🟡掌編小説|転生して魔王になって旅に出たら聖女に惚れられたみたいなのだが
前作からの続き
うーむ。困った。
「どうしたのじゃ?」
ああ、魔ネキ。実は聖女から毎日のように恋文が送られて来てな。困っておるのだ。
「それはまた随分と拗らせてくれたものじゃ。話してみよ」
うむ、あれは確か「嘔吐事件」の直後──
***
退屈だ。
魔王とはこんなにも暇なのか。どういうことなんだ、魔ネキ?
「少子化ゆえ勇者もなかなか現れぬようじゃ」
まあ、それはそれで良いことだが。しかしこう暇だと死んでしまいそうだ。旅にでも出て自分を見つめ直すとしよう。魔ネキ、付いて来るなよ?
「好きにせい」
***
「聖女様、お願いですから馬車の中でお待ちください。このあたりは魔王城も近く魔物も多ございます。どうかお願いですから」
「うるさいうるさいうるさい! 聖女になどなるものか! わらわは故郷の村に帰りたいのじゃ!」
「聖女様、戴冠式は明後日に迫っております。このようなところで目立っては魔王のやつに喰われてしまいますぞ!」
「魔王などポコチンじゃ!恐るるに足りぬ!」
「聖女様!」
この口の悪いチンチクリンが聖女とな。まだ十にも満たぬ小娘ではないか。
「そもそもおまえは魔王の姿を知っておるのか?」
「聖女様、知ってるも何も私共は奴に喰われて腹の中にいたのですぞ。おかげでこのとおり髪の毛が──」
「大人の泣き言など聞きたくないわ。そんなことより、先程からおまえの後ろにおるのは何者じゃ?」
「私の後ろになど誰も、えっ? ま? まおーーーー!」
***
「おい魔王、馬車が脱輪して立ち往生しておるのじゃ。おまえは空を飛べるのじゃろう。わらわを故郷の村に連れて帰るのじゃ!」
わしは空を飛べる設定なのか?
「背中に付いておるその羽は単なる飾りか、ポコチン!」
そうか。空の旅も悪くないな。良かろう。後ろから抱えるから暴れるでないぞ。
「えへへ」
「聖女様、聖女様?」
***
「わあぁ、魔王、魔王、あの山の向こうには何があるのじゃろう、もっと高く飛べるか? やってみてくれ、ふぁあ、気持ちいいのう、魔王、見て見て、湖があんなに小さくなってまるで水溜まりのようじゃ! 水面ギリギリを飛んでくれぬか! 水飛沫が上がるくらいにな! 魔王!」
おまえ聖女にはならんのか?
「なるものか! このまま故郷の村に帰してくれ。そして魔王、毎日わらわに会いに来てくれぬかのう」
***
「それでお前さん、その小娘をどうしたのじゃ?」
あまり面倒事は引き受けたくないしな。かと言って大聖堂に乗り込むのも憚られる。聖都の城門に括り付けて去ってきたわ。
「その結果がこれか」
恋文の山。
この状況をソフィアなら何と申すか知りたいものだ。あの娘は健勝にしておるだろうか。
「ほう。ソフィアとな。それも一興であろう。ただそうなると結論は次のエピソードに持ち越しじゃな。お前さんは取り敢えず軽くズッコケておくがよかろう」
お、おう(ズコーッ)
(つづく)
🟡1171文字
【附記】
特に続編を書くつもりはなかった。そもそも単なるノリだった。なろう系のテンプレをズラしながらコンパクトな物語を書きたいという。きっかけはmojoさんの記事「まじでどうでもいい事」だった。それがこうして続編まで生み出してしまったのだから不思議なものである。
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