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【ファジサポ日誌】220.第5回中国ダービー ~J1第6節 ファジアーノ岡山 vs サンフレッチェ広島 マッチレビュー~

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「全員で勝つ!」
筆者個人としてはJ1昇格プレーオフ以来であったかもしれない。
久しぶりにこの何が何でもという感覚を思い出させてくれた一戦となった。
その背景には、お馴染みとなった実況担当江本一真アナの口上ではないが、このダービーの存在自体を否定する相手に対してダービーの歴史を積み上げたいという執念、そして不本意にも退場してしまった仲間への想いとピッチに残された者たちの執念への共闘があったと思う。

今節のレビュータイトルは「第5回中国ダービー」、これが筆者の想いである。

1.試合結果&レビュー


5回目を数える「中国ダービー」は劇的、そして予想外の展開となった。
岡山がRST(20)河野のJリーグ参入18年目にして、クラブ史上初となるハットトリック達成の活躍により3-2で広島に勝利した。
ダービーは構想リーグを含めて通算3勝目となる。
前節千葉戦から連勝した岡山は今シーズンの勝点を二桁に乗せた。

広島は開幕から3勝2分11得点2失点と好調であったが、ここで初黒星を喫した。

J1第6節 岡山-広島 メンバー

岡山は水曜日のアウェイ千葉戦からスタメン5人を変更した。
3CBはファーストチョイスの3人、ボランチの一角に久々に(24)藤田が先発復帰を果たした。LWBには(51)白井が入る。右はRWB(26)本山(遥)、RST(20)河野が続戦の一方、前線にはLST(8)江坂とCF(99)ルカオが戻った。

広島はRCB(33)塩谷など主力に複数人の怪我人が出ている模様である。前節名古屋戦からはスタメン1人の変更に止まった。新加入、2021-2022エールディビジ得点王CF(22)アレーが満を持して先発してきた。彼を含めて強力布陣であることは間違いない。
海外移籍をいったん取りやめた代表GK(1)大迫がサブ、それまでサブであった(99)大内のスタメン起用が継続している点も特長的である。
前節ベンチ入りしていたDF(16)志知については京都への移籍が発表された。サブには有望な2種登録選手も入っていた。

2.レビュー

(1)前半

前節の千葉戦とは打って変わって、ゆったりとしたリズムで保持する広島を相手に岡山もハイプレスと5-2-3ブロックで対抗した。

広島は岡山の中盤、ダブルボランチ脇のスペースを使う。特に左サイドは、LWB(7)東とLST(10)鈴木のレーン交換からチャンスメイクする。ワントップのCF(22)アレーは中盤に下りる動きが目立つ。
岡山ダブルボランチとの間に数的優位をつくる意図や(10)鈴木や(11)加藤といったシャドー陣を押し出す意図があったものと推察する。

岡山はいつもどおりCF(99)ルカオにロングボールを当て、広島陣内に起点をつくっていたが、(99)ルカオはいつもと異なり左サイドではなく、右サイド寄りに流れて広島CB(4)荒木を引っ張り出していた。

この動きには意図があったのではないかと推察する。
最近数戦、岡山の攻撃の焦点はどのようにPA、特にポケット内に進入する選手を増やすかにあった。(99)ルカオが左に流れると、そこを起点としたチャンスメイクは容易になる。それはLST(8)江坂が同サイドで絡むからである。ただし、そうなるとPA内に進入する役割は逆サイドのシャドー(20)河野とWB(26)本山(遥)の2人になる。この状況を今シーズンはボランチの(41)宮本のBtоB(ボックストゥボックス)によるPA内進入で補おうとしている(補えているとまではいえない)のが岡山であるが、その(41)宮本はスタメンから外れている。

ならば(99)ルカオが右に流れれば、高い得点力も併せ持つ(8)江坂が自ずとPA内に入ってくることになる。PA内で決定的な仕事も出来る(51)白井も入ってこれる。こんな計算がチームとしてなのか、(99)ルカオ個人の判断なのかは分からないがあったものと推察する。

