ファンタジーと現実の錯綜。映画『箱の中の羊』感想
どうやら賛否両論あるらしい。
という前評判をうっすら知りつつも鑑賞した『箱の中の羊』
鑑賞してまず思ったのは「確かに」。
確かにこれは賛否両論でるわ。である。
※以下ネタバレありの感想を記していく。
本作の率直な感想は、鑑賞後にどんな気持ちになればよいのか迷う作品であった。
1番しっくりくるのは困惑。
手放しでハッピーエンドとも言えない。
バッドエンドとも言えない。
思考する余白のある作品だった。
事前に予告編はみており、子供を亡くした夫婦が、ヒューマノイドを迎えて再生する物語なのかと勝手に思い込んでいた。感動系のヒューマンストーリーだと。
その側面も確かにあったし、そういうトーンで描かれているのだが、それが全てでは無かった。
ヒューマノイドに我が子を重ねる母
綾瀬はるかさんと、千鳥の大吾さんが夫婦役を演じている。
二人の間には7歳の男の子がいた。
いたのだが、悲しい事件によって我が子を喪失してしまう。
傷を抱えながらも日常を送る音々(綾瀬はるか)は、ある日ヒューマノイドの存在を知る。
故人を生前そっくりの姿でヒューマノイド化して一緒に生活する事ができる。
そんなサービスがあるのだという。
これはびっくりだ。
しかも本当にそっくりだ。
しかもなんと、今だけキャンペーン中につき無料!!
乗るしかないこのビックウェーブに。
ってことで、亡くした子供、翔くんそっくりのヒューマノイドを迎え入れた。
あまりにもそっくりな容姿に、母は大喜び。
対照的に困惑する父、健介。
予告にもあるが、大吾さんの
「ワシは君のパパではない。おじさんでええよ」
は夫婦の温度差を象徴するシーンである。
しかし、生活を重ねるうちに変化が訪れる。
本物の翔とヒューマノイドの翔の違いに、憤りだす音々。
「翔はそんなことしない!」
そう、所詮はハリボテなのだ。
そっくりなニセモノで、その本物にならない溝が許せない。
一方大吾さん演じる、健介は生活の中でヒューマノイド翔くんに心を寄せ始める。
ヒューマノイドなのに、事件の記憶を思い出すのではないかと事件現場に連れてゆく。
そして懺悔する。
ヒューマノイドを迎えた事で、どこか蓋をしていて夫婦の痛みが浮き彫りとなる。
散りばめられたメタファー
賛否両論あると前述したが、作品を素直に見たまんま受け取ると困惑すると思う。
しかしなが、作中にメタファーと思われる表現がパラパラと登場する。
ここに監督の伝えたいメッセージが潜んでいるのかなと。
星の王子様は中でも象徴的に登場する。
「大切なものは目に見えない」
「箱の中の羊」
この辺は分かりやすく、メッセージ性強く描かれているが、他にも
翔くんは、木に興味を示す。
本物の翔くんの木とヒューマノイド翔くんの木にも意味が込められてそうだなと思った。
肝心の何の木を植えたのか失念してしまったが。
そして、建築士の音々は、ガラスと木の異質な物質の融合が面白いんだと話す。
翔くんもそれに賛同しているかのような描写がある。そして、「ヒューマノイドと森」のラストシーン。
翔くんは、混乱する音々に「契約を終了しますか?」と業務的に言うのに対し、捨てられたヒューマノイドや問題のある家庭環境の子供達の事は「ぼくの家族」と紹介する。
パラパラと登場する対称性に注目して、もう一度見ると理解が深まるかもしれない。
ヒューマノイドの「家族」
結局、綾瀬夫妻の家族ごっこは破綻し、ヒューマノイド翔くんは新たな「家族」との道を選ぶ。
ヒューマノイドは感情を持たないと言うが、本当にそうだったのだろうか。
ヒューマノイドが、GPSを外し最終的に自由を獲得するという描写は、彼らの意志であり感情の産物なのでは??
「心は目に見えないから想像する」
しかないのだろうか。
監督の想いを知る由はないが。
リアリズムとファンタジーがまぜまぜ
本作の時代設定は「少し先の未来」。
ドローンによる配達や、ヒューマノイドのサービスが未来を象徴するアイテムだと思うが、それ以外は現代と大差ない。
警察はアナログというかいつまでも犯人を捕まえられないし、子供達は公園の遊具で遊んでる。
ただただ、人間そっくりのヒューマノイドだけが超未来であった。
だからこのストーリーに違和感を感じる人が多いのだと思う。
現代とほぼ変わらない環境に、取ってつけたようなヒューマノイドだけが浮いているというか。
ファンタジー要素としては、ヒューマノイド&人間の子供たちが森に還ってゆくラストシーン。
今まで、リアリズムな視点で見ていたのに、
超ファンタジーなラストに着地する。
おそらく多くの人は、メンテナンス大丈夫?
5年後には苔むしてない??
など現実的な心配をしてしまうと思う。
私も過った。シンプルに不法投棄に見えた。
けれど、それを分かった上でヒューマノイド達はそれを望んでいるのかもしれないとも思った。
だって星の王子さまのラストは…。
結局のところ
いろいろと思考を散りばめてみたが、
監督の描きたかったものは現代版星の王子さまだったのかもしれない。
あと対比の多さから、超未来的なものを現代的に、ある意味泥臭く描くという監督の挑戦だったのかもしれないと思った。
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