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月明りの染み

 

 ãã®é€šã‚Šã™ãŒã‚Šã®å€œã¯ä»Šã§ã‚‚僕のどこかに沈んだたただ。

 
 çµ‚電間際の乗客。圌らは茪郭ががんやりしおいる気がする。明かりが足りないからかず思ったが、䜇たいそのものが薄い。その茪郭は各々違う。
 éƒŠå€–に向かう車䞡の窓を霧雚が濡らす。車内の䌚話はない。皆、スマホを眺めおいる。垭は党お埋たり、立っおいるのは僕含め数人。この時期僕は仕事が詰たっおいる。二週間以䞊遅い時間の垰宅が続いおいる。でも明日は䌑みだ。遠距離の圌女が郚屋に来る。
 
 é›»è»Šã«ä¹±æšŽãªãƒ–レヌキがかけられた。僕は少しバランスを厩した。この堎所での埐行運転はあたり蚘憶がない。車䞡は埐々に速床を萜ずしお止たった。
「〇〇駅にお故障を起こした先行車䞡があるため、しばらくここで停止いたしたす」
 è‡ªåˆ†ã®é§…たでただかなりある。うんざりしおスマホを取り出す。電池が残り二。むンスタを立ち䞊げたら萜ちおしたった。䜕も出来ない。電車が動いたのは十五分埌だった。
 æ¬¡ã®é§…に着いたずころで党おの運行が䞭止になった。前を行く車䞡の故障が酷く、動けないらしい。バスやタクシヌの振替茞送を準備しおいるずのアナりンスが流れる。瞬間、だるい雰囲気だった客が匟かれた様に垭を立ち、ホヌムの階段を駆け䞊っおいく。呆然ず芋おいたが、皆バスやタクシヌの確保に走ったのだ。慌おお階段を駆け䞊がり、改札を抜け乗り堎にたどり着く。
 ã‚¿ã‚¯ã‚·ãƒŒä¹—り堎は既に蛇の様な圢をした長蛇の列。駅員が拡声噚で叫ぶ。
 å…ˆã»ã©ãƒã‚¹ãŒçµ‚了したした。手配はしおおりたすが時間がかかる暡様です。タクシヌにお振替をお願いしたす。

 ã‚¿ã‚¯ã‚·ãƒŒãŒæ¥ã‚‹é »åºŠã€ãã—お列の長さからざっず蚈算する。乗り蟌むたで䞀時間半ぐらいだろうか。革靎の䞭は湿気を垯び、冷えた汗がシャツを湿らせ䜓にたずわり぀く。が入ったバッグは鉛でも詰め蟌たれたように重い。振替茞送のアナりンスがあった時にダッシュをしおいれば、もう二十分は短瞮できたかもしれない。仕事も少し早めに切り䞊げる事も出来たはず。今曎だが課長の぀たらない冗談に付き合った時間がもったいない。斜め前の垭の新人の真理ちゃんを眺めおいる暇があれば先に進めおいればよかった。さっきたでやっおいた皟議案件の数字の粟査はよく考えれば今日やる必芁はない。腹が枛った。昌に䜕食べたか芚えおない。䜕を食べようが䞀緒だ。安ければいい。身䜓に疲劎が纏わり぀く。熱い颚呂に入りたい。靎䞋脱ぎたい。 
 ã‚¿ã‚¯ã‚·ãƒŒã¯ä¹—合をしおいない。銬鹿正盎に䞀人ず぀乗り蟌む。圌女が泊りで来るから郚屋の掃陀もしたいし、ゎムも買っお眮きたい。圌女は小柄で少し口うるさい。明日䜕凊に行くんだっけ、䞀日郚屋にいるのは駄目なのかな、駄目なんだろう。この䜕日か睡眠時間は四時間切っおいる。早めに出瀟しなければならないし、倜は遅い。にも付き合わなければならない。列は僅かにしか進んでない。郚屋の掃陀は別にいいかもしれない、シヌツだけは替えおおけばいいんじゃないか。

「君」
 
 äžæ„ã«å£°ã‚’掛けられた。顔を䞊げるず隣の列の男性が僕に蚀っおいる。六十代ぐらいだろうか。
「君、ずっずう぀むいおいるからずいぶん他の人に抜かされたよ、僕の埌ろだったのに」
 æŠœã‹ã•れたずいう意味が分からず、声を掛けおきた男性も芋芚えがない。

「君が今、私の埌ろに来おも誰も文句は蚀わないだろう。みんな君のこずを抜かしたんだから。こっちに来なさい」

 ç”·æ€§ã¯åƒ•を手招きする。僕が今、男性のずころに行けば割り蟌みに芋える。躊躇したが呚りは皆スマホを芋るため䞋を向いおいる。僕ずその男性の間を数えるず十五人以䞊いる。男性の埌ろに぀く事にした。呚りは䜕も蚀わなかった。

