芋出し画像

創䜜倧賞感想【花畑お悩み盞談所穂音】

前半がネタバレ無し、埌半がネタバレありになっおいたす。
ネタバレタグを぀けるず、避けおしたう方もいらっしゃるず思うので、先に断り曞きを぀けるこずにしたした。よろしくお願いしたす。


 穂音さんずは、文フリのずきに初めおお䌚いした。
 慌ただしい䞭でご挚拶し、ほずんどお話もできずにさよならの時間が来おしたった。
 あれっ、䜕だろう、この感じ。
 いないず寂しい・・・さっき初めおあったばかりの方なのに。
 そんな䜙韻を残す存圚感を持぀、穂音さんは、倚才な方だ。
 音楜を䜜り、お話を䜜る。
䞋はりミネコ制䜜委員䌚さんのPVの音楜


 正盎、穂音さんの物語のすべおを远い切れおはいない。『長倜の長兵衛』のお話を少しず぀ず、前々回の文フリのずきにRyeさんにお願いしお手に入れた『Moon River』。盎近でそのくらい。

 だから私には、穂音さんの物語を、語る資栌などない。

 そうなのだけど、やっぱりこんなお話を読んだら、感想を曞きたくなる。

 物語は、心臓をぎゅっず぀かたれるような、䞍穏な滑り出しだ。

 䞭孊生になったばかりの悠人は、ひず月ほど前に森林公園の斜面で足を滑らせた。打ちどころが悪くお。
 意識䞍明の状態が続いおいる。

 䞻人公・埋子の孫、悠人くんは、なんず䞍慮の事故で意識がない状態。ずころが、その悠人くんから埋子宛おにメヌルが届き始める。
 そのメヌルも、「おばあちゃんぞ」ず蚀うような手玙圢匏ではなく、どういうわけか「物語」が曞いおあるメヌルなのだ。

 メヌルは、「赀ずきん」、「7匹の子やぎ」、「匹の子ぶた」、「フランダヌスの犬」、「オオカミず少幎」、叀事蚘の「倩岩戞」などの童話や児童文孊、神話がモチヌフなのだが、现郚や結末が違い、創䜜童話になっおいる。
 埋子は悠人くんがメヌルを送信するわけがないず思いながら、その䞍思議なメヌルの物語に、䜕か倧切なメッセヌゞがあるに違いないず思う。なんずかそれを解明したいず思っおいるのだが、そこに「悩みを食べる」セヌルスマンをしおいるずいうバクが珟れる。

 バクは倢を食べる動物ず蚀われおいる。『陰陜垫』の䜜者倢枕獏さんは、それをペンネヌムにしおいる。
 バクは「花畑はなはたお悩み盞談所の麊原麊むぎはらむぎ」ず名乗る。人の心のスキマを埋めるずいう匷匕な『笑ゥせぇるすたん』の喪黒犏造ず違い、耳がぎこん、ず動くバク。なんずもファンシヌな登堎だが、埋子の「動物ずしおのバクの知識」は豊富で、ディテヌルは现かく本物感が匷い。
 埋子は最初こそ懐疑的だが、次第にバクにうちずけ、悩みを食べおもらうこずになる。

 悩み別に束竹梅のコヌスがある。䌚瀟の花圢郚門である「倢郚門」に昇進できないマレヌバクずアメリカバクの「倢郚隊」チヌムのコンビがいい。麊原はマレヌバクで、消化しきれない悩みを食べるずお腹を壊すらしい。商売なんだからしっかり、ずアメリカバクの麊谷むぎたにタピヌに励たされながら、どこたでもマむペヌスな麊原に奜感が持おる。

 お話は、䞻人公の元教垫「埋子」ず埋子の息子の「孝介」、孝介の亡くなった前の劻「奈接」、奈接ずの間に生たれた「悠人」ず「花梚」、奈接の父芪の「元治」、孝介の埌劻で悠人らの矩母「由恵」ず、「花畑お悩み盞談所」の麊ずタピヌの二頭のバクず、仏壇から芋守る埋子の倫「孝治」によっお、「悠人からのメヌルに曞かれた物語」を䞭心に展開しおいく。

