芋出し画像

「春の劖粟」ず出䌚う䜐枡の山・花玀行

 スプリング・゚フェメラルずいう蚀葉を知ったのは長野に䜏んでいた20代のころだった。「゚フェメラル」ephemeralは「短呜な・はかない」ずいう意味で、春の䞀時期にだけ咲いお倏になるず姿を消し秋冬を地䞋で過ごす怍物を指しおいる。雪解けずずもに春先から短い間、森の䞭などでひっそりず可憐な花を芋せおくれるこずから「春の劖粟」ずいう別名もある。長野県北郚では5月の倧型連䌑明けごろが芋ごろだった。
 この花たちに久しぶりに出䌚いたくお、5月20日から䜐枡の山を蚪れるこずにした。

䜐枡の山ならではの魅力

 党囜各地で里にたでクマが出没しお被害が深刻化しおいる。登山も、倧半の山域ではあれこれ察策を取ったずころでリスクをれロにするこずはできない。九州や千葉県にはクマがいないずのこずだが、䜐枡は新期県の本土のいちばん近い堎所からでも30㎞以䞊離れおいおクマはいない。さらに各地の山で高山怍物の食害を起こしおいるシカも䜐枡にはいないため、花が豊富だずいう倧きな魅力がある。
 䜐枡の山は最高点の金北山きんぜくさんでも暙高1172で、4月に雪が消えるず日垰りたたは1泊2日で手ごろに歩けるトレッキングコヌスを蚈画できる。暙高が高くない䜐枡の山は倏は暑さが避けられない。䞀番の登山適期は花が盛りずなる春で、これに合わせお季節運行の「花鑑賞ラむナヌ」ずいう予玄制の路線バスが4月䞋旬から5月末たで毎日運行される。
 このバスドンデンラむナヌで初日は䞡接枯からアオネバ登山口たで入り、3時間ほどの半日コヌスで䜐枡の山のほが䞭倮にあるドンデン高原ロッゞに泊たり、翌日は最高峰の金北山を越える7時間の瞊走路を歩いお癜雲台ずいうバス停から垰りのバス金北山ラむナヌで䞡接枯に戻るずいう蚈画を立おた。金北山ラむナヌは䞡接枯から䞊っおいく䟿は運行されないため、タクシヌやレンタカヌを䜿わないかぎり癜雲台からの逆コヌスは取れない。
ほかのコヌスも長い車道歩きをしない限りバスだけでは登れないため、今回のコヌスが珟実的で、しかも䜐枡の山の魅力を満喫するのに郜合がよい。

登山口からドンデン高原ぞ

 新期枯からカヌフェリヌたたは高速船のゞェットフォむルで䞡接枯に着くず、枯の建物のすぐ前からラむナヌバスが出る。東京を朝6時過ぎの䞊越新幹線に乗るずどちらの船を利甚しおも正午過ぎのドンデンラむナヌに乗るこずができ、アオネバ登山口たでは15分で着いた。アオネバは「青い粘土」ずいう意味だそうで、確かに登りの登山道にはずころどころ青磁色の粘土質の土が芋られた。
 登山口の暙高は296。今日の最高点はドンデン高原の940の尻立山なので、暙高差640ほどの手ごろな登りである。バス停から5、6分歩くずすぐに山道になり、暹林垯の沢沿いの比范的緩やかな登りが続く。翌日から雚の予報のためか湿床は高いが、曇り空で日差しがないのでそれほど暑くない。
 たず目に぀く花はピンク色が鮮やかなタニりツギだった。

タニりツギ
名前の通り沢沿いで倚く芋られた

 平日のためか登山者が少なく、さっそく野鳥のさえずりを楜しめる。高音の矎声はオオルリ、䜎めに「ホヌホヌ」ず鳎くのはツツドリのようだ。3枚の倧きな葉がめだ぀゚ンレむ゜りは、花期がもっず早い春先のため花は芋぀からず黒っぜい実がなっおいた。今幎は郜䌚でも春の花の開花が早く、山はそろそろ初倏の装いかず少し懞念したが、歩くに぀れこの季節ならではのスプリング・゚フェメラルが次々に珟れおうれしい。
 真っ癜の花が茪のように咲くオドリコ゜りは初めお名前を知った。郜䌚の原っぱに3月ごろからたくさん咲くヒメオドリコ゜りはピンク色の倖来怍物だが、玔癜の花が倧きいオドリコ゜りは山地で芋られる日本の圚来皮である。

オドリコ゜り
葉の圢でわかるようにシ゜科である

 控え目な黄色い花を咲かせたランの皮類を芋぀けた。゚ビネに䌌おいるがもう少し花がたばらで目立たない。䜕ずも蚀えない枅楚な趣があっお、今回芋た花の䞭では䞀番奜きになった。図鑑で調べた結果、コケむランず芋られる。このコヌスのように湿り気のあるブナ林などに咲くずいう。

コケむラン

 登山靎が濡れない皋床の小さな枝沢を䜕床も枡りながら少しず぀暙高を䞊げおいくず、鮮やかな濃い赀玫がめだ぀ダマオダマキが咲き、癜い现長い筒状の花をいく぀も付けるナリの仲間のホりチャク゜りも増えおきた。

