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パヌティヌはい぀か終わる《6》【#創䜜倧賞2025】

《》《》《》《》《》《》《》《最終話》

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土曜日の午前十時過ぎ。
アパヌトの前で埅っおいるず、䞀台の黒いゞヌプが䜏宅街の隘路あいろの奥から近づいおくるのが芋えた。䞀瞬だけ点灯した車のヘッドラむトに私は小さくお蟞儀を返す。

「ごめんねヌ朮田さん、道混んでお遅れちゃっお」

運転垭から顔を芗かせた行方さんが異様に癜い歯を芋せお二ッず笑った。

「いえ、ずんでもないです。改めお、先週は芹沢さんの家たで送っおいただきありがずうございたした」
「そんなの党然気にしなくおいいんですよ ほら、早く乗っおください」

「花音ちゃん、自分の車みたいに蚀うね」ず蚀いながらも満曎でもなさそうに笑っおいる行方さんに私は再床䞀瀌をしお、埌郚座垭のドアを開ける。
助手垭の埌ろに座っおいた青矜さんず目が合っお「朮田さん、お久しぶりです」ず頭を䞋げられた。青矜さんの声を聎くのも姿を芋るのも確かに䞀週間ぶりなのだけれど、芹沢さんの家からの垰り道でLINEをしたあの日からずっず他愛のないやり取りがだらだらず続いおいるので、私は昚日も話したような気持ちを抱きながら「お久しぶりです」ず頭を䞋げた。

しばらく車を走らせお、郜䌚のお花芋の聖地である代々朚公園に到着した。
道䞭の車内で芹沢さんが錻息を荒くしながら蚀っおいた「お酒はすでに甚意しおおりたすのでご安心ください」ずいう蚀葉のずおり、代々朚公園の駐車堎に車を停めおトランクを開けるず、倧量の䞀升瓶が突劂ずしお県前に珟れたので思わず気圧された。ぱっず芋ただけでも十本はゆうに超えおいお、軜い気持ちで芹沢さんの花芋の誘いにのっおしたったこずに私は䞀瞬埌悔すら感じおその堎に立ち尜くす。

「あ、さすがに党郚飲むわけではありたせんよ。せっかくなら色んな皮類飲みたいなヌず思っお、いっぱい持っおきおみたした」

驚愕しおいる私の顔を芋お、わざずらしくテヘっず舌を出した芹沢さんが付け加えるように蚀う。
安心するず同時に、色ずりどりのラベルや様々な商品名の䞀升瓶がずらっず䞊んでいるのを芋お「ひょっずしお、党郚このために買っおきおくださったんですか」ず聞かずにはいられなかった。

「たさか キャバ嬢やっおた時、日本酒奜きなんですっお話をよくしおたらお客さんから貰う機䌚が倚くお、家に腐るほどあるんですよ。貰い物ですいたせんが、封は開いおいないので安心しおください」
「なるほど  。ありがたくいただきたす」
「あ、おか朮田さん日本酒飲めたすか」
「日本酒は奜きですよ。小さい時からお正月は実家でお経を読んで日本酒を飲む決たりがあったので、慣れるのが早かったこずが倧きいず思いたす」

「よかったです じゃあこの埌も楜しめたすね」ず芹沢さんが含みのある蚀い方で嬉しそうに笑う。”この埌”ずいうこずは花芋の埌に䜕かあるんですか ず聞きたくなったけれど、「行方パむセン、お願いしたす」ず芹沢さんに肩を叩かれた行方さんが「おう、任せずけ」ず倧量の日本酒が詰められた業務甚コンテナを軜々ず持ち䞊げたのを芋お、私も䜕か手䌝わなくおはずトランクを芋回した。

「朮田さん、この袋を持っおもらっおもいいですか」

「あ、はい」ず青矜さんからお菓子などが入った透明のビニヌル袋を受け取るず、青矜さんがレゞャヌシヌトを、芹沢さんは小さめの簡易テヌブルを小脇に抱えお、私たちは代々朚公園の䞭ぞずずんずん入っおいく。

桜のピヌクが過ぎたずはいえ、土曜昌間の代々朚公園は倧勢の人で賑わっおいた。サヌクルの新歓らしき倧孊生や倖囜人芳光客の姿があちこちに芋える。
なるべく静かな堎所に目星を付けお、レゞャヌシヌトを広げお腰を䞋ろす。入口付近の喧隒が嘘みたいに、私たちの呚囲にはたったく人がいない。そんなずころずあっお、桜ずいうより倧きな朚の枝がぜ぀んず寂しげに立っおいるような堎所で花芋ずいうか枝芋をする運びずなった。
寂びれた颚景はお構いなしに、芹沢さんが早速コンテナから䞀升瓶を取り出しお、行方さん以倖のプラスチックカップに日本酒をずぷずぷ泚ぐ。
「かんぱヌい」
あたりに颚情がない光景にどこか滑皜さを感じながらも、みんなで思い思いに日本酒を飲んでいるうちに割ずどうでもよくなっおきた。

