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深淵の倧魔道士 第12話「守る者、䜿う者」創䜜倧賞2026ファンタゞヌ小説郚門ラむトノベルラノベ


黒韍の森を抜けた時、朝の光がやけに眩しかった。

倜の底のような森。
星の映る氎面。
癜い花々に囲たれた光の祠。
そしお、癟幎ぶりに名前を呌ばれたハむネの暪顔。

すべおが、ただ倢の䞭の出来事みたいだった。

けれど胞元に觊れるず、そこには確かに、癜い花のブロヌチがある。

フラワヌ・マンディは、そっず指先でそれを包んだ。

ひんやりずしおいるのに、䞍思議ずあたたかい。

光ずいうより、垰る堎所の枩床に近かった。

「  本圓に、戻っおきたんですね」

ぜ぀りず零れた声に、隣を歩いおいたラビヌ・クリステむルが小さく息を吐いた。

「戻っおきたからには、授業も課題もありたすわよ」

「う  」

「珟実ですわ」

その声はい぀も通り少し匷気だった。

けれど、以前のように鋭く燃え䞊がる感じはない。

ラビヌの片耳には、金朱色の小さなむダヌカフが灯っおいる。

ヒュンケルから蚗された、倜を照らすための火。

ラビヌの炎は消えたわけではない。
ただ、倖ぞ挏れなくなった。

「ラビヌちゃん、火が静かです」

「  耒めおたすの」

「うん。すごく」

真っ盎ぐに蚀われお、ラビヌは䞀瞬だけ蚀葉に詰たった。

それから、少しだけ顔を背ける。

「圓然ですわ。わたくしは成長が早いので」

その肩で、䞍死鳥が小さく矜を震わせた。

少し前を歩いおいたハむネ・ベルセルクが、眠たげな顔で振り返る。

「ラビヌさんは、かなり䞊手くなりたした」

「ハむネさんに玠盎に耒められるず、逆に萜ち着きたせんわね」

「じゃあ、取り消したす」

「そこは取り消さなくおいいですわ」

フラワヌは思わず笑っおしたった。

黒韍の森。
光の祠。
癟幎越しの再䌚。

あたりにも倧きなものを芋たはずなのに、孊園ぞ戻る道は、驚くほどい぀も通りだった。

けれど、䜕も倉わっおいないわけではない。

フラワヌの胞元には、癜い花の光がある。
ラビヌの耳元には、倜明けの火が灯っおいる。
そしおハむネの暪顔には、ヒュンケルに䌚う前ずは少し違う静けさがあった。

ハむネはそれを隠そうずしおいた。

い぀もの眠たげな顔で。
い぀もの気の抜けた声で。
い぀ものように、䜕もなかったみたいに。

でもフラワヌには、少しだけ分かっおしたう。

あの人はただ、光の祠に心の䞀郚を眮いおきおいる。

「ハむネさん」

呌ぶず、ハむネはゆっくり振り返った。

「はい」

「たた、行きたしょうね」

「  どこぞですか」

「光の祠に」

ハむネは、答えるたでに少しだけ時間がかかった。

やがお、小さく目を䌏せる。

「  はい」

それだけだった。

けれど、その声は少しだけ柔らかかった。




攟課埌。

孊園裏の氎堎には、倕方の光が薄く萜ちおいた。

フラワヌは杖を握り、目の前に小さな氎珠を浮かべおいる。

その䞭には、䞀枚の癜い花びらが揺れおいた。

以前なら、フラワヌは氎堎党䜓の魔力を拟いすぎおいた。

氎の流れ。
朚々の気配。
遠くの生埒の声。
ラビヌの火。
ハむネの深淵。

すべおを感じ取っおしたい、どれを芋ればいいのか分からなくなっおいた。

でも今は違う。

党郚を芋ない。
必芁な䞀点だけを芋る。

氎珠の茪郭。
花びらが沈たないための、ほんの小さな支え。

そこだけに意識を眮く。

そこにいおいい。
沈たなくおいい。
匷く茝かなくおいい。

ただ、垰る堎所ずしおそこにある。

氎珠の衚面が、かすかに光った。

癜い花びらは揺れる。

けれど、沈たない。

䞀秒。
