他の「プロ野球」の存在を認めないNPB
今日は愛媛県松山市で四国アイランドリーグPlusの「選手測定会」の取材をした。朝8時から午後3時過ぎまで動き回って本当にくたびれたが、中身の濃い取材ができた。実質的な設計者である金沢慧さんの深い考えには、いつもながら感嘆する。
独立リーグからの新たな進路
会場にはNPB、MLB、韓国プロ野球KBOなどのスカウトも顔を出していた。リーグの幹部と話をしたが、今や日本の独立リーグの選手の輩出先は、NPBだけでなく、KBOや台湾プロ野球などにもなりつつあるという。
よく知られているように、KBOは今季から「アジア枠」を設けた。既存の外国人枠とは別に、日本、台湾、オーストラリアなどアジア野球連盟(BFA)加盟国および豪州国籍の選手を、通常の外国人枠(最大3人)とは別に1人追加で登録・出場できる制度だ。年俸は20万ドルまでとなっているが、これによってぐっと独立リーグ選手の可能性が広がった。
5月に独立リーグ群馬からKBOのSSGランダースに移籍した平元銀次郎の記事を書いたが
KBOやCPBL、さらにはMLBマイナーや米独立リーグなどの道が拓けることで、日本の独立リーグの可能性はぐっと広がったといえる。

すぐに移籍できる海外プロ野球
こうした海外のプロ野球と、NPBの「独立リーグ選手」に対する扱いは、大きな違いがある。
海外のプロ野球リーグは、独立リーグの選手を「アマチュア」ではなく「プロ野球選手」とみなし、即座の移籍を認めている。
発表があれば、早ければその週のうちにも現地にわたり、練習に参加し、試合に出場する。もちろん、その代わり「ダメ」であれば、短期間でクビになるが、実力があればどんどん挑戦することができる。
しかしNPBの場合、独立リーグの選手は「アマチュア扱い」であり、高校、大学、社会人と同様に「ドラフト」を経由しなければ入団できない。
毎年10月のドラフトで指名され、翌年の入団になるのだ。

出戻りは割と楽
ただ同じ独立リーグ選手でも、外国人選手や、元NPBに在籍した選手は、すぐの移籍が可能だ。去年のシーズン中に元阪神のドリスが、高知から阪神に復帰したのは記憶に新しい。「昭和生まれ」のドリスだが、今や阪神救援陣の柱の一人だ。
また、一度ドラフトでNPB球団に入り、戦力外になって独立リーグに入団しなおした選手も即座の移籍が可能になる。今季トミー・ジョン手術で全休した藤井皓哉がその代表格だ。彼は2014年ドラフト4位で広島に入ったが、2020年に戦力外となり21年は高知でプレーしたがソフトバンク三軍相手にノーヒットノーランを記録、これに驚いたソフトバンクが獲得し昨年までセットアッパーとして活躍した。
私は今の独立リーグの創設者である石毛宏典さんに話を聞いたことがあるが「独立リーグもプロ野球だから、ドラフトは関係ないと思ったが、ドラフト指名しないとNPBに入れないといわれた。おかしい」と大いに不満だった。
NPBは独立リーグだけでなく、自分たちが声をかけて参加させたファーム・リーグの選手も「ドラフト」を経由しなければ、入団させていない。
「俺たちが本物のプロ、お前らは違うから」と言いたいのだ。
目覚ましい進出
しかし独立リーグ出身者の活躍は近年目覚ましい。首位打者2回のロッテ角中勝也(香川)が草分けだが、最近は阪神の救援陣で目の覚める活躍をした石井大智(高知)、同じく湯浅京己(富山)、同じく工藤泰成(徳島)、今年ソフトバンクに移籍した強打の捕手山本祐大(滋賀)、ロッテの俊足、和田康志朗(富山)など枚挙にいとまがない。ノンエリートでも、途中で挫折しても、独立リーグなら「やり直しがきく」のだ。
今やドラフトでは、社会人よりも独立リーグ出身者の方が多いのだ。もちろん通用しない選手も多い。成功する確率は高いとは言えないが、その分、独立リーグ選手の大部分は「育成」でNPB球団にとっては「リスク」は低い。投資効率は悪くない。

依然として下請け扱い
独立リーグのレベルが上がっていることは、NPB球団も知っている。それでいて、NPB球団はいまだに独立リーグを「下請け扱い」している。
コーチなどのポストからあぶれた指導者を、独立リーグのコーチにすることもよくあるし、育成枠で取った選手を独立リーグに派遣することもよくある。
こういう場合、年俸はNPB持ちではあるが、いずれはNPBに帰る腰掛の指導者や選手を預かるのは、独立リーグとしても複雑だ。
特に派遣された選手は、出場枠を確保しなければならないから、その分、独立リーグの選手の出場機会が奪われる。
そういう形で、NPBは独立リーグを利用しながら、彼らのステイタスは全く認めていないのだ。
この関係、大企業と下請け企業の関係に本当に似ている。
うまく利用しながら常に「お前らと俺らは身分が違うからな、勘違いするなよ」と言っているのだ。

ステイタスは低いまま
今日、松山駅からタクシーで坊っちゃんスタジアムに行ったが、タクシーの運転手に「独立リーグの測定会がある」というと「独立リーグに県の施設使わせてるんですか」と驚いていた。愛媛県に独立リーグができて21年も経つが、地元の認識はこの程度だ。
端的に言えばいまだに「プロ野球ごっこをしているおかしな連中」と思う人たちが地元にもいるのだ。
独立リーグは草創期から、NPBとの「提携」をずっと働きかけてきたが、NPBは「うん」と言わなかった。
ある時期にはMLB機構が「傘下に入らないか」と言ってきたことがあるが、実現しなかった。
私は独立リーグの選手が、KBOやCPBLに行ってどんどん活躍すればいいと思う。本来、NPBに行く実力がある選手が他のプロ野球に行って活躍しだせば、NPBも「うちに来るべき選手がよそに流れている」と焦りだすのではないか?
万事「新しいことはしたくない」NPBの目が覚めるような活躍をする選手が、世界中にどんどん出てきてほしい。
