カラスにお金を稼がせようとした人類の末路
カラスにお金を稼がせようとした人類の末路
ある日、私は妙な動画を見つけた。
カラスに小銭を拾わせる動画である。
コインを機械に入れると、餌が出る。
カラスはそれを学習し、落ちている小銭を集めて運ぶ。
動画のタイトルは、だいたいこんな感じだった。
「最終訓練中!大金持ちになれるか!?」
なるほど。ジョジョのスタンドで言うとハーベストのようなものだ。
ついに人類は労働を外注する時代に突入したらしい。
しかも相手はカラスである。
私は気になって調べてみた。
すると、この動画には元ネタがあった。
2008年。
アメリカの技術者ジョシュ・クライン氏が発表した「カラスの自動販売機」というプロジェクトだ。
仕組みは単純。
まずコインと餌をばらまく。
次に、
「コインを穴に入れると餌が出る」
という機械を置く。
最後には餌を撤去し、コインだけを残す。
するとカラスは、
「コイン=食券」
と学習する。
理論上は、勝手に小銭を集めてくれる優秀なアルバイトの完成である。
しかし現実は、そう甘くなかった。
まず問題になったのは、カラスがお金の概念を理解していないことだ。
考えてみれば当然である。
カラスにとって重要なのは貨幣価値ではない。
サイズ感である。
光り方である。
なんか拾えそうな感じである。
結果として回収ボックスには、
小銭よりも、
プラスチック片。
ビンの王冠。
謎のゴミ。
よく分からないキラキラした物体。
などが大量に投入された。
カラスからすると、
「これで前に餌もらえたじゃん」
である。
人類の経済システムなど知ったことではない。
さらに問題は続く。
賢いカラスは学習した。
お金を見ると餌が出る。
つまり。
お金そのものに価値がある。
すると次に何が起きるか。
地面を探すより、人間から奪った方が早い。
極めて合理的な結論である。
人類はここで重大なミスに気づく。
自分たちは今、
野生動物に窃盗のインセンティブを与えているのではないか。
財布。
紙幣。
小銭。
人間が持っている物に対する興味が強まり、地域トラブルを懸念する声も出始めた。
人類は働きたくなかっただけなのに。
なぜか犯罪心理学の実験になってしまったのである。
ところが、この話には続きがある。
現在、一部の地域では別方向の活用が進められている。
お金ではなく、ゴミを拾わせるのだ。
特にタバコの吸い殻。
吸い殻を機械に入れる。
餌が出る。
カラスは吸い殻を集める。
街はきれいになる。
誰も財布を奪われない。
全員が幸せである。
人類はようやく学んだ。
カラスに貨幣経済を教えるより、
ゴミ拾いをお願いした方が平和だと。
しかし私は少しだけ思う。
もしカラスたちが本気で経済を理解したらどうなるのだろう。
吸い殻を拾うより、
吸い殻を捨てる人間を増やした方が儲かる。
そう気づいた瞬間、
我々は新たな資本主義の誕生を目撃するのかもしれない。
そしてその頃には、
人類はカラスの下請けになっている気がする。