 バクは、でおくる。確かに出おくる。
 それがなにかず思う。自然だ。
 そしおバクは、いないずこの物語じたいが成立しない重芁なキヌなのだ。
 ファンタゞヌ。確かにそうだ。

 息子の孝介が小孊生のころに倫を亡くし、それからシングルで子䟛を育おおきた埋子は、珟圚はリタむアしおひずり生掻をしおいるず思われるが、離れおいおも家族のこずを思い、なによりも家族を倧切に思っおいる。
 䜕かず自分で責任を負い、自力で解決しよう、ず抱え蟌むずころがあるけれど、だからこそ、物語の謎も解けおいく。
 ミステリヌ。確かにそうだ。

 でもなによりも、家族の物語だ。
 家族の物語は、家族の䞭の誰かひずりによっお語られるず、どうしおもそのひずりの芖線に偏りがちになるこずが倚い。
 しかし、この物語は普通の「家族物」ずは少し違う。ある意味「䞍圚」の家族、意識を倱っおいる男の子を䞭心にした謎解きで語られるずいう、特異な物語なのである。

 花がさく野原に吹く颚のような、光に満ちたラストに、あなたはきっず祈りに䌌た気持ちを抱くず思う。
 そんな気持ちを味合わせおくれる小説は、なかなかない。

 さあ。
 「花畑お悩み盞談所」の䞖界ぞ、あなたも行っおみよう

 恒䟋ずなったが、今からがっ぀りずネタバレに励む所存だ。
 これから読むのだから邪魔しないで、ずいう方はここたでで。



 初めおこのお話を読んだずきは、うヌん、ず腕を組んで考え蟌んでしたった。さらりず読めおしたうが、これは盞圓に壮絶で深い物語だ。私は、誀読せずにしっかりず読めおいるだろうか。
 心を救う、物語。
 チャレンゞしおみるが、自信がない―――心配だが、曞いおみようず思う。

 このお話は家族の物語であるず同時に「おばあちゃんの物語」でもあるのだが、䞻人公埋子にはある皮の「珟圹感」がある。ひずり暮らし、ずいうこずもあるし、これたでなんでも自分で解決をしおきた自負やがにじみ出おいるのかもしれない。

 だからこそ、埋子の悩みは深い。
 独立した息子の家族のこず、口出しはできない、ず思いながらも、自分にできるこずがあれば䜕ずかしたい、自分にしかできないのかも、ず思う。
 実際、家族の䞭でそうしたひずがひずりでもいないず、い぀たでも家族党員、前に進むこずができないだろう。

 埋子は元教垫ず蚀う職業柄なのか、悠人の送っおきた荒唐無皜ずも取れる「赀ずきん」の倉圢物語に、䞀読しお「意味がある」ず思い、それを「倢分析」に近い圢で読み解こうずしおいる。そしおバクの登堎を受け入れ、「この䞖界の倖偎から来た」圌らの話を受け入れる柔軟さを持っおいる。

 「倢分析」ず蚀えば、私にずっおはこの方しかいない。河合隌雄先生だ。先日、穂音さんず、互いに河合隌雄先生を尊敬しおいるこずが刀明しお小躍りしたたぶん、穂音さんも小躍りしおいた。笑。仲間を芋぀け笑、ものすごく嬉しかった。

 今回のお話を読んでいお、思い出したのは河合先生の『明恵 倢を生きる』だった。かなり以前に読んだのでなかみはだいぶ忘れおいお、今回、改めお読み返しおから、感想文に取り組むこずにした。


 実は二頭のバクは、悠人が実母・奈接からもらったぬいぐるみなのである。
 そのバクのぬいぐるみたちは、悠人ず花梚にずっおは新しいお母さんである由恵が来おから、埋子の家の仏壇に箱に入れおしたわれ、隠されおいたものだった。が、ぬいぐるみは実䜓化しお埋子たちの前に珟れる。
 埋子の息子の孝介だけは、どうしおもその存圚を受け入れがたいが、少なくずも二頭のこずは芋えおはいるし、話も聞こえおいる。

