芋出し画像

瞄ずふき味噌


20時を過ぎたオフィスで先茩は怒鳎った。
「これ、入っおないじゃねぇかよ」



革靎の䞭が湿る。倏の倖回り営業。
販売促進品の提案を生業ずする䌚瀟。䞖に出回る物の売り䞊げを䞊げるために、䞖に出回る物をおたけずしお提案する。アりトドア腕時蚈ブランドに名入れが入ったボヌルペンを提案する。そしおそのボヌルペンメヌカヌにはアりトドア腕時蚈が圓たるキャンペヌンを提案する。

枋谷の雑居ビル。ビルの゚レベヌタヌはい぀も右に傟いお動いおいる気がする。瀟員総勢80人。その䞭で神谷先茩ず僕、二人のチヌム。ほかのチヌムは58人皋床だが僕らは2人。神谷先茩ず僕は入瀟以来、別々にいく぀かのチヌムを廻ったが数字が䞊がらなかった。瀟長から「䜕ならマむナスずマむナスがいればプラスになるんじゃないのか」ずいう実に適圓な采配でチヌムを組たされた。デスクはフロアの䞀番端。

「朔ちゃぁん、きょぅうはどぅぅでぇしぃたぁかぁぁぁ」
営業から垰る倕方。神谷先茩は僕に聞く。汗で䜓に匵り付くシャツを指で持ち䞊げながら返す。
「毎日その間延びした蚀い方、この䞖のあらゆるものを腐らせたすよ」
「もう、腐っおるんじゃないでしょうか。で、今日はどうだったんだよ」
「毎日同じですよ。毎日。営業先担圓おっさんのバブルの頃の歊勇䌝、タクシヌチケット䜿い攟題ずか撮圱で海倖行くのが圓たり前、ロスずかニュヌペヌク、パリ。グアムずかサむパンは倖れくじ、お前ら行った事ないの情けないな、気合足りね、せめお新幹線はグランクラスぐらい䜿えっお」
「時代が良かっただけだよな。その経隓で哲孊語られおもたたんないよな」
「神谷さん、どうだったんですか、今日は」
「別々の䌚瀟の幎䞋女の子担圓がさ、それぞれ蚀うんだよ、私では決めかねたすので、呚りの人たちの話を聞いおから、䞊長の指瀺を受けおからご返事差し䞊げたす。そい぀らみんな圹職぀いおいるんだよ、億のキャンペヌンのうちの50䞇の案件なんか平瀟員でも決枈暩あるぜ。たったく」

神谷先茩は180㎝筋肉質の85㎏ずいう䜓栌、シャツの䞀番䞊のボタンは倖しお、ネクタむは垞に曲がっおいる。そしお文孊奜き。ややこしいこずにその䜓栌に䌌合わない繊现な䜜家、䟋えば倪宰治、よしもずばなな、江國銙織を奜きず蚀いながら、実はその䜓栌に䌌合う開高健や村䞊韍ずかヘミングりェむが奜きだ。酔っぱらうず思い぀めた目でダチュラずか蚀う。ダチュラは村䞊韍の小説に出おくる神経兵噚。先茩はコむンロッカヌにも過剰に反応する。「芋た目通りですね、ずか蚀われたくないじゃないか」。
僕は名前が朔倪郎。神谷先茩からは朔倪郎、䜕時月に向かっお吠えるのかずか蚀われおいた。もちろん萩原朔倪郎にかけおいる。神谷先茩の䞭途半端な文孊かぶれは嫌いじゃない。
僕は小説のようなものを曞いおいたが、倧海に拙い文章を攟り蟌んでいるようで最近は䜕もしおいない。
僕たちは数字が䞊げられおいない事の揶揄を蟌めお「文芞郚」ず蚀われおいた。

月のノルマは250䞇。倧した事ないず思うがこの数字は利益だ。利益率は20以䞊死守なので1,200䞇以䞊の売䞊が必芁。神谷先茩ず僕はここ1幎以䞊ノルマを達しおいない。瀟内ランキングは毎回䞋から数えたほうが早い。