「僕、みそ汁を毎日飲むんですけど」
「分かりたす。いいですよね、みそ汁」
「この間、い぀ものようにみそ汁を䜜っおいたら、メむンの生姜焌きに䜿うはずだった豚肉をみそ汁に萜ずしちゃっお」
「ええ 倧倉じゃないですか」
「みそ汁が台無しになっおしたったず萜胆しおたんですけど、加熱すれば食べれるかなず思い、思い切っお豚肉をすべおみそ汁に入れおそのたた煮蟌んでやったわけですよ。䜕だかその時、たったくの未知の料理を䜜れる気がしおワクワクしおたんですけど、途䞭でただの豚汁を䜜っおいるこずに気が付きたした」

青矜さんのしょうもない話に銖をのけぞらせお笑うくらいには酔いが回っおいたずころでふずスマホの時蚈を芋るず、こんな取るに足らない䌚話をかれこれ䞀時間近くもしおいるこずに気付いた。

私はふず、芹沢さんが蚀っおいた”この埌も楜しめたすね”ずいう蚀葉が頭をよぎり「そういえば、この埌は䜕かあるのでしょうか」ずさりげなく芹沢さんに質問しおみる。するず急に「朮田さん、よくぞ聞いおくれたした」ずすでに出来䞊がっおいる様子の芹沢さんが四぀ん這いの怪物のように猛スピヌドで近づいおきお、私の手をがっしりず掎んで高らかに宣蚀するように蚀った。

「それでは、僭越ながら今日のメむンを発衚したす」
「花芋がメむンではないのでしょうか」
「はい。これから私たちは、酒蔵芋孊ツアヌに参加したす。すでに予玄枈みです」

私だけが聞かされおいないず思っおいたら、隣にいる青矜さんも初耳ずいうような顔で「え、今からですか」ず芹沢さんに尋ねる。

「はい。午埌二時から開始なので早く撀収したしょう」

なぜ酒蔵芋孊 ずいう疑問はあったが、日本酒奜きの私にずっおは確かに悪くないレゞャヌだず思ったし、それに桜の咲いおいない朚の䞋でい぀たでも酒を飲んでいるよりは有意矩な時間を過ごせそうだずも思ったので、私には芹沢さんの提案に異議を唱える぀もりは特になかった。
この時たでは。

酔いが回っおふらふらになりながらも䜕ずか片づけを終わらせお代々朚公園から足早に撀収し、私たちは行方さんの運転で埌玉県にあるずいう酒蔵ぞず急いで向かう。途䞭で高速に乗り、䞀時間ほど車を走らせおバむパスを降りるずようやく目的地の酒蔵に着いた。駐車堎にはすでに䞉十人ほどの人たちが集たっおいお、この酒蔵芋孊ツアヌの人気っぷりがうかがえる。

定刻の午埌二時になり、耳掛けマむクを着けたスヌツ姿の初老男性が私たちの前にスッず珟れた。男性はこの酒造䌚瀟の瀟長ずのこずで、瀟長自ら今日の酒蔵ツアヌの説明をしおくれるそうだ。

「ではたず、この䞭に医療埓事者の方はいらっしゃいたすか」

突然、ドラマでありそうな機内アナりンスの雰囲気でその瀟長が尋ねおきた。
私は反射的に芹沢さんの方を向く。それは圌女が元看護垫だからではなく、ここに来る前から芹沢さんは私たちに䜕かを隠しおいるようで車内でもずっずニダニダしおいたからだ。

「ご存じのずおり、酒蔵の芋孊は䞉十分ほどで終了し、その埌みなさんには宎䌚堎でお食事を楜しみながら最䜎六合はお酒を飲んでもらいたす。救急車を呌ぶ前に、くれぐれも䜓調管理に気を付けお健康的に飲んでくださいね。医療埓事者の方がいらっしゃれば積極的なご協力をお願いしたす」

瀟長はそう説明しながら、私たちに写真を䜕枚か芋せる。その写真には、か぀おのツアヌ参加者たちの芋るも無残な姿が映っおいた。酔い぀ぶれお駐車堎で寝転んでいる人。袋に頭を突っ蟌んで蹲うずくたっおいる人。救急車で搬送されおいる人。

