【2026年7月版】国産AIって何?調べて分かった「日本のAIサービス」と「国産LLM」の違い
ChatGPT以外のAIを、私はほとんど知らなかった
生成AIを使うようになってから、ChatGPTやGeminiの名前を目にする機会は増えました。その一方で、「日本の会社が作っているAIには、どんなものがあるのだろう」と考えたとき、私はほとんど名前を挙げられませんでした。
そこで国産AIについて調べ始めたのですが、すぐに困りました。検索結果には、一般の人がブラウザやスマートフォンから使えるサービスと、企業がシステムへ組み込むLLM(大規模言語モデル)、複数のAIを一つの場所で使えるプラットフォーム(利用の土台)が一緒に並んでいたからです。
LLMとは「大規模言語モデル」の略で、大量の文章を学習し、質問に答えたり文章を作ったりするAIの「頭脳」に当たる部分です。
「国産AIを試してみたい」と思って調べているのに、結局どれを開けば使えるのかが分かりません。調べていくうちに、国産AIという言葉だけで探そうとしたこと自体が、分かりにくさの原因だったと気づきました。
この記事では、私と同じようにAIへ詳しくない人でも全体像をつかめるよう、国産AIをいくつかの種類に分けます。細かな性能を比べる記事ではなく、「自分が試したいのはどれか」を考えるための入口としてまとめました。
調べて最初に分かったのは、「国産AI」が一つではないこと
私が最初に想像していたのは、ChatGPTの日本版のようなサービスでした。しかし、調査資料や各社の公式サイトを読んでみると、「国産AI」と呼ばれているものには少なくとも次の4種類が混在しています。
日本国内で開発されたLLM
AIの頭脳そのものです。PLaMoや、後で紹介するガバメントAI「源内」の試用対象7モデルがここに当たります。
日本企業が提供するAIサービス
一般の利用者が触る検索画面、チャット画面、スマートフォンアプリなどです。Felo AI SearchやCotomoがこの例です。
複数のAIモデルを利用できる日本企業のプラットフォーム
複数のAIを一つの場所から選んだり比べたりできる「利用の土台」です。天秤AI byGMOがこの例です。
AIの処理やデータ保管を国内で行うための基盤サービス
AIを動かすサーバーやネットワークなどを企業・開発者へ提供するサービスです。さくらのAI Engineがこの例です。
この4種類は、必ず一つだけに分かれるとは限りません。たとえばPLaMo Chatは、国内で開発されたLLM「PLaMo」を、一般の人がチャット画面で試せるようにしたサービスです。つまり、1の「国内開発LLM」と2の「利用者向けサービス」の両方に関係します。
私たちが普段触っているチャット画面や検索画面は、LLMなどの頭脳を利用しやすくしたAIサービスです。プラットフォームは、複数のサービスやモデルをまとめて使える場所を指します。
さらに、企業が自社のシステムへAIを組み込むためのAPIもあります。APIとは、あるソフトウェアから別のソフトウェアの機能を呼び出すための「接続口」です。たとえば自社の問い合わせ画面から、LLMへ質問を送り、回答を受け取るときに使われます。
クラウド基盤という言葉もよく出てきます。これは、インターネット経由でサーバーや保存場所、計算処理などを利用できる土台のことです。自社で高性能なコンピューターをすべて用意しなくても、必要な分だけ借りてAIを動かせます。
同じ「国産AI」という言葉で呼ばれていても、作っているものと利用者が触るものは同じではありません。ここを分けるだけで、検索結果がかなり読みやすくなりました。
国産AIを選ぶときに確認したい4つのポイント
前の章で分けたのは、「国産AI」と呼ばれるものの種類です。ここから挙げる4点は、その中から自分に合うものを選ぶときの確認ポイントになります。
調べるうちに、私は次の4点を分けて見るようになりました。
どこの企業や組織がサービスを提供しているか
中で動いているAIモデルはどこで開発されたか
入力したデータがどこで処理・保存されるか
