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レベル1の村人が魔王討伐に挑む物語 第二話 ―中編―

◆ アルマの能力

翌朝。

王都の東門を出ると、小さな草原が広がっていた。

遠くには森。

さらにその先には、魔王軍の支配地域が広がっている。

レインは深呼吸した。

「さて……。」

アルマが静かに光る。

「周囲を索敵します。」

「索敵?」

石板の表面に淡い光の輪が広がった。

数秒後。

「前方百二十メートル。」

「スライム三体。」

「危険度、低。」

レインは目を丸くした。

「見えるのか?」

「いいえ。」

「え?」

「何となく分かります。」

「何となく?」

「説明はできません。」

「便利だけど適当だな!」

アルマは何事もなかったように続ける。

「個体情報を表示します。」

石板の表面に文字が浮かび上がる。


スライム

レベル2

弱点:斬撃・火

危険度:★☆☆☆☆


「すごい……。」

レインは思わず息を呑んだ。

「これなら効率良く戦える。」

アルマの能力

◆ アルマ先生

戦闘は驚くほど順調だった。

「右へ。」

アルマの声に従って体を動かす。

スライムの体当たりが空を切る。

「今です。」

レインがナイフを振る。

一撃。

スライムは光となって消えた。

「勝った!」

「喜ぶのは少々早いです。」

「え?」

背後からもう一体。

「うわっ!」

間一髪で転がってかわす。

アルマが淡々と言う。

「油断しましたね。」

「分かってる!」

「反省してください。」

「先生みたいだな。」

「先生?」

「いや、何でもない。」


その日だけで十数体の魔物を討伐した。

石板が光る。


レベル4


「早いな。」

「経験値効率は良好です。」

「経験値効率なんて言葉あるのか?」

「今作りました。」

「作ったのか、多才だな。」

「明日からはもっと経験値効率のいいやり方で頼むよ。」

「急がないと村が心配だ」

レインは頼れる「先生」を得た事で希望を見い出して来た一方、村の事が気掛かりで頭から離れずにいた。

的確なサポート

◆ レベル上げ

三日が過ぎた。

朝から夕方まで狩る。

夜は王都の安宿で眠る。

その繰り返し。

アルマは敵を探し、

弱点を教え、

危険を知らせる。

時には、

「左です。」

「え?」

ドゴォン!!

巨大な猪型の魔物が目の前を駆け抜けた。

「危なっ!」

「あと一歩遅ければ轢かれていました。」

「もっと早く言え!」

「間に合ったので問題ありません。」

「問題ある!」

そんなやり取りを繰り返すうちに、

レインとアルマは良き相棒の様な関係になっていた。

レインはすっかりこの喋る石板を信頼し、よく笑うようになっていた。

旅に出たばかりの頃の不安は、少しずつ消えていく。

「なあ、アルマ。俺だいぶ魔物を倒してかなり強くなったと思うけど、まだレベル上げが必要なのか」

「ええ、だいぶ良いところまで来ましたが、まだです。」


「そうか、村が心配だ。あとどれくらい強くなればいいんだ?」

「今、あなたのレベルは15です。レベル20まで頑張って下さい。そうすれば新たな能力が備わります。」

「新たな能力!?気になるな。でも急がないと」

「焦ると勝てる戦いも勝てなくなります。まして今のあなたが救援に向かったとしても、勝率は0.053%です。」

「わかった、わかった。そんな絶望的な数字を突きつけられると、従わざるを得ないな。」

「今日はもう町へ戻り休みましょう。これ以上疲弊した状態で戦っても、経験値効率が下がります。」

「そ、そうか。本当に先生みたいだな。わかった戻ろう。」

日没が迫る荒野を背に、すっかり常連となった王都の安宿へ歩みを返すレイン。
しかしその足取りは村を飛び出した時と比べて、確実に力強いものになっていた。

確実な成長

◆ 備わる新たな能力

四日目の夕暮れ。

最後の魔物を倒した瞬間だった。

石板がこれまでにない輝きを放つ。

レインの体を暖かな光が包み込む。


レベル20


「やった!」

レインは思わず拳を握る。

アルマの光がさらに強くなる。

「条件達成。」

「条件?」

「転職が可能になりました。」

レインは首を傾げた。

「転職?」

石板に新しい文字が浮かぶ。


現在職業

村人

転職可能

【剣士】


「剣士……。」

アルマが静かに言う。

「村人では、これ以上大きく成長できません。」

「職業は人の可能性を広げます。」

「どうすればいい?」

「石板へ手を。」

レインはゆっくりと掌を置いた。

眩い光が周囲を包み込む。

風が巻き起こる。

体の奥から熱が湧き上がる。

何かが変わっていく。

骨が。

筋肉が。

意識が。

不思議と苦しくはない。

ただ、自分が生まれ変わっていく感覚だけがあった。

やがて光が消える。

石板に文字が浮かんだ。


職業

剣士


レインはゆっくり拳を握る。

軽い。

今までとは比べ物にならない。

足に力がみなぎる。

景色までも鮮明に見えた。

「これが……剣士。」

アルマが静かに告げる。

「おめでとうございます。」

「あなたは今、ようやく冒険の入口へ立ちました。」

レインは思わず笑う。

「入口?」

「ここまで結構頑張ったぞ。」

「勇者への道は、その程度では褒められません。」

「厳しいな。」

「事実です。」

「少しは褒めてくれてもいいだろ。」

少しだけ間が空く。

そしてアルマは小さく光った。

「……よく頑張りました。」

レインは思わず吹き出した。

「今、間があったぞ。」

「慣れていませんので。」

夕日が二人を照らす。

レインは背中へ手を伸ばす。

ずっと背負い続けてきた、あの剣。

あの日、騎士から託された剣。

「……試してみるか。」

レインはゆっくりと柄を握った。

以前とは違う。

あの重さがない。

まるで剣の方が、自分を受け入れてくれたようだった。

「アルマ。」

「はい。」

「もしかしたら――」

レインは静かに息を吸う。

「今ならこの剣を抜けるかもしれない。」

レインは期待と不安を抱えつつ手に力を込め、騎士から託された剣を鞘から引き抜く。

時は来た

――第二話 後編へ続く――


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