「このように、自己の䜓調管理ができない方に぀いおは写真を撮っお以埌泚意喚起に䜿わせおいただきたす」ず瀟長は説明する。
私はもう䞀床芹沢さんの方にゆっくりず顔を向ける。圌女は䜕も蚀わず、おもむろにヘパリヌれの䞀番匷そうなや぀ずよく分からない挢方やらを私に差し出した。

「芹沢さん、なんで蚀っおくれなかったんですか」
「蚀ったら朮田さん絶察来おくれないじゃないですかヌ。ちなみに宎䌚はカオスですけど、酒蔵芋孊はいたっお本栌的なんですよ」

勝手知ったる様子の芹沢さんは今回が二回目の参加らしく、「酒奜きの䞭でも知る人ぞ知るむベントで、ほんずに予玄取りづらいんですよ」ず、絶察に埌悔はさせたせんずいう気抂で熱く語る。今さら匕き返せないず悟った私は、芹沢さんから貰った二日酔い察策グッズに呜を蚗す぀もりでそれらを党お胃に流し蟌んで腹を括った。

たずは至っお真面目な酒蔵芋孊からスタヌト。瀟長の案内に埓っお、さっそく蔵の䞭ぞずみんなでぞろぞろ入った。建築から玄癟五十幎以䞊経過しおいるずいう朚造の建物は、党䜓的にリフォヌムがされおいるものの、梁はりや柱には確かな歎史が感じられる。
酒蔵でよく目にする茶色い杉玉には新酒が出来たこずを知らせる圹割があるずいう説明から始たり、「新酒が出来䞊がった盎埌はこんなに青々ずしおいたすが、お酒の熟成が深たるに぀れ段々ず茶色くなるんです」ず解説を亀えながら芋せられた杉玉のビフォヌアフタヌ写真に参加者䞀同「ほほう」ず感心し、お酒の神様である束尟様に二瀌二拍手䞀瀌をしおから貯蔵庫ぞず入る。芹沢さんの蚀うずおり、酒蔵芋孊はなかなか本栌的だ。

ひんやりずした貯蔵庫には倧きな鉄補のタンクがいく぀も䞊んでいた。奥ぞず進むず、醪もろみを搟る機械やその過皋で出た酒粕さけかすから焌酎を造るための蒞留噚などが姿を珟す。
さらに奥ぞず進み、『米麹こめこうじ』や『醪』に぀いおの説明曞きが倧きく壁に掲げられおいる郚屋に入るず、そこで突然瀟長が参加者たちに米を配り始めた。

「これは蒞米に麹菌を぀けた、いわゆる麹米です。米のデンプンを麹菌が糖化させ、その糖を酵母がアルコヌルに倉えるんです」

ビヌルやワむンず違っお、日本酒造りではこの糖化ずアルコヌル発酵が同䞀の容噚内で同時に行われる䞊行耇発酵ずいう高床な醞造方法が甚いられおいるんです、ず瀟長が真面目に説明したかず思えば「では、先ほどお配りした麹米を口に入れおください。飲み蟌んではいけたせんよ よく噛んで六時間埅぀ず甘酒が出来たすから」ず蚀われたので面癜半分で口に入れおみる。
「さらに口を開けお二週間埅おば、蔵に棲み぀いおいる酵母こうがの力でアルコヌルができたすよ」ずいう瀟長の蚀葉に、ばかみたいに口を倧きく開けおみせる芹沢さんの姿が䜕ずも滑皜で、私は危うく口の䞭の米を吹き出しそうになった。

それからは日本酒の補造工皋に぀いお瀟長のナヌモラスか぀簡朔明瞭な説明を受け、別棟の貯蔵庫ず倖にある巚倧なサヌマルタンクを芋お回っお、合蚈䞉十分ほどで本栌的な酒蔵芋孊は終了した。はっきり蚀っお、この時点で私はすでに倧満足だ。

しかし、ここからが本番だった。

蔵ずは数十メヌトルほど離れた堎所に建っおいる料亭のような宎䌚堎に入るず、たずは盛倧なドラク゚のBGMで迎えられた。思わず二階を芋䞊げるず、ギタヌ、サックス、キヌボヌドによる生挔奏が行われおいお仰倩する。宎䌚の垭には、お造りや倩ぷら、釜めしなどの和食料理が豪華に䞊び、飲み物は利き酒ずしお五皮類の日本酒ず也杯甚のビヌルが眮かれおいた。

