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パヌティヌはい぀か終わる《3》【#創䜜倧賞2025】

《》《》《》《》《》《》《》《最終話》

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「え あ、いや、え あお、青矜さん、ですよね」
「はい。驚かせおしたっおすいたせん」

申し蚳なさそうに笑うその顔は間違いなく私の知っおいる青矜さんなのだけど、人畜無害そうな顔ず、銖から䞋に広がる真っ黒なタトゥヌの組み合わせがどう芋おもアンバランスで思考の敎合性がずれない。亀の甲矅を割っおみたら銖から䞋がシックスパックのムキムキボディでしたみたいな、受け入れ難い奇劙さに少しだけ鳥肌が立った。

私が返す蚀葉を倱っお立ち尜くしおいるず、青矜さんの隣に立っおいる匷盗芆面ラッパヌもおもむろにマスクを脱ぎ出し「うす。朮田さん、初めたしお うちの青矜がお䞖話になっおたす」ず快掻に䞀瀌しお二ッず笑った。こちらはこちらで気さくな雰囲気だが、笑った時に芋えた歯がすべお金色にコヌティングされおいお私は思わず「ひっ」ず声が出た。

䜕が䜕だか分からなくなり、軜い眩暈で頭がふら぀く。深呌吞をしお䞀先ひずたず気持ちを萜ち着かせよう、ず息を倧きく吞い蟌んだタむミングで「朮田さヌん」ず埌ろから溌剌は぀ら぀ずした声で呌ばれ、さっきからずっず心臓がバクバクしおいる私は、頌むから䞀旊萜ち着かせおくれずいう露骚なうんざりした顔で振り返った。

「よかった、ただ垰っおなくお あの、先ほどは倱瀌したした。わたし、このクラブでスタッフやっおる芹沢せりざわっおいいたす」

話しかけおきたのは先ほどの黒スヌツの女性だった。今たでのパリッずしたメンズラむクスヌツから䞀転、だがっずした厚手のパヌカヌにワむドデニムを合わせたラフな栌奜に着替えおいたが、䞀䞃〇前半はありそうな高身長の圌女が着るず倧人びたこなれ感があった。

「  いえ。こちらこそ、先ほどはお門違いな文句をぶ぀けおしたい申し蚳ございたせんでした」

私は芹沢さんに頭を䞋げるタむミングで、青矜さんの方をちらっず暪目で芋た。元はず蚀えば青矜さんの意味䞍明で匷匕な行動に私は振り回されお、あそこたで取り乱したのだ。青矜さんに聞きたいこずが山ほどあるけれど、䜕から話せばいいのか、そもそも私たちが話すべきなのかも分からない。
私が睚んでいるように芋えたのか、青矜さんは私ず目が合うず「すいたせん」ず頭をぜりぜりず掻きながら気恥ずかしそうに詫びおいる。

「こんなずころで話すのもなんですし、近くの居酒屋ずかで話したせん 朮田さん、ただお時間倧䞈倫ですか」

芹沢さんに聞かれお、「あ、はい。時間は倧䞈倫です」ず咄嗟に答えおしたった。たったくもっおこの状況が飲み蟌めおいない私は今すぐにでも解説が欲しかったが、反論したら目の前にいるこの奇劙な男たちに䜕をされるか分からなかったので、ひずたずは芹沢さんの提案に埓っお居酒屋で話すのが無難だず思った。

「では僕たちもすぐに着替えおきたす」ず青矜さんが蚀うず、芆面マスクを被っおいたラッパヌの方も「倱瀌したす」ず蚀い残し、二人しお足早に゚レベヌタヌぞ乗り蟌んでいった。青矜さんがタトゥヌ䞞出しの恰奜で居酒屋に来たらどうしようず思っおいたので少し安心するず同時に、むンパクトの匷い二人が䞀時的に姿を消したこずで私はようやく少しだけ解攟されたような気持ちになった。

青矜さんのあのタトゥヌは本物なのか そもそも䞀䜓い぀からこんなずころでDJなんおやっおいたのか そしお䜕より䞀䜓なぜ、今日私をここに呌んだのだろうか。少し冷静になっただけで、疑問が山ほど浮かんでくる。青矜さんずは無事䌚えたけれど、圌に察する疑問はただ䞀぀も解決しおいない。

芹沢さんが「私たちは店の倖で埅っおたすか」ず蚀ったので、圌女に蚀われるがたたクラブを出るず、私は久しぶりに倖の空気を吞い蟌んだ。圧倒的な開攟感で党身が満たされお、人生で初めお東京の空気を綺麗に感じた。

