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似合うかどうかは、着てみないとわからない|“正解の一着”は、変わっていく

お店で、一着の服を手に取る。

似合うだろうか。
浮かないだろうか。
着られるだろうか。

ハンガーにかけたまま、
体の前にあてて、
鏡の中の自分を、しばらく見つめる。

「いいかも」
「やっぱり違うかも」

頭の中だけで、
何度も着ては脱いでとイメージをくり返す。

そんなことはありませんか?


でも、本当のところは、
まだ何もわかっていません。

なぜなら、まだ、
一度も袖を通していないから。

似合うかどうかは、
着てみないとわからない。

当たり前のようでいて、
私たちが日々、忘れてしまいやすいことです。

サイズ。
色。
レビューの星の数。

それらは参考になります。
ヒントにもなります。

でも、その服が「あなたに」似合うかどうかは、
どこにも書いてありません。

それは、あなたの肩の線や、
肌の色や、
その日の気分の上にしか、
立ち上がってこないものだから。

試着室の鏡の前で、
はじめて、

「あ、思ったより似合う」
「うーん、なんか違う」

が、実感としてわかる。

それまでは、
どれだけ眺めても“予想”のままです。


そして、もうひとつ。

似合うものは、
ずっと同じではありません。

たとえば、40代になって。

昔から好きだった形。
ずっと“私の定番”だったはずの一着。

久しぶりに袖を通してみたら、
なんだか、しっくりこない。

年齢を重ね、体型が少し変わったり、
肌色が変化すれば、似合う色が移ろぐかもしれない。

昔は心地よかった丈やラインに、
今は、ほんの少し違和感を覚える。

それは、あなたが衰えたとか、いい悪いではなくて、
人も含め、何事も変化するもの。

私たちもまた、身体的にも、感覚的にも、変化が生じます。
それはとても自然なことです。

“似合う”は、止まっていません。
あなたと一緒に、変わっていくもの。


大切なことは、

“正解の一着”は、
一度見つけたら終わり、ではない。

昔の正解が、
今の正解とは限らない。

ということ。


だとしたら、
答えは「探して、確定させる」ものではなく、

その時々の自分に、
「合わせていく」ものなのだと感じます。

そして、合っているかどうかは、
やっぱり、着てみないとわからない。

過去の答えを握りしめて
鏡の前で立ちすくむより、

今の自分で、
もう一度、袖を通してみる。


人生も、よく似ています。

これから始めようとしていること。

向いているだろうか。
うまくいくだろうか。
私にできるだろうか。

着る前から、
鏡の前で立ちすくんでしまう。

しかも厄介なことに、
昔うまくいったやり方が、
今の自分に、今の時代に、合うとは限らない。

以前の“正解”を、
そのまま着続けようとして、
どこか窮屈なまま、無理をしている。

なんてことも起こります。

正解を、先に確定させたくなる。

その気持ちは、とても自然です。

“正解を先に知りたい”の奥には、たいてい、
「傷つきたくない」というこころがあるから。

似合わなかったらどうしよう。
後悔したくない。

だから私たちは、
着る前に、答えを決めてしまいたくなる。

でも、ここに小さなねじれがあります。

着てみないと似合うかどうかはわからないのに、
似合うとわかってからでないと着たくない。

しかも、その“似合う”は、変わっていく。

これでは、永遠に袖を通せません。

正解を求めて立ち止まるほど、
答えは、するりと遠ざかっていく。

それは、その服が悪いからでも、
あなたの選ぶ目がないからでもなくて、

ただ、
“今の自分で着てみる”という一歩を、
まだ通っていないだけ。

似合う・似合わないは、
ジャッジではありません。

それは、
今のあなたと、その服との「相性」の話です。

着てみて、しっくりこなかったとしても、
それは失敗ではありません。

「この形は、今の私には合わなかった」
という、ひとつの確かな手ざわりが残る。

その手ざわりが積み重なって、
“今の自分に似合うもの”の感覚が、
そのつど、更新されていきます。

似合う服を、
最初からずっと知っている人なんていません。

みんな、着て、脱いで、
鏡を見て、また着て。

変わっていく自分の輪郭を、
そのたびに、確かめ直していく。

もしも今、
鏡の前で動けなくなっているのなら。

“いつか見つけた正解”を探しにいくのを、
少しだけ脇に置いて、

「今の自分で、とりあえず袖を通してみる」
でいいのだと思います。

似合うかどうかは、
そのあとで、こころが教えてくれます。

変わっていく自分に似合うものを知る方法は、
ただひとつ。

正解を探し続けることではなく、
その都度、着てみること。

その一歩が、
“今のあなたの似合う”を、
ひとつ、新しくしてくれます。


「正解を探すより、今の自分で動いてみる」。
そんなテーマを、別の角度からも綴っています。
今のあなたに、しっくりくる一歩が見つかりますように。


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美結(みゆ)|“目に見えない関係性”を読み解く人 応援、ありがとうございます。いただいたチップは、執筆や対話・探究を続けるための活動費に使わせていただきます。