そんな(99)ルカオの広島陣内右への動き出しが先制点に直結する。
GK(1)モーザーは序盤、広島(7)東のクロス性のシュートに鋭く反応、リズムに乗っていた。来日以来、キックは日増しにその精度が上がり、飛距離が延びていく。
右サイドに流れながら走っていく(99)ルカオよりもCB(4)荒木のカバーの方が先行しているように見えた。そんな様子が広島守備陣の足を少しだけ緩めさせたのかもしれない。
しかし(99)ルカオの加速力、トップスピードが上回る。(4)荒木は(99)ルカオに体を入れながらも何か考えているような様子にも見えた。これまでの対戦でも(99)ルカオとこの日本を代表するCBの対戦は見どころ十分であった。(4)荒木にも新たな対策があった筈である。しかし、考えの末の駆け引きを引き出される前に(99)ルカオのシンプルな突進が(4)荒木を振り切る。

そして味方の(20)河野は(99)ルカオが抜け出すイメージを持ってスプリントしていた。ただ一直線に走るのではない。広島の守備陣3人の位置を確認しながら彼らのスペースの中央に位置するよう微修正を加えている。
そして(99)ルカオからのマイナスのクロスをイメージしている。
おそらくイメージに近いクロスを引き出した(20)河野の正面にはGK(99)大内が控えていたが、(20)河野は慌ててGKにぶつけることもなく。ダイレクトでコースに撃ち切った。

以前の(20)河野に関する記事の引用投稿と彼の岡山移籍が決まって間もなくの筆者の投稿を載せてみたが、J1初挑戦ながら(20)河野の岡山での個性はその得点嗅覚にある。アウェイC大阪戦では脳震盪を負ってしまったが、ゴール前の狭いスペースに飛び込んでいけるのが彼のファジアーノ岡山における唯一無二の特性である。

個の特性の最大限の戦力化、これが木山ファジの肝であることは何度も述べてきたが、(20)河野続戦の意図はまさにこの得点嗅覚を活かすことにあったといえる。

先制された広島はピッチを広く使いながら、岡山のブロックを引き延ばそうとしていた。左から右へのサイドチェンジも多かったが、右の「ゲームメーカー」DF(33)塩谷は不在。(5)新井と(15)中野が頻繁にポジションを入れ替えるが、右からは効果的な攻撃構築は出来ていなかった。GK(99)大内からのフィードも終始不安定であった。岡山としてはここも獲りどころになっていた。

注目の(22)アレーは岡山ボランチ付近まで下りる動きが目立ったが、こぼれ球奪取という観点では(24)藤田、(80)オベルダンの岡山ボランチコンビの方が寧ろ優勢であったように思えた。(80)オベルダンのカバーエリアはこれまでの試合よりも狭まっていたようにも思えたが、2人が中盤を不用意に留守にしないことが、岡山にとってはセカンド奪取からカウンターへ繋げる良い循環になっていたように思えた。

(22)アレーは左サイドにも頻繁に進出していた、おそらくスペースでボールを積極的に持ちたいタイプと推察する。しかし、この日の広島の攻撃はバイタルに入るまではスローテンポ、RCB(6)大森が(22)アレーに積極的に出ていき、その裏のカバーもボランチを中心にしっかり間に合っていた為、広島としてはズレを作るには至らなかった。

(22)アレーの動きにCB(48)立田がどれだけつり出されるかも注目であったが、必要以上に自らのポジションは空けず、下りる動きに対してはある程度捨て置いていたようにも見えた。これもダブルボランチがポジションを空けなかったからであり、好判断でもあったと思う。

そして岡山がセットプレーの二次攻撃から追加点を得る。

ここは、この前のCK崩れから広島のロングカウンターの芽を高い位置できっちり摘んだ点が大きかった。よって、後方の選手が前線に残っていたことから分厚い攻撃を展開出来ている。(51)白井がスプリント力を活かして、PA内を自ら深く運ぶ。そしてPA内に(99)ルカオだけではなく(80)オベルダンが残っていたことが大きかった。
広島LCB(19)佐々木はおそらく(80)オベルダンがシュートを撃ち切ると判断、シュートコースのカバーを優先したが、その分、(20)河野へのマークが外れてしまった。その(20)河野にこぼれてくる。不規則な回転が掛かったボールながら、ここも持ち替えずに左足でダイレクトで撃った分、ゴールネットに突き刺さった。やはり彼はストライカーである。

