非モテの初デート Vol2

「それでは、近くの人と話し合ってください」

授業開始から30分ほどで早速、教授が指示を出した。


「なるほど、意見交換とシラバスに書かれていただけのことはあるな!」

俺は心の中でガッツポーズしつつ、ゆかりちゃんとまゆみちゃんと意見交換をした。

といっても、きちんとした話し合いは正味2分ほどで、残りは自己紹介やパーソナリティの話ばかりだった。


当然である。

俺にとって意見交換の場は、いわゆる意見交換の場ではなく、お互いの心理的距離を縮めるためのものである。

授業なんてそっちのけで、どうやってゆかりちゃんを口説き落とすかについてばかり考えていた。


授業が終わると、ゆかりちゃんに堂々と「一緒に帰らない?」と誘うには勇気が出なかったので、まゆみちゃんに「我々、一緒に帰るんですけど一緒に駅まで帰りませんか?」とぎこちなく声をかけた。

普通にタメで話せばいいところをしっかり敬語を用いているあたり、さすがは童貞である。


すると、「いいですよ!」

と明るい声でまゆみちゃんは返してくれた。

「よっしゃ、うまくいっった!」

俺は天にも舞い上がる気分だった。

しかし、直後、

ごめんなさい、私は友達と待ち合わせしています」

今度はゆかりちゃんの方が返してきた。

「おお、そっか」

俺は少し残念に思いながらも平然を装って、「OK」と返した。

(まあまあこんなこともあるよな、まあ、まゆみちゃんと2人で帰るわけだしそれはそれで悪くないよな)

自分に言い聞かせ、俺はまゆみちゃんに「じゃあ、帰ろう」と再び声をかけた。


まゆみちゃんは従順でいい子だった。

6階からエレベーターで帰る時にエレベーターが混んでいたので

「階段で行かない?」

「いいですね!」

こんな感じで俺の提案に対して笑顔で同意してくれるのだった。

(いいな、この子。目が大きくて可愛らしいし、優しそうだ)

その時、俺はすでにまゆみちゃんの虜になっていた。

実は女の子と2人で帰るのはこれが初めてだった。とても緊張したが、相手がまゆみちゃんで本当によかったと思う。


外を出ると、雨が降っていた。

俺は傘を持っていなかったので、

(あー、やらかした)

と思ったのだが、まゆみちゃんは何も言わず、折りたたみ傘を広げて、俺を中に入れてくれた。

俺に合わせて傘をさしてくれたまゆみちゃんには感謝しかなかった。

きっと、腕を上げ続けるのは大変だったことと思う。

「背が高いわね」

「どうも、君も高いよね」

「そうね、私164cmだから少し女子の中では高めかも」

「何かスポーツとかやっていたの?」

「バレーボールを少し」

こんな感じでぎこちないながらもなんとか会話を頑張った。

電車で帰る方面も同じだったので一緒に電車に乗った。


話を聞くと、まゆみちゃんは経済学部の学生で、住まいは銀座、百貨店でバイトをしているとのことだった。

確かに身につけているものや髪型、雰囲気や佇まいがいわゆるお嬢様のそれでとてもおしとやかに見えた。

だが、そんなお嬢様にありがちな「私は選ばれし人間よ、ひれ伏しなさい」感は全くなく、むしろ誰に対しても優しい育ちの良い子に見えた。


「じゃあ、また来週に!」

俺はそういって電車を降りた。

まゆみちゃんはマスク越しでもわかる笑顔で微笑み返してくれた。


俺はもうまゆみちゃんにときめいていた。というか、好きになっていた。

「なんていい子なんだろう、俺はこの子と結ばれたい」

本気でそう思った。

イヤホンをつけると“I was born to love you“を流し、夢見心地な気分になった。



そこからは毎週水曜日が楽しみでしかたなくなっていた。

着席して、「今日はまゆちゃんは来るかな」とそわそわし、授業開始2分前にいつも現れるまゆちゃんの顔を見た時は最高に幸せホルモンが出るのを感じた。

そして、授業が終わって2人で帰るのがいつも楽しみだった。

想像することも変わった。

それまでの俺は童貞すぎるあまり、寝ても覚めても脳裏に浮かぶのは女体や性的なことばかりだった。

だが、まゆちゃんと出会ってから俺の思考は変わった。

浮かぶのは高嶺の花子さんみたいな結婚生活だった。

朝、目を覚ましてまゆちゃんの笑顔を見ながら笑顔を返し、食パンを咥えながらスーツを着る。

こんな感じだ。

俺はまゆちゃんについては性的なことはほとんど考えなかった。

今思うと、それはときめきではなく、純粋な愛だったのかもしれない。

(ちょっとくさすぎますね)


そして、出会って2ヶ月近く経った頃、俺は思い切ってデートに誘うことにした。

バイトへ向かう前におもむろにスマホを取り出し、緊張しながらもフリック入力した。

(断られたらどうしよう、もう授業向かえないよ、、)

緊張しすぎて心臓がバクバクしたのをはっきりと覚えている。




ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!

次回はいよいよデート編に突入します!まあ、題名やデート編と言う言葉を使っている時点でネタバレしていますね笑

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それでは、また、Vol3でお会いしましょう!!






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