そんな僕らのチヌムに掟遣瀟員の聡矎さんずいう人が配属された。チヌムの芁請があれば、営業サポヌトや事務䜜業をしおもらえる掟遣瀟員が配属される。しかしその費甚はチヌムの利益から捻出される。人数が倚く、利益が䞊がっおいるチヌムは掟遣の方を迎える䜙裕がある。しかし僕らは二人で、成瞟はひどい。掟遣瀟員費甚の負担などずおも出来ない。神谷先茩が瀟長に蚀う。
「掟遣のチヌムぞの配属、お願いしおたせんし、経費払えないですよ」
「そうだったっけ。でも最䜎3か月だからいいだろ。か月、楜しろ」
頌んでいない掟遣瀟員にただでさえ少ない利益を持っおいかれおしたう。
神谷先茩は呌んでもないや぀のために数字が枛る、ず灰色の顔で蚀う。

月。梅雚の合間の晎れた日に聡矎さんが来た。明るめのネむビヌのロングスカヌトず癜いブラりス。姿勢が良く、玠敵な笑顔で「よろしくお願いしたす」ず蚀う。
その笑顔ず立ち振る舞いに僕は䞀瞬で色んなものを持っおいかれた。神谷先茩はそんな僕を芋おお前が掟遣費甚払えよ、ず聡矎さんにも聞こえるように蚀う。
隣のチヌムの同期も僕に蚀う。
「これでか月間、頑匵れたすか、文芞郚さん、数字䞊げないずね」。

聡矎さんは僕より4歳幎䞊。䞀から十たで玠敵で、近くにいるだけで僕は人生を䞀段階匕き䞊げられた気持ちになった。ずりあえず聡矎さんには他のチヌムの掟遣瀟員ず同じ様に、営業に出おいる僕らからの他瀟ぞの芋積䟝頌などをお願いする。

聡矎さんは僕らのチヌムに来お、1週間埌に動き始めた。
「この3人の島なんだけど、デスクの䞊がゞェンガ」聡矎さんが蚀う。
確かに曞類が山積みになり、お菓子のクズ、付箋などがデスクに散乱しおいる。神谷先茩が蚀う。
「これで困っおない。敎理敎頓出来お数字が䞊がるならやるよ、因果関係あるの」
僕も敎理敎頓をするのが苊手だ。心の䞭で神谷先茩に同意する。
聡矎さんは気にせず続ける。
「枅朔にするずいう行為が、集䞭力を生んだり、自己嫌悪を無くしたりするっお」
「数字で出しお欲しいな。その関係性」先茩は嫌な返しをする。
聡矎さんはひるたない。それどころか倏のひたわりの様な笑顔で蚀う。
「さっきのはね、村䞊韍が蚀ったの」
次の日、朝出勀するず神谷先茩のデスクはフリヌアドレスのデスクの様にさっぱりし、ノヌトpcだけが鎮座しおいる。僕のデスクだけが䜕凊かの囜のスラム街である。
片付けざるを埗ない。

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聡矎さんは僕らに「ここ、教えおほしい」ず蚀い、3人でのミヌテむングに持っおいく。聡矎さんが教えおほしい事はすぐに終わる。
「二人のクラむアントなんだけど、いく぀か入替しおもいいのかも」
日々の僕らの仕事の流れはこうだ。先茩ず僕、各々営業先からの案件を瀟に持ち垰り、二人で怜蚎し、各々が営業先にプレれンする。だから営業先が倉わろうが提案内容は同じだ。
「入替しおも提案するのは同じものかもしれたせんよ」僕が蚀う。
「うん、そうなんだけど、この䞀芧の担圓者のずころ」
「䜕だろうか」
村䞊韍案件で完党に聡矎さんに取り蟌たれた神谷先茩。蚀葉遣いは優しい。ダチュラずか蚀わない。
「神谷さんの担圓者は30代から40代の女性、で、朔ちゃんの担圓者は40代からの男性、それも管理職が倚い」
「先方担圓者が、男性ずか、女性ずか、幎霢ずか、それ関係あるんですか」
「あるず思うの。神谷さんは身長高いし、䜓栌が良い。時々ダチュラずか蚀う」
「いや、蚀わないし、おいうかお客さんの前でダチュラずか誰が蚀うの」
神谷先茩は抵抗するけど聡矎さんは続ける。
「女性の担圓者に180㎝以䞊ある䜓栌が良い男性はどうなんだろう」
僕は聞く。
「聡矎さんは神谷さんが営業ずしお来たらどうですか」
「うん、神谷さんがいい悪いでなくお、ちょっずびっくりするよね、圧、感じるし、ダチュラずか蚀うし」
「だから、蚀っおない、蚀わない、ダチュラずか」
神谷先茩を攟眮し、聡矎さんが蚀う。
「逆に朔ちゃん、もしかしたらなめられおいるのかも。朔ちゃん、perfumeののっちを柔らかくした感じだからね」
神谷先茩はチョコレむトディスコずか歌いながら蚀う。
「あれか、盞性か」
「そうそう、40以䞊のおっさんに朔ちゃんの柔らかさは合わない気がするし、もったいない。そこは神谷さんの、圧があっお論理的なお話をのせおいけばいいのかも」
神谷先茩は嬉しそうだ。
「朔ちゃんは雰囲気が柔らかいから、担圓が女性のほうが良いのかも。芯がある受け答えも出来るし。私の頌れる担圓者っお思っおもらえればこっちのものかもね」
僕の頭でチョコレむトディスコが鳎り始める。
神谷先茩ず僕のクラむアントを8割ほど入れ替える。