おそらく想定外の2点リードとなった岡山であったが、戦い方自体が大きく変わることはなかった。
広島の攻撃は中央で縦パスが入った時に一気にテンポアップする。
38分、(4)荒木からの縦パスを(10)鈴木がスルーし(11)加藤が決定機を迎えるが、これは(1)モーザーが好セーブで逃れる。

岡山はこの後、広島の中央封鎖を徹底するため、2列目のボランチ脇のスペースをシャドーで埋める。5-2-3から5-4-1のブロックへと変更した。
しかし、広島は前半ATのCKから(22)アレーがファーに飛び込み1点差に迫る。すらした(11)加藤が完全に競り勝っていたが、ファーに流れ、そのままゴールラインを割りそうなボールに唯一(22)アレーだけが反応した。さすがは元欧州リーグ得点王である。

(2)後半

岡山としてはもったいない失点であったのかもしれない。
しかし、1点差に迫られたことで岡山は後半開始からも前半と変わらずにカウンターからゴールを奪いにいった。1点差に迫られたことは(20)河野のハットトリックを生み出した背景の一つであったと考える。

J1第6節 岡山-広島 広島後半開始当初の攻撃のねらい

広島は後半開始からRWB(5)新井に代えてOMF(23)鮎川を投入し4-2-3-1に変更してきた。普段このポジションに入る(33)塩谷については前述したが、(5)新井は中央に入ってきた際は自らシュートを撃つなど攻撃に貢献していた。しかし、サイドアタッカーとしては十分に力を発揮できていなかった。そこで4バック化し(15)中野と(7)東の両SBを高い位置に上げることで、岡山の強力な中央防衛線を避け、ここから(10)鈴木、(11)加藤の両ツインタワーへクロスを供給、(22)アレーが下りて(48)立田を引き出した裏のスペースを(23)鮎川に突かせようとするねらいがあったものと推察する。

しかし、前半同様に(48)立田が中央のポジションを空ける機会は少なかった。岡山はRCB(6)大森が積極的に前方へ飛び出していたが、普段と比べると各選手が自らのポジションをキープしている傾向があった。
広島としては人についてくる岡山の守備の逆手を取りたかったと思うが、想像以上に岡山守備陣を引き出せなかったのかもしれない。この点は誤算であったかもしれない。

そして、広島がSBを上げることで、今度は(99)ルカオが前半以上に広島陣内サイドで起点をつくることが出来ていた。

このシーンは左サイドから右サイドへとクロスで広島最終ラインを揺さぶっていたが、(20)河野の転倒により一瞬広島守備陣の判断に混乱が生じた。4バックに変更していたこともあり、(20)河野を中が見るのか、外が見るのか、またはファーのスペースを誰が管理するのか、曖昧な対応になった点を起き上がった(20)河野が瞬時についた。
そして(26)本山(遥)が迷いなく弾道性のクロスをスペースに送った点も良い緩急になった。彼のクロスについてはメッセージ性が曖昧であると千葉戦のレビューで述べたが、このクロスに関しては(20)河野の体勢立て直しを見込んだ迷いなきメッセージが託されていた。

期待感が高まっていたJリーグ昇格後初のハットトリック達成にスタジアムが湧く中、前線のメンバーは試合の進め方、そのうったてとなるプレスの掛け方についてベンチに確認した。
試合時間はまだ50分、通常どおり前からの圧力を緩めない姿勢そのものは問題なかったと思う。広島のCBが2枚になったことを踏まえてもそのように思う。

しかし、岡山に思わぬ、いやひょっとしたら予期されていたサポーターもいたかもしれないアクシデントが発生する。60分の(80)オベルダンの二枚目の警告、退場である。前半に遅延行為で1枚目をもらっており、少々軽率な感じはあったが、この二枚目も後方から相手を引っ掛けるものであり、1枚警告をもらっている選手としては軽率であったと言わざるを得ない。
しかし、彼の奪取能力を踏まえればセーフティに刈り取れる自信があってのプレー選択であったと思うし、韓国から緊急移籍後ずっとリーグ戦に出場していたことを考慮すると、判断面を含めての疲れも否めなかった。

