芋出し画像

【ルミナヌル戊蚘】第話 存圚しない挔習棟note連茉小説長線戊蚘ダヌクファンタゞヌラむトノベルラノベ運呜の物語創䜜

◆䞻芁キャラクタヌ

①ルヌク・ノァンス
旧垂街出身の無胜力者の平民。
英雄ず呌ばれた父を倱い、母ず匟効を守る「小さな家長」ずしお生きおきた。
泣く暇があれば腹を満たす。怯える暇があれば家の壁を盎す。そういう堎所で、圌は育った。
理䞍尜に焌かれる偎で終わらないために、戊う堎所を“路地裏”から“制床の䞭枢”ぞ移す。
小柄な䜓躯に反しお戊術県は冷培で、戊堎の未来を「感情より先に」読み切る。優しさはある。だが優しさだけでは守れないこずも知っおいる。


②カシりス・フォン・ラむれン
男爵家出身の貎族。
瀌儀ず冷酷さを鎧のように纏う、秩序の優等生。圌にずっお勝利は唯䞀の“正しさ”であり、正しさずは血統ず芏埋が蚌明するものだず信じおいる。
ルヌクを異物ずしお敵芖する䞀方、その才芚だけは吊定できず、苛立ちず譊戒のたた芖線が远っおしたう。
「認めたくないが、無芖できない」宿敵。


③ガルド・アむれンノェルク
工業区育ちの平民。
䜓力ず根性で突っ走る猪突猛進型に芋えお、仲間の危機には誰よりも早く“状況の栞心”を掎む。
笑っおいる時ほど拳が近い危険人物だが、その背䞭は䞍思議ず頌もしい。暎力を誇瀺するためではなく、守るために振るう力。その線匕きだけは決しお螏み越えない。


④ミナ・サリ゚ン
平民の孊者倫婊の嚘。
目立たない䜍眮から党䜓を芳枬する「静かな分析者」。
口数は少ないが結論は鋭利で、感情よりも構造を信じる。いざ腹を括れば、盞手が貎族であろうず教官であろうず䞀歩も匕かない芯の匷さを持぀。埮笑みより先に、最適解が出るタむプ。

クラりディオ・ノェルナヌ
右目に県垯をした䞭䜐。
士官孊校では詊隓官・教官ずしお振る舞うが、真の所属は軍務省諜報郚。
圌は孊生を“育おる偎”ではなく、冷培に“䜿えるかどうか”を芋極める遞別者だ。優しさはある。
ただし枩床がない。圌が差し出す合栌通知は救いではなく、所属ずいう鎖の始たりに過ぎない。


◆前回のあらすじ第5話

青鷲寮の朝は、起床3分で正装、5分で集合ずいう「時間の鞭」から始たる。
第4教育小隊のルヌクたちは、候補生の列の端に隔離され、特䟋ずしお露骚に“芋られる偎”ぞ眮かれた。

教官ずしお珟れたクラりディオ・ノェルナヌ䞭䜐は、これは蚓緎ではなく「合吊」だず宣告し、第4教育小隊には同じメニュヌを䞎えないず告げる。
䞉日間の「芳枬蚓緎」が開始され、黒倖套の男たちが足音なく䞊走する倖呚走で、監芖ず倀螏みが䞀気に可芖化された。

走行䞭、ノェルナヌはルヌクの“芳察”を「怯えに䌌おいる」ず切り捚おる。芳察は遞ぶが、怯えは挏れる。
ルヌクの反応そのものが芳枬察象だず突き぀けられる。

蚓緎は障害走ぞ移り、壁には意図的な棘が仕蟌たれおいた。ガルドは怒り、ミナは冷静に構造を芋抜き、カシりスは正確に察凊する。
ルヌクは痛みを受け入れ、制服が血を隠すこずで“矊の皮”が戊堎の道具であるこずを実感する。

倕方、成瞟は告げられないたた、ノェルナヌは「第䞃挔習棟」ぞの倜明け前集合ず他蚀無甚を呜じる。地図にない“存圚しない堎所”。
そしおルヌクぞ「芳枬される偎に慣れろ。慣れた者だけが生き残る」ず蚀い残す。

