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プロ野球応援団と球団の「リアルな関係」

「応援団がなくなったら、観客の8割はいなくなるに違いない」「プロ野球の観客動員は応援団で持っている」大学生の若い応援団から、こう言うコメントをもらった。この際、プロ野球関係者は絶対に公言しない、応援団と球団の「リアルな関係」について、紹介したい。
応援団の面々にとっては「不都合な真実」ではあろうが。

約款と許可規定

まず、今の「私設応援団」と「球団」の関係について。今のプロ野球では座って声を上げたり拍手をしたりするのは自由だが、どこでも立ち上がって応援したり、ラッパや太鼓を鳴らすことは禁じられている。
プロ野球には「試合観戦契約約款」というルールがある。およそチケットを買ってプロ野球を観戦する人は、すべてこのルールを守らなければならない。「俺はそんなの知らねえ」というかもしれないが、公式サイトでチケットを買えば、約款を「読みました」とチェックするページがついてくる。紙のチケットにも「試合観戦契約約款」を読んだものとする、という但し書きが書かれている。
そこには、観客は指定されたエリア以外では立ち上がっての応援や、楽器を使った応援はできない、と明記されている。
また「応援行為」については、約款に付属する「特別応援許可規程」によって決められている。プロ野球の球場で「応援行為」ができるのは、NPBから特別に許可された団体(私設応援団)に限定され、代表者名、連絡先、構成員の名簿などを記載した書類を提出すると決められている。
個人として応援団のメンバーになるには、各応援団の募集や窓口を通じて応募し、NPBの承認を得る必要がある。承認を受けたものはIDカードを発行されれる。球場で応援する際には、常にこのIDカードを携行しなければならない。

「私設」だが「管理下」にある

以前にも書いたが、かつての私設応援団には暴力団、反社勢力などが入り込み、違法な営利行為をしたり、トラブルを起こしたりしていた。暴対法の施行以後、警察庁は暴力団、反社勢力を排除するようにNPB側に要請、NPB、各球団はこれを受けて従来の私設応援団をすべて解散させ、あらたにNPB、球団が管理する形で「私設応援団」を作ったのだ。
今の12球団の「私設応援団」は、「私設」と言いながらNPB、実際には各球団の管理下にある。好き勝手なことはできない。ただし私設応援団は、幹部であっても球団とは雇用関係にも、業務委託関係にもない。
例えば韓国プロ野球(KBO)や台湾プロ野球(CPBL)の場合、応援リーダーは「球団職員」だ。選手名鑑には選手と並んで応援リーダーの写真も載って「今年の抱負」などのコメントをしているが、NPBの応援団は球団職員ではなく、ボランティアだ。
だから応援団であっても原則としてチケットを購入して球場に入っている。
球団は「私設応援団」を「管理」し、規制をかけるが「金は払わない」という関係にある。

千葉ロッテの発案

この応援団を「マーケティング」に活用しようと考えたのが、千葉ロッテだ。20年ほど前のことだ。お客を球場に引き寄せるために球団は、球場で「物産展」をしたり「ミニコンサート」をしたりする。しかし球場にやってきたお客を「リピーター」にするにはどうすればいいか?
ロッテ球団は、お客に「応援団に参加して一緒に応援しましょう」とアピール。応援団への参加を促した。一般の観客席でお客が応援団に合わせて応援を始めたのは、千葉ロッテが最初だ。
選手ごとの応援歌や、チャンステーマなどを球場のボードで紹介した。これによって多くのお客が「野球を観る」のではなく「応援をする」ために球場に通うようになった。
他球団も千葉ロッテに倣って応援団を「誘客ツール」として利用した。この時期から各球団は「ファンクラブ」を強化したが、入会者に「応援グッズ」を配布し「一緒に応援しましょう」とアピールした。
こういう形で私設応援団は各球団にとって非常に重要な「コンテンツ」になっていった。
応援団はどんなに熱心な人でも「無給」「ボランティア」であり、交通費、宿泊費などを払って球場に来る。
オールスター戦、WBCなどでは応援スペースを確保するなど便宜は図っているが、応援に対して金は払わない。球団にとっては非常に安上がりな「コンテンツ」になっている。端的に言えば、球団は私設応援団の熱意に「ただ乗り」している。
ちなみに「応援団」は、球団の「お客」としては乗客ではない。一番安いチケットで入場し、試合中はビールも買わずに声を張り上げるからだ。


腫れ物に触る

しかしながら、それだけに球団と私設応援団の関係は、微妙ではある。
応援団の中には、少数ながら今でも問題行動をする人がいる。球団は応援団にそういう人物の排除を求める。しかし、応援団はボランティアなので「命令」ではなく「要請」だ。
また、応援団の中には便宜供与を求める人間も出てくる。球団としては断らざるを得ないが、応援団にしてみれば「俺たちが盛り上げてやっている」という認識を持っている。
球団にとって私設応援団は「金も払わないのに勝手に野球場を盛り上げてくれる」ありがたい存在ではあるが、それだけに「腫れ物に触る」ような一面もあるのだ。

応援団サイドの問題

今の私設応援団になって20年余、応援団サイドにも変化がみられるようになった。
まずは「高齢化」。40歳で応援団に入った人は60歳を超えた。体力的にも厳しくなっている。また年金生活になって可処分所得が厳しくなっている人も増えてきた。
さらに応援団は「推し活化」が進んでいる。自分の好きな選手のグッズを買いまくり、地方球場でも追いかけていく。熱心なファンではあるが、自分の生活を犠牲にして「推し活」をするファンが各球団で増えている。こういうファンにはいずれ限界がやってくる。また問題を起こすリスクも増大する。
そして新規入会者は伸び悩んでいる。「金を払って堅苦しい規制の中で応援をする」という応援団の在り方に疑問を持つ人が増えたのだ。

球団側の意識の変化

一方で球団側も、私設応援団に頼ったマーケティングに限界を感じている。
昨今の「ボールパーク構想」では、応援する客、観戦する客、球場の雰囲気を楽しむ客、グルメを楽しむ客など「多様な顧客」を集めることが重要とされる。試合開始から終了までのべつ声を上げ続ける応援団に追随するお客だけが、野球ファンではない、という認識が支配的になってきている。
また、観客動員が100%に近くなる中で、各球団は「客単価」を重視し始めている。富裕層や法人相手の「VIP席」「VIPルーム」を設けるとともに、チケットもダイナミックプライシングで価格を吊り上げたりしている。
そんな中で「私設応援団」は、球団マーケティングの「核心」ではなくなっている。安いチケットで球場に入る「応援団」はこれ以上増やしたくない。
2023年に開場した、日本ハムのエスコンフィールドは、応援団の席を外野ではなくネット裏近くの内野席の最上段に設けた。他の嗜好のお客をより多く集めるためだ。
応援団が出す「音」は、試合を盛り上げる「BGM」として今後も必要ではある。しかし、それを目当てにやってきて一緒に応援するお客だけが欲しいのではなく、もっとお金を使ってくれるお客を集めたい、と考えるようになっている。
応援団は「金がかからない」から、球団も大事にしてはいるが、すでに球団の関心は、他のマーケティング手法に移っている。
私設応援団が衰退するようであれば、球団はそれを支えるのではなく、他の方策を考えるだろう。すでにNPB球団はMLBの視察などを通じて、その試行錯誤を始めている。
球団関係者は「応援団に見切りをつけている」とは、口が裂けても言わないが、そういう認識に変わりつつある。
私設応援団は「プロ野球は俺たちが盛り上げてやってるんだ」と思っているが、そろそろその認識を改めるべきかもしれない。

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