すべてのものが、楽器になるー東大アルスノーヴァ《楽器術》トレイラーで過ごした日曜日
こんにちは。コラボレーターのいたやゆかりです。
銀杏並木を歩いて、東京大学のキャンパスへ
週末、東大アルスノーヴァの《楽器術》トレイラー第3弾に参加してきました。
楽器や楽器に近いものをつくっている方々がゲストとして作品を持ち寄り、一緒に見て、話して、聞いて、聴いて、可能なら鳴らして楽しむイベントです。
この《楽器術》というカリキュラムが掲げているのは、下記のようなことだそうです。
音を鳴らし、空間や時間を操ること。パフォーマンスを目的として楽器を制作すること。そして—すべてのものが楽器(インストゥルメント)である、という認識を広げること。
身の回りの素材も電子工作も使いながら手を動かし、モノと自分の関わり方を観察する。さらには建築や土地といった環境までも楽器とみなして、スケールを超えた創造力へ。
正直、最初は言葉の意味がよくわからなかったのですが、見たことのない景色と音が突如として出現していました。







見たことのない「楽器」たち
そこには、「楽器」と呼んでいいのかわからないものが、たくさん並んでいました。
竹がひとりでに動いている。子どもが歩く練習に使うカタカタ—を転がすと、ギターが鳴る。
磁石で動く何か。タッチパッドに触れると音が変形する。場所を光で照らすと、そのセンシングで音が生まれる。
ドラム缶とシンバルと自転車の車輪を組み合わせた、巨大な打楽器の乗り物。ガムランの鐘のようなものが乗った手押し車。3Dプリンターでピアノをつくった、という話も聞きました。
《楽器術》講師でサウンドアーティストの西原尚さん(アルスノーヴァ特任助教)、電子楽器制作者の斉田一樹さん。そしてリスナーとして、「クリティカル・オルガノロジスト」という肩書きを持つ中井悠さん(アルスノーヴァディレクター)。
ほかにも美術家、音楽家、エンジニア、"不思議美術家"—専門も入口も違う人たちが、それぞれの作品を持ち寄って、この場をつくっていました。
そして何より印象に残ったことは言葉がなくても、みんなでコラボレーションが始まることでした。誰かが何かを叩く。誰かが音を出す。誰かが声を発する。楽器というものを介して、初対面の人同士が向き合い、セッションのようなものが始まっていく。
実際に、見知らぬ人同士で会話や交流が生まれる場面もありました。
太陽が昇る瞬間の音の話や、海外のラジオを聴く話など、今回のテーマがなかったら話題に上がらないようなことを聞く機会がありました。
この場に集っている人はそれぞれの興味・関心や好奇心の強い人が多いんだろうなぁという印象を持ちました。
それと同時に、「さまざまな人が共通体験を通して割と自由に開かれた場で集う」というのは、私がずっとやってきたことともしかしたら近いかもしれないと思いました。
思い出したこと
音を出しながら、ふと思い出したことがあります。昔、海を見ながら歌ったこと。いろんなものを叩いて音を出して遊んだこと。三重県での海。海浜幕張での海。さまざまな断片的な記憶。
音の長さ、時間、空間、音の聞こえる範囲—楽器を演奏するとは、そういうものすべてに触れることだったなあ、と。
途中で立ち寄ったのは、KOMCEE WEST地下のカフェ「KOMOREBI」。休みの日なのに特別に開いていて、KOMABA Fruity 2.0というこだわりのコーヒーがおいしいとのこと。
楽器の近くには新書の専門書がたくさん置いてあって、『プラスチックはなぜ清潔に感じられるのか』という感覚史の本や、『修理する権利』という本をぱらぱらと読みました。
デパートについての本もありました。そういえば、祖母の妹はデパートのエレベーターガールだったなあ、曽祖母は大正デモクラシーの時代、京都の大丸でデパートガールとして働くモダンガールだったと聞いたなあ、と。
本をめくりながら、自分の家族の記憶まで手繰り寄せられていく。
すごく自由で、豊かな休日でした。
「むすひ」と、これから
私は子どもの頃から、人と人、人とまちをつなぐ活動をしてきました。
銀行員から、NPOの立ち上げ、地域のデザイン、フェスティバルの主宰まで。その全部に通底するものに、最近「むすひ(産霊)」という名前をつけました。異なるものが結ばれて、新しいいのちが生まれること。
拡張楽器の場で起きていたことは、まさにそれでした。モノと人が結ばれて、音になる。人と人が音で結ばれて、場になる。土地や建築までもが楽器になるのなら、私がやってきた「まちをつなぐ」ことも、ひとつの演奏と捉えることができるのかもしれません。
本日訪れた渋谷の100BANCHで開催されていたナナナナ祭2026というイベント。渋谷リバーストリートの路上に、サーカスがあり、DJやゲストトークがあり、流しそうめんパーティーまでありました。
幼稚園時代の同級生や、一緒に様々なフェスを創ってきた仲間、飲食店で店長をしているテンチョーズの仲間。webサイトの制作などでお世話になっている人もいれば、初対面の方にも出会いました。様々な取り組みを紹介してもらいながら有意義な時間を過ごしました。
試みも想いも異なる人たちがひとつの場所に集まっている、そのこと自体が、すでに演奏のようでした。
楽器を鳴らすことだけが演奏ではない。まちも、祭りも、人の集いも—広い意味での「演奏」について考える、豊かな機会になりました。
アルスノーヴァへは今週末も訪れます。
それでは、味わい深く素敵な日々をお過ごしください。
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