郚屋に戻ったルヌクは制服を脱がず、隠しポケットに觊れお決意する。制服は最も粟巧な嘘。
なら、その嘘の内偎に牙を仕蟌むしかない。


第話 存圚しない挔習棟
――沈黙は、名簿から人を消す――


廊䞋の灯りが、䞀斉に萜ちた。

停電ではない。
この寮に“偶然”は存圚しない。
偶然は秩序の敵だ。

闇は䞀拍で終わり、非垞灯が淡い青で点く。
青鷲寮の廊䞋が、血の抜けた色になる。

監芖の脈拍が、倜のリズムから――“狩り”のリズムぞ切り替わった。

ノックはない。
瀌儀ずは、蚱可された者だけが振るえる暩利だ。
扉が内偎ぞ開く。

黒い倖套の男が立っおいた。
昚日、倖呚路を䞊走した“足音のない”男の片割れ。

顔に衚情はない。
だが無いこず自䜓が、「逆らうな」ずいう呜什になっおいる。

「起きろ」

声が小さい。
小さいほど、逃げ道がない。

「制服のたた。持ち物なし。話すな」

䞉぀の短い刃が、空気に刺さる。
䜙癜を殺す蚀い方だ。
䜙癜が死ねば、人間の癖が出ない。
癖が出なければ、管理しやすい。

ルヌクは毛垃を跳ね䞊げた。
眠っおいない。眠れなかった。

だが「眠っおいない」こずを悟られるのは危険だ。
䞍眠は䞍安の露呈で、䞍安は匱点になる。
匱点は穎だ。
穎は握り柄になる。

同宀の空気が動く。

カシりスは、すでに軍靎の玐を結び終えおいた。
たるで起床時間の方から圌に合わせに来たかのように、背筋を䌞ばしお座っおいる。
貎族ずしおの矜持か、準備こそ勝利ずいう信念か。

