ショウヘイってだれ?
マイク・タイソンがこういったという。日本人がよく知ったスーパースターの発言だけに、日本にはちょっとショッキングな言葉だが、アメリカという国が、日本といかに違うかを端的に物語っているといえる。私にはそれが、今の分断の原点になっているようにも思う。
MLBは今や4位?
まずアメリカでは、MLBは人気プロスポーツではあるものの、全国民が熱狂するようなスポーツではなくなっている。
MLBはいまだに北米4大スポーツの一つであり、最古のプロスポーツだが、今やサッカーにも抜かれて4番目だという報道もある。

アメフトが35%と圧倒的で、バスケットボールが16%前後、そして最新の調査ではサッカーが10%で、野球を追い抜いていることになっている。
この「サッカー」は、MLSだけではなく世界のトップリーグも含めての話だろうが、これは相当ショッキングだ。
私など、35歳になったブラジルの英雄ペレが大金でニューヨーク・コスモスに移籍したニュースを思い出す。ペレはまさに「客寄せパンダ」であり、彼が出る試合だけ2万人とかお客が集まった。サッカー人気はまだまだ根付かないと思ったが。
それから半世紀、ついに野球を抜くとは。
そういや先月、サンディエゴに行った時もペトコパークの中にあるカフェでワールドカップの中継をやっていて驚いた。

「オールドボールゲーム」と言われるだけに、野球のファンの年齢は高いといわれる。
日本の感覚では「大相撲」に近いのではないか?若者に「今の横綱2人の名前知ってる?」と聞いても、相撲好きでない限り、豊昇龍と大の里の名前は出てこないのではないか?
かつてプロ野球とともに「二大人気スポーツ」だった時代は、横綱大鵬、大関貴乃花の名前はみんな知っていたと思うが。
大谷翔平はそれに近い感じではないか?
日本ではまだプロ野球
日本のプロスポーツの人気調査はいろいろあるが、だいたいこんな感じだ。

プロ野球人気は昨年45%に下がっている。原因は分からないが、それでもほぼダブルスコアでサッカーを上回っている。
大相撲は3番目、MLBに近い位置関係になっているように思う。
この中央調査社の調査はあらかじめ選択肢を上げて選ばせているが、ここに「アメリカ大リーグ」を加えると、Jリーグを抜いてMLBが、30%以上で2位に来ることが多い。実際に観戦する機会はほとんどないが、Jリーグよりも注目度が高い。言うまでもなく「大谷翔平効果」だ。
Jリーグはある時期までプロ野球を追い上げる勢いがあったが、近年はやや勢いを失っている。ただワールドカップのある年は数字が伸びるので変動があるかもしてない。
「ナイター」という原体験
プロ野球が依然として圧倒的に強いのは、日本人共通の「原体験」があると思う。
日本では1958年の「皇太子ご成婚」を機に、テレビが普及し、地上波民放が巨人戦を中心とした「ナイター」を放送、ほぼすべての日本人が、これを視聴した。視聴率は常時20%、占有率は50%に達した。
「ナイター中継」は、21世紀初頭まで続き、今の30代半ばまでは好むと好まざるとにかかわらず「夜はプロ野球中継」が当たり前になり、プロ野球を「原体験」として共有する文化ができた。
Jリーグは「地上波放送」で多くの日本人が視聴できた時代を有していない。BSや有料視聴が中心であり、大衆的な人気の地盤がなかった。この差が今も続いているのではないか。
分断されたアメリカの姿を現す言葉?
アメリカが「3大ネットワーク(ABC, CBS, NBC)による地上波寡占」だったのは1960年代まで、以後はマルチチャンネル化が進み1980年代にはケーブルテレビが主流となる。そして今はNetflixなどネットによる「ストリーミング配信」が中心になっている。
テレビでMLB中継に夢中になった世代はすでに亡く、今は、それぞれが「好きなテレビを視聴する時代」になっている。
MLBが好きな人は大谷やジャッジに夢中になっている。ペトコパークのドジャース戦には、こんな人がいっぱいいる。

しかし、そうでない人は大谷どころか、MLBのことさえ何も知らないわけだ。
その代わりにNFLやNBAや、スポーツだけでなく音楽やドラマや様々なコンテンツをバラバラに視聴し、夢中になっている。
これは私見ではあるが、トランプ政権以降、アメリカ社会の分断が明らかになった背景には日本のように共通の「原体験」が消滅してしまったことも大きいのではないか。
経済的な格差も広がり、国民としての「共通の価値観」もなくなった荒野のようなアメリカに、トランプは出現したのではないか?
「ショウヘイってだれ?」は、分断されたアメリカの姿を現す言葉の一つなのではないか?