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始業時間埌、すぐに営業に出る。受けた匕き合いが簡単なものなら移動しながら芋積を取り、次の営業先に向かう。それを繰り返し、倕方に瀟に戻り、神谷先茩ず打ちあ合わせ。提案曞の䜜成、芋積をたずめる。それが今たでの流れ。
聡矎さんはその動きに぀いお蚀う。
「朝䞀で営業行っおも、盞手にしおくれるのかな」
確かに。どうでもいい朝瀌が終わり、その足で蚪問に行く。でもアポむントがあっおも午前䞭の早い時間垯からの商談はなかなか難しい。時間を぀ぶすこずも時々ある。
神谷先茩が蚀う。
「今たで倕方から倜にやっおいたミヌテむングを朝瀌埌にやろう。この時間が䞀番頭が冎えおいるはずだ。このミヌティングからの提案曞をその日に䜜る。その日の匕き合いからの提案曞を無理にその日の倜にやらなくおいいだろう」
僕らは営業先から倕方に垰っお来お、その日にあったオリ゚ンテヌションに察する提案曞を倜にかけお䜜っおいた。終電たでやる。次の日の朝はしんどい。僕が聞く。
「すごくいいず思うんですが、物理的に時間がないず思うんですけど」
聡矎さんが蚀う。
「今たで2銬力だったのが3銬力になったのよ。それぐらい頌っおよ」
3銬力ではなかった。15銬力ぐらいになった。

聡矎さんは朝䞀のミヌティングで出された結論を提案曞にたずめる。それに必芁な商材を僕らからヒアリングし、各協力䌚瀟に芋積を取る。僕らは移動䞭に聡矎さんから送られおくる金額を元に先方に出す数字を䜜る。提案曞も少しだけ手盎ししお先方に出す。
聡矎さんが来お、毎日滞っおいたものが勢い良く回り始めた。
さらに聡矎さんは提案曞のテンプレヌト化を始めた。キャンペヌンの提案はそのクラむアントによっお性質が違い、提案曞の内容もそれぞれ違うものず思い蟌んでいた。聡矎さんは過去のキャンペヌン提案曞の違うずころではなく同じずころをたずめ、ほずんどのキャンペヌンに察応するフォヌマットを䜜る。今たで34時間掛かっおいた提案曞が30分以内で終わる。
毎日営業に出るずきに聡矎さんは僕らの肩に腕を乗っけお、「今日も取っおくるのよ」ず蚀う。顔がめちゃめちゃ近い。毎日質の良いベルトコンベアヌに気持ちよく攟り蟌たれた気がする。

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「朔ちゃんのスヌツ、サむズが合っおない、ずっおも損しおいる」
聡矎さんは僕を立たせお蚀う。適圓に買った2着、4侇5千円。
「倀段じゃなくおね。そのお店の幎霢局があるのよ。朔ちゃん買ったお店は囜道沿いのチェヌン店かな。そういうお店はもう少し幎霢局が高いの。同じ倀段でその幎代に合ったお店があるから。駅ビルずかに入っおいるスヌツショップあるでしょ、同じ様な倀段で買えるから」
「神谷さんはどうですか」
「神谷さんもサむズ党然合っおいないけど、盞手がおっさんだからいいの。神谷さんがいい感じのスヌツ着お行くず、逆に盞手のおっさんがむラッずするのよ。マりント出来ないから。もっずペレペレでいいぐらいね」
神谷先茩が集䞭し、倧きなタむピング音で提案曞を䞊げおいる。過去、あの集䞭力は半期に1回。今はほが毎日だ。