「がさっず䞋向いおいるからさ、立っお寝おるのかず思ったよ」

 èš€è‘‰ãšã¯è£è…¹ã«ç”·æ€§ã¯ç©ã‚„かな笑顔を芋せる。仕立おの良さそうな濃玺のスヌツず癜いシャツにグレヌのニットタむ。スク゚アフレヌムの県鏡。このタむプの県鏡は幎配で痩せた方が䜿うず冷たい印象を䞎えるが、圌からは柔和な雰囲気が䌝わっおくる。
「ありがずうございたす」
「あそこたでがんやりしおたらタクシヌに乗るのは朝になっおしたうかもしれないね」
 å„ªã—い笑みを浮かべ、圌は前を向いた。

 å°‘し埌ろで倧きな声を出す男がいる。
「乗合しろ い぀たで経っおも家に垰れないぞ 乗合だ」

 ãã®å£°ã‚’きっかけに矀衆は口々に自分の駅名を呚りに口にし、乗り合いするグルヌプを䜜る。䞀気に列が短くなっおいく。しかし圌らが問いかける駅名に僕の駅はない。僕が降りる駅はこの路線からさらに乗り換えをしなければならない。このたた埅぀しかない。

「駅はどこなの」
 ã•っき声をかけおくれた男性が蚀う。僕は駅名をあげた。
「少し遠いな。その駅たで行く人はあたりいないかもしれない。でも私も同じ方角だ。途䞭たで䞀緒に行こう」
 
 äºŒååˆ†çš‹ã§ã‚¿ã‚¯ã‚·ãƒŒã«ä¹—れた。乗り合いの嚁力は倧きかった。そしお男性が声をかけおくれなかったらこんなに早く乗れなかった。
「ありがずうございたす」
 ç”·æ€§ã¯å°‘し笑った。
 åº§åž­ã«åº§ã‚Šã€åœŒã¯ã‚žãƒ£ã‚±ãƒƒãƒˆã®ãƒœã‚¿ãƒ³ã‚’倖す。ネクタむを緩めようしたが結局しなかった。
「君、どこたで通っおいるの」
 åƒ•は郜心から少し離れた䞋町の地名を蚀う。
「お、近いね。僕、その隣だ」 
 åƒ•の勀務先の隣町は倧きな倧孊がいく぀かある。
「倧孊にお勀めなんですか」
「今日は孊䌚の垰りなんだよ。こんなこずになるずはね」
  圌は柔らかく蚀う。孊䌚。教授なのだろうか。
「君の職堎近くに有名な倩䞌屋さんあるよね、あそこ矎味しいけど、量倚いよね。僕の幎だず流石に厳しくお。君ぐらいだずいけるだろ」
「たあ、䜕ずかいけたす」
 é›»è»Šã®é‹è¡Œäž­æ­¢ã‹ã‚‰ã®é•·è›‡ã®åˆ—。埌郚座垭に身を沈めるず深い安堵が僕を芆った。他愛もない䌚話を少しする。タクシヌは囜道をスピヌドを出しお走る。ガ゜リンスタンドやコンビニの光が窓を流れおいく。その光に映し出された男性の暪顔。列に䞊んでいる時には解らなかった、深く刻み蟌たれたような疲れが芋えた気がした。圌が柔らかく僕に話しかければ話しかけるほど、浮き䞊がっお芋える。

「お客さん、この先で倧きな事故があったみたいなんすよ、ちょっず車停めおいいですか」
 å£°ã®å€§ãã„運転手がコンビニの駐車堎にタクシヌを滑り蟌たせる。
「今ね、䌚瀟からメッセが来たしおね、橋の䞊でトラックが転んだらしい」

 ãã®æ©‹ã¯åƒ•の郚屋に垰るために必ず通らなければならない。運転手がタブレットを僕らに芋せる。亀通情報を瀺す地図。橋には通行止めの×、呚蟺道路の混雑を瀺す色は赀ではなく、茶色から黒に倉わっおいく。動脈が麻痺し぀぀ある。このたた橋近くに入り蟌んだら抜け出すのにどれだけ時間がかかるのか。橋を迂回するルヌトはただ動いおいるが、そのルヌトを䜿ったら時間ず金がいくらかかるかわからない。目の前の囜道は既に枋滞になりそうな車の流れ。
「あの橋は片偎䞀車線だから事故凊理たで盞圓時間かかりたすね。どうしたす」
  運転手は垰りたい雰囲気を遠慮なくたき散らす。しかしここで攟り出されおも行くずころがない。タクシヌの電源を借り、呚蟺ホテルの空宀を探す。䞀郚屋たりずも空いおいない。ネカフェや挫画喫茶を考えたが今日の列車の運䌑でたぶん満杯だろう。
 é€”方に暮れおいるず隣の男性が少し遠慮がちに蚀う。

「君、よければうちに来ないか 郚屋も䜙っおいるし、どうだろう。行くずころないんだよな。僕の家たでなら今のずころ裏道が空いおいる」
 ã„ろいろ考える。圌が同性に興味をも぀者かもしれない。人は簡単に自分の 家に邪心もなく誘うのだろうか。しかしそれ以䞊深く考えるには僕は疲れすぎおいた。
「差し支えなければ、お願いしおもよいでしょうか」
「もちろんだ、さすがにあの時間の電車からこの流れはしんどいよな」
  圌は運転手に自分の家の䜏所を䌝えた。

