【勧誘】エレベーターでついてきた人を一撃で帰した話
【勧誘】エレベーターでついてきた人を一撃で帰した話
昔の話だ。
同じマンションに、宗教に入っている人がいる。
顔見知り、くらいの距離感だ。
ある日、幼稚園の迎えの帰り。
子どもと一緒に駐車場を歩いていたら、その人にばったり会った。
近所の人と話し込んでいたが、こちらを見て一瞬黙り込んだ。
軽く会釈をして、そのままエレベーターへ。
――なぜか、一緒に乗ってきた。
まあ、同じマンションだし。
しかしその人、行き先のボタンを押さない。
というかその人は一階の住民だ。
――おかしい。
自分の階に到着しエレベーターを降りる。
廊下を歩く。
家の前に着く。
……ついてきている。
――偶然では、ない。
嫌な予感がした、その瞬間。
「今度、ありがたい集会がありまして」
来た。
玄関の前で、そのまま勧誘が始まる。
宗教だ。
「次の木曜日あたり、どうですか?」
「迎えに来ますよ」
「とりあえず参加だけ」
ぐいぐい来る。
ドアの前。逃げ場はない。
子どもは隣で、もじもじしている。
ああ、これはまずい。
私は一度だけ、子どもの顔を見た。
そして、相手に向き直る。
「――すみません」
一拍おいて、続けた。
「この子、トイレに行きたいって言ってるんです」
相手が一瞬止まる。
「話が長くなるなら、失敗するかもしれないんですが」
さらに、もう一言。
「その場合、片付けはしてもらえますか?」
沈黙。
数秒の間。
「……あ、また今度にしますね」
その人は、すごすごと帰っていった。
ドアを開ける。
子どもは無事、トイレに間に合った。
それだけで、今日はもう十分だと思った。