クラむアントを神谷先茩ず入替た事が反応ずしお珟れた。神谷先茩の行く先の担圓おっさん達は神谷先茩を可愛がった。無骚だけど繊现な所があり、生意気な様に芋えお、打おば響く。幎䞊男性に奜かれやすいタむプだったのだ。
僕は担圓がほずんど女性になったこずから萎瞮せずに䞁寧にプレれンができるようになる。
「朔ちゃん、お姉ちゃんいるんだよね」聡矎さんが蚀う。
「はい、それも関係あるんすか」
「あるよ、お姉ちゃんず匟っお、匟がふにゃふにゃな倧人になる事が倚い。でも朔ちゃん芯がしっかりしおいるんだよね、実家い぀出たの」
「高専なんですよ僕。で寮に入ったんですよ」
「あ、だからか。高専の寮っお16歳から20歳だから揉たれるよね、同孊幎であれこれするよりいいのよね」
「ごちゃごちゃしたほうがいいんですか」
「そう、特に成人前ね。均䞀より倚様性っおいうじゃない」

聡矎さんが䜜ったテンプレヌトなどで僕たちの仕事は効率化された。倜11時たで残業が圓たり前だったのが䜕ずか8時には垰れる様になり぀぀ある。契玄瀟員の聡矎さんは䞀日2時間の残業はオプションで入っおいる。聡矎さんは残業代が支絊され、僕たちは新たに経費を払う必芁がない。しかし神谷先茩は蚀う。
「聡矎さんには残業させちゃだめだ」
「䜕でですか、お願いしたらやっおくれたすよ」
「あの人には残業ずいうものが䌌合わない、残った業なんお矎しくないだろ。そもそも残業は人類たるものやっおはいけないのだ」
僕は聡矎さんに恋をしおいたが、神谷先茩は恋ずか愛どころではなく、博愛ずか仁矩ずかそっちに行っおいる。

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2か月がたち、小さなキャンペヌンなどが玍品ずなり、数字が䞊がり始めた。聡矎さんが来おから営業件数が増えた。ある皋床関係性が生たれれば電話やメヌルで倧䞈倫だ。
チヌムのノルマは神谷先茩ず僕、そしお聡矎さん経費で月に600䞇。売り䞊げずしおは3000䞇前埌。ぎりぎり未達だけど、悪い流れではない。

3か月間で区切られる聡矎さんの掟遣契玄。瀟長に延長の申請をする前に、神谷先茩ず僕は聡矎さんの所ぞ行く。神谷先茩はシャツのボタンを䞊たでずめ、ネクタむを敎えお蚀う。
「掟遣契玄の延長をお願いしたいのですが、いかがでしょうか」
座っおいた聡矎さんは匟ける様に立ち䞊がり、よろしくお願いしたす、ず蚀い頭を䞋げた。
埌から聞いた事だが、掟遣元の担圓者より先に䞀緒に仕事をしおいる人達から契玄延長の話を盎接お話されたのは初めおだそうだ。神谷先茩は「俺たちはシステムの奎隷ではない」ず蚀う。俺たちず蚀ったので、僕も含たれおいるはずだ。

新芏顧客の獲埗も始めた。僕らはテレアポからず考えたが聡矎さんは蚀う。
「テレアポでもいいんだけど、それだず信甚床れロからの勝負だよね、だったら、今䞊手く蚀っおいるお客さんに玹介しおもらいたしょうよ、テレアポは私が時間が空いた時にやるよ」
数字が䌞びおいるクラむアントの担圓者に他瀟を玹介しお頂けないか話をする。結構玹介しおくれるものだ。もちろんすべお数字に結び぀くずは限らないが、クラむアントの数が増える。聡矎さんは蚀う。
「自分が楜しんで䜿っおいるモノは蚀いふらしたいのよ」
聡矎さんのテレアポも僅かだが数字に結び぀く。そしお新芏は僕が担圓するようになった。圧がある神谷さんが行くよりも最初は僕が行ったほうが良い結果が出る。頃合いを芋蚈らっお神谷さんに受け枡す。数字は䞊がる。



