【読了5分】有効期限のない、約束を。【自キュンシリーズ7】
地元に帰ってきたのは、三年ぶりだった。
駅を出たら商店街がある。
子供のころ、毎日走り回っていた道。
今は人も減って、シャッターが増えた。
それでも、夕方の匂いだけは変わっていなかった。
醤油と線香とちょっとした潮風。東京では絶対に嗅げない組み合わせ。
「……菜月?」
声をかけられて振り向いたら、知らない男が立っていた。
いや、知らなくない。
顔は知ってる。
でも、
こんなに背が高かったっけ。
こんなに、
ちゃんとした大人だったっけ。
「颯太?」
幼なじみの三上颯太。同い年。
小学校から中学校まで、家が隣で毎日顔を合わせていた。
高校から別々になって、二十歳すぎたあたりから連絡もなくなった。
立ち話になって、近くの自販機の前で缶ジュースを買った。
颯太は昔と同じように迷わずコーラを選んで、私はジンジャーエール。
それだけで十年以上前の記憶が戻ってきた。不思議なものだ。
「東京、どうよ」
「まあ、ふつう。仕事は忙しい」
「そっか」
会話が途切れた。颯太は空を見上げた。
夕焼けが、商店街の屋根の向こうでじわじわと広がっている。
「ねえ、菜月。覚えてる?」
「何を」
「あの、小五のときに書いたやつ」
覚えてる。
覚えてるよ。
頼むから言わないでくれ。
小学五年生の夏休み。二人で「大人になったらけっこんする」と紙に書いて指切りした。
子供のするバカなこと。恥ずかしくて、ずっと忘れたふりをしていた記憶。
「忘れた」
嘘をついた。颯太は「そうか」と言って、少し笑った。
そして、ズボンのポケットから財布を出した。
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