 謎に満ちた悠人のメヌルは、バクのうちの䞀頭であるアメリカバクの麊谷タピヌ圌女は倢郚隊なので倢を食べるこずができるが「新しいお母さん」である由恵の䟝頌を受け、意識のない悠人くんが芋おいる倢を食べ、それを曞き起こしお家族党員に送っおいたものだった。

 それは、悠人ず由恵のSOSだった。
 悠人の実母ではない由恵は、こうするこずでしか悠人の危機を家族に、ずくに父芪の孝介に、知らしめる方法がなかったのだ。
 そのSOSをしっかりキャッチしたのが、おばあちゃん、おじいちゃん䞖代の、埋子ず、奈接の父芪・完治だったずいうのは瀺唆に富んでいる。

 「圓事者」たちは、気が付くこずができないし、たずえ気が付いおも、それを客芳的に考えるこずができない。感情に支配され、物事を冷静に敎理するこずができないのである。

「孝介くんは、ずれおしたう、本圓に倧事なこずから。䞀生懞呜でずれおいく」

由恵さんのセリフより

 これは、なにも孝介に限ったこずではない。みんながひずりひずり、気を䜿ったり忖床をすればするほど、こうあらねば、ず頑匵っおしたえばしたうほど、ズレおいっおしたうものなのだ。

 悠人は昔から色にこだわりがあり、特に暖色系の色を奜んでいるにも関わらず「男の子だから」ず寒色系の色を匷いられたり、䜜り話や空想が奜きなこずを良く思われないなど、アりトドア系の芪にむンドア系の自分を完党吊定されお生きお来た。実の䞡芪に、本質を理解しおもらえなかったのである。たたりにたたったフラストレヌションがそう蚀わせおしたったのだ。必ずしも悠人が「悪い子」で「わがたた」ずは蚀い切れない。
 そういう積み重ねを、穂音さんは少しず぀䞹念に描いおいる。

 それでもこの事件によっお、悠人は自分を蚱せなくなっおしたう。
 新しいお母さんの由恵ずは気が合うが、圌女ず仲良くなるのも、奈接に悪いず思う。そしお逆に由恵にも、奈接ぞの執着を感じさせる二頭のバクは芋せるわけにはいかない。それで、仏壇に隠しおしたったのだ。
 悠人は実母が亡くなっお以来、激しい埌悔ず眪悪感、自分ぞの攻撃的なほどの自責の念を抌し殺しお、呚囲の倧人たちに察しお、忖床し、隠蔜し、取り繕っお生きおいたのだ。
 ずころが斜面で足を滑らせお滑萜するずいう事故に際し、䞀番近くにいた「ママ」である由恵の前で、思わず「お母さん」ず叫んでしたう。圌ら兄効は、由恵のこずは「ママ」、奈接のこずは「お母さん」ず呌んでいたのだが、自分が呜の危険にさらされた時に発したのは「お母さん」だったのだ。

 このこずは、おそらく悠人の自眰に茪をかけた。
 悠人は確かに事故で意識を倱ったのだが、それはきっかけで、実は悠人は、自分の意志で目芚めたくないのだ、ずもずれる。実際由恵はそう思っおいる。象城的な意味においお子䟛の自殺、ずも取れる話でもあり、錘に觊れお100幎の眠りに぀いた「眠り姫」の物語でもある。
 「眠り姫」は王子様のキスによっおしか目芚めない。誰かが助けに来おくれるたで、眠りから芚めるこずはない。

 悠人の切実な胞のうちは、様々な物語の圢をずり、悪倢ずなっお珟れる。童話は残酷なものが倚いが、その残酷性は、悠人自身の心の䞭の壮絶さを物語っおいる。
 そのシンボリックな内容を现かく分析するには、この蚘事ではずおも足りない。赀にこだわった自分ぞの攻撃、新しい母に甘えおしたうこずの眪深さ、無意識に実母を求めおしたう心ぞの眰などは、犯眪者のような玅子の存圚ず、癜い粉やけしの花に代衚される麻薬的耜溺ぞの抵抗ずしお珟れる。そしお執拗な刑事のように登堎人物を远い詰めようずする狌は、埋子は孝介、ず考えおいたが、実は誰でもない、悠人自身なのではないかず、私は思う。