二秒。
䞉秒。

「  できた」

自分で呟いた声が、少し震えおいた。

ハむネはそばで芋おいた。

眠たげな目の奥が、ほんの少しだけ现くなる。

「いいです。前より、魔力の広がりが少ない」

「それ、耒め蚀葉ですか」

「はい」

ハむネは真面目に頷いた。

「広げすぎるず、守りたいものたで抌し流すので」

その蚀葉に、フラワヌは胞元のブロヌチに觊れた。

守る。
でも、包みすぎない。

垰る堎所は、閉じ蟌める堎所ではない。

ヒュンケルの蚀葉が、ただ胞の奥に残っおいる。

フラワヌはもう䞀床、氎珠を䜜った。

今床は少し倧きく。
けれど、広げすぎないように。

癜い花びらが、氎の䞭で静かに浮かぶ。

その小さな光を芋おいるず、ふず、ハむネの背䞭を思い出した。

光の祠から出おいく背䞭。
振り返らなかった背䞭。
深淵が光にずっお異物だからず、自分から距離を取った人。

い぀かあの人が、たた深い堎所ぞ沈みそうになったら。

その時、自分はこの花を咲かせられるだろうか。

「フラワヌさん」

ハむネの声で、意識が戻った。

「はい」

「今、遠くを芋すぎおいたす」

「あ  」

「目の前の花びらから、離れないでください」

フラワヌは、慌おお氎珠ぞ意識を戻した。

花びらはただ沈んでいない。

ほっず息を吐くず、ハむネが小さく蚀った。

「でも、悪くないです」

「本圓ですか」

「はい。前より、垰り道っぜいです」

垰り道。

その蚀葉だけで、胞の奥が少し熱くなった。

少し離れた堎所では、ラビヌがひずりで炎を灯しおいた。

指先に、小さな火がある。

以前なら、その火は䞀瞬で倧きく燃え䞊がっただろう。

けれど今、圌女の指先にある火は違った。

小さい。
静か。
けれど、揺らがない。

「  匱く芋えたすわね」

ラビヌがぜ぀りず呟く。

「匱くないです」

ハむネが即座に蚀った。

「挏れおいないだけです」

「挏れおいない」

「はい。火が、ちゃんずラビヌさんの䞭にありたす」

その蚀葉に、ラビヌは黙った。

火を倖ぞ出すこず。
燃え䞊がらせるこず。
芋せ぀けるこず。

それが匷さだず思っおいた。

でも、黒韍の森では違った。

燃えすぎれば、森に敵ず芋なされる。
火を消せる者だけが、本圓に火を扱える。

以蔵の蚀葉が、ただ耳に残っおいる。

ラビヌは小さく息を吞い、指先の火をさらに现くした。

消すのではない。
隠すのでもない。

必芁な時たで、内偎に畳む。

火が、すっず小さくなった。

その瞬間、䞍死鳥が肩の䞊で満足そうに矜を震わせる。

ラビヌはふっず笑った。

「  悪くありたせんわね」

「はい」

ハむネが頷く。

「今の火なら、森にも嫌われたせん」

「耒め蚀葉の基準が黒韍の森なの、どうかず思いたすわ」

「実甚的です」

「そこは吊定したせんけれど」

フラワヌは、そんな二人を芋ながら笑った。

氎の音。
小さな火。
䞍死鳥の矜ばたき。
眠たげなハむネの声。

ここだけ芋れば、䞖界はずおも穏やかだった。

けれど、穏やかな時間ほど、次の嵐の前觊れみたいに思えおしたう。

その予感は、すぐに圢を持った。

孊園䞭に、鐘の音が響いた。

䞀床。
二床。
䞉床。

ほどなくしお、校内攟送が流れた。

『党生埒ぞ連絡したす。来週より、幎に䞀床の孊園察抗戊を開催したす。各クラスは四人䞀組のチヌムを線成し、明日たでに登録を枈たせるように』

フラワヌは目を䞞くした。

「孊園察抗戊  」

ラビヌの衚情が、はっきりず倉わる。

「もうそんな時期ですのね」

「知っおるんですか」

「圓然ですわ。魔法士孊校の䞀倧行事ですもの」

ラビヌは腕を組み、どこか誇らしげに蚀った。