そしお宎䌚堎の前方に蚭けられた小䞊がりのステヌゞに瀟長が立぀ず、「也杯」の合図で宎が始たり、呚りのみんながたずは日本酒ではなく䞀斉にビヌルを呷る。

さっきからずっず壮倧なドラク゚のBGMを挔奏しおいるバンドメンバヌを瀟長が順々に玹介し始めお、そのたびに賑やかな拍手ず歓声が沞き起こる。熱冷めやらぬたた瀟長が今床は本日の配膳スタッフのおばさた方もステヌゞに䞊がらせおメンバヌ玹介のように名前を䞀人䞀人読み䞊げるず、そのたびにたたもや熱狂的な拍手ず喝采が宎䌚堎に匷く響き枡った。酔いも手䌝っお次第にみんなの声が倧きくなっおいき、酒を飲むペヌスもぐんぐん早くなっおいく。

テヌブルに眮かれおいた酒が底を突いたタむミングで瀟長が新しい酒を登堎させた。飲み干したグラスを差し出すず瀟長自ら泚いでくれるスタむルで、私は芹沢さんず青矜さんのペヌスに乗せられながらも最初の方はやや自制しながら酒を泚いでもらっおいたけれど、提䟛される党囜各地のお酒がどれも珍しくお矎味しく、カクテル颚、ラむム搟り、レモン搟り、玅茶割、乳酞菌飲料割、みぞれ酒ずいった感じであれもこれもず飲んでいくうちに頭のネゞが緩んでいき、そんなこんなで開始から䞉十分も経たないうちに私ず芹沢さんは完璧に泥酔しお、それでもなお飲み飜きず、瀟長の声を聞いただけで酒が貰えるず涎を垂らし、グラスの酒を䞀目散に飲み干しお酒を欲する浅たしきパブロフの犬ず化しおいた。

バンドの生挔奏や酔っ払いたちの笑い声で宎䌚堎が倧いに盛り䞊がる䞭、突劂ずしお壇䞊に珟れた癜い䜜務衣を纏った料理長によるヒラメの解䜓ショヌが始たったタむミングで芹沢さんが倧声で話しかけおきた。

「朮田さん、楜しんでたすか どうですか 来およかったですよね」
「あヌ、もう、やばいですねこれ。明日、ずいうか今のこずですらどうでもよくなっおきお、なんかもう党䜓的にハッピヌっお感じです」
「私もハッピヌです ハッピヌ最高です」

䞡拳をガッツポヌズのように突き䞊げおいる芹沢さんの暪からスッずグラスが差し出され「ちゃんずお氎も飲んでくださいね」ず青矜さんが諭さずすように蚀う。同じように私にも差し出されたグラスを青矜さんから「痛み入りたす」ず受け取っお申し蚳皋床に口を぀けた。蟛うじお、理性はただある。

「朮田さん、話せたすか」
「私をあたり舐めないでください。ただただ、䜙裕ですよ」
「朮田さん先週酔い朰れおたんで心配しおるんですよ。芹沢さんのペヌスに飲たれたら危険ですからね。くれぐれも気を付けおください」
「先週は緊匵しおいたからずいうか、色々情報量が倚すぎお頭がパンクしおたんですよ。おいうか青矜さんこそさっきから結構飲んでるのに今日はあたり酔っおないんですね」
「朮田さんが心配で酔えないんです」

芋おのずおり私は至っお倧䞈倫ですから ず胞を匵っお答えるず「おみそれしたした」ず青矜さんが茶化すように笑っお、それから少しモゞモゞした様子で「朮田さん、突然ですけどシュクボヌっお知っおたす」ず恥ずかしそうに聞いおきた。

「シュクボヌ 分かんないです。どこのお酒ですか」
「あ、いえ。お酒の話ではなくお。寺に蚭けられた宿泊斜蚭のこずをシュクボりっお呌ぶらしいんです。宿泊の”宿”に、お坊さんの”坊”ず曞いお”宿坊”です」
「ぞえ、お恥ずかしながら、初耳です。それがお酒ず䜕の関係があるんですか」
「お酒の話は䞀旊忘れおください。宿坊は元々僧䟶や参拝者のための斜蚭なんですけど、最近では芳光客向けに寺文化を䜓隓できる宿泊斜蚭ずしお展開しおいる寺も倚いそうなんですよ」
「ぞえ、そうなんですねえ」
「あの、もしよろしければ来週の土曜に四人で泊たりに行きたせんか」

隣の垭の芋ず知らずのおじさたグルヌプず酒を飲み亀わしおいた芹沢さんが”泊たり”ずいう蚀葉に光の速床で反応を瀺し、私が答えるより先に「え みんなで泊たりにいく話ですか いいじゃないですかぜひ行きたしょう」ず錻息荒めに私の肩をがっしりず掎んで激しく揺さぶる。寺で育った身ずしおは青矜さんのいう宿坊しゅくがうの魅力が正盎よく分からなかったけれど、芹沢さんの勢いに圧倒されおいた私は「たあ、その、特に予定はないので倧䞈倫だず思いたす」ずその堎しのぎのように答えた。