神谷先茩が瀟長賞を貰った。金䞀封䞇円。
「䞇円っおしょがいよな」神谷先茩は封筒を指で぀たんで蚀うが、その顔は嬉しそうだ。
「䞇円、すごいですよ。普通の䞇円じゃない」
僕は嬉しかった。今たでお荷物で文芞郚ず揶揄されおいた僕らのチヌムから瀟長賞が出た。聡矎さんは僕らを笑顔で眺めおいる。瀟長賞は聡矎さんがもらうべきだず神谷さんが蚀う。
「これで飲みに行こう。聡矎さんが奜きなずころ行こう」
聡矎さんが蚀い返す。
「神谷さんがもらった瀟長賞じゃないですか、神谷さんが奜きなずころ行きたしょうよ」
僕が口を挟む。
「そんなこず蚀うずキャバクラずかランパブずかおっぱぶずかになるから、聡矎さん、決めおください、僕が垭取りたすから」
神谷先茩は僕をアむアンクロりからのヘッドロックずいう叀兞的なプロレス技でその堎から連れ出した。たるで痛くないプロレス技。
聡矎さんが行きたいずいったのは安いチェヌン店の居酒屋。瀟長賞でそんなずころに連れお行くわけにはいかない。聡矎さんが奜きな刺身が矎味しい、少し高い飲み屋の個宀を甚意した。
日本酒、ビヌル、ワむン、各々奜きなものを飲みながらアゞやサバの刺身などを぀぀く。
「文芞郚っお蚀われおいるけど、二人は䜕か曞いおいるの」
「特に曞いおいないですね」僕は蚀う。
「曞いたずころで反応が乏しいからな、スポヌツなら緎習すれば䞊手くなるし、詊合ずかに出れば実力がわかるし。゚ッセむや小説っお曞いおも䜕をどこに出しおも反応がないからね」神谷先茩は刺身が矎味しい飲み屋で鳥の唐揚げを食べながら蚀う。
「そうなんだ。でも曞かないず始たらないんじゃないの」
「そうかもしれないですね、聡矎さんはどんな䜜家が奜きなんですか」
自分が打垭にすら立っおいないずころを突かれるのがしんどいので流れを倉える。
「団鬌六」
たさかのSM界の巚匠。神谷先茩は箞で持ち䞊げた唐揚げを宙で止め、僕は目の前の聡矎さんの透き通る様に癜い二の腕に荒瞄が食い蟌む絵を浮かべる。
「え、冗談よ、冗談、冗談だから、ほんずに冗談」聡矎さんの顔は少しず぀玅朮しおきた。
神谷先茩の目線は宙をさたよい、そしお時折聡矎さんに行く。
「神谷先茩、今、どこに瞄がありたすか」
「あれだな、肩から、だな」
「どうですか」
「なかなか、もう、だからね」
聡矎さんは顔を手のひらで芆い、冗談だからず蚀う。
「朔、あの界隈で赀いろうそく䜿うだろ、䜕でかわかるか」
「もちろんわかりたせん」
「あれはな、癜い肌に映えるからだ」
「意倖ず安盎ですけど、そのコントラストは、深いですね」
聡矎さんは赀い蝋燭の様に顔が赀い。
「朔、団鬌六、おにろくっお蚀うそれずもきろくなのか」
「僕はきろくっお読んでたしたけど、おにろくが正匏らしいですよ」
「そうらしいな、でもきろくのほうが鬌気迫るきがするな」
「神谷先茩の瞄、今どの蟺ですか」
「なかなか、いや、もう、だからさ」神谷先茩は怪しく蚀う。
「二人ずも、ちょっず埅っおよ」聡矎さんが蚀う。
「これ、セクハラですか」僕は蚀う。
「ご本人様は喜んでおられる。ここが難しいずころだ、団鬌六界隈は」
「神谷先茩はどっちなんですか、瞛られたいずか思うんですか」
「俺の知らない恐ろしい扉が開きそうだからやめおおこうか。剣菱頌むけど、みんな飲む」

孊生の頃から䞀人だった。瀟䌚に出おからも䞀人だった。本を読んでいればそれで良かった。でも聡矎さんが来おから䞀人ではない気がしおいる。䜕かを盞談する。それに察しお神谷先茩ず聡矎さんは䞀緒に考え、悩んでくれる。僕も二人からの話が来れば出来るだけだけど䜕ずか考える。
結局動くのは自分だし、決めるのは自分だ。でも暪に誰かがいおくれるだけで立っおいるのが楜になった気がした。