「四人䞀組。遞手は魔力反応匏のペンダントを装着し、それを砎壊されれば退堎。陣地クリスタルを萜ずされおも敗北。぀たり、火力だけでは勝おたせんの」

ハむネが小さく頷く。

「戊術戊ですね」

「ええ。だからこそ、ただ匷い魔法を撃おばいいわけではありたせんわ」

そう蚀いながら、ラビヌは少し嬉しそうだった。

匷さを瀺し、実力を競い、自分の成長を確かめる堎所。

フラワヌは少し䞍安になった。

「私、出られるかな  」

「出たすわよ」

「えっ」

「フラワヌさん、あなたもです」

ラビヌは圓然のように蚀う。

「せっかく光の祠たで行ったのです。詊さずにどうしたすの」

フラワヌはハむネを芋た。

ハむネは少しだけ考えおから、蚀った。

「出おもいいず思いたす」

「本圓ですか」

「はい。ただし」

そこでハむネの声が、少しだけ真面目になる。

「倧魔道、䞊䜍魔法、倧魔道具は犁止です」

ラビヌの眉が跳ねた。

「は」

「魔法士孊校の詊合です。倧きすぎる力を䜿っお勝っおも、意味がありたせん」

「ですが、盞手が匷ければ――」

「匷い魔法で勝぀緎習ではなく、必芁な魔法を遞ぶ緎習です」

その蚀葉に、ラビヌは口を閉じた。

必芁な魔法を遞ぶ。
必芁な䞀点を芋る。

それは黒韍の森からずっず続いおいる課題だった。

ハむネは眠たげな目で二人を芋る。

「フラワヌさんは、守る範囲を芋極める緎習になりたす。ラビヌさんは、火を出すタむミングを遞ぶ緎習になりたす」

「ハむネさんは」

フラワヌが尋ねるず、ハむネは少しだけ芖線を逞らした。

「私は、できるだけ䜕もしたせん」

「䜕もしないんですか」

「私が動くず、孊びにならないので」

ラビヌが呆れたように息を吐く。

「぀たり、わたくしたちに勝おず」

「はい」

「初玚魔法だけで」

「はい」

「盞倉わらず無茶を蚀いたすわね」

ラビヌはそう蚀った。

けれど、その口元には笑みがあった。

フラワヌも、䞍思議ず逃げたいずは思わなかった。

自分がどこたでできるのか、知りたい。

そう思えたこず自䜓が、少し前の自分ずは違う気がした。

その時、少し離れた朚陰から声がした。

「楜しそうだな」

䞉人が振り返るず、以蔵がそこにいた。

肩に刀を担ぎ、盞倉わらず気だるげな顔をしおいる。

けれど、鬌培の刃は鞘に収たっおいた。

「以蔵さん、ただ孊園にいたんですか」

フラワヌが驚いお尋ねる。

「迷子だからな」

「堂々ず蚀うこずではありたせんわ」

ラビヌが呆れる。

以蔵は笑った。

「孊園察抗戊か。刀で出おいいなら手䌝っおやるが」

「だめです」

ハむネが即答する。

「そもそも生埒じゃありたせん」

「现かいな」

「倧事です」

シャムがどこからずもなく珟れ、以蔵の足元で尻尟を揺らした。

「迷子剣士を参加させたら、倧䌚が別ゞャンルになるからね」

「猫もいたのか」

「君ほど迷子ではないよ」

「斬るぞ」

「ほら、すぐ物隒になる」

フラワヌはたた少し笑っおしたった。

重いものをいく぀も抱えお垰っおきたはずなのに、こうしお笑える。

それもたた、光なのかもしれないず思った。



同じ頃。

魔法士孊校の孊園長宀には、静かな緊匵が萜ちおいた。

メルスティンは、机の䞊に眮かれた報告曞を芋䞋ろしおいる。

そこには、数週間前に起きた韍族襲撃の蚘録がたずめられおいた。

黒玫の魔法陣。
韍を奈萜ぞ沈めた無数の黒い手。
蚘憶保護凊眮。
䞀郚欠萜した蚌蚀。

そしお、䞭心にいた黒髪の少女。

「説明しおいただけたすかな、メルスティン校長」

䜎い声が、郚屋の奥から響く。

窓際に立っおいたのは、ダスティン校長だった。

魔道孊校偎の暩嚁者であり、魔導協䌚にも匷い圱響力を持぀人物。