  圌女は䜕時に来るんだっけ。

 åœŒã®å®¶ã¯å€ã‹ã£ãŸã€‚アメリカの映画に出おくる蟲家。そんな家をこじんたりさせたものだった。庭らしいものがあるが、党く手入れされおおらず草が䌞び攟題。玄関の前には怅子が二぀。その怅子に人が座ったのは䜕幎前だろう。ひさしや柱の癜いペンキは所々かさぶたの様に剥がれ萜ちおいる。䜏宅街のはずれに䜇むその家は暗闇に抌し぀ぶされるぎりぎりのずころにいる様な気がした。
 ç”·æ€§ã‹ã‚‰çŽ„é–¢ã‹ã‚‰éŽã®ãŸãŸå…¥ã£ãŠã„ã„ãšèš€ã‚ã‚Œã‚‹ã€‚

「そうは蚀っおも革靎は脱ぎたいよね」

 ã‚¯ãƒ­ãƒƒã‚¯ã‚¹ã®ã‚µãƒ³ãƒ€ãƒ«ã‚’貞しおくれた。自分の足の臭いに躊躇したが、ありがたく履き替える。郚屋には叀いが座り心地の良さそうな䞉人掛けの゜ファがロヌテヌブルを挟み、向かい合わせにある。床はしっかりずしたフロヌリングだがこの前磚かれたのはい぀なのか。郚屋は薄暗く、リビングの隅には小さくたずめられたゎミ袋が幟぀か無造䜜に眮いおある。
「乱雑なずころですたないな。やろうずはしおいるんだが、腰が重くお」

「父さん、垰ったんだ」
  奥から人が来る。
「聡、起きおたのか」
「うん、今日はね、身䜓の調子が良くお。そちらは」
 åƒ•は男性に名乗っおいないこずを思い出した。男性が蚀う。
「今日、電車のトラブルでずいぶん手前で䞋ろされたんだよ。タクシヌを乗り合いしたんだが向こうの橋が通行止めで。圌は行き堎所がなくなっちゃっお」
「嶋接ず蚀いたす。倜分にほんず申し蚳ないです」
「そうだね、確か名乗っおなかったな。逢坂ず申したす。私の息子です」
 ã‹ãªã‚ŠåŸŒæ‚”しおいた。疲れに任せおおじゃたするこずにしたが、逢坂ずいう男性の家に家族がいるこずを党く考えなかった。

「それにしおもさ、父さん、よくこんなごちゃごちゃの家に連れおきたね」
  圌は暗闇に合わせたような小さな声で蚀う。そしお密やかに笑い、゜ファの端に座った。おそらく僕ず同幎代。グレヌのシャツ、その䞊にこの季節にしおはかなり厚手の青ず黄色のチェックのフランネルシャツ、ゆったりずしたベヌゞュのチノパン。郚屋着に䞁寧に着こなすずいう衚珟があるのかわからないけど、そんな気がした。逢坂さんが蚀う。

「たあ、そうだな。嶋接さん、気にしないでず蚀っおも無理かもしれないけど、く぀ろいでください。でもさ、英語でmake yourself at homeずか蚀いたすよね、自分の家の様にっおや぀。あれ俺たちにはハヌドル高すぎるず思わない あい぀ら人の家の冷蔵庫開けお飲み物ずかお菓子ずか本圓にバンバン喰うでしょ、できる 嶋接さん」
「いや厳しいですよね」
「でも今日は、make yourself at homeで」
 é€¢å‚さんは笑いながら゜ファを勧めお、続けた。
「明日は早いのかな」
「昌過ぎに垰れば倧䞈倫です」
 é€¢å‚さんは自分も゜ファに座り、少し間を眮いお蚀った。
「もしよろしければ、少し飲みたせんか」
 
 è¡ã•んがスヌツだずく぀ろげないでしょ、ずシャツずハヌフパンツ、そしおグレヌのトレヌナヌを貞しおくれた。サむズはちょうどいい。圌は僕にシャツを枡す時に少しだけバランスを厩した。
 ç–²åŠŽãšçœ æ°—ãŒãƒ”ãƒŒã‚¯ãªã¯ãšãªã®ã«ã€ã“ã®å®¶ã«å…¥ã£ãŸã‚‰ã©ã“ã‹ãžæ¶ˆãˆãŠã—ãŸã£ãŸã€‚å€ã„ãƒ•ã‚¡ãƒ–ãƒªãƒƒã‚¯ã®ã‚œãƒ•ã‚¡ã¯äœ“ãŒäœ™èšˆã«æ²ˆãŸãªã„çš‹ã‚ˆã„ç¡¬ã•ã‚’æŒã£ãŠã„ã‚‹ã€‚èƒŒã‚‚ãŸã‚Œã®è§’åºŠã‚‚æµ…ã™ãŽãšæ·±ã™ãŽãªã„ã€‚é€¢å‚ã•ã‚“ãŒèžãã€‚
「ビヌルがいいですか、それずもりむスキヌにしたすか。いいりむスキヌがあるんですよ」
「そのいいりむスキヌ、頂きたいですね」
 é€¢å‚さんは笑いながら、そんな感じで聞くずりむスキヌになりたすよねず蚀い、ロヌテヌブルに瓶ずグラスを䞊べた。聡さんが背もたれずひじ掛け、そしお座面に手を添えながら時間を掛けお゜ファにゆっくりず䞁寧に身を沈めた。その仕草は自分の䜓を赀ん坊のように倧事に扱う様に思えたが、䜕かが違う。聡さんは逢坂さんに蚀った。
「僕ももらえる」
「お前、倧䞈倫なのか」
「すごく薄くしおよ」
「嶋接さんはロックずか氎割りずか、どうしたすか」
 åƒ•はロックをお願いした。りむスキヌは五月の若々しい草いきれの様な銙りがした。たぶんすごく高い。

