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#034 天武と持統・我が家の愛の結晶

講義録 『天武天皇・持統天皇』

推古、舒明、皇極、孝徳、斉明、天智。
そして次に続くのが、天武と持統です。

生徒に配布している実際のプリントです。
生徒は追加情報をどんどん書き込んでいます。

天武と持統は夫婦です。
一気にまとめて見ていきます。
推古天皇から始まった中央集権国家づくりも、
いよいよ終盤戦に入ってきました。


天武天皇
673年、飛鳥浄御原宮にて、
壬申の乱を制した天武天皇が即位します。
ここから「国家づくり」は一気に加速します。

まず目につくのが「名前」の統一です。
この頃から「天皇」という称号が
整えられていきます。
『日本書紀』推古紀には「東の天皇」とあり、
推古朝で使われていた可能性があります。
しかし…
「天皇」の文字が確認できる最古の木簡は
奈良県飛鳥池遺跡出土のもの。
「丁丑年」とあり、677年、天武天皇の時代です。

それ以前は、
「〇〇大王」という呼び方が一般的。
推古大王。
天智大王。
少し不思議な響きですよね。

さらに、「日本」という国号も。
国としての自覚が、言葉に表れ始めたのです。
中国の史書『旧唐書』にも、
「日本」という名称が登場します。

特に注目したいのが、702年です。
遣唐使の粟田真人が、
初めて対外的に
「日本」を名乗ったこと
が確認されています。

国名が定まる。
そして、そのトップの呼び名も定まる。

こうして見ると、
天武天皇は「天皇制の実質的な確立者」
といっても言い過ぎではないでしょう。

経済の面でも変化があります。
富本銭です。
1999年、奈良県明日香村の飛鳥池遺跡から、
33枚の富本銭が出土しました。
実は『日本書紀』にも記録があります。
683年に銭を鋳造したと記されています。
その「銭」が実際に見つかったのです。
史書の記述を出土物が裏付けた
まさに歴史的な発見でした。

長らく…
「最古の貨幣=和同開珎」と覚えてきました。
ところが、そうではなかった。
受験生にとっては、歴史の書き換えです。

私は富本銭発見時は…すでに教員でした。
歴史が書き換えられる瞬間に立ち会いました。
ニュースステーションで久米宏さんが
むやみ(683年)に作った富本銭
と言っていたのを覚えています。

一方、国家は「人」と「土地」の管理にも着手。
豪族の私有民=部曲が廃止されました。
人を、国家が直接把握する。
公地公民制の理想が現実に近づいていきます。

制度の整備も進みます。
飛鳥浄御原令の編纂が始まりました。
ただし、完成・施行は次の持統天皇の時代です。

身分制度も再編されます。
684年、八色の姓です。
天皇を頂点とする豪族の身分秩序再編成です。
上から…
真人、朝臣、宿禰、忌寸、道師、臣、連、稲置
私は授業で、8つ姓の覚え方を伝授しています。
秘事口伝なので、ここには記せません。
申し訳ございません。

天武天皇は、歴史の記録も動き出します。
稗田阿礼に『帝紀』『旧辞』の暗誦を命じます。
これが古事記の完成につながります。


ここで、持統天皇へとバトンが渡されます。

持統天皇
690年庚寅年籍の作成。
以後6年ごとに戸籍を作ることが始まります。
国家が人民を定期的に把握する。
ビッグデータの原型のようなものです。

そして694年藤原京へ遷都
天武天皇が造営を開始し、
持統天皇が完成させました。
条坊制が採用(南北が坊・東西が条)された
日本初の本格的な計画都市です。
大和三山に囲まれた点も頻出です。
天香具山(東)、畝傍山(西)、耳成山(北)
日本最大の都だったことが判明しています。
平城京、平安京よりも大きな都です。

先月のことでした。
「飛鳥・藤原の宮都」が世界遺産になりました。
入試頻出でしょうね。


こうして見ていくと、
天武・持統天皇の時代は、制度の総仕上げです。
名前を整え、
制度を整え、
人を把握し、
都(巨大都市)を築く。
推古天皇から始まった国家づくりは、
間もなく完成します。


余談  『我が家の愛の結晶』

天武と持統は夫婦です。
国家づくりを推し進めた夫婦です。

二人の「愛の結晶」がいくつもあります。
まず、飛鳥浄御原令。
編纂開始は天武天皇、施行したのは持統天皇。
途中でバトンを渡し、きっちり走り切る。
見事なリレーです。

次に、藤原京。
設計と着工は天武天皇、
完成と遷都は持統天皇。
日本最大の都は愛の結晶です。
これもまた、息の合ったリレーです。

さらに、薬師寺。
天武天皇が皇后(持統天皇)の病気平癒を
願って発願した寺院です。
祈りから始まったこの事業は、
やがて国家事業へと広がっていきます。
仏教を通じて国を安定させるという
発想にもつながっていきました。

こうして見ると、
この二人の関係は、
単なる「仲の良い夫婦」というより、
同じ未来を見ている夫婦、
と言ったほうがしっくりきます。

そして二人は、
奈良県明日香村にある天武・持統天皇陵に
眠っています。
元々は天武天皇のために築かれた墓ですが、
後に亡くなった持統天皇が合葬されました。
最後まで、同じ場所に帰っていく。
素敵な二人です。

さて、お待たせしました…。
恒例のオチです。

我が家の「愛の結晶」を考えてみました。

かわいい娘たち。
35年ローンの家。

藤原京のような都市はつくっていませんし、
薬師寺のような壮大な建築もありません。

我が家で壮大なのは、住宅ローンです。
返済計画は、超長期プロジェクトです。

それでも、
夫婦二人で築き上げてきたものは、
たくさんあります。

信頼。
失望。
期待。
裏切り。
隠蔽。
妥協。

歴史の教科書に出てきそうです。

その全部を乗り越えてきた時間。
これこそが「愛の結晶」です。
二人で過ごしてきた、
時間そのものです。

どうか…
積み重なったものが崩壊しませんように。
祈るばかりです。


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