来るべき韍族倧䟵攻では、総倧将候補ず目される人物でもあった。

メルスティンは、い぀ものように穏やかに笑った。

「韍害の混乱時には、蚌蚀が倚少誇匵されるものですよ」

「誇匵で枈たせるには、蚘録の欠萜が倚すぎる」

ダスティンは報告曞を指で叩く。

「生埒たちの蚘憶に保護術匏をかけたのは、あなたですね」

「過床な恐怖蚘憶は、魔法適性そのものを損なうこずがありたすから」

「䟿利な説明だ」

「実際、䟿利でした」

軜口で流そうずするメルスティンに、ダスティンは笑わなかった。

「私は責めに来たのではありたせん」

その声は静かだった。
けれど、逃げ道を塞ぐような静けさだった。

「確認したいのです。あの日、校庭で深淵を開いた者は、本圓に生埒だったのか」

メルスティンの笑みが、ほんのわずかに薄くなる。

「深淵、ですか」

「癟五十幎前、十䞇の韍を沈めた䌝説。名は消え、二぀名だけが残った倧魔道士」

ダスティンはゆっくりず振り返る。

「その者が、もし今も実圚しおいるのなら」

郚屋の空気が、䞀段重くなった。

「垝囜は、それを隠しおおくべきではない」

メルスティンは答えなかった。

答えれば、それだけで䜕かを認めるこずになる。

窓の倖から、孊園察抗戊の話で盛り䞊がる生埒たちの声が届いた。

誰ず組むか。
どのチヌムが匷いか。
去幎の優勝校はどうだったか。

その無邪気なざわめきが、かえっお郚屋の静けさを重くした。

「五十幎に䞀床の倧䟵攻が近い。民には垌望が必芁です」

ダスティンは続ける。

「フレアが戻った。五十幎前の英雄が再び垝囜の前に立぀。だが、それだけでは足りないかもしれない」

メルスティンの指先が、机の䞋でほんの少しだけ動いた。

「もし深淵の倧魔道士が生きおいるなら、これほど匷い旗はない」

「旗」

メルスティンが、静かにその蚀葉を繰り返した。

「圌女は、旗ではありたせんよ」

初めお、ダスティンの目がわずかに鋭くなる。

「圌女、ず蚀いたしたな」

沈黙。

メルスティンは、ほんの少しだけ目を䌏せた。

倱蚀だった。
けれど、もう遅い。

「  蚀葉の綟ですよ」

「あなたらしくない」

「歳ですかね」

「あなたは、老いを蚀い蚳にするほど枯れおはいないでしょう」

ダスティンの声は、淡々ずしおいた。

「メルスティン校長。これは個人の情では枈たない話です。韍族倧䟵攻が近づいおいる。民衆は䞍安に揺れおいる。垝囜には、象城が必芁なのです」

「象城にされる本人が、それを望んでいなくおもですか」

メルスティンの声は静かだった。

ダスティンは答えなかった。

その沈黙が、答えだった。

「囜を救った者は、望む望たざるに関わらず歎史に立぀ものです」

「歎史に立たされる人間の足元たでは、誰も芋たせんからね」

「皮肉ですか」

「事実です」

その時、ダスティンは机の䞊に䞀枚の曞簡を眮いた。

垝囜議䌚の印が抌されおいる。

「これは、ポルクス・グラント議長の意向でもありたす」

その名前を聞いた瞬間、メルスティンの衚情から軜さが消えた。

ポルクス・グラント。

魔導掟筆頭の倧物政治家。
民衆の䞍安を読み、英雄の物語を䜜るこずに長けた男。

メルスティンは、その男が嫌いだった。

ハむネもたた、理由もなく圌を嫌っおいる。

――笑っおいるのに、誰も芋おない感じがするので。

以前、ハむネはそう蚀った。

その感芚は、おそらく間違っおいない。

「倧䟵攻時、あなたには副将ずしお珟堎指揮を任せる予定です」

ダスティンは告げた。

「だからこそ、私情で刀断を曇らせないでいただきたい」

メルスティンは笑わなかった。

校長ずしお。
副将ずしお。
そしお、ハむネを癟幎以䞊芋おきた者ずしお。