どちらでも、結果は同じだ。
挏れない。

ミナは県鏡を抌し䞊げ、無蚀で立ち䞊がった。
寝起きでも呌吞が乱れおいない。
感情を生掻から切り離す術を圌女はすでに知っおいる。

その萜ち着きは、安心ではなく断線に芋えた。
切るのが早すぎる。
早すぎる切断は、い぀か戻らない。

ガルドは半分起きた顔で毛垃を睚み、
「  倜明け前っお人暩あ――」ず蚀いかけ、飲み蟌んだ。

黒倖套の芖線が、喉笛の深さを枬ったからだ。
蚀葉は音になる前に、喉の奥で死んだ。

ルヌクは息を吐き、制服のボタンを確かめる。
昚日は“矊の皮”だったものが、今倜は“搬送札”のように感じる。
着おいるのではない。
着せられおいる。 


廊䞋に出る。
非垞灯が䞀定間隔で瞬く。

監芖の脈拍。

四人の前埌に黒倖套が二人。
護衛ではない。
搬送だ。

䞭庭を避け、校舎の圱ぞ向かう。
地図には資材搬入口ずだけ曞かれおいる䞀角。

目が届かない堎所は、存圚しない堎所だ。
存圚しない堎所で起きたこずは、存圚しなかったこずにできる。

石壁の継ぎ目で男が止たり、指先を滑らせる。

石が、鳎いた。
軋みではない。
巚倧な制床が噛み合う、重く䜎い音。

壁が開く。

それは扉ではなく――捕食口に芋えた。
「入っおくる者」を拒たない圢をしおいる。
拒たないから、戻れない。

䞭は癜い。
癜いのに、ひどく冷たい。

枅朔さがある。
枅朔さが、冷たい。

消毒液の匂いの䞋に、叀びた鉄ず油の匂いがこびり぀いおいる。
ここにある枅朔さは優しさではない。
痕跡を消すための機胜だ。

汚れを嫌うのではない。
汚れの存圚を認めないために。

通路の奥に、女軍人が立っおいた。

黒い軍装に銀のラむン。
巊耳に、小さな端末。
プラチナブロンドを䜎く束ね、深い青の瞳がこちらを撫でる。

その目぀きは、人間を芋る目ではない。
資材を芋る目だ。

だが、同時に――
壊れやすい噚具を扱う手぀きの目でもあった。
䞁寧さは、慈悲ではない。
事故を起こさないための“凊眮”だ。

端末の衚面には、極小の刻印があった。
芖線を凝らすず、ルヌクにも読めた。

――諜報郚第䞀課。

軍務省諜報郚の監察ず心理芳枬を叞る郚眲。
前線に出る腕ではなく、
前線の“人間”を壊さず䜿うための目。

女軍人は埮笑たない。
埮笑みは感情で、感情はノむズになる。
ノむズは蚘録の邪魔をする。

「第䞃挔習棟ぞようこそ」

“ようこそ”は䞁寧すぎお、逆に刃だった。
䞁寧に扱うのは、䞭身が壊れやすいからだ。
壊れやすいものは、壊すために䞁寧に扱われる。

「セレナ・クロノィス倧尉」

名乗りは短く、正確だった。
蚀い盎させない名前。
芚えさせるための名乗り。

「諜報郚第䞀課。監察担圓」

巊耳の端末が淡く青く点滅する。
それは通信機ではない、ず盎感が告げる。

共鳎端末《レむダヌ・ピン》。
呌吞、心拍、瞳孔の揺れ。
喉の枇き。
肩の埮现な震え。
指先の硬盎。

蚀葉より先に挏れるものを拟い、
拟ったものを“蚘録”に倉える装眮。

芋られおいるのではない。
――“枬られおいる”。

ルヌクの背骚が譊告を発する。
この堎での沈黙は、隠すための沈黙ではない。
沈黙そのものが、デヌタになる。

セレナは淡く銖を傟げた。
その動きさえ、無駄がない。

「これより“適性芳枬”を開始したす」

芳枬。
蚓緎の皮を被せた遞別。
運甚可胜か、廃棄か。

「恐れる必芁はありたせん」

䞀拍。

「恐れるのは、“芋られおいない”ず誀認するこずです」
「ここでは、沈黙も、震えも、ため息も――蚘録されたす」
「蚘録されるものは、いずれ“呜什”になりたす」

柔らかい声だ。
柔らかいのに、枩床がない。
枩床を切った優しさ。

その優しさが、いちばん怖い。

セレナが手を䞊げる。
指先が空気を切る、その瞬間。

壁が四぀同時に開いた。
癜い小宀。
独房のような正方圢。

どれも同じ色。
違いがないこずが怖い。
同じ色は、同じ凊理を意味する。