ダマオダマキ
ホりチャク゜り
暗い暹林垯を奜むずいう
ズダダクシュ

 䞊の写真の花は倉わった名前だが、長野の方蚀で「ズダ」は喘息、「ダクシュ」は薬皮。昔から民間薬ずしお䜿われたこずが由来らしい。癜い小さな花の咲き方はオサバグサずよく䌌おいるが、葉の圢が違うので区別できる。
 次の写真のピンク色の花は、遅くたで残る雪枓の脇などに咲くメゞャヌな高山怍物・コむワカガミずそっくりだが、葉が倧きいのでオオむワカガミだず芋られる。このあず皜線でも数倚く芋られ、花の色は少し濃いピンクから癜に近いものたでさたざただった。

オオむワカガミ

 りグむスのさえずりに癒やされながらだいぶ汗をかいたころ、歩き始めお1時間半匱でアオネバ十字路ずいう地点に着いた。ここはもう䞻皜線で、巊ぞ行くず金北山ぞの瞊走路、右は今日の目的地のドンデン高原に通じる2぀の道があり、盎登路ではなく巻きながら登る右の緩やかな道に入った。
 花は次第に、スミレの皮類のほか、スプリング・゚フェメラルの代衚栌ずも蚀えるニリン゜り、新期など日本海偎の山に倚いずいう゚チゎキゞムシロなどが䞻圹ずなる。特にニリン゜りはあちこちで足元に芋事な矀萜が広がり、掟手な花ではないが癜い姿がずおも可憐だった。

ツボスミレ
スミレの䞭でいちばん小さい
ニョむスミレが別名のようだ
里に咲くタチツボスミレの仲間ずみられる
ニリン゜り
゚チゎキゞムシロ
名前の通り新期県などの日本海偎の
山でよく芋られるずいう

 長幎、図鑑でしか芋たこずがなかった憧れの花・ヒトリシズカを芋぀けた。静埡前に由来するずいう名前の通り、玠敵な花だ。

ヒトリシズカ䞀人静

 倧き目の葉ず花がめだ぀サンカペりは、もう少し倚いず期埅したが1か所だけ出䌚えた。

サンカペり

 そしおスプリング・゚フェメラルの女王ずも蚀うべきシラネアオむ。ピヌクを少し過ぎおいるのかしおれおいる株もあったが、元気な姿を撮圱したのが冒頭のタむトル画像であるピントが甘かった。

 時間が経぀のを忘れお耇雑な地圢を回り蟌みながら緩やかに登っおいくず、開けたドンデン高原の䞀角に出る。しっかりした避難小屋があり、氎堎はないので䞋から持っお行く必芁があるが、自炊の装備ず寝袋を持参すれば十分泊たれそうだ。
 ずころどころに少し也燥し始めおいる湿原があっお、1か所ミズバショりが咲いおいた。ケンケヌンずいうキゞの雄の声が聞こえたほか、ホトトギスも鳎いお初倏の雰囲気だ。さらに緩く登るずT字路があり、右ぞ向かうずドンデン高原ロッゞ、巊は䜐枡の山ずしおは最北の雪畑山や金剛山に通じる瞊走路ずなる。この分岐から少し巊ぞ進むず、巊手のブッシュの先にドンデン池ずいう静かな池があった。池畔には2皮類のスミレや゚チゎキゞムシロが倚く、花を荒らさないようにく぀ろぎたい聖地だ。

静謐なドンデン池

 池から分岐に戻りそのたた緩やかな登りを20分足らずで今日の最埌のピヌクである暙高940の尻立山に着いた。北西方向には翌日のコヌスずしお蚈画した金北山ぞのなだらかな皜線が広がる。金北山は日本䞉癟名山で、なかなか立掟な山容だ。明日の予報は雚で、雚量が少なめでない限り瞊走は断念かもしれないず思いながら眺めたので、名残惜しい山䞊みだった。

尻立山から䜐枡の最高峰・金北山巊端ぞの瞊走路を望む
レンゲツツゞ
チゎナリ

 あずは今日の宿に向かっお156分䞋るだけだ。山頂呚蟺には初倏の高原に代衚的なレンゲツツゞが鮮やかな花を咲かせ、芋ごろだった。やはり初倏の䜎朚・りラゞロペりラクの濃い玅色の花もたくさん芋られる。日陰になる草地には可憐なチゎナリが控え目に咲いおいお、この山の怍生の豊かさはやはりシカがいないためかもしれないず実感した。今日は明るいうちは雚の心配がなさそうなのでのんびり歩いお、午埌4時過ぎにドンデン高原ロッゞに着いた。

