神話が導いた地、伊勢へ
「この美しい国、伊勢の地に鎮まりたい。」
天照大御神からのお告げ。
神の御心を受けながら、人の世界で、
神に仕える役目を担う、御杖代(みつえしろ)の
倭姫命(やまとひめのみこと)。
姫命の天照大御神を祀る「ふさわしい場所」を探す。
その長い旅の末に、選ばれたのが、伊勢でした。
天照大御神
日本神話に登場する、太陽を象徴する神様で、
神々が暮らすとされる高天原の主宰神でもあります。
しかし、その姿は、ただ光を与えるだけの存在ではありません。
「偉い神様」だけではなく、
神話の中では、弟の須佐之男命との争いから
天岩戸に隠れてしまうという、人間味のある一面も。
闇に閉ざされた世界へ、再び光を取り戻した、
命と再生を象徴する神様でもあります。
そして、
天照大御神の孫にあたる、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が地上へ降り、
その子孫が、初代天皇の神武天皇に、つながるとされています。
伊勢神宮は、単なる神社ではなく、
日本の国の始まりの物語と、結びついた場所。
さらに、
昔の人にとって太陽は、命そのものでした。
光があるから、作物が育つ。
季節が巡る。
命が育まれる。
太陽を象徴する天照大御神を祀ることは、
単なる神様へのお願いだけではなく、
「命を与えてくれる、自然への感謝」
だったのではないでしょうか。
昔の人にとって聖地は、最初からそこにあるだけでなく、
姫命の旅のように、
歩いて、探して、たどり着いた場所。
だからこそ、伊勢は、
「選ばれた場所」であると同時に、
「たどり着く場所」でもあるのです。
かつて人々は、何日も、時には何週間もかけて、伊勢を目指しました。
それは、ただ、神社へお参りするためではなく、
神話と祈りに触れる旅だったのかもしれません。
神話と祈りの心は、二千年以上にわたり、
建物とともに、人々の手で守られ、受け継がれてきました。
伊勢が「日本人の心のふるさと」と呼ばれ続けている理由も、
そこにあるのかもしれません。
五十鈴川に架かる、優美な反りを描く宇治橋。
玉砂利の道から、森に入って行く。
神話は、昔話ではなく、
伊勢では、人々の暮らしの中に静かに息づき、
今も物語は、続いている。
そんな気がしてなりません。

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