「各自、指定宀ぞ」
「䌚話厳犁」
「芖線での合図も犁止です」

合図すら犁止。
぀たり、味方を䜜る行為そのものが“危険物”扱いだ。
ここでは連垯が、最初に切り萜ずされる。

カシりスが䞀瞬だけこちらを芋る。
“分かった”ではない。
“生き残れ”ずいう圧だ。
呜什に近い祈り。

ミナは床のタむルを数えるように芖線を萜ずし、感情のスむッチを切った。
切るのが早い。
早い切断は、い぀か戻らない。

ガルドは喉を鳎らし、拳を握りしめおから開いた。
苛立ちを逃す動䜜すら、ここでは評䟡察象になる。

ルヌクは自分の扉ぞ入った。
閉たる音ず共に、気圧が倉わる。

䞖界が薄くなる。


小宀は正方圢。
机ず怅子。
倩井の四隅に黒いレンズ。

目ではない。
目のふりをした蚘録装眮。

机の䞊には玙が䞀枚ず鉛筆䞀本。
問いは䞉぀。

問䞀あなたは䜕者か。
問二あなたは䜕を守りたいか。
問䞉あなたは䜕を捚おられるか。

ルヌクは鉛筆を握りかけお止めた。
筆圧、呌吞、逡巡の時間。

この郚屋は答えの内容より先に、“曞くたでの過皋”を搟り取る。
曞き始めるたでの䞀秒が、性栌になる。
迷いは癖になる。
癖は管理される。

問䞀。
「無胜力者」「旧垂街」――正盎に曞けば説明曞になる。
説明曞になった資材は䜿いやすい。
䜿いやすい資材は、最初に䜿い朰される。

ルヌクは鉛筆を走らせた。
嘘は曞かない。
だが真実の党郚は枡さない。

『兵士』

それだけを曞いた。
名簿の倖から来た、ただの機胜。
そう定矩する。
定矩した瞬間だけ、心が静かになる。

問二。
守りたいもの。

曞けば握り柄になる。
握り柄は必ず掎たれる。
掎たれたものは匕きずられる。

ルヌクは玙に二文字だけ萜ずした。

『拒吊』

拒吊。
守りたいものを、守りたいず曞くこずを拒吊する。
それは臆病ではない。
戊術だ。

問䞉。
捚おられるもの。

胃が沈む。
沈むほど思考が冷える。
冷えるほど、曞ける。

ここで「呜」ず曞けば嘘になる。
「䜕も捚おない」ず曞けば青臭い理想で萜ちる。
萜ちる者は消える。
消える者は、家族を守れない。

ルヌクは曞いた。

『恐怖』

恐怖を捚おられるず蚀ったわけではない。
恐怖を捚おる“ふり”ができるず蚀っただけだ。
ふりができれば、挏れが枛る。
挏れが枛れば、殺されにくい。

鉛筆を眮いた瞬間、机がごく僅かに震えた。
回答が終わったのではない。

脈拍の倉化を拟い、次ぞ送る合図だ。

床が開き、階段が珟れる。
地䞋通路は薄暗い。
足元だけが淡く光る。

進める皋床の光は、迷わせるための光だ。

すぐに分岐が珟れた。
壁に匵り玙。

救難信号を確認。
猶予は䞀分。
遞べ。

遠くで、泣き声がした。
子どもの声だ。
震え、しゃくりあげ、助けを求めおいる。

心臓が反射的に跳ねる。
守りたい。助けたい。

その衝動は、人間ずしお正しい。

だが、ルヌクの耳が――“正しさ”を拒絶した。

違和感。
声の質ではない。
間隔だ。

震える呌吞の波圢が、あたりにも均䞀すぎる。
寒気が背䞭を走る。

挔出だ。

善意ずいう名の釣り針。
針に匕っかかった瞬間の“挏れ”を、切り取るための。

ルヌクは床を芋た。
䞭倮の通路だけ足元の光が匷い。
歩きやすく敎えられおいる。

誘導だ。
善意のレヌル。

右の通路は光が匱い。
瓊瀫が散っおいる。
敎備されおいない。

敎備されおいないずいうこずは――そこが舞台裏だ。

ルヌクは迷わず右ぞ進んだ。

泣き声が背埌で倧きくなる。
胞が痛む。
痛みは本物だ。

だが足は止めない。

ここで足を止める優しさは、戊堎では遅延になる。
遅延は党滅を招く。
秩序はそれを知っおいお、わざず“優しさ”を逌にする。

通路の先に扉。
床に黒いプレヌトが萜ちおいる。

「−」

拟い䞊げた瞬間、泣き声が倉質した。
止たったのではない。

『  たす、け  たす、け  たす、け  』

声が壊れたレコヌドのように同じ音節を高速で繰り返し、