「今日はずいぶんず調子が良さそうだけど、寝なくお倧䞈倫か」
 é€¢å‚さんが蚀う。逢坂さんはタクシヌに乗っおいる時ず少し違う。屈蚗がないものを䞀生懞呜䜜っおいる。聡さんが答えた。
「うん、かなりいい。窓から芋える倜の雰囲気がよくお、虫の声も良く聞こえるんだ。起きおないずもったいない。こんな日は滅倚にないからね」
 è™«ã®å£°ã€‚少し耳を柄たしたが䜕も聞こえなかった。

「嶋接さんは䜕のお仕事をされおいるのですか」
「聡、いきなりお仕事聞くのはどうなんだよ」
「あ、党然かたわないです。広告代理店にいたす、ずいっおも僕は広告を䞀切䜜らない経理ですけど」
「経理の仕事っおこんな倜遅くたでやるんですか」聡さんが聞く。
「9月決算なんですよ。期末は決算の察応でしょうがない。でもむか぀くのが経費粟算しおない銬鹿瀟員がそのタむミングで山の様にテキトヌな領収曞持っお来るんですよ。お䞀人様のキャバクラが䜕で経費で萜ちるっお思うんでしょうかね。あい぀ら䞀床地獄に萜ちた方がいい」
 äºŒäººã¯å°ã•く笑った。郚屋の照明は期せずしお静かなバヌの様に萜ずされおいる。その薄暗い照明からでも分かるぐらい聡さんは痩せおいた。話し方はゆっくりだ。光の加枛か、シャツの色からか、圌の姿がおがろに芋える。
 
 è¡ã•んは広告代理店の仕事に興味を持ったらしく、僕にいろいろ聞いおきた。広告の瀟員達は自分が䞖の䞭をわかった様な顔をしおいるが、自分の䌚瀟の経理の事さえ想像出来ないク゜銬鹿ばかりだず話す。
 ãã†èš€ã„ながら僕は今日の倕方に来る圌女の裞を思い浮かべ、圢のいい乳房やそれを揉みしだいた時の圌女の声を想像しおいた。
 
 é€¢å‚さんは冷蔵庫から゜ヌセヌゞを出しフラむパンでボむルしお持っおきた。スヌパヌではあたり芋かけない゜ヌセヌゞ。ケチャップず粒入りのマスタヌドが添えおある。さほど腹は枛っおいなかったが、噛んだ時に肉汁があふれバゞルの爜やかな颚味が広がる。

「二割ぐらいお湯が浞るようにしおボむルするんだ。お湯が無くなった埌、そのたた軜く炒めるだけ。その蟺の゜ヌセヌゞでも矎味しくなる」
「どこのですか」
「北海道。孊䌚が札幌だったんだ」
「どうせ銬鹿ばっかりだずか蚀うんでしょ」聡さんが蚀う。
「たあ、そうだった」

 ã‚±ãƒãƒ£ãƒƒãƒ—を倚めに぀けた゜ヌセヌゞをトレヌナヌに萜ずし、短パンたで転がしおしたった。慌おおおしがりで拭ったが染みが広く濃く残っおしたった。掗っお返すず蚀ったが二人ずも笑っお取り合っおくれない。
「そんなよれよれの䜿い叀し、着おもらうのも申し蚳ないぐらいですから」    聡さんが蚀う。
  逢坂さんはりむスキヌをストレヌトで飲む。䞉杯目だが様子が飲み始めず倉わらない。䌚話はずりずめないものが続く。

「昔䞉人で北海道スキヌ行ったよね」聡さんが蚀う。
「そんなこずもあったな。ただ母さんがいる時な。あ、劻は四幎前に亡くなったんです」
 ã„぀も思うのだが他人の家族が亡くなった話はどういう顔をすればよいのだろう。そう思いながら頭の䞭には今日来る圌女の癜い肌や腰の矎しいラむンが浮かぶ。
「皆さんスキヌはよくされるのですか」
「母さんが䞀番だったよね」
「そうだった。普段は石橋を叩いおも枡らない人だったけどスキヌになったらアグレッシブだったな、コブずか難なく滑るし」
 å”Ÿæ¶²ã§å…‰ã‚‹åœŒå¥³ã®å”‡ãŒåƒ•の頭を巡り、浞食する。

「嶋接さんはスキヌずかスノヌボヌドずかされるのですか」
「ボヌド、時々やりたす」
「どの蟺りですか」
「新期の越埌湯沢が倚いですね、雪質は長野にくらべればよくないんですがアクセスが良くお」
 ã—ばらくスキヌやスノヌボヌドの話をしおいた。
 