その䞉぀が、胞の奥で静かに軋んでいた。

「民には垌望が必芁です」

ダスティンはもう䞀床蚀った。

「囜を救った者を、囜が掲げお䜕が悪い」

メルスティンは、窓の倖を芋た。

倕暮れの校庭では、生埒たちが孊園察抗戊の話題で浮き立っおいる。

ハむネはきっず、どこかで眠そうな顔をしおいるのだろう。

フラワヌは䞍安そうにしお、ラビヌは胞を匵っおいる。

その日垞を守るために、政治は動く。

けれど、その日垞を壊す圢で、政治はい぀も近づいおくる。

「圌女は、ずっず静かに生きようずしおきたした」

メルスティンは蚀った。

「癟五十幎前に韍を沈めおも、名を残さなかった。癟幎前にサクラが聖域を残し、五十幎前にフレアが英雄ずしお語られおも、自分から衚ぞ出ようずはしなかった」

ダスティンは黙っお聞いおいる。

「それは臆病だからではありたせん。責任から逃げたからでもない。あの子は、自分の力が䜕を生むのかを知っおいるんです」

「だから隠すず」

「だから、利甚させない」

その蚀葉だけは、はっきりしおいた。

ダスティンの目が现くなる。

「それは、副将ずしおの発蚀ですか」

「いいえ」

メルスティンは静かに答えた。

「校長ずしおの発蚀です」

しばらく、郚屋には時蚈の音だけが響いた。

やがおダスティンは、曞簡を机に残したたた背を向ける。

「孊園察抗戊が始たりたす」

「ええ」

「生埒たちの成長を芋るには、良い機䌚でしょう」

「そうですね」

「同時に、隠しおいるものが衚に出る機䌚でもある」

メルスティンは答えなかった。

ダスティンは扉の前で足を止める。

「私は、あなたを信頌しおいたす。だからこそ、倱望させないでいただきたい」

扉が閉たった。

郚屋に残されたメルスティンは、しばらく動かなかった。

机の䞊には、ポルクス・グラントの名が蚘された曞簡。

窓の倖には、孊園察抗戊に沞く生埒たち。

その間に、自分がいる。

守りたいものが倚すぎる時、人は䜕から守ればいいのだろう。

メルスティンは懐から銀の懐䞭時蚈を取り出した。

蓋を開く。

針は、い぀も通り静かに時を刻んでいた。

けれどその音が、今日は少しだけ䞍吉に聞こえた。

「  兄さんなら、䜕お蚀ったかな」

答える声はない。

ただ、遠く校庭から、生埒たちの笑い声が届いた。

それがただ日垞の音であるうちに、守らなければならない。

そう思った瞬間、メルスティンは苊く笑った。

守るために、力を䜿おうずする者がいる。
守るために、力を䜿わせたいずする者がいる。

守るために、誰かを旗にする者がいる。
守るために、誰かを郚品にする者がいる。


そしお自分は、守るためにどこたで嘘を぀けるのか。

倕暮れが、孊園長宀の床を赀く染めおいく。

孊園察抗戊の告知に沞く校舎の䞊で、芋えない火皮が、静かに灯り始めおいた。

それは、ただ火事ではない。

けれど誰かが颚を送れば、すぐに燃え広がる火だった。

第13話ぞ぀づく


NEXT▌

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宵町あかりさんが『深淵の倧魔道士』に぀いお、ずおも玠敵な蚘事を曞いおくださいたした。

光栄すぎお、䜕床も読み返しおしたいたした。

みなさたもぜひ、読んでみおくださいね。
あかりさん、ありがずうございたす✚

宵町あかりさんは、䜜品をただ評䟡するのではなく、物語の奥にある熱や䜙韻たで䞁寧にすくい䞊げおくださる曞き手さんです。

「読む偎」ずしお䜜品に向き合う姿勢そのものが、ずおも誠実で玠敵だなず感じたした。


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