相方(41)宮本がベンチスタートとなったことを踏まえると、ひょっとしたら彼にも何らかの休養が与えられる予定はあったのかもしれないが、開幕からの彼の貢献を踏まえると責められるものでもない。
サポーターもそうした空気を感じていたのか、(80)オベルダンがピッチを後にする際、メインスタンドからは温かい拍手と鼓舞の声が届いていたという。(80)オベルダンに対する素晴らしいメッセージであったと思う。

この段階から岡山は、と述べるよりもJスタの意志は一致していたかもしれない。(80)オベルダンがいない分も含めて全員でこのリードを守る、全員で勝つ!と。

木山監督、大槻コーチを中心としたベンチワークは早かった。(33)神谷、(10)ナサンホ、(41)宮本と走れる選手を中心とした3枚替えである。
しかし、広島もさすがである。
岡山が急ピッチで交代の準備を進める64分、岡山の5-4ローブロックからの跳ね返りをボランチの(6)川辺が正確な胸トラップからコントロールショットを決める。
ちょうど川辺がいた地点はボランチの一枚がカバーするエリア、きっちりと数的優位を突いてきたと言える。
広島はやはり強い、そう感じさせる失点であった。

岡山は5-4ブロックを敷きながらも、ただ広島の波状攻撃のサンドバックになるだけではなかった。
右シャドーに入った(33)神谷は広島の最終ラインのみならずSBの2枚をボールの動きに合わせながら牽制する、この両者を規制する立ち位置の取り方が抜群に上手かった。
(41)宮本は持ち前の走力と奪取能力を活かして、前方へも積極的に飛び出し広島のホルダーに執拗に絡んでいく。
(41)宮本が前方へ飛び出した時は(10)ナサンホがアンカー的に後方へ控えて横幅を献身的にカバーする。
そして、彼や早めに(20)河野からスイッチしていた(9)ガウショが隙あらばと前方へ持ち運ぶ。そのコンビネーションはまだまだであるが、岡山が約40分もの長時間に渡り1点差を守り抜いた要因には、ただ構えるだけでなく懸命に走った前線の彼らの貢献も大きかった。

広島のクロスは、身長差でギャップが生じやすい(51)白井がいるPA左側を中心に狙っていた。しかし、ここで競り勝った際のシュートに精度を欠いたことで岡山は命拾いをしていた。

クロスからのこぼれ球に対しては(48)立田を中心にシュートコースをほぼ完璧に消していた岡山であった。広島の選手は総じてテクニカルである。岡山のブロックを外して撃つことができる、外したコースを狙えるのであるが、その分シュートも枠を少しずつ外していた。

岡山にとって、広島が(51)白井を執拗に狙ってきたことで、却って広島の攻撃を予測しやすくなっていた面はあったかもしれない。
そして、広島が(11)加藤、(10)鈴木を交代させた後は高さに対する脅威も薄まっていたように見えた。

終盤、岡山は(51)白井に代えてCB(18)田上を投入、跳ね返す力を強化し、脅威的な粘りにより1点差をモノにしたのであった。

3.まとめ

この試合が持つ意味、それはクラブ史上初のハットトリックやファジアーノ岡山の伝統とも言える堅守の確認、更にはサポーターも含めたクラブとしての一体感、そしてダービーの歴史の上積みなど様々な要素から構成されると思う。
こうした論点については筆者が改めて語るところもないのであるが、戦術レビューの立場としては、(24)藤田のスタメン起用の影響もあり、(41)宮本ほどボランチがBtоB的に動かなかったことで(80)オベルダン退場までは非常にバランスが良いサッカーを展開できていた点は見逃せない。実は(41)宮本を起用した千葉戦でも若干、その兆候はあったように思えたのであるが、この点がチームとしての修正にあたるのかはもう暫くゲームを観察してみたいと思う。

そしてこのレビューをアップした段階では、公式発表はまだながらFW(22)一美の東京ヴェルディへの移籍は濃厚であり、磐田からFW佐藤を獲得するとの情報もある。ワントップタイプに代わりシャドータイプが加わることの意味合いとしては、この試合でハットトリックを達成した(20)河野のCFとしての起用にも目途が立ったとの解釈も出来そうである。この点についてももう暫く動向を見守りたい。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】

J1定着と総合型スポーツクラブへの成長を図る岡山、念願のJ2復帰へ向けて再チャレンジに挑む北九州の戦いぶりを追っていく。

日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。

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