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「私の催時記」 VOL.5 2022年 句集

「失い、つなぎ直す日常」

2022年は、静かに日常を取り戻していく一年であった。
長く続いた制限の中で、当たり前であった暮らしの輪郭は少しずつ変わり、
人と会うこと、外に出ること、その一つひとつの意味を改めて考えるようになった。

年の初めには、新たな学びと歩み直しの決意があり、
春には、旅や家族との時間の中で、つながりの確かさを感じた。
一方で、長く寄り添った命との別れがあり、
夏には初めてコロナに向き合うこととなる。
思うように進めない時間の中で、
「日常」とは何かを、何度も問い直す日々であった。

それでも、季節は巡り、やがて外の空気を取り戻す。
秋には再び人と会い、学び、語らい、
少しずつ社会とのつながりを結び直していった。

振り返れば、
特別な出来事ではなく、
何気ない日々のひとつひとつが、
確かに生きている証として積み重なっていた。
失い、立ち止まり、それでもまた歩き出す。
その繰り返しの中に、
2022年という時間は、静かに刻まれている。


第1章|日常の再起

孫に会う 成人の日の プレゼント

2022-01-10

成人の日、腕の中のぬくもりに時間の重なりを感じる
小さき命の確かさが、これからの歳月を静かに照らしていた


月冴えて ルーキーデビュー 夢叶う

2022-01-18

同年代の求職者が人生の後半で迎えた新たなスタート
冷えた夜空の月のように、澄んだ気持ちで一歩を踏み出す
遅すぎることなど何もないと知る


年金の ルビコン渡る 息白し

2022-01-22

制度の向こう側へ足を踏み入れる日
白い息が現実の輪郭をくっきりと浮かび上がらせる
これもまた人生の節目である


やがて雪 街にも降りるか 感謝の日

2022-01-25

静かに迎えた63回目の誕生日
これまで出会ってきた人々の顔がふと浮かぶ
積み重ねてきた日々が、雪の予感のように心に降りてくる


春立ちて キャリアの学び また一歩

2022-02-06

学び直しは過去の延長ではなく、未来への選択だと気づく
新しい季節とともに、もう一度自分を更新していく


第2章|つながりと別れ

涙雨水 モモ安らかに 見送りぬ

2022-02-20

長く寄り添った命との別れ
言葉にすれば簡単だが、その静けさの中に積もった時間は深い
雨は涙の代わりに降り続いていた
受け継いだ命が健やかに育ってほしい


通勤路 操の桜に 日は巡る

2022-03-03

通勤時の車窓から眺める早咲きの「大宮操の桜」
日常は止まっていたようで、確かに巡っている
歩み続けることでしか見えない景色がある


学舎の 時止まる春 十一年

2022-03-11

東日本大震災から丸十一年、あの日から流れた年月
止まったままの時間と、進み続ける日々の間で、春は変わらず訪れる


オーダーコール 気づくテラスの 長閑なり

2022-03-22

カフェのテラス席、ふとした瞬間に気づく穏やかな時間。
騒がしさの中にも、静けさは確かに存在していた


はな回廊 柿の木坂から 碑文谷へ

2022-03-28

緑道を歩くことでつながる景色
花はただ咲いているだけなのに、人の心を動かす力を持っている


夫婦して 春暖の古都 巡る旅

2022-04-06

コロナからの解放
長く共に歩んできた時間が、古都の街で静かに放たれていく
言葉にしなくても伝わるものがある


枝垂れ桜 平安の世を 呼び起こし

2022-04-06

平安神宮内庭に時を越えて咲く花
変わらない美しさに、歴史の奥行きを感じる


上千本 汗して景観 見下ろせり

2022-04-07

 三十年ぶりに訪れる吉野桜
登った先に広がる景色は、努力の分だけ鮮やかだ
身体の疲れが心地よく変わる瞬間


花篝(はなかがり) 思い出に感謝 浪速の夜

2022-04-07

水の都、旅の終わりに灯る光
再び巡り合えた懐かしの味
過去と現在が重なり、静かな満足が胸に広がる


第3章|試練と回復

在宅明け 紫陽花ライン 迎えたり

2022-06-04

久しぶりの出勤
車窓から眺める湘南新宿紫陽花ラインの景色
季節は変わらず進み、迎え入れてくれる


梅雨の餉や お口に合うかな リアクション

2022-06-07

小さな命との時間
何気ない仕草ひとつに、未来が宿っている


BA.5 ステルス襲来 熱帯夜

2022-07-29

突然襲ってくる非日常
身体の異変が現実を引き寄せる
コロナという見えざる敵との戦い


処方薬 文月みそかに 効能す

2022-07-31

回復は静かに訪れる
確かな手応えが、日常への扉を少しずつ開いていく


蝉時雨 療養明けの 散歩道

2022-08-08

自宅療養からの解放
久しぶりに感じる外の空気
音も光も、すべてが鮮やかに戻ってくる


第4章|再接続

記念日は 十三夜月に 見守られ

2022-10-10

 三十八回目の結婚記念日、節目の日に浮かぶ月
変わらぬ存在が心を落ち着かせる


手帳買う 七冊目の道 なぞりつつ

2022-10-21

キャリアコンサルタントとして、積み重ねてきた時間を手でなぞる
未来は過去の延長線上にある


秋深し 学生時代に 戻る街

2022-10-30

高田馬場の街に立つと、学生時代の空気がふとよみがえる
これからの歩みへとつながる、小さくも確かな一歩


孫と祝う 妻誕生日の 星月夜

2022-11-10

家族という輪が広がっていく
新しい形の幸せがそこにある


時移り 友との再会 落葉路

2022-12-11

三年ぶりの大学ゼミ同期会
時間は離れても、つながりは消えない
再会はその証のようなもの


再会の 思ひ出胸に 年送る

2022-12-31

一年を振り返れば、別れも出会いもすべてが今につながっている
静かに整った心で、新しい年を迎える


「私の催時記」VOL.5 2022年 句集
Sunday,May 17,2026

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