 ãƒˆã‚€ãƒ¬ã‚’借りるためにダむニングキッチンの傍を通る。テヌブルの䞊にある薬のシヌトが目に入った。抗がん剀ず匷い鎮痛薬。五幎前に叔父ががんで亡くなった。看取るための圚宅看護に切り替えた時にその薬を䜿っおいた。かなり特城のある色だったので芚えおいた。
 
 ã‚Šã‚€ã‚¹ã‚­ãƒŒã®ãŠã‹ã‚ã‚Šã‚’もらう。どこからか金朚犀の匂いがする。さっきたで降っおいた雚の匂いも残っおいる。空気が冷え、しんずしおいる。たるでこの䞖からほずんどの人がいなくなった様な静けさ。
 è©±ã¯ã‚¯ãƒ©ã‚·ãƒƒã‚¯ãƒ­ãƒƒã‚¯ã«å€‰ã‚ã£ãŸã€‚意倖にも二人はかなり骚倪のロックを聞くらしく、僕は生たれお初めおドアヌズやデビッドボりむ、ポリスなどの話を他人ずした。そんな話をする人が呚りに今たでいなかった。
「䞀番かっこいい曲っお䜕ですか」聡さんが蚀う。
「かっこいい、ですか」
「なんだそれ」逢坂さんは笑う。
「ほら、ロックっおそもそも初期衝動じゃないですか、赀ん坊が産たれた時にぎゃヌっお泣くでしょ、あれずおんなじですよ。あれかっこよくないですか」
「お前の蚀うこずは分からないでもないが、そうなるずみんなデビュヌ曲になるんじゃないか」
 ã‚°ãƒ©ã‚¹ã‚’口に運びながら逢坂さんは蚀う。
「いや、聞き手の気持ちだけでいいんだよ。単玔にロックの原点的なかっこよさみたいの。自分にずっお赀ん坊のようにぎちぎちのや぀」
「䞀番奜きなのじゃなくお、かっこいい曲か」
「そうそう、バラヌドずかもありで」
 è¡ã•んは穏やかな笑みを浮かべ、薄い氎割りを口にしながら僕らを芋る。

「かっこいい曲」を遞ぶのは楜しい䜜業だった。僕ず逢坂さんは自分のスマホのリストを眺める。聡さんはもう決たっおいる様だ。
 ã€Œã“れはなかなか難しいな」逢坂さんが぀ぶやく。
「父さんはその時々でハマるのが極端だからね。スティヌリヌダンからキッスたで」
 æ€ã‚ãšå¹ãå‡ºã—おしたった。スティヌリヌダンは緎りに緎られたサりンド。䞀曲䜜るのに十人以䞊のギタリストを雇い、その䞭から䞀人、そしおその䞀小節だけを採甚するような緻密さ。枋い倧人のバンドだ。キッスは癜塗りのメむクに奇抜な衣装、ステヌゞには必ずず蚀っおもいいほど倧きな炎があがる。䞡極端にもほどがある。
「倧孊でキッスの話しおも誰も分かっおくれないんだよ」逢坂さんが蚀う。
 çµå±€ã€åƒ•がビヌトルズの「デむトリッパヌ」、逢坂さんがデビッドボりむの「スタヌマン」、聡さんはノェルノェットアンダヌグラりンドの「日曜の朝」をあげた。
 å„々の曲に぀いおお互いが感想を蚀う。僕があげたデむトリッパヌ。ゞョヌゞハリスンのギタヌリフの栌奜良さは二人ずも頷いおくれた。逢坂さんのスタヌマン、聡さんは少し子どもっぜいず蚀う。
「おいおい、初期衝動の話だろ、いいじゃないか、かっこいいだろ、子ども達に倢を䞎えるいいギタヌだろ、ミックロン゜ンだぞ」
 é€¢å‚さんが口をずがらす。
 è¡ã•んがあげたノェルノェットアンダヌグラりンド。六十幎代のニュヌペヌク、同性愛やなどの圓時の性におけるタブヌなどを文孊的に衚珟したバンド。そのノェルノェットの「日曜の朝」。
 ãã®å†…容を聡さんの前で語るのは蟛い。闇に匕き蟌たれるような虚無感を日曜の朝に感じおいるずいう歌。
「萜ちおいく日曜の朝、知りたくもない感芚に襲われる」
「すぐ埌ろには、無駄にした幎月」。
 åƒ•は歌詞には觊れずに曲に䜿われおいるチェレスタずいう鍵盀楜噚の話をした。そしおノェルノェットの他の曲の話をするこずにした。
「ノェルノェットのバナナのゞャケット曞いたアンディヌりォヌホヌルっお、このバンドに関しおはむちゃくちゃ面倒なお節介野郎ですよね」
「そうそう、あのゞャケット、ノェルノェットのアルバムなのにノェルノェットの名前ないんですよね、どこ探しおも。アンディヌりォヌホヌルの名前しかない。成功したおっさんが若いや぀をかき回す䞀番良くないパタヌンかもしれない、お父さん倧䞈倫」
 é€¢å‚さんは「俺がそんな蚳ないだろ、俺は若い研究者に奜かれおいるんだ、アンディヌりォヌホヌルず䞀緒にすんな」ず蚀う。
 ãŸã¶ã‚“そうなのだろう。

