FRBは本当に利上げできるのか? ─ SoFi投資家が考えたい金利シナリオ
SoFiへ投資する上で、金利動向を把握することは非常に重要である。SoFi経営陣が市場予想と整合的な金利見通しを前提に事業計画を策定しているからだ。
実際、2026年第1四半期決算では、市場で年内の利下げ期待が後退したことを受け、経営陣も金利見通しを「年内据え置き」へ修正した。その結果、業績は好調だったにもかかわらず、ガイダンスの上方修正を見送る大きな要因となり、株価の大幅下落にもつながった。
現在、FedWatchでは2026年末までに追加利上げが行われる可能性を一定程度織り込んでいる。

では、市場は本当に利上げを織り込むべき状況なのだろうか。今回は、その背景を一つ一つ確認しながら考えてみたい。
<現在の市場予測>
FedWatchは市場参加者の期待を反映したものであり、将来を正確に見通すものではない。それでも、「利上げの可能性がある」と考えている投資家が多いことは事実だ。
しかし、本当にそうだろうか。利上げを正当化する材料は以前より少なくなってきているのではないだろうか。
<雇用市場は着実に落ち着いてきた>
2026年6月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は5.7万人増と、市場予想を大きく下回り、さらに過去2か月分も下方修正された。

一方、失業率は4.2%まで低下したものの、その背景には労働参加率の低下もあり、数字ほど強い内容ではない。

※2026年6月の労働参加率61.5%という数字はコロナ禍を除くと、1970年代まで遡る必要がある。
<賃金も落ち着きを取り戻している>
平均時給の伸びも前年比3.5%程度まで低下してきた。

もちろん3.5%でも完全に安心できる数字ではない。しかし、一時は5%を超える伸びが続き、「賃金インフレ」が大きなテーマとなっていたことを考えると、大きな変化である。
少なくとも、市場が最も警戒していた「人手不足 → 賃金上昇 → サービス価格上昇 → インフレ再加速」という連鎖は、弱まり始めている。
<シェルターの鈍化は続いている>
シェルターとは家賃や帰属家賃などを含む住居費であり、コアCPIの中でも最も大きな割合を占める。シェルターの前年比上昇率は以前より着実に低下しており、コアCPIを押し上げる力は少しずつ弱まってきている。

※2026年5月の3.35%は概ねコロナ以前と同水準まで下がってきている。
<サービス価格はまだ高いが...>
医療、保険、航空運賃など、一部サービス価格には依然として粘着性が残っている。

しかし、ここで重要なのはFRBが金融政策を決める際に見ている時間軸である。FRBは現在の数字だけを見て政策を決めているわけではない。半年から1年先にインフレがどう動くかを重視している。
つまり、「今後どうなるのか」の方が重要である。
雇用市場や賃金の落ち着き、シェルターの鈍化などを見る限り、インフレを押し下げる材料は少しずつ増えてきている。ここに新たな押し下げ要因が加わるとすれば、市場が現在織り込んでいる利上げシナリオにも変化が生じる可能性がある。
<ベッセント財務長官の発言が興味深い>
ここで興味深いのが、ベッセント財務長官の「レイバー・デー(9月初旬)までに全米平均ガソリン価格は3ドル近くまで下がる可能性がある」との発言だ。

もちろん、実際にそうなる保証はない。また、ガソリン価格だけでFRBの金融政策が決まるわけでもない。
しかし、雇用市場の減速や賃金上昇率の鈍化、シェルターの落ち着きなど、インフレには改善の兆しが見え始めている。ここにガソリン価格の低下が加われば、インフレ鈍化の流れがさらに強まる可能性がある。
また、米国では車が生活必需品であり、ガソリン価格は多くの家庭が日常的に目にする物価の一つである。そのため、ガソリン価格の低下は家計負担の軽減だけでなく、「インフレが落ち着いてきた」という実感にもつながりやすい。さらに、消費者心理や期待インフレ率にも影響を与えやすいと考えられている。
<利下げは2026年秋以降>
もっとも、FRBがすぐに利下げへ踏み切る可能性は高くない。
というのも、現在のFRBは、利下げとQT(量的引き締め)を組み合わせた金融政策を目指すと、私は考えているからだ。そのためには、QTをどのようなペースで進めていくのかを含め、バランスシート政策の方向性を固める必要がある。
ウォーシュ議長は6月FOMC後の記者会見で、バランスシート政策などを検討する各タスクフォースについて、「秋頃には一定の方向性が見え始め、年内には結論を出せることを期待している」と述べている。
こうしたスケジュールを踏まえると、仮にガソリン価格の低下などを背景にインフレ鈍化が続いたとしても、利下げは早くて9月、本命は10月以降になる可能性が高いと考える。
<SoFiは利下げの方が有利>
一般的に銀行は、高金利によって貸出金利が上昇するため恩恵を受けやすいと言われる。一方、高金利が長期間続けば、ローン需要は低迷しやすい。
これに対し、景気を大きく悪化させることなく利下げへ移行できれば、ローン需要の回復が期待できる。さらに、預金調達コストには低下余地が生まれる一方、QTが継続されることで長期金利が相対的に下がりにくい環境となれば、長短金利差(イールドカーブ)の正常化が進み、銀行であるSoFiにとっては利ざや改善につながる可能性がある。
また、景気後退リスクが低下すれば、信用コストの改善も期待できる。
つまり、SoFiにとって理想的なのは、
・景気が大きく悪化せず
・インフレが落ち着き
・短期金利が徐々に低下し
・長短金利差が正常化し
・ローン需要が回復する
という環境である。
さらに、利下げ局面では多くの銀行が預金金利を引き下げる可能性がある。その中で、引き続き魅力的な金利を維持できれば、相対的な競争力はさらに高まる。
もしベッセント財務長官の見立てどおりガソリン価格の低下が続くようであれば、インフレ鈍化を後押しする一つの材料となるだろう。その結果、市場が現在織り込んでいる金利見通しに変化が生じれば、SoFiにとっても追い風となる可能性が高い。
今後もFedWatchの数字だけではなく、その背景となる雇用やインフレ指標、そしてガソリン価格の動向を引き続き注視していきたい。
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