしてそれが直接の原因ではないが、侍ジャパンが8強で負けたことが引き金となっている。
MLBが2023年にピッチクロックを導入した時には、NPBも検討してはいる。
この年7月、NPBの井原敦事務局長(当時)は「委員会の中で出ているのは、ピッチクロックは試合時間短縮の手段ですと。もっと別の目的があって、この(別の)目的を実現させるために試合時間を短くするべきならピッチクロックを導入する。手段を目的にしちゃうと間違えちゃうので」と説明した。
この時点では、ピッチクロックは「時短」のためであって、NPBにとっても「時短」は大事だが、ほかの方法もあるだろう、という認識だったのだ。
結局、このときは
「過去5年間の投球間隔は、MLBの定めている秒数をほとんどクリアしている」とし、まずは打者交代における時間短縮が妥当と判断。NPBは、前打者の打席完了から次打者が打席に入るまでの時間を「30秒以内」とすることを徹底するとしたが、このルールにも罰則規定は設けなかった。

選手会も一時は反対

プロ野球選手会も、ピッチクロックの導入には反対の意向を示していた。2024年6月に、今回のWBCでの「ピッチクロック」採用について、断固反対の意向をNPB側に伝えた。森忠仁事務局長は「大谷君も(間違いなく体の負担は増えていると)発言しているように、投球間隔が短くなって、十分整わないまま投げて、けがにつながる可能性もある。日本でもやっていないわけなので」と述べていた。
そういう意味では、プロ野球の「労使」の意向は一致していたわけだ。

進むグローバル化

しかしながら、NPBを取り巻く状況は大きく変わりつつある。
まず、日本の隣の国、韓国プロ野球(KBO)と、台湾プロ野球(CPBL)がピッチクロックを導入した。
彼らには「日本には日本の伝統がある。日本野球のやり方がある」みたいな変なこだわりはない。MLBの影響下にあって、それを取り込まないと時代に取り残される、という危機感があったのだ。
また日本の社会人野球や独立リーグも「ピッチクロック」を取り入れるところが出てきた。
こうした動きは、一言でいえば「自国をみるだけでなく、グローバルな視点を持つべき」という考えによるものだった。

大谷の一言と近藤健介

DHの問題でもそうだが、NPB、とりわけセ・リーグは変化を極端に嫌う。去年と同じことを今年も、来年もずっと続けていたいという、日本のサラリーマン根性みたいなものを持っている。
「ピッチクロック」の問題でも、NPBは他の団体よりも立ち遅れた。
きっかけとなったのは、前述したようにWBCでの敗戦だ。
大谷翔平は「われわれはわれわれの野球をするんだと思っているのであれば、別に変える必要はないのかなと思う」としつつ「世界で勝ちたいならもちろん導入するべきだ」と語った。
これが大きかったと思うが、それとともに、プロ野球選手会の会長が、會澤翼から近藤健介に変わったことも大きかっただろう。
近藤はこのたびのWBCでは主軸の働きを期待されながら、全くの不振に終わった。彼自身が「世界に置いて行かれる」焦燥感を抱いたのだろう。
プロ野球選手会も「ピッチクロック導入」に傾いた。
プロ野球選手会の良いところは、おのれの立場に固執せず「どんどん節を曲げる」ことにある。私は森忠仁事務局長を知っているが、この人は「選手のためになるのから」躊躇なく方針転換をする人だ。
さらに言えば、近藤健介だけでなく、プロ野球選手会に属する選手の意識が「自分たちのこと、日本のプロ野球のこと」だけではなく「世界の野球」へと広がってきていることがあるのだろう。
今や、プロ野球では身近なチームメイトがMLBに挑戦する時代なのだから。

さっさと導入すべき

こういう複雑な経緯を経て「ピッチクロック導入」が既定路線となったのだが、情けないのは12球団の経営者がほとんど決定に関与していないことだ。
MLBの場合、ピッチクロックをはじめとするルール改定や、新システムの導入は、ロブ・マンフレッドコミッショナーが力こぶを入れて推進している。トップダウンで、徹底的にやるのだ。
しかし日本のコミッショナーは御年83歳で、週に1回コミッショナー事務局に来て茶飲み話をするだけだ。
そして12球団の経営者は「親会社に怒られないように」無難に経営しているだけだ(広島はオーナーに怒られないように、だが)。
プロ野球の明日をどうすべきか、みたいなことは全く考えていない。
「ピッチクロック」導入するなら遅くても来年までにやらないと、意味がない。来年オフには2028年ロサンゼルス五輪の予選である「プレミア12」が始まる。参加国のうち、現時点でピッチクロックを導入していないのはNPBだけだ。
「まあそのうち」「この世の終わりまでには」みたいなのんきなことを言っている暇はないのだ。

いいなと思ったら応援しよう!