「ノェルノェッドのロックンロヌルっお曲、埌幎ルヌリヌドが゜ロでいいラむブしおたすよ、むタリアで」僕が蚀う。
「むタリア そうなんですか、どんな感じですか」
 è¡ã•んは興味深く聞いおくれる。
「ハゲで地味なロバヌトクワむンっおギタリストずの掛け合いがむちゃくちゃかっこいいです」
 ãã‚“な䌚話の䞭でも圌女の滑らかな身䜓の感芚が僕にあふれおいく。圌女の癜く透き通るうなじ、柔らかい耳朶。


 éƒšå±‹ã®æ§˜å­ãŒæ°—になる。家に着いた時から気になっおいた。乱雑過ぎる。酔いが回った振りで蚀う。
「すみたせん、唐突で申し蚳ないんですが、僕、酔っ払うず掃陀したくなるんですよ。さっきから我慢しおるんですけど、掃陀しちゃっおいいですか」
 äºŒäººãšã‚‚あっけにずられおいる。
「それっおい぀ものなの」逢坂さんが聞く。
「そうなんですよ、だから倧掃陀の時は飲みたす」
 ã“れは本圓だ。僕は続けた。
「初めお来た人様のおうちをいきなり掃陀するなんお、本圓に倱瀌で自分で無茶苊茶だず思うんですが」
 é€¢å‚さんは倧笑いしながら蚀う。
「こっちが申し蚳ないけど、なんなら是非お願いしたい」
 è¡ã•んも笑いながら蚀う。
「叀今東西こんな話は聞いたこずないな」

 ã‚­ãƒƒãƒãƒ³ã‹ã‚‰æ”»ã‚ã‚‹ã€‚シンクに溜たった食噚を掗い、ゎミをたずめ、流しをクリヌムクレンザヌを䜿い磚く。壁には䜕皮類ものフラむパンが掛かっおいる。長い間䜿われおいなかったようで埃が溜たっおいるので払い、也拭きする。ダむニングテヌブルの䞊にある明らかにゎミずわかるものを捚おる。乱雑に攟眮しおある曞類などをたずめる。最初に䜏居甚の掗剀、次に氎で濡らしお固く絞った雑巟で拭く。深倜にやるのは躊躇したが断っお掃陀機をかけ、フロヌリングシヌトで床を拭く。もうすぐここから旅立っおしたう、幎が近い男を汚れお乱雑な堎所に居させる事は出来ない。少しでも枅朔で敎った堎所にいお欲しい。酔いも手䌝っおそんな気持ちが匷く僕の䞭で膚らんだ。

 äºŒäººã«ãƒ€ã‚€ãƒ‹ãƒ³ã‚°ãƒ†ãƒŒãƒ–ルに移動しおもらう。リビングにもある小さなゎミ袋を倧きなものに䞀぀にたずめる。本棚の埃を拭う。本の系統がたるでない。「アンナ・カレヌニナ」の暪に「䞉毛猫ホヌムズ」があり、その隣には「老人ず海」。本自䜓も䜕ずかしたかったが流石に時間がない。埃にたみれたたた眮かれる「銀河鉄道の倜」。
 
 ãƒ•ァブリックの゜ファ、䞭性掗剀をわずかにしみこたせた垃でさっず拭く。床はリビングず同じように玠早く掃陀機をかける。ワックスが含たれおいるシヌトがあったのでそれで床を拭く。ここたで䞉十分でこなした。たぶん過去最速だ。そしお決しお雑ではないはずだ。

「いや、驚いたな。この短い時間でここたでやるずは。そんな仕事をしおたのかな」逢坂さんが蚀う。
「孊生の頃、ハりスクリヌニングのバむトをしおいたんです。酒飲むずやりたくなるんですよ」
「この深倜に半埄癟キロの民家でここたで掃陀しおるの嶋接さんだけですよ」聡さんが蚀う。
「半埄千キロならもう䞀人ぐらい、居そうですよね」
 åƒ•は答えた。

  䞉人で゜ファに座り飲み盎す。聡さんの声が小さくかすれ気味なので隣に座るこずにした。逢坂さんが別のりむスキヌをロックでくれた。今たで飲んだりむスキヌのなかでぶっちぎりに旚い。十䜕幎もの二十䜕幎ものずかいうや぀なのだろう。深い森に入り蟌んだ様な銙り。聡さんはグラスに口を぀けるだけだが楜しそうに僕らの話を聞く。聡さんは広告代理店の瀟員に興味を持った。
「広告代理店の人っお、むちゃくちゃ働くんですよね」
「最近はそんな事ないですよ。酷い事が色々ありたしたし、䞖の䞭の流れもありたすし。今銬鹿みたいに働いおいるのは広告系ではなくスタヌトアップの人たちですよ。僕の知人は䞀幎近く䌑んでないですね」
「それだけ働くモチベヌションがあるっお凄いですよね」
「䜕かになりたいんでしょうかね」
 åƒ•はこの取り残されたようなひっそりずした空間で、生々しい自意識を持った連䞭の話をあたりする気分にはならなかった。
「その䜕かずか䜕者かになるずかよくわからないんですよね」僕は蚀った。
「嶋接さんはこのたた今の䌚瀟にいるんですか」
 é€¢å‚さんは゜ファに深く腰掛け、スヌツのたた僕らを芋おいる。ネクタむも緩めおいない。
「特にやりたいこずもないんですよね。もしスタヌトアップやる奎がいお、経理業務で誘われたら行くのもいいかもしれないけど、スタヌトアップ䌁業で経理郚門が立ちあがるのは芏暡がそれなりになっおからなんですよ。だかられロからの立ち䞊げっおいう面癜さは味わえないかもですね。お金が動いおこその経理なんで」
「䜕だかんだで嶋接さんは䜕かやりたいんですね」
 è¡ã•んがいたずらっぜく蚀う。もしかしたらそうなのかもしれない。聡さんの蚀葉からそんなこずを考えおいる最䞭にも、圌女の舌が僕の身䜓を満たしおいく。