「やったあ 朮田さんの意倖にフッ軜なずころ、わたし奜きですよ」
「ちょっずすいたせん、そんなに揺らさないでください」
「では決たりずいうこずで。行方さんにも埌ほどお䌝えしおおきたす」
「楜しみですねえ」
「あ、ちょっずやばいです限界かもです倱瀌したす」

芹沢さんに激しく揺さぶられたこずで酔いの気持ち悪さが突然頂点に達し、あず䞀歩で倧爆発ずいう寞前のずころでなんずかトむレに駆け蟌み事なきを埗た。
しばらく経っお萜ち着いおから宎䌚堎に戻るず、䜕やら先ほどより雰囲気が䞀局隒がしい。
ステヌゞに目を向けるず『お誕生日おめでずう』ず曞かれた色玙やプレれントのように可愛くリボンが括くくられた枡たすなどを手に持っおいる人たちが䜕人かいお「それでは四月生たれの方々を党員でお祝いしたしょう」ずいう合図ず共にハッピヌバヌスデヌの倧合唱が巻き起こった。動揺するのも束の間、突劂ずしお堎の党員にチアガヌルが䜿うようなカラフルなポンポンが手枡されるず、それを狂ったようにみんなで振り回しながらバンド挔奏による懐メロや流行曲に合わせお酔っ払いたちの倧合唱が始たる。ポンポンを振り回す芹沢さんに絡たれお私もその堎の勢いでみんなず䞀緒にDA PUMPの『U.S.A』で激しく舞い螊り、䞭森明菜の『DESIRE』が始たったあたりで段々ず意識が薄れおいった。





目を芚たすず芋芚えのある芹沢さんの郚屋にいお、私はベッドに仰向けになったたた、嵐のように過ぎ去ったカオスな宎䌚の断片的な蚘憶を蟿っおいた。

「あの、先ほどの宎䌚、倢じゃないですよね」

ベッドに背䞭をあずけおスマホをいじっおいる芹沢さんに尋ねおみる。

「あ、朮田さん起きたしたか。もちろん倢じゃないですよヌ、あのあず行方さんが車で送っおくれたした」

行方さんは犁酒を培底しおいるようで今日のツアヌも酒蔵芋孊にしか参加しおいなかった。䞀方で私は、酔い぀ぶれお芹沢さんの家に運ばれるのがもはや恒䟋になり぀぀あり、あたりに倧人げない飲み方を猛省もうせいする。

「芹沢さんにも行方さんにも毎回申し蚳ないです。本圓にすいたせん  」
「気にしないでいいですっおば。それにあんな楜しそうな朮田さん芋れたんで私は倧満足ですよ」

「初めお䌚った時ずは別人みたいでしたよ」ず芹沢さんが可笑しそうに笑うず、私はもう䞀床謝るように「  ありがずうございたす」ず頭を䞋げた。

「なんのありがずうですか」
「この前のずみ田も今日の酒蔵芋孊も、芹沢さんがいなければ知るこずはない䞖界でした。すごく楜しかったですし、仮にこれが楜しくない経隓だったずしおも、本来はそれすら知らないたた人生が終わっおいたず考えるず、䜕だかすごく勿䜓ないこずをしおいたなず思っお。私の知らない䞖界は腐るほどあっお、良いものであれ悪いものであれ、それを知ろうずしないくせに人生を嘆くのはなんお甘えた考えなんだろうっお、そう気付かせおくれた芹沢さんには感謝しかありたせん」

酔いが少し残っおいるのだろうか、若干の気恥ずかしさはあり぀぀も、芹沢さんにずっず䌝えたかった蚀葉がするするず口から出おきた。

「そんな感謝されるようなこずしおいる぀もりはないですけど  たあ悪い気はしたせんね」ず芹沢さんが少し照れ臭そうに笑う。

「お詫びず感謝の印ずしお䜕かさせおください。掃陀でも䜕でもやりたす」ず私が蚀うず、「んヌ、じゃあコンビニでアむス奢っおください」ず蚀われたので、私は垰りの支床を枈たせお芹沢さんのマンションを出おから、駅の目の前にあるコンビニでパピコを買っおあげた。

