【独り言】 - Domino Dancing
小さな行き違い。
たいしたことがないと思って
見逃したこと。
大海のこちら側で蝶が羽ばたいただけで
大きな嵐が巻き起こるように
わたしたちのたいせつな当たり前を
壊すことになるとしたら
最初のひとひらは、いつも軽い。
「まあ、いいか」の一言。
既読のまま、返さなかった夜。
その一言の重さをわたしたちは量り間違える。
天秤にかけているつもりで、実は何も量って
いない。
そう気づいたときには二枚目が倒れている。
三枚目が、傾いていく——音もなく。
止めようと伸ばした、指先は空を切る……。
「たいしたことない」と思っていたものは
本当にたいしたことがなかったのだろうか。
それとも。
たいしたことがないと「思いたかった」だけ
なのだろうか。
嵐の後で、ひとは言う。
「まさかこんなことになるなんて」
蝶は知らん顔。
いつものように羽を閉じる。
悪いのは、風を大きくした空気なのか。
それとも、最初の一枚を軽んじた指先なのか。
わたしたちの「当たり前」は、誰かが黙って
支えていた一枚のドミノだったのかもしれな
い。
倒れて初めて、崩れた思いにやっと気づく。
そして今、わたしは数える。
自分の指先が、何枚目のドミノを軽んじてき
たか。
見て見ぬふりをした既読。
飲み込んだ言葉。
「今度でいいや」の先延ばし。
数えきれない。
数えたくない。
けれど気づいた。
ドミノは、倒れるためだけに並んでいるので
はない。
きちんと並べ直せば今度は違う模様を描くか
もしれない。
倒れた先に何もないわけではない。
嵐が去った後の静けさの中。
わたしは一枚、また一枚拾い上げる
壊れたものを元通りにはできなくても。
次の一枚を今度は、軽んじない。
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