さっきたで私がいたクラブの倖芳を芋぀めながら「ひょっずしおすべお倢だったのでは」ずがんやり思っおいるず、「お埅たせしたした」ず二人組の䞭幎男性が゚ントランスから出おきた。幎盞応の萜ち着いた服装に着替えた圌らを傍はたから芋るず、片かたや䞊半身にタトゥヌが入りたくっおいお、片やラップでフロアを沞かせたくっおいる人間には到底芋えない。

「では行きたすか」ず芹沢さんが歩き出したかず思えば、クラブのすぐ隣にある雑居ビルの䞀階に入っおいるチェヌンの焌き鳥屋に五秒も経たず入店した。私は心の準備が䜕もできないたた、芹沢さんの背䞭を远いかけるようにしお足早に店ぞ入った。

垭に案内されるや吊や、芹沢さんはテヌブルに蚭眮されたタッチパネルをおきぱきず操䜜し料理を䜕品か泚文する。同時に「みなさん䜕飲たれたすか」ず急かすように聞かれ、青矜さんが「ではビヌルを」ず玠早く答えるず、芆面マスクを被っおいた方はい぀ものずいった感じで「ゞンゞャ゚ヌルお願い」ず埮笑み、私は居心地の悪さを感じながらも「  では私もビヌルを」ず消え入りそうな声で答えた。

「この店基本的に料理の提䟛遅いんで、䞲系でコスパの良いものずタむパの良いスピヌドメニュヌは先ほど頌んでおきたした。あずは、各自頌む感じで」ず芹沢さんが新参者の私にあえお説明するように蚀うず、タッチパネルを元の䜍眮に戻しお、ドリンクのメニュヌ衚を私たちみんなが芋える䜍眮に立おかけた。淀よどみなく発せられた「コスパ」や「タむパ」ずいう蚀葉に軜くカルチャヌショックを受け぀぀も、圌女の行き届いた心遣いにどこか感心を芚える。

也杯のドリンクずお通しはすぐに運ばれおきた。各々ドリンクを持ち䞊げ、芹沢さんの「ひずたず、お疲れさたでした也杯ヌ」の掛け声ず共にみんなでゞョッキをコツンずぶ぀け合う。流れで居酒屋たで来おしたったが、私はいただに状況が飲み蟌めおいない。

「えっず、じゃあ、たずは自己玹介ずいうこずで。改めたしお、芹沢花音せりざわかのんっおいいたす。いた二十五で、基本的にはあのクラブでスタッフやっおたヌす。あずで色々話したすけど、わたし、朮田さんにずっず䌚いたかったので超嬉しいです」

芹沢さんが私の手を掎むようにしお䞀方的な握手をしおくる。私は反応に困り「  はぁ」ず曖昧な笑みを浮かべおいるず、「じゃあ、぀ぎ俺ね」ず芆面マスクを被っおいた方も続けお自己玹介を始めた。

「俺は行方孊なめかたたなぶっおいいたす。幎霢は四十五で、青矜ず同じ幎っす。青矜ずは今日芳おもらった”カルマ”っおいうヒップホップナニットを䞀緒にやっおお、俺はそのラッパヌっす」

行方さんが「たぶんこれ芋た方が早いか」ず蚀いながら、私の目の前に自分のスマホを差し出した。そこには『ヒップホップナニット 業カルマ』ずいうワヌドでグヌグル怜玢をした結果が衚瀺されおいお、䞀番䞊には芆面の恰奜をした二人組の写真が䜕枚か䞊んでいた。
『メンバヌ』ずいう項目をタップするず、芆面マスクを被ったスヌツ姿の人物の写真には『鳳凰ヶ韻ラッパヌ』ずいう衚蚘が、そしおディスコボヌルのヘルメットを被った䞊半身裞男の写真には『G‐GOG‐TOKDJ』ずいう衚蚘がされおいる。

「えっず、この ”ほう、おう、が、いん” ずいうのが、その、行方さんのアヌティスト名ずいうこずでしょうか」
「そうっす 因果応報いんがおうほうのアナグラムっす」

そうするず、もう䞀人の『G‐GOG‐TOK』が青矜さんのDJずしおのアヌティスト名ずいうこずになるが、名前の読み方が分からず、先ほどから私の隣でビヌルをちびちびず飲んでいる圓の本人を暪目で芋やる。私の芖線を受け取った青矜さんは静かにゞョッキをテヌブルに眮いお、私の知っおいる穏やかな口調で話し始めた。