快適なドンデン高原ロッゞ

 登山のベヌスず軜い散策の拠点を兌ねるドンデン高原ロッゞは暙高が890で、マむカヌでも蚪れるこずができる。春の花、涌しい倏、秋の芋事な玅葉を楜しめるだけでなく、開けた堎所に建おられおいるため䞡接枯呚蟺を盎䞋に芋䞋ろし、晎れおいれば察岞の新期垂などの倜景、空気の柄んだ日はさらに北から東北の鳥海山・月山、飯豊いいで・朝日連峰、越埌駒ヶ岳や巻機山たきはたやた、劙高山など頞城䞉山、さらには北アルプスの癜銬岳や剣岳たで䞀挙に芋えるずいうほかにあたり無い展望スポットである。倜に晎れおいれば倩䜓望遠鏡で惑星やさたざたな星座を芳察するこずもできそうだ。

 颚呂はそれほど倧きくないが、登山の宿泊で入济できるのはありがたい。郚屋は二段ベッドが2぀ある郚屋を3人で利甚した。食事が倧倉おいしく、和掋折衷の手の蟌んだ食材やカレヌがおかわりできお十分に満足した。宿の䞭は電波が匱かったが、昌間芋た花の名前をネット怜玢で調べる䜜業を楜しむ。窓からしばらくは䞡接枯呚蟺の倜景が芋えたが、倜に次第に雚が本降りになり、明日はやはり無理かなず思いながら床に぀いた。

 翌朝、時間雚量3皋床なら雚具の䞊䞋を着けお予定の行皋を行く腹づもりだったが、雚・颚がたすたす匷たっお、ピヌク時は時間雚量が10近く、颚も67吹いおいるようだったので迷わず瞊走を断念した。頌んでおいた匁圓を食べ、おいしいコヌヒヌでゆっくり過ごす。䞋山予定地だった癜雲台からのラむナヌバスをキャンセルし、その代わりにロッゞから車道を歩いお34分䞋った所から午前10時に出る䞡接枯行きのバスを予玄しお乗った。

歎史ず文化ず矎食の旅に転進

 䞋山埌は、メンバヌの3人の志向が埮劙に異なるので事前の盞談通り別行動ずした。私は和歌・短歌の本を曞くために癟人䞀銖の最埌に歌が眮かれた鎌倉時代の順埳倩皇の旧蹟などをもう1泊しお回る行皋を組んでいた。
 瞊走の䞭止によっお歎史探蚪の旅に1日半を䜿えるこずになったので、蚈画を緎り盎す。䜐枡は路線バスが比范的䟿利で、時刻衚ず路線図を調べながら、この日は順埳倩皇が承久の倉で鎌倉幕府によっお䜐枡に流されお䜏んだずみられる「黒朚埡所跡」や、倩皇が珟地で22幎間を過ごしお亡くなった埌造られた埡陵などを巡った。

順埳倩皇の黒朚埡所跡
真野湟 恋が浊

写真の恋が浊は順埳倩皇が船で䜐枡に流されお䞊陞した堎所ずされおいる。䞡接枯ずは反察偎の真野湟にある静かな浜蟺だ。1978幎に䜐枡に䜏む曜我ひずみさんが自宅近くで母芪ず䞀緒に北朝鮮に拉臎された珟堎も同じ真野湟にあり、写真の浜蟺から2㎞䜙りしか離れおいないこずを知った。
 この日は真野新町ずいうバス停からすぐの䌊藀屋ずいう旅通に泊たった。
街道沿いなのにずおも静かな宿で、近くでさえずるむ゜ヒペドリずりグむスの矎声が郚屋にいおも聞こえおうれしい。倜・朝の食事では、ずりわけ䜐枡の米を䞊手に炊いたご飯のおいしさに感動した。
 米ず氎がおいしい䜐枡には5぀の酒蔵がある。宿からも近い尟畑酒造に立ち寄っお䞊質の玔米酒を詊飲した。
 たた、今回は残念ながらトキを芋぀けるこずはできなかったが、䌊藀屋の六代目で䜐枡PRの写真家もしおいる䌊藀善行さんによるず、トキを芋るのに䞀番おすすめの季節は矜の色が矎しく集団行動をする秋で、遠くから芳察するこずが肝心。写真でトキの姿を捉えるには400以䞊の望遠レンズがあるずよいそうだ。

 最終日は1434幎に䜐枡に流された䞖阿匥の立ち寄り先ずしおも知られる長谷寺ちょうこくじを蚪ねた。路線バス「南線」の畑野十字路ずいうバス停から2.5㎞、歩いお35分ほどの山の䞭にあり、杉の巚朚に囲たれた幜邃な叀寺だった。ご䜏職に案内しおもらっお平安時代埌期の䜜ずされる背䞈1䜙りの十䞀面芳音立像を芋孊させおいただいた。
 3日間を過ごした䜐枡は、花や鳥など自然の豊かさに加え、知るず味わい深い歎史・文化や忘れおはいけない歎史があり、豊かな食材も魅力的な地だった。登山のリベンゞを兌ねおぜひずもい぀か再蚪したい。

【埌蚘】 
 和歌・短歌をテヌマに別途 noteでの連茉を始めおいたす。順埳倩皇に぀いおは7月ごろに癟人䞀銖を掘り䞋げる䞭で詳しく蚘す予定です。連茉は以䞋の私のクリ゚ヌタヌペヌゞにありたすので読んでいただければ幞いです。


いいなず思ったら応揎しよう