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そらの段ボールの正体

最近、読み間違いが多い。

本屋のアルバイトでは、出勤したらまず連絡ノートに書かれた業務連絡を社員の前で読み上げる。
ノートにはジャポニカの自由帳が採用されている。

この前、
1日いちにち ジャニーズのカレンダーがでます。
売り場は〇〇です」

と音読した。

1日ジャニーズってなんだろう。

職場体験で1dayアイドル?単発バイト?
それで、その人たちでカレンダーまで発売したのか、と感心していたら、社員に

「それ、旧ジャニーズだよ」

と、指摘を受けた。
横書きだったので、旧が1日に見えていた。

「読むの緊張してたのかな?」
と、お母さんキャラ社員がフォローしてくれたが、こんなミスは通常運転だなんて言えない。

私の間違いを指摘してくれる社員にあたれば
その場で気づけるから良いのだが、
あえて指摘しないでくれる社員もいる。
どちらも優しさだ。だが、指摘されなかった場合、
私は何の連絡なのかわからないまま、業務に挑むことになる。

「氷漬けになった何とかを動かしていくように」という連絡の意味もいまだに分からないままだ。
本屋なので、絶対に合っていない気がする。
まぁ、「やってないじゃないか」と怒られては
いないので、誰かが氷漬けにしてくれたんだろう。何かを。

先週もアルバイトがあったので、また私は
ジャポニカ学習帳を開いていた。
まず、一行目。
つっかえることなくスラスラと、

「そらの段ボールを〇〇に集めて置いてあります」

と読んだ。
漢字で「空」と書いてあった。

ん?そらの段ボール?
ここはファンタジー?
小説ばかり読んでいるからこんなことになるのだ。
文芸部の弊害。ファンタジーな漢字には強いが、
実用的な漢字には弱い。

よし。今度こそ間違えずに2行目を読もう。
あぁ、また空が出てきている。
「そら」じゃなくて、えっと……。何だっけ。
多分そらではない。
考えろ、考えろ。突然頭に浮かんだのは、
この前見た金曜ロードショーの
「天空の城ラピュタ」。

「段ボールに、くう と書いてあるので、確認して、書いてあったらゴミ置き場にまとめてしまって大丈夫です」

か細い声で、くぅ、と言ってみた。
できるだけ可愛く言うことを意識したが、社員は
笑ってくれなかった。

どうせ間違っている。分かっている。分かっているのだが、本当の読み方が思い出せないまま、3行目がやってくる。また、空の漢字がある。
どうして今日はこんなに空という字が出てくるんだろうか。今まで一度もこの自由帳に出てきたことがなかったのに。

「……くう と書いていないものは、まだ使うかもしれないので取っておいてください」

また、くぅとよんだ。

「はい。今日もよろしくお願いします」
と言われた。
指摘されなかった。

その後も考えたが、「空」の読み方が思い出せず、レジ打ちをしているうちにそんなことは忘れた。

翌週。
また、読み聞かせの時間がやってきた。
私は震えながら連絡ノートを開く。
今日も出てきた、くぅ。しかし、今日は

から の段ボールを捨ててくださった方、ありがとうございました」

と書いてあった。
ご丁寧に、空の漢字に「から」とふりがなが振ってあった。
そうだ。から、だ。

スッキリした。今回は堂々と音読できた。
やっぱり優しい社員さん。
読み仮名を振ってくれてありがとう。

アルバイトをしていてよかった。
くうくう、と言う大人にならなくて、本当によかった。


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