「党然泊たっおいっおもいいんですよ。わたし、明日䌑みですし」
「いえ、これ以䞊迷惑をかけるわけにはいかないので。それに、おかげさたで䞀人で垰れるくらいには身䜓も普通に動きたす」
「朮田さんにお枡しした挢方、あれがマゞで効くんですよ。キャバやっおたずきに孊んだ最匷の二日酔い察策です」
「なるほど。今床から芹沢さんず䌚う時は垞備しおおきたすね」

二人でけらけら笑い合っお、あっずいう間に改札の目の前に着いた。最終電車には間に合ったけれど、家に着く頃には深倜䞀時を超えそうだ。

「送っおくださりありがずうございたした」ず䞀瀌するず、突然、芹沢さんが手に持っおいたパピコを高く持ち䞊げお「朮田さん、わたし目暙できたした」ず宣誓するように蚀った。

「目暙、ですか」
「はい、人生の目暙です。聞いおくれたすか」
「ぜひ聞かせおください」
「今幎䞭に、結婚したす。打算じゃなくおちゃんず恋愛で結婚しお、理想の家庭を築きたす」

芹沢さんの目には迷いがなくお、”結婚”の件をずっず先延ばしにしおいる私は襟を正されるような思いがした。

「結婚、いいじゃないですか。芹沢さんならきっず玠敵な方ず出䌚えるず思いたすよ」
「そう蚀っおいただけるのは嬉しいんですけど、これが本圓に芋぀からないんですよねヌ。でもそうやっおい぀たでも先延ばしにしおいるわけにもいかないなず思っお、この䞀幎本気で恋愛しお、結婚しようず決めたした。朮田さんのおかげですよ」

芹沢さんはそう蚀っお、「これは、そのお瀌です」ず、二぀に割ったパピコの片方を私に差し出す。
芹沢さんの意図をあたり掎み切れおいない私は、ずりあえず差し出されたパピコを受け取るず「私こそ䜕も感謝されるようなこずはしおいないず思いたすが  」ず戞惑いながら蚀葉を返した。

「普通の家庭に生たれお、普通に恋愛しお、普通に結婚するこずっお、普通の人にずっおは退屈にも思えるくらい普通のこずなんでしょうけど、私は普通の家庭に生たれおこなかった時点で出端を挫かれおいるわけじゃないですか」

そんなこずないですよ、ず蚀われおも䜕の慰めにもならないず分かっおいたので、そのたた黙っお聞く。手の䞭でパピコが冷えおいる。芹沢さんは話を続ける。

「でも、”普通じゃない”こずをただ嘆いおいおは䜕も始たらないんですよね。朮田さんの結婚の話を聞いお、倱瀌かもしれたせんが、こんなに普通に芋える人にも人生を悲芳するような悩みがあるんだっお気付かされお。たあ考えおみれば、どんな人間にも倧なり小なり悩みがあっお、悲芳なんお䞖の䞭にありふれおいるはずで。みんなが共有しおいるず急に飜きおくるみたいなこずあるじゃないですか。私は自分を悲芳するこずに飜きたずいうか、今は自分じゃない他人のこずで真剣に悩んでみたくお、”あ、恋愛するなら今かもしれない”っお思ったんです」

私がこれたで他人に家族の話をしおこなかったのは、悲劇のヒロむンぶっおいるず思われたくなかったからだ。䞖の䞭にはもっず苊しい思いをしおいる人がいお、寺を継ぐこずなんかよりもっず倧きな重荷を背負っおいる人もいる。それにあんな父ずはいえ、私がこれたで䜕䞍自由なく育おおもらったこずは事実だ。人の数だけ悩みがあるのは圓然で、私の抱えおいる悩みなんお莅沢なものなのかもしれない。そう思っおいたから、私の悲劇は自分の䞭だけで完結させるべきだず考えおいた。
でも青矜さんに出䌚っお、固く締めおいた蓋が抉こじ開けられたのだ。知らない䞖界を芋お、他者ず関わるに぀れお、私は次第に自分ず他人ずの境界線が曖昧になっおいく感芚に気付き始めおいた。自分の人生を芋据えた時に、頭に思い浮かぶ他人の存圚がある。その人が嬉しそうなら私も自分のこずのように嬉しく思い、その人が䜕かに悩んでいれば私も同じように頭を悩たせたいず思う、そんな存圚。

もしかしたら今、私は恋愛をしおいるのかもしれない。

「そういえば、青矜さんず進展ありたした」

突然、芹沢さんの口から青矜さんの名前が出おきたこずに意衚を突かれた私は「あ、いや、これずいった出来事は、ただ䜕も」ず途切れ途切れに答える。

「えヌ、぀たらないですねヌ」
「あの、先ほどの芹沢さんのお話、すごく分かる気がしたす。䜕か、今の、ずいうかこれたでの私にすごく響いたずいうか。芹沢さんのおかげで、倧きな気付きを埗た気がしたす」
「え、ほんずですか」
「はい。幎内に結婚、いい目暙だず思いたす。私にできるこずがあれば、䜕でもおっしゃっおください」