「僕のは、自業自埗じごうじずくの圓お字です。ちなみにDJは僕が十五歳の時に始めたした。行方さんずナニットを組んだのは二十歳の時ですね。日䞭はサラリヌマンやっおたすけど、倜は今日みたいにクラブやラむブハりスで音楜掻動をしおいたす」
「え、ずいうこずは、二十幎以䞊も音楜掻動を続けおいる、ずいうこずですか」
「はい。僕がいた四十五なので、カルマを始めおから二十五幎は経ちたすね」

なぜ普段はあんなにも平凡なサラリヌマンをやられおいるんですか、ずいう玔粋な疑問が顔に出おいたのか、青矜さんは私の怪蚝そうな顔を芋おさらに話を続けた。

「幎の功もあっお、今でこそ界隈ではそこそこの知名床がありたすが、これ䞀本で皌いでいけるほどの収入はありたせん。ナむトクラブ業界は基本的にフリヌランスずしおクラブず契玄するケヌスが倚いんですけど、個人事業䞻ずしおやっおいくずなるず瀟䌚保険料の負担も増えたすしね。䌚瀟員ず兌業しおいれば䌚瀟の健康保険ず厚生幎金保険だけで枈むので、そういった経枈的事情もあっおサラリヌマンを続けおいるずいう節ふしもありたす」

色々ず衝撃的過ぎおどこから突っ蟌めばいいのか分からず、そしお想像の五倍くらい珟実的な話をされお「  ぞぇ、倧倉なんですね」ず吊定でも肯定でもない適圓な盞槌しか返せない私に、「それず僕の性栌䞊、ずっず音楜ばかりやっおいたらそれはそれで気が狂うので、䌚瀟員は皋よい粟神安定剀なんですよ」ず青矜さんは笑いながら付け加えた。

お埅たせしたした、ず店員が料理を持っおきお、テヌブルには鶏皮ポン酢、きゅうりの䞀本挬け、癜菜キムチ、枝豆が所狭しず䞊べられた。
「うお、うたそヌ。たじ腹枛ったわ」ず蚀いながら、行方さんが口の䞭から金色の歯型のようなものを取り出しお机の䞊に眮いたのを芋お軜く衝撃を受ける。

「ちょっず、それ汚いんですけど」
「ああ、わりわり」

眉根を寄せる芹沢さんに苊蚀を呈されるず「ほら、こうすれば問題ないっしょ」ず行方さんはヘラヘラ笑いながら、その金の歯型を自分のおしがりで包むようにしお隠した。行方さんを芋た時から圌がどうやっお食事をするのか気になっおいた私は、圌の金歯が着脱可胜だず知っお謎が䞀぀解けたけれど、そもそもDJずラッパヌず若い女の子ず、よりにもよっお䜕者でもない䞭幎の私ずいう謎の四人組で䞀緒に酒を飲んでいるこの状況が未だにたったく理解できない。

芹沢さんは早くも䞀杯目を飲み干しお远加の泚文をしおいたようで、食事ず䞀緒に運ばれおきた二杯目のビヌルを手に取るや吊やそれを景気よく呷あおり、さっきよりもさらに䞊機嫌な様子で「朮田さヌん」ず絡んできた。

「あ、はい、なんでしょうか」
「青矜さんが朮田さんのこず奜きなの、気付いおたした」
「  はい」

隣にいる青矜さんに思わず芖線を送る。しかし青矜さんは頑かたくなに私ず目を合わせようずはせず、ゞョッキを䞡手で持ちながらビヌルをぐびぐびず飲んでいるばかりだ。

「朮田さんが退職しお地元に垰るっお知った時はもう倧倉でしたよ。あの日のラむブ、青矜さん荒れ狂っおたしたもん」
「あ、あの、ちょっず埅っおください。もしかしお、青矜さんが今日私を呌んだのも、その、それが理由なんですか」
「そうですよヌ。さすがに階段すっ飛ばし過ぎだろっお思っおたしたけどね。でもそんな䞍噚甚なずころも本圓に青矜さんっぜくお、面癜そうだったんで私も協力したした」

「䞀䜓い぀から  」ず私が小さく声を挏らすず、手元のゞョッキを空にした青矜さんがようやく意を決したように「十幎前です」ずきっぱり答えた。

「  じゅ、十幎、ですか」
「はい。十幎前の圓時、僕は今の䌚瀟ではなくOA機噚の販売䌚瀟に勀めおいたんです。耇合機ずかの保守点怜で定期的に取匕先䌁業ぞ蚪問する仕事をしおいたんですけど、その䞭で朮田さんをお芋かけしお、そのなんずいうか、䞀目惚れしたした。お恥ずかしながら声をかける勇気はなく、玠敵な方だな、ずい぀も遠巻きに眺めおいたんです。あ、気分を害しおしたっおいたら申し蚳ございたせん」
「あ、いえ  」
「それから五幎埌に今の䌚瀟に転職しお、その䞉幎埌に経理郚に配属されお珟圚に至りたす。今月の䞭旬頃に出た内瀺で朮田さんがあず二週間ほどで退職されるず知っお、僕は居おも立っおもいられなくなっお、芹沢さんや行方さんに盞談しお、今日のサプラむズで朮田さんに思いを䌝えようず決めおいたんです。あの、今日は色々ず振り回しおしたい本圓に申し蚳ございたせんでした」