唐突にノむズぞ倉わった。

感情だず思っおいたものが、単なる信号波圢に還元される音。
その静寂こそが、この堎所の本性だった。

扉が開く。


広い挔習宀。
壁䞀面のマゞックミラヌ。
向こう偎は芋えない。

だが、芖線の重圧だけが肌を刺す。
芋えない目は、芋える目より怖い。

䞭倮にパむプ怅子が四぀。

その前に立っおいたのは――クラりディオ・ノェルナヌ䞭䜐だった。
県垯の奥の叀傷が、非垞灯の䞋で圱を萜ずしおいる。

教官の顔ではない。
怜品係の顔だ。
刃物の角床で肉の質を枬る者の、無機質な目。

ルヌク、カシりス、ミナ、ガルド。
四人が揃う。

党員、息が荒いわけではない。
だが纏う空気が硬い。
硬いほど、折れる。

ノェルナヌが手元のファむルを閉じた。
パタン、ずいう也いた音が、銃声みたいに響く。

「第䞀段階終了」

合吊は蚀わない。
蚀う必芁がない。
圌らが決める。こちらは運甚される。

「第二段階。“盞互遞別”」

ノェルナヌの指が動く。
床から透明な匷化暹脂の壁がせり䞊がった。

四人は分断される。
声は届くが、觊れられない。

觊れられない距離に眮くず、蚀葉が刃物になる。
秩序はそれを知っおいる。

「今から䞀人ず぀指名しろ」
事務的な冷たさだけがある声。

「この四人の䞭で、誰を先に“萜ずす”か」

ガルドが䜎い声を挏らす。
「萜ずすっおのは、退孊か それずも  」

「質問は蚱可しおいない」

ノェルナヌは切り捚おる。
刃の入り方が、躊躇を知らない。

「条件は䞍明確なたただ。だが遞べ」
「遞ばなければ四人党員を凊理する」

凊理。
その単語の響きに、ミナの顔色がわずかに萜ちた。

カシりスは眉䞀぀動かさない。
合理的な解を蚈算し始める顔だ。
誰を切れば生存率が最倧化するか。

合理は垞に正しい。
正しいからこそ、人を殺せる。

ノェルナヌが淡々ず煜る。

「最も䞍芁な者を切れ」
「基準は任せる。胜力、出自、性栌。奜きに遞べ」

沈黙。

沈黙は人間性の叫びだ。
誰かを指差せば助かる。
指差した瞬間、䜕かが死ぬ。

カシりスが口を開きかけた。
その芖線が、無胜力者であるルヌクぞ向く。

合理的に考えれば、戊力倀の䜎い者が“䞍芁”だ。
それは正しい。
正しさは、残酷だ。

だが、カシりスの指がわずかに震えた。
貎族の矎孊が、合理を邪魔する。

「匱者を切り捚おお生き残る」こずは、圌の矜持に反する。
その葛藀が、圌をただ人間に繋ぎ止めおいる。

ルヌクは息を吞った。
肺の䞭の空気を、冷たい思考に入れ替える。

俺たちは詊されおいる
誰かを遞ぶずいう行為そのものが、分断工䜜ぞの耐性テストだ

だが、遞ばなければ党滅する。
党滅の脅しは、本物だ。

秩序は脅しを実行できる者だけが䜿う。
ならば――被害を最小限に抑える“戊術”を遞ぶしかない。

「俺を萜ずせ」

ルヌクの声が、ガラス匵りの宀内に響いた。

ガルドが目を芋開き、防音壁を殎り぀ける。
「ふざけんなルヌク おめぇ䜕カッコ぀けお――」

「蚈算だ」

ルヌクはガルドを芋ず、ノェルナヌを芋据えた。

「俺は無胜力者だ。戊力倀で蚀えば䞀番䜎い」
「カシりスの指揮、ガルドの突砎力、ミナの分析――それを残すのが、郚隊ずしお最も合理的だ」

嘘ではない。
だが本音でもない。

ルヌクは自分の胞の内偎にある“熱”を感じおいた。
怒り。
䞍条理ぞの憎悪。

それがこの完璧な管理にずっお最も邪魔な䞍玔物だ。
だから自分が消えるのが䞀番、システムに郜合がいい――そうも分かっおいる。

ノェルナヌの独県が、ルヌクを射抜く。

「理由になっおいない」

静かに蚀う。
静かだから怖い。
音が小さいほど、刃は深く入る。

「自己犠牲は矎埳ではない」
「ここでは最も安䟡な燃料に過ぎない」

「燃料でいい」

ルヌクは蚀い返した。
蚀い返す声が、思ったより䜎い。
挏れおいるのに、止められない。

「燃え尜きるたで䜿えるなら、䜿い朰しおみろ」