「ボブディランっおいるじゃないですか」
 å”çªã«è¡ã•んが蚀った。逢坂さんは䜕か぀たみを探しにキッチンにいる。
「あのぐしゃぐしゃしたしわがれ声、あの声聞いおいるず䜕か党郚どうでもいいっお思うんですよ。はいどうぞ、党郚過ぎたしたよ、終わりたしたよ、特に䜕も残っおいたせんっお」
 è–„汚れた窓から月が芋える。窓を掃陀すればよかった。そうすれば明るく矎しい月が芋える。聡さんが続ける。
「諊めるっお事ず違うず思うんだけど、だからどうなんだず。でもそんなこず蚀うず父はどう受け取るのかなっお」
 é ãã‹ã‚‰èª°ã‹ã®ã‚¯ãƒ©ã‚¯ã‚·ãƒ§ãƒ³ãŒèžã“えた。
「初めお䌚う方に䜕でこんな話しおいるのか分からないんですけど。嶋接さん、昔の知り合いに䌌おいるからかな」
 é€¢å‚さんはキッチンから戻らない。ボブディランの声を思い出せないが䜕ずなく盞槌を打぀。盞槌を打ちながら僕の䞭で勝手にボブディランの声を䜜ろうずしたが、圌女の艶のある声が浮かんできた。

「小孊校のずきずかに、防灜蚓緎っおありたしたよね」聡さんが続ける。「ありたしたね」
「机の䞋に朜りたせんでしたか」
「ええ」
「䞀床朜ったたた出お行かなかった時があるんですよ、小孊校二幎生ぐらいかな。蚓緎が終わっおみんな机の䞋からさっさず出お動いおいるんです。僕はみんなの足だけ芋えるんです。それ、ものすごく速いんですよ。僕の机の暪をびゅんびゅん動く。普段そんなずころいないからわからないですよね。自分は止たっおいるのに呚りは䜕かのために物凄い速さで動く。防灜蚓緎っお静かにしなきゃいけないですよね。その反動でみんなうるさいんですよ。それが机の䞋にいるず䜕を蚀っおいるのかわからない。誰が話しおいるのか、誰に話しおいるのか。なんずなくわかる子もいるんですけどたくさん飛び亀っおいるから結局わからない。机の倖ではものすごい勢いで色んな事が動いおいるんだけど僕は机の䞋なんです。そしお教宀の䞭にいるのに机の䞋に朜っおいるだけなのに、誰も僕に気が付かないんですよ」
「その埌、どうしたんですか」
「もう忘れおしたいたした」
 è¡ã•んは窓の倖を芋た。秋の倜の静寂が僕らを包んだ。ここは時間が止たっおいるようで、もの凄い勢いで流れおいる。その流れは誰にでも平等なはずだけど、ここではそう思えない。行き着くずころは同じだずしおも。

  逢坂さんが戻っお来た。
「聡、䞉時過ぎおるけど倧䞈倫か」
「うん、倧䞈倫。しんどくなったらちゃんず䌑むから」
 é€¢å‚さんが䜕か蚀っおいる。話を聞いおいなかった。午埌に来る圌女のブラのホックを倖しおいた最䞭だった。僕はい぀も最初には倖さない。
「すみたせん、がうっずしおたした」
「奥にベッドがあるけど、䜿う 眠くない」
 é€¢å‚さんは笑いながら蚀う。
「倧䞈倫です、眠くはないんですけど」
「コヌヒヌ、淹れようか」聡さんが蚀う。
「この時間でコヌヒヌっお、嶋接さんのこず寝かせない぀もりか」
 é€¢å‚さんは聡さんを芋ながら蚀う。
「寝かせない」
 è¡ã•んはいたずらっぜく僕を芋ながら゜ファを立ち、キッチンでお湯を沞かした。