個人向けか、企業や開発者向けか
日本企業が提供するサービスでも、内部で海外企業のAIモデルを利用している場合があります。反対に、国内で開発されたLLMが、別の会社のプラットフォームやクラウド基盤を通じて提供される場合もあります。
データの扱いも別に確認が必要です。「日本企業のサービスだから、入力した内容も必ず日本国内だけで処理される」とは限りません。たとえばFeloは東京に本社を置く日本企業ですが、公式のクラウドサービス情報セキュリティ方針では、グローバル標準のクラウドプロバイダーを利用し、日本国内のデータは原則として国内または指定地域内のサーバーで処理・保管すると説明しています。クラウドプロバイダーとは、インターネット経由でサーバーなどの計算環境を提供する事業者のことです。このように、日本企業のサービスでも「国内だけ」と決めつけず、サービスごとの方針を確認する必要があります。
国産という表示だけで安全性や性能を決めつけるのではなく、提供会社、モデル、処理環境、利用対象を分けて確認する。この見方を持っておけば、サービス名が増えても整理しやすくなります。
初心者が今すぐ触れやすい国産AI関連サービス
ここからは、国産AIの違いを理解しやすい代表例を紹介します。すべてを網羅するのではなく、先ほどの4分類との関係が分かりやすい4つを選びました。
PLaMo Chat
PLaMo Chatでは、日本で開発されたLLMを、一般向けのチャット画面から試せます。PLaMoは、Preferred Networks(PFN)が日本国内でゼロから開発するLLMです。開発を担っていた子会社Preferred Elementsは2025年7月にPFNへ吸収合併され、現在はPFNが開発を引き継いでいます。他社のモデルを土台にしたものではなく、独自に構築した学習データと設計で開発された「純国産の基盤モデル」と公式サイトで説明されています。基盤モデルとは、チャットや文章作成など、さまざまなAIサービスの土台として使えるモデルのことです。
PLaMo Chatは、そのPLaMoを対話形式で試せる無料のデモ版です。国産LLMそのものが、どのような日本語を返すのかを試したい人には、最も分かりやすい入口の一つです。
PLaMo Chatへ入力する内容の扱いは、利用前に公式の利用条件やプライバシーポリシーを確認してください。仕事の機密情報や個人情報を入れず、まずは日常的な質問や文章作成で試すのが安全です。
Felo AI Search
Feloは、LLMそのものではなく、日本企業が提供するAIサービスです。Felo AI Searchへ質問すると、Web上の情報を探し、参照した情報源を示しながら回答をまとめます。
Feloの場合、調べものや情報整理に使う完成されたサービスと、その内部で文章を生成するモデルは別に考える必要があります。「日本企業のAIサービス」ではあっても、「国産LLMそのもの」という意味ではありません。
私は国産AIを調べ始めたとき、この二つをほぼ同じ意味だと思っていました。Feloのような例を見ると、提供企業と内部モデルを分けて確認する理由が分かりやすくなります。
Cotomo
Cotomoも日本企業が提供するAIサービスですが、Feloとは用途が違います。Cotomoは、Starley株式会社が提供する音声会話型のおしゃべりAIです。検索や文書作成ではなく、日常会話に特化しています。
ChatGPTのような文字中心のチャットだけを見ていると、生成AIは文章を作る道具だと思いがちです。Cotomoは、声、会話のテンポ、キャラクター設定などを含めた体験全体がAIサービスになることを見せてくれます。
「国産AIを使う」といっても、仕事の効率化だけが目的ではありません。音声でAIと話してみたい人にとっては、技術用語を知らなくても触れやすい入口です。
天秤AI byGMO
天秤AIは、一つのLLMではなく、複数のAIを使い比べるための場所です。天秤AI byGMOはGMO天秤AI株式会社が提供しており、複数のAIモデルを同じ画面から利用できます。同じ質問を複数モデルへ送り、回答の違いを比較できるのが特徴です。
