MLB40本塁打者は1世紀でこんなに変わった
人はだれしも「エクセルで表を心の赴くままに作りたい」と思う日があるものだ。今日は思い切り「記録」について書いてもいいかなあ?あかんと言っても書くけども。
今年もMLBの本塁打王は40本を超すのは間違いないだろう。40本塁打は1920年にヤンキースのベーブ・ルースが「54本塁打」を打って自身が前年打ち立てた「MLB記録=20本」を爆発的に更新したのが始まりだ。以後、本塁打狂想曲のファンファーレが高らかになり、佐々木信也が「クリープを入れないコーヒーなんて…ホームランの出ないプロ野球みたいなもんですね」とCMでいうようになった(義務教育と違うから、知らん人は置いていくよ、あ、誰も知らんか)
「40本塁打者数」の推移
その過程を追いかけると「ホームランを打つ」ことの意味が、この1世紀で大きく変化してきたことがわかる。
まずは1920年以降、昨年までの「40本塁打者数」の推移

1920年以後、ベーブ・ルースが本塁打を量産、これをナ・リーグのロジャーズ・ホーンズビ―、ルースの僚友のルー・ゲーリッグ、ライバルのジミー・フォックスなど数人の打者が追随したのが戦前。第二次世界大戦中は、有力選手も戦地に行き、40本塁打の系譜は途絶えるが、戦後、ラルフ・カイナ―、ジョニー・マイズ、テッド・クルズースキーなどが本塁打を量産した。
1961年、ヤンキースのロジャー・マリスが61本を打ってルースの記録を抜いた年には8人が40本をクリアした。
その後投高打低の時代が長らく続くが、1996年、突如として16人もの40本塁打者が出る。トップはマーク・マグワイアの52本、ここから本塁打ブームが沸き起こる。マグワイアは97年には58本塁打、さらに98年には70本塁打、サミー・ソーサも66本塁打、この間ずっと10人以上の40本塁打者が出た。そして2001年にはバリー・ボンズが73本塁打を記録した。
これらの記録がドーピングによるものだったことは、2003年ころから報道されるようになった。
この疑惑の渦中にいた。ボンズも、マグワイアもソーサも、さらにはアレックス・ロドリゲスも殿堂入りしていない。
その後、一度40本塁打者は激減したが、2015年ころから再び増加。これは「フライボール革命」によるものだ。

40本塁打者「平均打率」
次は、40本塁打者のそのシーズンの「平均打率」を見ていく。
40本塁打者が0の年があるので、グラフは飛び飛びになるが。

あまりイメージはないかもしれないが、ベーブ・ルースは荒っぽい長距離打者ではなかった。通算打率は.342、当時は極端な「打高」ではあったが、当時の長距離打者は打率も良かったのだ。
しかし第二次世界大戦後は投手優位の時代になったこともあり、40本塁打者の打率は3割を切るようになる。上下動しながらも、打率は確実に3割を割り込むようになっている。
40本塁打者の打率、ベスト10

ベーブ・ルースと同時代、ナ・リーグの打撃をリードしたカーディナルスのロジャーズ・ホーンズビ―が唯一4割40本を記録している。しかしそれ以降の記録の大半はベーブ・ルース、いかに打高投低の時代とは言え、このすごさには言葉を失う。相棒のゲーリッグも2回顔を出す。ルース、ゲーリッグの「ワンツーパンチ」の破壊力は比類がない。
ではワーストはどうか?

すべて21世紀以降、ドーピングの名残か残る選手と「フライボール革命」の選手たちだ。
私は2012年、ホワイトソックスのアダム・ダンが、41本塁打、打率.204を記録した時に、これよりひどい記録はもう出ないと思ったのだが、その11年後にカイル・シュワバーが「40本塁打、1割打者」という、ホーンズビ―の間逆を行く記録を作った。
この10人は40本を打ちながらOPSは.900に達していない。打率の数字はOPSに2回入っている。いくら本塁打の価値がすごいと言っても、ここまで低打率だと上がらないのだ。

三振は本塁打のコスト
今や「三振は本塁打のコスト」と言われる。40本塁打者の三振数のベスト(最小)とワースト(最大)を見ていく。
ベスト

40本塁打者で最も三振が少なかったのは1934年のゲーリッグ、本塁打よりも18も少ない。NPBでは王貞治が、本塁打よりも三振が少ないシーズンが5回もあったが、この表の記録はすべてそうなっている。
ベーブ・ルースの名前がないのも注目すべきだ。三振数が少なかった当時にあってルースはシーズン90三振以上が2回。「三振は多い方」だったのだ。
21世紀ではボンズだけが入っている。薬物さえなければ、彼は屈指の好打者として殿堂入りしていたはずだ。
ワースト

シュワバーなど、低打率の顔ぶれと被るところも多いが、それだけではない。MLB屈指の三振王のライアン・ハワードが2回、その上を行くマーク・レイノルズの223三振は、MLB記録だ。しかしこの年のレイノルズのrWARは3.3もあった。
山ほど三振をしても本塁打を打てば、その罪は消える。
デビュー2年目のアーロン・ジャッジも52本塁打208三振しているが、MLBでは「三振をするな」とは言われない。それに見合うだけの本塁打を打てばいいわけだ。
今のMLBの「端的な一面」を紹介した。