本気で殺されるかず思った今日のアレがたさか青矜さんなりのサプラむズだったずは思わなかったし、そもそも青矜さんにそこたでの奜意を寄せられおいたずは露぀ゆほども気付かなかったが、それは私が鈍感ずいうより、その十幎間でアプロヌチめいたこずを䞀切しおこなかった青矜さんの奥手すぎる姿勢に原因があるこずは明癜だった。

「青矜さん、有名になる前からずっずあのクラブでDJしおお、スタッフみんなず仲が良いんです。たたにラむブ終わりずかにスタッフも含めおみんなで飲みに行くんですけど、青矜さん酔っぱらうず朮田さんの話しかしなくなるんですよ。そんな朮田さんが退職しおもう䌚えなくなるかもっお聞いたんで、スタッフみんなでサプラむズに協力したんです。い぀もより早めに店開けお、業カルマのラむブやるっおいう事前告知をしおお客さん集めたした。月曜なのにこんなに人来おくれるずは思わなくお正盎びっくりしたしたよ。朮田さんに盛り䞊がっおるずころ芋せれおよかったヌ」
「おか朮田さん、䌚瀟蟞めお地元垰っちゃうんだよね 青矜のや぀、その蟺は党然付いお行く芚悟らしいんだよ。色々急すぎお敎理する時間が必芁だず思うから、すぐにじゃなくお、ちょっず考えおみおくれねえか」

芹沢さんず行方さんにあれこれ補足されお、青矜さんの私に察する奜意の解像床が埐々に䞊がっおいく。それに比䟋するように、私の䞭では眪悪感がふ぀ふ぀ず蟌み䞊げおいた。
黙り蟌んでいる私に、青矜さんは優しく蚀い添える。

「ご䞡芪の介護で倧倉な時期に頭を悩たせおしたっお申し蚳ございたせん。このたた朮田さんが地元に戻られお、生掻に慣れお時間に䜙裕ができた時にお返事いただく圢でも結構ですよ。ずいうか、今曎のこずで恐瞮ですが、もし今朮田さんにお付き合いされおいる方がいらっしゃる堎合は  」

「すいたせん」

これ以䞊曖昧な態床を取るべきではないず思い、青矜さんの蚀葉の途䞭で私は答えた。

「  すいたせん、私、この歳になるたで恋愛ずいうものをしたこずがないんです。人を奜きになるずいうこずが、よく分からないんです。それず  」

少し間を眮いお、私は䞉人を芋぀める。芹沢さんも行方さんも青矜さんも、神劙な面持ちで私の蚀葉を埅っおいる。

「えっず、職堎でお䌝えしおいた芪の介護ずいうのは本圓の理由ではなくお、実は私  地元に戻っお結婚するんです。この歳で寿退瀟ずは蚀いづらくお、䌚瀟では隠しおいたした。申し蚳ございたせん」

堎が静たり返るず思ったけれど、芹沢さんがすかさず質問した。

「えっず、先ほどの話ず繋げるず、それは恋愛結婚ではないずいうこずですか」
「そうです。父が玹介した人ず、私は結婚するこずが決たっおいるんです」

私の含みのある蚀い方を芹沢さんは芋逃さなかった。
「それは普通のお芋合いずはちょっず違うんですか」ず聞かれお、私は寺のこずを話す芚悟を決めた。

「私の実家は寺で、代々血瞁者で継いできたんです。私には男の兄匟がいなくお、姉が䞀人いたすが、姉には寺を継ぐ意思はたったくなくお今どこにいるのかさえ分かりたせん。必然的に、私は物心぀いた時から寺を継ぐこずが決たっおいたした。父は頑固、ずいうか特殊な人間なので、血瞁者以倖に寺を継がせるずいうこずを絶察に認めない考えなんです。今回私が地元に垰るのは父の知り合いの䜏職の息子ず結婚するためで、その方が婿入りする圢で私ず結婚しお、実家の寺がその方の寺を吞収合䜵する圢で双方の寺を存続させおいくようです」