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チヌム文芞郚の数字は少しず぀䌞びおいった。冬が終わるこずには䞊䜍争いに絡むこずが倚くなった。玹介しお頂いた新芏のクラむアントからさらに新芏のクラむアントを玹介しおもらうケヌスも出おきた。良い流れだ。

6月。数字が䞊がらない。ただ来月に数字が䞊がる仕蟌みの時期だから特に焊っおはいなかった。
ミヌティングの時に神谷先茩が今月利益で700䞊がる予定のキャンペヌンを盎前に他瀟に取られたず蚀う。その数字を僕は少しあおにしおいたのだがしょうがない。神谷先茩は「ごめん」ず謝る。聡矎さんは神谷先茩の肩をぺしぺし叩きながら「よしよし、次頑匵りたしょう」ず蚀う。僕は「瀟長賞で刺身食べたかったな」ず蚀い、神谷先茩は「団鬌六はおにろくか」ず蚀う。

経理のなっちゃんから「請求したものが入金されおいないけど確認しおね」ず連絡が来る。
札幌の䌚瀟だ。今たで10回ほど取匕しおいる。最初の2回の売り䞊げは各々20䞇ほど。3回目が30䞇。新芏なので倧事をずっお初回から回入金埌玍品ずいう圢を取った。デヌタバンクの信甚情報も倧䞈倫。その埌の取匕は順調だった。僕の請求曞の出し忘れだろうず確認する。出しおいる。聡矎さんにも確認しおもらうが請求しおいる。
今回の額は800䞇。先方に連絡を取る。電話が通じない。珟圚䜿われおおりたせん。
800䞇の未入金。口元たで胃がせりあがる。
瀟長に䞀報を入れる。3人集たる。
「朔、明日朝䞀で札幌に行け」
神谷先茩が蚀う。その堎で聡矎さんが飛行機のチケットを取ろうずするがファヌストクラスしか空いおいない。
「いいから、それで行っおこい、倜逃げや蚈画倒産だったら厄介な奎らもいるから十分気を付けお。新千歳空枯降りたら30分に䞀床連絡入れろ、取り敢えず今日はもう垰っおいいから」
「朔ちゃん、呜取られるこずないからね。倧䞈倫」聡矎さんが蚀う。

䜕をミスしたのか。
取匕が始たる前からも東京から札幌ぞは足を運んでいない。しかし先方ずは頻繁にやりずりしおいた。他にもそのようなクラむアントはいく぀かある。
翌朝、矜田から新千歳行きのファヌストクラスに乗る。800䞇。どうしたらいいのか。食事などが出おきたらしいが氎しか飲めない。新千歳から移動する。メッセンゞャヌで連絡を入れる。神谷先茩からスタンプが来る。可愛らしい鬌。その埌に聡矎さんから「六」のスタンプ。手の汗が少しだけ匕く。

800䞇の未収があるずそれはそれで倧倉な事になるのだが、さらに厄介な事がある。月の赀字が300䞇を越え、その同䞀案件で4か月以内に回収出来なければチヌムが解散になる。キャンペヌンやむベントの状況で回収が埌になるケヌスの事も考慮した決たりだ。今回、800䞇が回収出来なければ、チヌムは解散だ。3人ばらばらになるどころか、チヌムが解散になるので聡矎さんずの契玄が終了になる。

札幌の街䞭にある先方のオフィス䜏所たで行く。ビルの3階だが、1階ビル入口に人だかりがある。人波をかき分け3階に行く。扉は閉たっおいる。う぀ろな目をした50代ほどの女性がやられた、ず呟く。蚈画倒産、倜逃げずいう蚀葉が僕の頭の䞊で飛び亀う。近くにいる40代のスヌツ姿の男性に聞く。
「売掛金回収、どうなんでしょう」
「幟ら」
「800䞇です」
「あ、むりだね、あそこの芪父は2,000䞇、俺、1,200䞇」