天秤AI自体が一つの国産LLMなのではありません。OpenAI、Google、Anthropicなどの海外モデルに加え、国産LLMのPLaMoも選択肢として提供されています。
国内企業が作ったプラットフォームの中で、国内外のモデルを使い分ける。この構造を知ると、「どこのサービスか」と「どこのモデルか」を別々に見る感覚がつかみやすくなります。
残る「国内の基盤サービス」の例は、次の章で紹介する「さくらのAI Engine」です。こちらは初心者が日常会話のために使うサービスというより、企業や開発者がAIを組み込むための土台に近いため、4つの利用者向けサービスとは分けました。
その奥では、企業向けの国産LLMも開発されている
私たちがブラウザやアプリで触れるサービスの奥では、企業や行政が業務システムへ組み込むための国産LLMも開発されています。
ガバメントAI「源内」と7つのLLMの関係
ガバメントAI「源内(げんない)」は、一つのLLMの名前ではありません。デジタル庁が内製、つまり外部へすべて任せず組織内で開発した、政府職員向けの「生成AI利用環境」のプロジェクト名です。
源内には、職員が生成AIへ質問できる対話型の使い方に加え、国会答弁の検索や法制度の調査を支援する複数のアプリケーションがあります。一般向けのChatGPTと同じサービスではありませんが、「画面からAIへ指示し、文章や情報整理の支援を受ける」という点では、チャット型AIに近い使い方も含む環境だと考えると分かりやすいです。
その源内で、回答を考える頭脳の候補として試用されるのが、デジタル庁が選定した7つの国内LLMです。源内が「職員がAIを使うための場所やアプリケーション」、LLMが「入力を読み、回答を生成する頭脳」という関係です。
2026年3月、デジタル庁は15件の応募から7モデルを選定しました。
選定されたからといって、7モデルすべての本格採用が決まったわけではありません。デジタル庁の公募結果によると、契約と技術調整を経たモデルを2026年8月頃から源内で試用し、行政実務での使いやすさや課題を評価する予定です。
これらのLLMは、職員向けの対話型AIで使うほか、行政実務に特化したAIアプリへ組み込むことも想定されています。モデルを組み込むとは、LLMだけを直接操作するのではなく、文書作成や検索などの業務用画面の裏側で頭脳として動かすことです。
国内でAIを動かす基盤
企業・開発者向けの基盤も、ブラウザから試せる形が出てきています。さくらインターネットの「さくらのAI Engine」は、国内のクラウド基盤から複数のAIモデルを利用するためのサービスです。
AI Engineでは、APIを通じて自社サービスへAIを組み込めます。また、ブラウザ上でモデルの応答を試せるPlayground機能も用意されています。Playgroundとは、本格的にシステムへ組み込む前に、画面上でAIの応答を試すための実験場所です。
国産AIを調べて企業向けの説明ばかり出てきても、調べ方が間違っているわけではありません。個人向けサービスとは別の層を見ていると分かれば、必要以上に難しく感じずに済みます。
2026年7月25日時点:この記事で確認した主な国産AI関連一覧
ここまでに登場したサービス、利用環境、LLMを種類ごとにまとめました。「国産AIの全製品を網羅した一覧」ではなく、今回の調査で、違いを理解するために確認した主な例です。
今すぐ試しやすいサービス
PLaMo Chat(対話型AIサービス/国内開発LLM):国内開発LLM「PLaMo」をチャット画面で試せる無料デモ
Felo AI Search(AI検索サービス):Webを検索し、情報源を示しながら回答を整理する日本企業のサービス
Cotomo(音声会話AIサービス):音声による日常会話に特化したスマートフォン向けサービス
天秤AI byGMO(複数モデル比較プラットフォーム):国内外の複数AIモデルへ同じ質問を送り、回答を比較できる
政府職員がAIを使うための環境
