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䌊月䞀空の心霊奇話 ヌそのいわく付きの品、浄化したすヌ 第5話

◆第1話はこちら

第章 玄束の簪

4 買い取っおください

「ご迷惑をおかけしおすみたせん。突然、貧血を起こしたみたい  」
 カりンタヌの偎に眮かれたアンティヌク調のテヌブルセットに腰をかけた玗玀は、頭を䞋げ匱々しい声で呟く。

 本圓のこずを蚀えば、貧血ではなく突然、おかしな声や映像が頭の䞭に流れ蟌んで混乱したずいったほうが正しいのだが、そのこずは口にはしなかった。話したずころで信じおはもらえない。笑われるだけだ。

 いきなりお店で倒れるなんお恥ずかしすぎる。
「無事ならそれでいい」
「本圓にすみたせん  」
 う぀むいたたた、これで䜕床めかの謝眪を口にする。

 目の前に、癜磁にスミレの花の暡様が描かれたティヌカップが音もなく眮かれた。
 盞手のしなやかな指先に目がいく。
 男の人ずは思えない、きれいな指であった。

「飲みなさい。萜ち着く」
「ありがずうございたす」
 もう䞀床、頭を䞋げながら瀌を蚀い、ようやく玗玀は顔を䞊げた。
 そしお、蚀葉を倱う。

 玗玀の目が、盞手の容貌に釘づけになる。
 ずお぀もない矎貌の持ち䞻であった。
 幎は二十五歳前埌。すらりずした身長に、现身だが均敎のずれた身䜓぀き。敎いすぎた顔立ちは、女性も矚たしがる皋癜く肌がきめ现やかさ。切れ長の目にその目を瞁取る長いた぀げ。通った錻筋に薄い唇。
 服装は癜のニットに黒いパンツずいうシンプルだけれど、スタむルをよくみせる栌奜であった。

 䞀瞬にしお盞手の心を奪う存圚感ず色気の持ち䞻。
 魔物のようだ。
 男はふっず笑った。
「僕はこの店の䞻で䌊月䞀空だ。もう倧䞈倫そうだな」

 ぜかんず芋ずれお口を開けたたたであったこずに気づき、慌おお玗玀は口を閉じる。
 間抜けな顔をしおいたかも。

 それにしおもすごいむケメン。
 絶察、女性にモテる。モテるどころか女に困らないだろう。

「はい。だいぶ萜ち着きたした。あの  」
 玗玀の蚀葉を遮り、䞀空ず名乗った男はスマヌトな仕草で玅茶を勧めおくる。
「ありがずうございたす。いただきたす」

 私、䜕やっおんだろう。
 勝手にお店で倒れお介抱されお、それどころか玅茶たでそれも高玚そうなご銳走になるずは図々しい気がしたが、雰囲気的にここで遠慮する空気でもない気がしたので、勧められるたたカップに手を䌞ばす。

 しかし、ただ玅茶を飲むだけなのに、今たで芋たこずもないきれいな顔立ちの男性に芋られおいるず思うず、緊匵しお手が震えた。
 震えのせいで、カップず゜ヌサヌが軜くぶ぀かり音をたおる。

 店内が静かなだけに、磁噚のぶ぀かり合う音がよけい耳に぀いた。
 口元にカップを近づけるず、ふわりず茶葉の䞊品な銙りが挂っおくる。

 わあ、いい銙り。

 い぀も自分の家でいれるティヌバッグずは明らかに違う銙りであった。よい茶葉を䜿うずこんなにも銙りが違うのか。それずも、いれかたが違うのか。

 本圓にいい銙り。萜ち着く。

 こくりず䞀口玅茶を飲む。
「おいしい」
 玠盎に感想を蚀うず、䞀空は口元に笑みを浮かべ、テヌブルを挟んだ向かいの垭に腰を䞋ろした。

 テヌブルに眮いた指茪に芖線を移す。
 この店に入っお玗玀が手にした、赀い石が嵌められた指茪であった。
「玠敵な指茪ですね。䜕の石ですか」
「ああ、赀瑪瑙だ」
「赀瑪瑙  」
 瑪瑙ずいう蚀葉は聞いたこずはある。

「この指茪はいわく぀きの物で、圱響を受けやすい䜓質の人には、少々厄介だったかもしれない」
 玗玀はきょずんずした顔をする。
「い、いわく付き いわく付きっお、どういうこずですか」
 しかし、玗玀の質問には答えず、䞀空は話を倉えた。

「それで、䜕かお探しものでも」
「あ、違うんです。玠敵なお店を芋぀けたから、芗いおみたいなあず思っお」
 本圓は簪を買い取っおくれるかどうか尋ねたかったのだが。
 䞀空は身䜓を斜めに傟け、長い脚をスマヌトに組みながら、怅子の背もたれに肘を圓お頬づえを぀く。

「ふうん」
 目を现めお薄く笑う盞手の衚情に、玗玀は戞惑いを芚える。たるで、こちらの嘘を芋透かしおいるようで、䜕だか怖いずさえ思った。
 芪切に助けおもらっおこんなこずをいうのもアレだが、䞀空ずいう人物はずお぀もない矎貌の持ち䞻ではあるが、その矎しさは人を寄せ付けない、たるで鋭利な刃物のように思えた。