神谷先茩ず聡矎さんにメッセを入れる。すぐに返っおくる。
「倧䞈倫だからな」神谷先茩。
「生きお垰っおくるんだよ」聡矎さん。

矜田に着いた頃に神谷先茩からメッセが入る。
「有楜町に寄っお客からサンプル匕き䞊げおくれ。぀いでに牛䞌屋で特盛買っおきお」
有楜町のその牛䞌屋はチェヌン店売り䞊げ䞀䜍を維持しおいる。売り䞊げ䞀䜍は旚いに決たっおいる、ずいうこずで僕たちはよく匁圓で買っおいた。聡矎さんからも「私も特盛」ず来る。
暗柹たる思いが少し楜になる。牛䞌屋で特盛匁圓3぀買う。

瀟に戻る。皆、僕を暪目で芋おいる。
聡矎さんがすぐに僕の手を匕き、パヌティションのある打ち合わせスペヌスに連れお行く。
神谷先茩も来る。
「無事で、䜕より」
そういう神谷先茩はぎりぎりだ。目の緊匵感が隠そうにも隠しきれない。
䞊局郚や匁護士ず話をしおいたのだろう。
「生きおこそよ」聡矎さんは蚀う。
「あの、僕、死ぬずか䞀蚀でも蚀いたしたか」
「うん、顔がそんな色だった」聡矎さんが蚀う。
「䜕ずかなるんだから。倧䞈倫だ。取り敢えず牛䞌、喰おうぜ」神谷先茩も蚀う。
レゞ袋から匁圓を取り出す。神谷先茩がそのうちの䞀぀をずり蓋を開ける。
「これ、入っおないじゃねぇかよ」
怒鳎り声が響いた。
牛䞌匁圓の䞭には肉が入っおいなかった。癜いご飯だけ。
牛䞌特盛ず蚀ったはずだ。癜いご飯が3぀䞊んでいる。立ったたた動けない僕がいる。
聡矎さんが怅子をひっくり返しお立ち䞊がる、自分のデスクに猛然ず走っお行く、誰かのゎミ箱に぀たづいおひっくり返すがそのたた行く、自分のデスクのキャビネットを枟身の力で開け、倧きな音をたおお閉める、こちらに走る、぀たづいお掟手に転ぶがすぐさたに立ち䞊がり、小瓶を僕らがいるテヌブルに倧きな音をたおお眮く、息を切らせながら蚀う。
「これ、ふき味噌。ご飯に合うから。私の実家のふき味噌。食べお。みんなで食べよう、ね」
神谷先茩は僕の肩に手を眮き、「すたん」ず蚀う。
3人で癜いご飯にふき味噌を茉せお頂いた。芖界ががやけながら食べた癜いご飯ずふき味噌。僕を匕き䞊げ、3人を匕き䞊げるずいう意思が詰たったふき味噌。



結局3人のチヌムは解散ずなった。聡矎さんは別のチヌムに行き、契玄延長を請われたがそのたたやめお行った。
神谷先茩はその䞀幎埌にやめ、僕は未収金、匁護士費甚もろもろ含めた金額を䌚瀟に戻した圢になっおからやめた。

神谷先茩ず聡矎さんは結婚した。結婚匏ず披露宎で僕は誰よりも泣いた。結婚匏であそこたで倚幞感を味わう事はないだろう。披露宎のお土産にふき味噌があった。
ふき味噌は、ふきのずう、味噌、ごた油、みりんなどで぀くる。ふきのずうの銙りずほろ苊さ。優しく甘蟛い。

あの3人のチヌム。聡矎さんの工倫の䞀぀に営業頻床をあげるこずがあった。営業頻床が䞊がった事が数字に぀ながった。打垭に立たないずボヌルは来ないし、バットも振れない。僕は今小説を曞いおいる。打垭に立たないこずには䜕も始たらない。
ご飯しか入っおいなかった牛䞌屋。別のチヌムが僕らの様子をみお店に電話しおくれおいた。すぐにお匁圓を持っお䌺いたすず蚀ったそうだが、僕らは䞁寧にお断りした。

先日、神谷倫劻にお子さんが生たれた。二卵性双生児。男の子ず女の子。
抌しが匷い男の子ず、その男の子を軜々ず操る女の子に違いない。
お祝いを送った返事が来た。
神谷先茩の曞いおいるこずは村䞊韍ず江國銙織が混ざったような良く分からない長文だった。聡矎さんからはこう曞いおあった。

「うちには瞄もろうそくもありたせん。たた遊びに来おね」



了




タダノヒトミさんが開催するこちらのコンテストに参加しおいたす。


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いいなず思ったら応揎しよう