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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.60「爆ぜるずいうこず」

俺は冷や氎を䞀気に飲み干すず、畳ぞぱったり倒れ蟌んだ。
土間にはひっくり返った籠から飛び出した癜菜がごろごろ転がっおいる。

「なあ、むペさん それ、どうすんだい」
俺は空の湯呑みの底を額に抌し付けた。
「挬けるんだよ」

圌女は忙しなくその现腕を動かしおいる。
やや緑の濃い倖葉そずばが剥がされるたび、梅雚時の䞞たった濡れ雑巟みたいな匂いが飛んできた。
俺にずっおそれは嫌な匂いでも、奜よい匂いでもなく、ただ「そういうもの」ずしお錻の付け根あたりに溜たっおいった。

「い぀たで䌞びおんだい」
むペさんは俺の顔の䞊で赀い実の぀いた枝を揺らした。
小気味よく、しゃらしゃらず鳎っおいる。
い぀も土間の隅にぶら䞋げおあった唐蟛子だ。
ゆるゆるず身を起こし受け取った俺の前に、むペさんは叀新聞を広げた。
瞬間県前でぱちんっず音が匟ける。
はっず浅く息を飲んだ俺は笑っおいた。
「これ、倖しお頭毟むしっずいずくれ。」
「ん。」
俺は新聞に茉っけた唐蟛子を長卓子たで運ぶず、襷の端を噛んだ。

時折実が爆はぜ、皮子たねがぱらぱら散らばった。
だんだんず指先が熱を持ち始め、人差し指のささくれがじんず疌く。
枈むずたたずんでもない眠気がやっお来た。

その間もむペさんは忙しなく手を動かしおいた。
俺は暪目に、暜の䞭ぞず萜ちおいく緑ず癜の塊を芋たように思う。

誰もいない長卓子の向こうで、干柿がゆうらりゆうらり揺れるのをがんやり眺めおいた。
五぀ほど、ず鵯ヒペに残しおやった釣鐘は、ただ瑞々しく冬の空で嚁匵っおいる。
ずうの鵯は玠知らぬ顔で誰かの腐らした蜜柑の皮を突いおいる。
「朔ちゃん あんた、どこぞの文豪先生の肖像の真䌌なんかしおないでこっち来な」
䞍意を突かれ、俺は顎を打った。

俺はよたよたず土間ぞず䞋る。
顎をさする俺に、むペさんはすり寄っおきた。
「朔ちゃん  」
むペさんは、背ごず頭を凭もたれかけ、銖を擡もたげお䞊県うわめに俺を芋぀める。
わざずらしい舌足らずの囁きは、嗄れかすれお华っお甘ったるかった。
「んだよ、近ェっお」
俺は生うぶな少幎になっおしたっお、圌女を匟き飛ばしお背を壁に貌り付けた。
「今倜は寝かさないよ  」
「はあ」
「蚀っただろう さっき  」
「さっき  」
「あの八癟屋のすけべ芪父にあんたを貞しおやらない理由だよ」
淡い緑ず癜の塊は浅い攟物線パラボラを描いお俺の顔目掛けお飛んでくる。
「っぶね」
気づけば俺は赀ん坊でもあやすみたいに倧ぶりの癜菜を抱いおいた。
「食いもん投げたらいけねェよ」

朚暜の朚蓋の䞊の重石おもしを退のけた。

「これ 朔ちゃん あんたし石どかしおるず食えるもんも食えなくなるよ」
「んだよ  別に芋おるだけだろ」
「芋おるだけで枈たない目ェしおんだよ、あんたっお子はね。」
むペさんは蓋ず重石を戻すず、目を閉じた。
「挬物っおのはね、埅぀んだ。静かに、埅぀んだ  」

倕选が枈んで、壁も畳も孊生どもの声を忘れおしたった刻のこず。

俺は雑誌䞀冊ず文庫二冊、それから䞇幎筆ず原皿甚玙を毛垃で包くるんで抱えた。
巊の䞭指に卓䞊掋燈ランプを぀っかける。
どの郚屋も建お付けの悪い襖から倜の気配を吐き出しおいる。
寝息だのいびきだの、密やかな囁きだの──
俺はその倜の䞊柄みを掬いあげるように階段を䞋くだる。
䞀段、䞀段、蹠あしうらで軋きしりを探りながら。
ゆっくり、ゆっくりず。

土間に着いた俺は毛垃を解き、包んでいた䞀切合切を広げた。
今倜はどうにも月が儚い。
「ちょっず借りるよ。」
男の笑顔に声をかけ、燐寞マッチをせしめる。
殻を焌いたような匂いが立ち昇り、掋燈《ランプ》ぞず火が移った。

ゆらりず圱が揺れる。

「おや、朔ちゃん。早かったんだね  」
「ああ  」
むペさんは欠け茶碗ずりヰスキヌの壜びんを䞊べる。

「あれ、むペさんっお酒飲んむだったっけか」
「いやだよ、朔ちゃん。あんた、私が女孊生にでも芋えるのかい」
酒灌けの少女声だ。
郚屋は薄暗い。
「芋ようによっおは  だな。」
俺は襷を解いお袖で掋燈を隠した。
「なヌんも芋えねェや。なあ、女孊生さん。」
「たア。どうです そちらも䞀杯飲みたせんこず」
「酔わせおどうする぀もりだい」
俺は袖をどける。
照らされた互いの顔を芋お、ひずしきり笑い合った。

俺は土間ぞ降り、暜を芗き蟌む。

「なあ。むペさん、聞いおもいいかい」
「なんだい」
「その  写真、仏壇の。いっ぀もじいさんっお呌んでる。そのわりにじいさんっおほどじゃ  」
「旊那。なかなかにいい男だろ」
「ああ  」

泡沫あぶくが暜の瞁撫でぷ぀ぷ぀ず匟ける。
その床に癜菜が沈んでいくように芋えた。
あんたりやっおいるずたた圌女にどやされる。
俺は元のように朚蓋を浮かべ、その䞊に重石を茉せた。

振り向くずむペさんは長卓子に突っ䌏しおゆったりず呌吞を繰り返しおいた。
その现い肩に毛垃を茉せ、りヰスキヌの蓋をしめる。
そしお俺は、掋燈の火を吹き消した。
灯油オむルの煀けた甘い匂いが錻に぀く。

俺はよもすがら䜕をするわけでもなく頌りない月の䞋、暜の内ず倖ずの呌吞に耳を柄たせおいた。

その間、自分の呌吞のこずはすっかり忘れおいたのだった。


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ゆきお様による䜜品解説
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歀床も、本䜜をより味わっおいただきたく各業界に粟通したゆきお氏をお招きしお話を読んでみようシリヌズ。

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よもぎ よもぎちゃヌん はヌい 䜕が奜き ポテトチップスよりも お・ぬ・し

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