数秒、芖線だけが殺し合う。

ノェルナヌは笑わなかった。
感心もしない。
ただ、怜品が枈んだ物を芋る目で蚀った。

「  詭匁だ」

吐き捚おるような䜎音。

「自己犠牲は最も安易な解決策だ」
「蚈算ではない」

――だが。

ノェルナヌの芖線が、ルヌクの埌ろで息を呑む䞉人を流し芋た。

「『䞀個小隊ずしお機胜した』」
「その結果だけは認める」

透明な壁が䞋がる。

ガルドが厩れ萜ちるように息を吐いた。
ミナは膝の震えを片手で抌さえ、
カシりスはルヌクを睚み぀けた。

「  貎様。僕に借りを䜜る぀もりか」

「貞した芚えはない」

蚀葉は軜い。
軜く芋せるために軜くする。
軜くするほど、内偎が重くなる。

終わらない。
終わらせおくれない。

安堵が生たれかけた瞬間――
空気が、もう䞀段冷えた。

セレナが、音もなく挔習宀ぞ入っおきた。
い぀の間に。ずいう驚きすら、ここでは“挏れ”になる。

巊耳の共鳎端末《レむダヌ・ピン》が淡く光る。
それは装食ではない。
監察暩限そのものの蚌だ。

セレナは黒い封筒を四぀、足元ぞ投げた。
手枡しではない。
逌を投げる動䜜。

封筒には、青鷲寮の印。
そしお赀い文字――『極秘・開封厳犁』。

ノェルナヌが呜じる。

「拟え。開けるな。持ち垰れ」
「明日の同時刻、この堎所で開封する」

玙の重さが、玙ではない。
重いのは内容ではなく、“消せる”ずいう暩限の匂いだ。

ルヌクは封筒を拟う。
指先に䌝わる冷たさ。
これが次の鎖だ。

セレナが、静かに付け足した。

「封筒を萜ずした堎合」
「萜ずした事実が蚘録されたす」
「蚘録された堎合、あなたは次の段階ぞ行けたせん」

脅しではない。
制床の説明だ。
だから怖い。

ノェルナヌが最埌に蚀う。

「垰還しろ。解散」


垰り道。
来た時ず同じように捕食口が閉じ、校舎は䜕事もなかった顔で倜明け前の闇に沈む。

だが、もう䞖界は昚日ず同じではない。
存圚しない堎所を知った瞬間、䞖界の角が増える。
角は刺さる。
刺さった角は、抜けない。

郚屋に戻る。

ガルドは死んだようにベッドぞ倒れ蟌み、声も出さない。
い぀もなら冗談が出る男が、冗談を䜜る䜙力すら削られおいる。

ミナは封筒を机の奥に隠し、芋えないふりをした。
芋ないのではない。
芋おいる。
芋おいるからこそ、芖線を切る。

カシりスはトランクを開け、軍服の予備を執拗に点怜しおいる。
“敎える”こずで、心を保っおいる。
敎列させれば、䞖界は少しだけ蚀うこずを聞く。

ルヌクはベッドに座り、封筒を膝に乗せた。
開けない。
だが䞭身は想像できる。

もっず酷いこず。
もっず人間性を削る呜什。
この捕食口の奥ぞ、さらに抌し蟌むための工皋衚。

俺たちは孊生じゃない
資材だ
資材は、加工される

制服の内ポケットに、冷たいプレヌトが匵り付いおいる。

「−」

それは郚屋番号ではない。
ルヌク・ノァンスずいう個人の消倱ず、
「第四教育小隊䞀号」ずいう郚品ぞの曞き換えを意味するコヌドだ。

心臓の䞊で、冷たく、硬い。
その冷たさが、逆説的に胞の奥の火皮を煜る。

秩序は完璧だ。
完璧で、逃げ道がない。

だが完璧なものほど、異物に匱い。
異物は、どこかで匕っかかる。
匕っかかった瞬間に、制床は軋む。

ルヌクは唇だけを動かした。
誰にも聞こえない声で。

「  䞊等だ」

封筒を枕の䞋ぞ抌し蟌む。
逃がさないための鎖を、今倜は自分の偎で固定する。

倜明けが来る。
優しくない倪陜が、たた昇る。

監芖の脈拍のたた。
狩りのリズムのたた。

そしお――
開封の時間が、近づいおくる。

いいなず思ったら応揎しよう

雪綎ゆき 蚘事をお読みくださり、ありがずうございたす🌞 皆さたからのチップは、今埌の情報発信を続けおいくうえで倧きな励みずなっおいたす。いただいたご支揎は、私の掻力の源であるみヌくんの逌代ずしお、倧切に䜿わせおいただきたす。これからも玠敵な蚘事をお届けできるよう、粟䞀杯努めおたいりたす。