WBCの保険問題は、決して小さな問題ではない
MLBは、WBCのロースターに登録される30人のうち「40人枠(メジャー契約)」に入っている選手は全員、保険に加入することを義務付けている。
支払い先は球団。つまり、その選手が故障するなどしてMLBのペナントレースに出場できない場合は、保険会社から補償金が支払われるわけだ。その代わり選手はWBCで故障をしても年俸は保証される。
保険が下りない選手は…
逆に言うと「保険が下りない」選手は、WBCに出場できない。
保険の適用条件は保険会社が個別に判断するが、近年に故障して手術を受けた選手、高齢の選手などが保険が下りない傾向にある。
プエルトリコは、フランシスコ・リンドーア、カルロス・コレア、ホセ・ベリオス、ビクター・カラティニなどが保険適用できない状態であり、プエルトリコは、WBCへの参加を見送る可能性も示唆している。
リンドーアは今オフに右肘のクリーニング手術を受けているから、常識的に難しいと思われるが、コレアはここ数年の足首の不調、べリオスは昨シーズン終盤の肩の炎症、カラティニは左股関節屈筋の張りで、それぞれIL入りしている。
そういう細かいのまで入れると、かなりの選手が出場できなくなることになるだろう。
大谷翔平について、ロバーツ監督が「投げない」と言った真意はまだわからないが、彼の場合も保険会社から投手としてのみ保険が下りなかった可能性が取りざたされつつある。23年9月に2回目の右ひじ靭帯再建手術(トミー・ジョン手術+インターナルブレース手術)を受けたことが懸念された可能性がある。

保険なしで出場する選手も
ベネズエラ代表のミゲル・カブレラは第1回WBCから5大会連続で出場したが、2023年の大会は「保険なし」での出場を球団が了承した。
彼はこの年40歳、21世紀唯一の三冠王だが、めっきり衰えが目立ち、この年限りで引退している。端的に言えば「故障しても構わない」というところだろうか?
昨年限りで引退したドジャースのクレイトン・カーショウもアメリカ代表での参戦を発表したが、彼の場合「戻る球団なし」なので、保険会社も何も言わないわけだ。カーショウは23年WBCに参戦を表明しながら保険適用されず出場できなかった経緯がある。そのこだわりもあったのだろう。

慎重になるのには「道理」がある
プエルトリコだけでなく、ベネズエラ、ドミニカ共和国などでも保険会社がうんと言わない選手が続出しているようで、各国はWBCサイドや保険会社と交渉を始めるようだが、私は保険会社が慎重になるのには「道理」があると思っている。
例によってWBCが近づくと過去のデータを中心に記事やブログを書いているのだが、WBCがきっかけとなってキャリアが大きく変わってしまった選手が少なからずいるのだ。
日本代表でいえば、2006年、第1回の石井弘寿、ヤクルトの左腕クローザーとして前年61試合に登板し37セーブを挙げていたが、3月5日の韓国戦の登板時に左肩痛を発症、シーズンが始まっても全く投げることができず、キャリアを縮めてしまった。彼自身はMLB挑戦を表明しただけに痛恨だった。
また、WBCで日本人最多の6勝を挙げている松坂大輔も、2009年に3勝を挙げて2大会連続のMVPに輝いたが、以後、イニング数は投げることはできるが、防御率は急落し、一線級の投手ではなくなった。
2006年の第1回大会では、ドミニカ共和国代表のホルヘ・ソーサ、前年ブレーブスで13勝3敗の好成績だったが、絶不調となり以後成績が急落、最後は中日にテスト入団し、そこそこの成績を上げたがメジャーでは活躍できなかった。
もっともショックが大きかったのは、同じ2006年のアメリカ代表、ドントレル・ウィリスだろう。前年マーリンズで22勝で最多勝。「Dトレイン」と言われスター選手になったが、調整不足のままWBCのマウンドに上がって2敗、アメリカ敗退の一因になっただけでなく、以後の成績が急落し、二線級の投手になってしまった。

WBCは見直しの余地あり
何が原因なのかは選手によって異なるだろうが、WBCをきっかけにして選手が不調に陥ることは、結構多いのだ。
あのイチローでも2009年の大会後、胃の炎症のためにDL入りして出遅れている。国の期待を背負ってプレーするWBCのプレッシャーは、大舞台に慣れているメジャーリーガーでも小さくはないのだ。
前回2023年でいえば、日本代表の選手でも、オリックスの宇田川優希がトミー・ジョン手術を受け育成選手になっている。
アメリカ代表のマイク・トラウトも以後、成績が落ちている。
何でもかんでもWBCのせいにはできないだろうが、MLB球団のオーナーにしてみれば、巨額の契約を結んでいる選手が、MLBの公式戦以外のステージで故障して使い物にならないことになるのは、たまったもんではないのだ。
今回の盛り上がりは、これまででも一番だが、それだけに、選手の故障のリスクを軽減できる「時期」「システム」について、検討してもよいのではないかと思う。
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