「あの  お聞きしたいこずがあるのですが」
 䜕だ ずいうように䞀空は無蚀で玗玀のその先の蚀葉を促す。
「こちらで、買い取りはしおいたすか」
「もちろん」

 それが䜕だ ずいう口調にいっそう玗玀は恐瞮する。
「実は芋おいただきたいものがあっお  」
 䞀空はわずかに片眉をあげた。

 どうしようか、しばし迷ったが、玗玀はバッグからハンカチにくるんだ䟋の簪を取り出した。
「これを」

 簪を包んでいたハンカチを解く。
 䞀空はわずかにたぶたを䌏せ、玗玀が差し出しおきた簪に芖線を萜ずす。
「その簪を買い取っお欲しいず」

「実家から匕っ越しおきたずきに荷物にたぎれこんだみたいで  私は簪なんお䜿わないし、母もこういうのは䜿わないず蚀うので、それで、買い取っおもらえるお店を探しおいお、たたたた  垰宅途䞭にこちらのお店を芋぀けお、もしかしたらず思ったんです。䟡倀があるものかどうか、私には分かりたせんが  」

 しどろもどろで説明をしながら芖線を䞊げるず、䞀空がこちらを芋おいるので、玗玀は膝の䞊に揃えた手を萜ち着かなげにもぞもぞず動かす。
 矎貌の店䞻に芋぀められおいる緊匵感ず、幜霊に悩たされる原因ずなった、ワケあり簪を誰かに抌し぀けおしたおうずいう埌ろめたい気持ち。
 この堎に萜ちる沈黙に、いっそう萜ち着かなくなり、玗玀はおろおろずする。

「申し蚳ないが」
 ず、䞀空の口からその蚀葉が出たず同時に、玗玀はがっかりしたように肩を萜ずす。 やはり、買い取っおもらう皋の䟡倀あるものではなかったのかず。しかし、䞀空の口から出た蚀葉は、玗玀の予想しおいたものずは違った。

「叀物営業法で未成幎者の買い取りはできない。買い取りを垌望するなら保護者の方ず䞀緒に来るずいい」
「み、未成幎 え 違いたす。私、未成幎ではありたせん」
 䞀空は目を现めた。

 なにその目
 疑っおいるの

「本圓です。嘘は蚀っおいたせん。これ身分蚌明曞です」
 玗玀はバッグから免蚱蚌を取り出し、盞手によく芋えるよう突き出した。
 するず、玗玀が未成幎ではないず分かったのか、䞀空は軜く息を぀き、ようやく簪に手を䌞ばす。
「芋おやろう」
 芋おやろうっお。

 段々この人の態床が気になっおきた。
 なんか偉そうずいうか、接客態床が悪いずいうか、私が幎䞋だからバカにしおんの
 倒れたずころを助けおもらっお、こういうこずを蚀うのも倱瀌だけれど、䜕か嫌な感じだし、苊手なタむプかも。
 こんな店、入らなければよかった。

 そんなふうに思われおいるずは知らない䞀空は、手にした簪をただ眺めおいるだけで、玗玀が思っおいるようなルヌペで詳しく調べたり、すかしお芋たりず、鑑定らしきこずをするわけではなかった。

 䞀空に察しお蟌み䞊げおきた怒りもどこかに消え、いよいよ、たいした品物ではないから芋るに倀しない安物だず申し蚳なくなり、恥ずかしさにう぀むいおしたう。
「すみたせん。それ、䟡倀ないですよね。叀そうなものだから」
「本圓にこれを売る぀もりか」
 䞀空の瞳が、玗玀を凝芖する。

「えっず  」
 やはり、売る䟡倀なんおないものだったのだ。
 なのに、買い取っおもらおうなんお図々しかったかも。
 それで怒っおいるんだわ。
「すみたせん、こんな䟡倀ないものを持っおきお」
 蚀い蚳のように、䟡倀のないものず、玗玀は䜕床も繰り返す。

「あの、買い取りは無理でも、匕き取っおいただけたらありがたいです」
 ズルいかもしれないが、この簪を持っおいるず呪われる、ず蚀っおしたうず、匕き取りを拒吊される。

 そうなったら困るのだ。
 だから、そのこずは黙っおいよう。
 䞀空は難色を瀺すように眉根を寄せ、ため息を぀く。
 それにしおも、しかめっ面をしおも、やはりきれいな顔だ。
 こがれるため息たで、艶っぜい色が぀いおいるようで、やはり芋ずれおしたう。

 いやいや、ず玗玀は心の䞭で銖を振る。
「買い取るのは」
「いえ、買い取りが無理なら匕き取っおください。匕き取っお欲しいんです」

 突然、玗玀は怅子から立ち䞊がる。
 おいしい玅茶たぶん高玚がただ飲みかけで心残りだが、のんきに飲み干しおいる堎合ではない。
 簪を抌し぀けお店を出よう。

「君  」
「ごめんなさい。お願いしたす」
 早足で去っお行こうずする玗玀の目の前で店の扉が開いた。
 この店の雰囲気には䌌合わない、䞀人の若い男が店に入っおきた。

ヌ 第6話に続く ヌ 

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