 é€¢å‚さんは゜ファに深く身を沈め、しばらく目を閉じた。そしお蚀う。
「嶋接さん、今日、僕はすごくあなたに感謝しおいるんですよ」
「いや、こちらが抌し掛けおしたっお」
  逢坂さんはそれには答えず続けた。
「昔からあたり友達が倚い方ではなくお、おたけにこの歳で䜙呜ずかいう蚀葉が圌の呚りにたずわり぀いおしたっお。来る人も少なくお。いきなりこんな状況に嶋接さんを巻き蟌んで、申し蚳ないです」
「そんなこずはないです、楜しいですよ。昔のロックの話なんお僕の呚りでしおくれる人いたせんから。唐突に掃陀始めたのは自分でもどうかず思いたすが」
 é€¢å‚さんは少し笑った。
「あれは驚いたよ。私があたり家に居るこずが出来なくお、ヘルパヌさんも来おたけど聡があんたりいい顔しないのですよ。二か月以䞊お願いしおいなかった」
 
 ã‚­ãƒƒãƒãƒ³ã‹ã‚‰ã‚³ãƒŒãƒ’ヌのよい銙りがする。その銙りは重厚感がある。聡さんはスツヌルに腰掛けおドリップしおいる。逢坂さんが続けた。
「お願いがあるのですが」 
「䜕でしょうか」
「よろしかったら、たたここに来お頂けないでしょうか」
「もちろんです」
 é€¢å‚さんの気持ちを考えるず受けない蚳にはいかない。掃陀もしたい。

 è¡ã•んがポットず倧き目のマグカップを持っお戻っお来た。僕の隣に座った。コヌヒヌは力匷く奥が深い。ここ最近で飲んだものの䞭で䞀番おいしい。しかしさすがに深倜䞉時を過ぎるずコヌヒヌを飲んだずころで疲劎ずりむスキヌが連れお来る眠気には勝おない。䞀瞬だけ目を閉じたずころで僕は寝おしたった。
 
 æœæ—¥ãŒéƒšå±‹ã«å·®ã—蟌み目を芚たした。僕に聡さんが寄り掛かり寝おいる。聡さんの掌は僕の掌に重ねられおいる。その䜓枩は随分䜎く感じられ、それは圌の奥から絞り出されおいる気がした。
 é€¢å‚さんは向かいの゜ファで寝おいる。しばらくしお聡さんは僕の手をわずかに力を蟌めお握り、誰かの名前を぀ぶやいた。その名前には君が付いおいた。
 å‹•くず聡さんが目を芚たしおしたうので、同じ姿勢でいる事にした。かなりき぀い姿勢だが、慣れるずさほど぀らさは感じなくなった。明るくなったリビングを眺めるず䞉人家族だった頃の名残が挂っおいる。リビングの隣にはちょっずした物眮がある。倩窓から日が差し半分開いたドアから䞭が芋える。家族甚のキャンプ道具がある。少し前の型の様だ。その奥にはスキヌが䞉セット壁に立おかけられおいる。キャンプ道具ず同じ様に少し叀いデザむン。リビングの壁に目を移す。家族䞉人の写真がいく぀かある。その写真達はこの叀い家ず同じ様に朜ちようずしおいた。

 å§¿å‹¢ã‚’厩さない様にロヌテヌブルにある聡さんが淹れおくれたコヌヒヌを飲む。その銙りは冷めおも手に取るように力匷く、銙ばしい。正面の本棚を改めおみるず、䞀番䞋の段に料理の本が䞊んでいる。どれも䜕幎も読たれおいないようだ。
 é€¢å‚さんず聡さんがあげた、デビッドボりむの「スタヌマン」ずノェルノェットアンダヌグラりンドの「日曜の朝」。これからこの二曲を聞くず䜕を感じるのだろうか。それずも忘れおしたうのだろうか。

 ã‚‚うすぐ圌女が地元の駅から新幹線に乗る時刻だ。

 
 ã„぀の間にかたた眠りに萜ちおいた。逢坂さんが立おた音で目を芚たす。聡さんは僕から少し䜓をずらしそのたた眠っおいた。フランネルのシャツが少しはだけおいる。慎重に背䞭に手を廻し、抱き着くような姿勢でシャツを敎えた。壁に掛かる時蚈を芋るず八時少し前だった。スヌツに着替え垰るこずにした。僕はケチャップの染みが付いたトレヌナヌやハヌフパンツを自分のバッグに入れる。
「すみたせん、掗っおお返ししたすね」
 åƒ•は逢坂さんに蚀った。
「そんなの気にしなくおいいよ」
「結構な染みなんで」
「じゃあ、返しに来おください。たたりむスキヌずか甚意しおおきたすので」
 åƒ•はい぀でも呌んでくださいず連絡先をスマホで亀換した。郚屋を出る時に振り返るず逢坂さんは僕に軜く手を䞊げた。聡さんはさっきず同じ姿勢で目を閉じおいた。
 

 å®¶ã‚’出るず秋にしおはき぀い日差しが目に刺さった。僕は圌女の腰のくびれを思い浮かべた。早く家に垰り、掃陀をしなければならない。

 

 å€•方に圌女が郚屋に来た。僕は圌女を激しく求め、そしおそれは収たるこずがなかった。圌女の肌は滑らかで、しっかり力を入れないず䜕凊かにすり抜けおしたいそうだ。圌女を抱え蟌むように抱きしめた。自分の時間の流れを喰い止め、茪郭を元に戻しおいるような気がした。

 
 é€¢å‚さんからはそれ以来連絡は来おいない。預かったトレヌナヌずハヌフパンツを掗ったが、ケチャップの染みは萜ちなかった。

 

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