現実/小説|百奇夜行 閑話<15>
『閑話』
「そんな深刻な話だったんかい」
恥ずかしながら…。
「恥ずかしがってる場合か」
私のシャボン玉は、今もまだ『無色』のまま。
「色を付けようって努力はしたの?」
やれることはやったつもりです。
「そっか」
「じゃあ、しょうがないか」
もう、割ろうかと思います。
「割ったら、もう元には戻らないよ」
…。
「必殺、〇〇パンチ!」
「…をお見舞いしたいところだけどさ」
「代わりに一つ、お話をさせてもらいます」
…はい。
「ドッペルゲンガーは知ってますか?」
この世には自分と同じ顔の人が二人いるって話ですね。
「そう。それを私なりに解釈したお話です」
「自分と同じ顔の二人」
「顔だけでなく、考え方も、生活環境も」
「自らに降り掛かる出来事さえも」
「何もかもが同じだったらと考えてみてください」
「あなたが楽しい時は、他の二人も楽しい」
「あなたが嬉しくて舞ってる時は、他の二人も舞ってる」
「反面、あなたが苦しい時は、他の二人も苦しい」
「どうしようもなく、何をやっても上手くいかない時」
「自分以外の誰もが敵に思えてしまう時」
「真っ黒な自分を抑え切れない時」
「誰にも打ち明けられず、誰を頼ることもできず」
「心の歪みが広がっていく様を」
「ただ眺めていることしかできない時」
「全てを諦めて、自らのシャボン玉を割ろうとしてる時」
「他の二人も当然、同じ境遇に立たされています」
「ここで問題です」
「もしあなたがシャボン玉を割ってしまったら」
「他の二人はどうするでしょうか」
…。
「続けて問題です」
「もしあなたが諦めず、踏み留まることができたなら」
「他の二人はどうするでしょうか」
…。
「お話はここまで」
「人生、山あり谷ありって言うけどさ」
「山も谷もしんどすぎるよね」
「色んな思いと向き合って、多くの苦難を乗り越えて」
「やっと辿り着いた先でも」
「何も得られずに、何かを失うことだってある」
「せめてホットケーキ屋さんでもあればいいと思わない?」
チョコバナナ屋さんもお願いします。
「うん。それもいいね」
…〇〇さん、心配かけてすみませんでした。
「別にいいよ。私はただ寄り添うだけ」
「結局はあなたが考えて、選んで、行動するんだから」
「止まない雨も、あるかもしれない」
「出口のないトンネルも、あるかもしれない」
「答えのない問題も、あるかもしれない」
「でもさ」
「それがどうした」
「止まない雨なら、家でゆっくり過ごしなさい」
「出口のないトンネルなら、入り口から出なさい」
「答えのない問題なら、白紙で回答しなさい」
「何が言いたいかって言うとね」
「四の五の言わずに、世界を救ってきなさい」
「大丈夫」
「あなたなら」
「大丈夫」
「きっと」
「大丈夫だから」
「ひとさじの勇気と」
「ささやかな幸せを」
「あなたへ」