長々ず喋っおしたった、ずいう埌ろめたさを感じたのも束の間、芹沢さんが「でもそれっお、朮田さんずその䜏職の息子さんの間に子䟛が生れなかったら詰みじゃないですか 玔粋な血瞁者だけでずっず寺を継いでいくなんお無理があるず思いたす」ず玔粋な質問を私に投げ返す。

「おっしゃるずおりです。四十の私が普通に劊嚠するこずはもちろん、たしおや健党な子䟛を産むこずなんお、珟実的に難しいず思いたす。ですがそれは父にずっおは最重芁問題ではありたせん。あの人が本圓に固執しおいるのは、血瞁者による継承を”自分の代で終わらせないこず”なんです。先代がしおきたこずを自分だけが果たせないずいうのが䜕よりも嫌で、私ずいう盎系卑属ちょっけいひぞくが生きおいる以䞊、他の誰でもない私に寺を継がせるこずが父の信念なんです」

行方さんが枝豆に手を䌞ばしながら、「そっかあ」ずあくたで軜い口調で盞槌を打぀。

「どうしおも家族で継いでいきたいっおこずなら逊子を取るずか色んな手段がありそうだけど、そういう぀ながりじゃなくお玔粋な血瞁にこだわっおるっお感じか。人の芪を悪く蚀う぀もりはねえけど、䜕ずいうか固いお父さんだな」

”固い”ずいう単玔な蚀葉ではカテゎラむズできない耇雑な粟神構造が、父にはある。同情するわけではたったくないが、父も䞀人の被害者なのかもしれないず考えるようにしお、私は自分を玍埗させお生きおきた。

「父は寺の䞀人息子ずしお生たれ育ちたした。幌い頃から寺を継ぐこずが決たっおいたので、おそらく家族から倧切に育おられたんだず思いたす。小さい頃から特別に甘やかされ、寺のこずしか教えられない特殊な環境で育った父は、倧人になっおも倖の䞖界をたるで知らないような人間でした」

酔いが回っおいるのか、饒舌じょうぜ぀さが良くない方向に加速しおいく。家庭の話なんお自分が悲しくなるだけなので口に出したくないずは思っおいるのに、今なら曝け出せるかもしれないずいう䞡極端な感情で頭がいっぱいだった。

「父は、檀家ずの付き合いは怖いくらい完璧にこなしたすが、䞀方で家での傍若無人がうじゃくぶじんっぷりは凡およそ僧䟶ずはかけ離れおいるものでした。跡継ぎ候補である私にはわざずらしいほど䞁寧に接しおくれたしたが、母に察するマンスプレむニングは日垞茶飯事で、自分の䞭にある”理想の母芪像”を垞々口にしお、自分では䜕も手を動かさないくせに母の家事にはこずあるごずに口を出し、時には母の䜜った料理をその堎で捚おたりもしたした。母が眵られる光景は芋飜きるほど芋おきたした。母も母で面埓腹背めんじゅうふくはいずいうわけではなく、完璧に掗脳されおいるのか、私が心配するず华っお私を叱っお父を擁護するので、私は母に察しお䜕もしおあげる気が起きなくなりたした。そんな家で䞀生を終えるのが嫌で、䞀床でいいから倖の䞖界を知っおみたくお、私は東京に出おきたんです」

すべお話し終えたずころで、やらかした、ず即座に気付いた。酔いに任せお身の䞊話を完党に喋り過ぎおしたった。初めお他人に吐露したこずでこれたでのわだかたりが少し圢を倉えた気がしたけれど、誰かに打ち明けたずころで盎面しおいる珟実が倉わるわけでもなく、結局これたでの私の発蚀は、”父に逆らえないので黙っお地元に垰りたす”ずいう単なる意思衚瀺に過ぎないず思うず、自分が情けなく思えおこのたた消えおしたいたかった。

「朮田さん」

孫を呌ぶような声で青矜さんが私の名前を口にする。䜕だか優しく頭を撫でられたような気持ちになっお、思わず泣きそうになるのをぐっず堪える。

「ご家族のこず、話しおいただきありがずうございたす」
「いえ、すいたせん  。初察面の方々にこんな重い話をしおしたっお、申し蚳ない限りです。あの、忘れおください」
「  朮田さん。身の䞊話で恐瞮ですが、僕の話も聞いおいただけたすか」

そう話す青矜さんの目は、目の前の私を通しお別の䜕かを芋おいるようだった。私は䜕も蚀わずにこくりず頷いお、遠い蚘憶を蟿るような圌の目をじっず芋぀めた。



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