ガバメントAI「源内」(政府職員向け生成AI利用環境):対話型の利用や行政実務を支援する複数のアプリを提供する。単独のLLM名ではない
源内で試用予定の国内LLM
以下は、デジタル庁の公募結果で選定された7モデルです。
初学者の段階では、7つの名前をすべて覚える必要はありません。ここでは、源内という利用環境の中で、複数の国内LLMが頭脳候補として試される点だけ押さえれば十分です。
tsuzumi 2(NTTデータ):AIの計算を得意とする半導体「GPU」1基でも動かせる軽量設計と、日本語処理を重視したモデル
CC Gov-LLM(カスタマークラウド):行政実務での評価対象として選定された政府向けモデル
Llama-3.1-ELYZA-JP-70B(KDDI・ELYZA共同応募体):海外のLlama 3.1を土台に、日本語能力を強化したモデル
Sarashina2 mini(ソフトバンク):日本語処理を重視し、APIでシステムへ組み込めるモデル。Sarashina APIはCloud PF Type AのSarashinaサービスへ順次統合中
cotomi v3(NEC):長い業務文書の処理や、業務システムとの連携を想定したモデル
Takane 32B(富士通):企業での業務利用と日本語処理を重視したモデル
PLaMo 2.0 Prime(Preferred Networks):国内で開発されたPLaMoシリーズの企業・行政向けモデル
国内でAIを動かすための基盤
さくらのAI Engine(AI基盤サービス):国内のクラウド基盤上で、APIやPlaygroundから複数のモデルを利用できる企業・開発者向けサービス
一覧にしてみると、「今すぐ画面を開いて使うサービス」と「サービスの中で動く頭脳」、「複数の頭脳を使う場所」、「AIを国内で動かす基盤」が別物だと分かります。国産AIを探すときは、自分がどの種類を探しているのかを先に決めた方が迷いにくそうです。
海外AIか国産AIかではなく、目的から選ぶ
国産AIについて調べると、海外AIとの性能比較が気になります。しかし、初めて試す段階では、どちらが上かを決めるよりも、何をしたいかを先に考えた方が選びやすくなります。
文章作成や幅広い相談をしたいなら、普段使っているChatGPTやGeminiがそのまま便利な場合もあります。国産LLMの日本語を試したいならPLaMo Chat、出典を見ながら調べものをしたいならFelo、音声会話ならCotomo、複数モデルの回答を比べたいなら天秤AIというように、入口は目的によって変わります。
会社の機密情報を扱う、データを国内で処理したい、自社システムへ組み込みたいという段階になると、サービスの便利さだけでなく、契約、データの保存場所、学習への利用、運用環境まで確認する必要があります。そこでは、国産LLMや国内クラウド基盤の意味が大きくなります。
調べる前は、「国産かどうか」が最初の判断基準になると思っていました。実際には、先に目的と条件を分け、その条件に合うものを探した方が選びやすくなります。
まずは「国産か」より、何を試したいかを決める
国産AIを調べる前の私は、国内企業が作ったChatGPTのようなものを探していました。実際には、国内で開発されたLLM、日本企業のAIサービス、複数モデルを扱うプラットフォーム、国内でAIを動かすための基盤があり、それぞれ役割が違いました。
最初からすべてを理解したり、すべてのサービスへ登録したりする必要はありません。気になるサービスを一つ選び、機密情報や個人情報を入れずに、日常的な質問を一つ試してみる。たとえば、「卵とキャベツで作れる夕食を考えて」のような質問です。最初の一歩はそれで十分です。
実際に画面を開いてみると、自分がAIへ何を期待しているのかも見えやすくなります。そのあとで、モデルやデータの扱いまで一段ずつ調べていけば、「国産AI」という大きな言葉に迷わず、自分に合うサービスを選びやすくなるはずです。
※サービス内容や利用条件は変更される可能性があります。本記事の情報は2026年7月25日時点で、各社の公式情報を確認してまとめています。
