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気まぐれ俳句鑑賞43『仲秋や赤き衣の楽人等』高野素十

仲秋や赤き衣の楽人等
高野素十

苛烈だった夏の生活が去り、明け暮れに秋らしさを感じることに慣れてきた。夜の空気の軽さや、草むらですだく虫の声、まことに過ごしやすい秋を味わいながら、ふと思う。

自分の体の後ろにも前にも、穏やかな秋の気配がある。両側から自分を包んでくれている。早く終わって欲しいと思った夏とも違う。終わりゆく秋を惜しむ晩秋とも違う。まだしばらくは、ふんだんに秋がある。そんな喜びである。 

歳時記をめくりながら、この豊かな気持ちこそ、「仲秋」という言葉に込められた恩寵のような歓びに違いない、と確信した。「や」で切ってみせた素十も確かに感じていたと思う。

だから、今回は句との出会いより、季語への実感から接近することになった。

「楽人」といえば、笙や篳篥を奏でる雅楽の奏者であろう。平安から続く装束の色は、華やかというよりはこっくりとした深い「赤」を思いたい。あたかも秋という季節が、楽団の姿となって現れ出たようだ。

ひしめき奏でる「楽人等」も、それを聞く側も、今しばらくは豊かに続いてくれる秋のただ中に抱かれている。そんな幸福感を与えてくれる一句である。


出典:『俳句歳時記 秋 第五版』角川ソフィア文庫

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