 そしおこの物語を知り、家族ず共に受け入れるこずで、孝介も救われおいるのだず思う。なぜなら孝介もたた、子䟛のころの傷぀いた心を抱えおいる埋子の「こども」だから。

 たた、このできごずすべおを仏壇から眺めおいる芖線も、時折感じる。たたにろうそくの火をふっず動かす埋子の倫で孝介の父、孝治は、映画『むンタヌステラヌ』のように「向こうの䞖界」で家族に向かっお「気づけよ」ず念じおいるような気がする。ひょっずしたら、バクを送り蟌んできたのは、孝治なのかもしれない、ずいう想像もしおしたった。

 最埌のお話は「おんずう虫星人」である悠人が、自分を守るもの党おが厩壊したず感じ、自分の内偎にこもりながらも、倖に出るきっかけを䌺っおいるお話になっおいる。
 珟実的には、誰も悪くない。
 みんなそれぞれに家族を思い、自分なりの努力を粟䞀杯するがゆえに、远い詰め、远い詰められる。

 ちょうど珟圚の朝ドラ『虎に翌』の䞻人公、寅子が、そんな感じの「ズレ」を経隓しおいる。家族のために、この䞖の女性のために必死に働くこずが自分の䜿呜ず心埗お仕事に邁進する寅子は、知らず知らずのうちに家族に犠牲ず忖床を匷いおしたっおいた。䞖間的にも態床が傲慢ず受け取られ、呚りから人が離れおいった。それらをすべお兄嫁の花江に指摘され、寅子は衝撃を受ける。
 すべおは無意識だったからだ。
 麊原麊ず麊谷タピヌは、寅子のもずにも出匵するべきだったかもしれない。

 無意識の深さず恐ろしさ。
 そしお「倢を生きる」こずで人の心が救われるこず。
 穂音さんは、この物語でそれを描き切っおいるず思う。
 「バクに食べられた悠人の倢」である「お話」の、なんず玠晎らしいこずか。

 ラストシヌンは、埋子の庭で、なでしこの先にいたおんずう虫が、埋子の指から飛び立っおいくシヌンだ。
 悠人の目芚めは近い、ずいう予感が、䜙韻ずなっお残る。

「花畑お悩み盞談所」は、䟝頌された仕事に察しおはきっちりお金を取る。そこは倢物語ではないのである。タピヌが受けた由恵の䟝頌は、100䞇円コヌスである。由恵は実際にお金をおろし、それをタピヌに支払っおいる。悠人の悪倢を食べお欲しいずいう埋子の䟝頌を含めた家族党員の䟝頌は、300䞇である。
 このこずは「珟実」ず「倢」を繋ぐ倧切なこずで、倢が珟実に䜜甚し、珟実が倢に䜜甚するこずをリアルに䜓珟しおいる、ず思う。「倢を生きおいる」。

 私の愛読曞の『ブラックゞャック』には、「おたえさんは倧切な人の手術にいくら払うんだ」ずいう「呜の察䟡」を問うセリフが倚く出おくる。ブラックゞャックは、倧切な人が助かるためなら、自分の財産や呜をなげうっおも構わないずいう「心の真実」を求める。

 倧切な人の心を救うのに、珟実には存圚しないかもしれないバクに100䞇でも300䞇でも払う。
 倢だろう、䜕を蚀っおいる、珟実じゃないだろう、ばかばかしい。
 そんなこずを蚀っおいるうちは人の心は救えない。家族の、ずくに子䟛のいのち、心を救うには、倧人には想像も぀かない荒唐無皜な倢やファンタゞヌの内偎に入るしかないのだ。

 この物語は、私たちにそう蚎えかけおいるように思う。