「朮田さんこそ、もっず頌っおもらっおもいいんですよ」ず頌もしそうにバシッず胞を叩く芹沢さんに、私は手に持っおいるパピコを小さく揺らしお「じゃあその時はたたアむスでも奢らせおください」ず小さく笑った。
䌚話が䞀段萜しお、スマホで時刻を確認するず終電の時間が間近に迫っおいたので、最埌にもう䞀床芹沢さんに瀌を蚀う。

「芹沢さん、今日は誘っおいただいお本圓にありがずうございたした。そろそろ行かないず乗り遅れおしたうのでこの蟺で倱瀌したす。たた来週、よろしくお願いしたす」
「はヌい、楜しみにしおたすね お気を぀けお」

芹沢さんに芋送られながら、改札を抜けお最終電車に乗り蟌んだ。
土曜深倜の車内は思っおいたよりも空いおいお、ぞずぞずで今すぐ座りたかった私はほっず胞を撫で䞋ろす。
座垭に深く腰掛けお、今日の出来事をがんやりず反芻した。こんなに人ず笑ったのはい぀ぶりだろうか。そしお、これたで私の䞀䜓どこに、今日のように楜しさに振り切れる自分が隠れおいたのだろうか。四人で䌚うのはこれで二回目だけれど、この二日間で䞀幎分笑っお、䞀幎分の酒を飲んでいる気がする。
そんなこずを繰り返し考えおいたら、い぀の間にか眠っおしたっおいた。



自宅の最寄り駅の寞前ではっず目を芚たし、電車を降りお駅を出おから数十分ほど歩いおようやく自宅に着くず、時刻は予想通り深倜䞀時を回っおいた。
速攻でシャワヌを枈たせお寝おしたおうず゜ファヌに鞄を攟り投げたずころ「ピコン」ずLINEの通知が鳎った気がしたので、そのたた゜ファヌで暪になっお鞄の䞭からスマホを取り出しおみる。
ロック画面のたた通知センタヌを芋るず、青矜さんからメッセヌゞが䜕通か届いおいた。

〈朮田さん、今日はありがずうございたした〉〈先ほど芹沢さんから、朮田さんが䞀人で電車に乗っお垰ったこずを教えおもらいたした〉〈無事に家に着きたしたでしょうか〉〈ちなみに僕はこれからクラブでDJラむブです〉

四十歳の私に察しお保護者のようなLINEを送っおくる青矜さんに心が癒され぀぀も、その埌に続く”クラブ”や”DJ”のワヌドがあたりに浮きすぎおいお䞀人の郚屋で爆笑しおしたった。

〈ご心配ありがずうございたす。おかげさたでたった今自宅に着きたした〉〈これからラむブなんおすごいですね  䜕時たでやるんですか〉

すぐに既読が付いお、゜ファヌで暪になりながら青矜さんの返信を埅぀。思えばここ数日の私の生掻には、こんな颚にスマホの画面をじっず眺めお青矜さんのLINEを埅っおいる時間が通算で䞉時間くらいある気がする。もずもずマメな連絡が苊手で、最初の頃は青矜さんのLINEに返事をするのも正盎億劫に感じおいたけれど、い぀の間にか青矜さんずの他愛のないテキストメッセヌゞのやり取りが私にずっおささやかな癒しになり぀぀あった。

〈よかったです、安心したした〉〈なんずいうか毎回朮田さんに無理やり倧量飲酒させる圢になっおしたっお申し蚳ない限りです  〉〈僕の出番はだいたい深倜䞉時くらいたでです。あず十分埌くらいには始たるんですけど、今日飲み過ぎたせいで若干眠くなっおきたした〉

青矜さんの眠たげな声が脳内で再生されお、䜕ずなく声が聞きたいず思った私は、

〈青矜さん、ほんの少しの時間でいいので今から通話したせんか〉

ず思い切っおメッセヌゞ欄に打ち蟌んでみる。
玙飛行機のような送信ボタンをえいやずタップした途端、私の目は䞀気に冎えた。

既読が぀いおすぐに、〈いいですよ〉〈ちょっず埅っおおください、静かなずころに移動したすので〉〈二分埌くらいに僕からかけたすね〉

ず䟋のごずく爆速で返信が来お、私は姿を芋られるわけではないのに゜ファヌを正しく座り盎しお少しだけ髪を手で敎えお青矜さんからの電話を埅った。そわそわしながらトヌクルヌムを遡っおいるず、『青矜雄叞』ず衚瀺された着信画面に突然切り替わっお、心臓が匵り裂けそうになりながらも右䞋にある緑色の応答ボタンを恐る恐るタップした。

「  もしもし、青矜さん、聞こえおいたすか」
「はい、聞こえおたすよ。こっちの音、うるさくないですかね」
「党然倧䞈倫です」

ずは蚀ったものの、この先の䌚話は党然倧䞈倫ではないこずにはっず気付いた私は、思い぀きで通話をしおしたったこずに今曎埌悔を芚えながら、「通話するほどの䜕かがあったんですか」ず青矜さんにもし聞かれた堎合の返答に぀いお頭をフル回転させお考えおいた。

するず突然「朮田さん、申し蚳ございたせん」ず青矜さんが口にしたので、私は「え」ず驚く。

「あの、なんの謝眪でしょうか  」
「朮田さんを振り回しおしたっおいるこずに察する謝眪です。来週の宿坊だっお、流れで行くような感じになっおしたいたしたが、朮田さんが嫌なら断っおもらっおもいいんですよ」
「いや、あの、謝らないでください。そんなこずを䌝えるために通話したわけではありたせんし」
「え 違うんですか おっきり僕ず䌚うのが嫌になっお通話で䌝えようずしおくれたんだずばかり思っおたした  いやもう今からのラむブも本圓に気が気じゃなくお  よかった安心したした  」

「それはすいたせんでした  」ず答えお、青矜さんを心配させおしたったこずに若干の責任を感じた私は、ちゃんず今の気持ちを蚀葉にしお䌝えなくおは、ず思った。

「あの、むしろ青矜さんには感謝しおいたす。青矜さんず出䌚わなければ、私は今頃さっさず匕っ越しを終わらせお実家に垰っおいたはずなんです。あずは䞋るだけだず思っおいた人生が、青矜さんのおかげで今はこんなにも楜しくお、䜕だか人生のボヌナスタむムを過ごしおいるような気分です。陳腐な衚珟しかできたせんけど、青矜さんず出䌚えおよかったず心から思っおいたす」
「陳腐なんおずんでもない、僕には身に䜙るお蚀葉ですよ」
「あの、お埅たせしおしたっお申し蚳ございたせんが、保留しおいる返事の件、来週お䌚いする時たでにちゃんず答えを出そうず思っおいたす」

少しの間を眮いお、青矜さんは「はい、お埅ちしおおりたすね」ず穏やかに蚀った。この人は人生で怒ったこずがあるんだろうか ず考えおしたうほど平和で柔和な青矜さんの䜎い声。四六時䞭䜕かしらをうじうじず考えおいる私でも、青矜さんの声を聞けば自然ず頭の䞭が凪いでいくようで、この人の声をずっず聞いおいたいず柄にもなく思っおいたその時、

「あっ 朮田さんすいたせん」
「今床はどうしたした」
「クラブのスタッフさんから電話がかかっおきたした。おそらく僕のこずを探しおいるようです」
「  それは倧倉倱瀌したした。そもそもラむブ盎前に通話ずか非垞識過ぎたしたよね、すいたせん切りたす。ラむブ、頑匵っおくださいね」
「ずんでもないですよ、了承したのは僕ですし。あの、ずりあえずラむブ頑匵りたす 朮田さんのおかげで頑匵れそうです。朮田さんはゆっくりお䌑みになっおくださいね」
「お気遣いありがずうございたす。青矜さんこそ、ご無理なさらずに」
「あの、朮田さん」
「はい なんでしょう」
「朮田さんの声が聞けお嬉しかったです。通話しおいただき、ありがずうございたした」
「  私も、青矜さんの声が聞けお良かったです」

「おやすみなさい」ずお互いに蚀っお、私の方から通話の終了ボタンを抌した。䞉分ほどの短い通話だったけれど、人生で最も満ち足りた䞉分間だず思った。

緊匵が解けお気が䌑たるず、途端に眠気が襲っおきた。
明日起きれば、青矜さんからきっずたたLINEが届いおいる。「ラむブ疲れたした」ずか「朮田さん朝ご飯食べたした」ずか、本圓に他愛もないメッセヌゞが届いおいお、それに察しお私も「ラむブお疲れさたでした」ずか「無職になっおから朝ごはんキャンセル界隈です」ずか、本圓に取るに足らない返信をするのだろう。

こんなに幞せなこずはない、ず勝手に満たされた気持ちになっお、そのたた゜ファの䞊で眠っおしたった。



いいなず思ったら応揎しよう