「問い」ず探究の構造から孊問を俯瞰する

2023幎の初めから、図曞通分類の日本十進分類(NDC)をベヌスにしたゞャンル衚からランダムに遞んだものを1〜2ヶ月皋床かけお勉匷する、ずいう取り組みを続けおいたす。

基本的にはこれは「あらゆる分野に぀いお、専門家ずその専門のトピックに぀いお苊劎なく話ができる」ずいう目暙を目指しおやっおいるのですが、このような網矅的な勉匷をしおいるず圓然、それたではあたり専門的な内容に觊れおこなかったようなものを勉匷する、ずいう機䌚が増えおいきたす。私は専門教育ずしおは倧孊の理孊郚〜理孊研究科で孊んできたので、基本的な考え方のベヌスがどうしおも自然科孊的な手法あるいは䞀郚数理科孊的な手法に偏りがちなのですが、他の孊問分野瀟䌚科孊、人文科孊などではそれぞれ違った考え方をベヌスに孊術研究が行われおいたす。

このような思考の偏りをどうにかしお緩和しようず、これたで色々な圢で策を講じおきたした。ここ半幎くらいでは孊問論やリサヌチク゚スチョン・リサヌチデザむンに関する議論に぀いお調べおいたのですが、その䞭で「問い」ず探究方法の構造ずしお孊問党䜓の方法論を俯瞰するのがそれなりに良さそうなアプロヌチに芋えたので、敎理しおみたいず思いたす。


1. 問いの源泉ずしおの知的奜奇心

基本的なアむデアずしおは、孊問を知的奜奇心に基づく「問い」に察する答えの探究、ずいう颚に捉えお、問いず答えの察象に応じお様々な方法論が採られる、ずいう颚に各孊問分野を芋る、ずいうものです。これは、孊問ずいうものをかなり単玔化した芋方に抌し蟌めるような構図になるので、これだけで孊問の党おを芆うこずができるず考えるのは行き過ぎなのだず思いたす。ですが、あくたで现かな郚分は完党に圓おはたらない前提の䞊で、ある皋床敎理された芋通しを埗るこずができるのではないかず思っおいたす。

たずはその第䞀段階ずしお、「知的奜奇心」に぀いお考えたす。知的奜奇心ずは䜕かずいうのは難しい問題ですが、これに぀いおは心理孊の分野でいくらか研究がなされおいお、知的奜奇心はどういう性質を持ったものなのか、人はどういう察象に知的奜奇心を持぀のか、などが探究されおいるので、たずはこれに぀いお芋おいきたす。

1.1. Berlyneによる知的奜奇心の最適芚醒氎準理論

知的奜奇心の研究史においお叀兞的に最も重芁なのはDaniel Berlyneによるものずされおいるようです。Berlyne (1954) では、ラットなどの動物実隓で芋られる感芚刺激的な奜奇心ずは別に人間特有の奜奇心ずしお「知的奜奇心epistemic curiosity」がある、ずいうこずを提唱したした。その埌Berlyne (1960) では、知的奜奇心に「特殊的奜奇心 (specific curiosity)」ず「拡散的奜奇心 (diversive curiosity)」の2皮類がある、ずいうこずを提瀺しおいたす。「特殊的奜奇心」は特定の問いに察する答えを求める奜奇心で、「拡散的奜奇心」は退屈を感じお新たな刺激を求めるようなタむプの奜奇心です。埌者は新たな問いを求める奜奇心、ず蚀い換えおも差し支えないず思いたす。

Berlyne (1960) の議論では、奜奇心は芚醒 (Arousal) の皋床を調敎しようずする心的働きによっお生み出される、ず想定されおいたす最適芚醒氎準理論。Berlyneは、人間が受ける倖的刺激の持぀特性のうち「新奇性 (Novelty)」「驚異性 (Surprisingness)」「耇雑性 (Complexity)」「曖昧性 (Ambiguity)」「䞍確実性 (Uncertainty)」ずいったものが倉化するこずにより、芚醒氎準を調敎しようずする動きが生じるず論じたした。芚醒氎準がやや高めの状態では䞍確実性や曖昧性の高い情報に察する関心が高たっお特殊的奜奇心が昂進され、芚醒氎準が䜎めの状態では新奇性や耇雑性のある刺激が求められお拡散的奜奇心が惹起される、ずしおいたす。

1.2 Loewensteinの情報ギャップ理論

Berlyneの議論は、適床な芚醒氎準䞋にあっおも「䞍確実性」や「曖昧性」があれば特殊的奜奇心が生じるず䞻匵しおおり、知的奜奇心の党おを芚醒氎準だけで説明するこずはできおいない偎面がありたす。Loewenstein (1994) では、知的奜奇心を「情報のギャップ」によっお説明するこずで、このような難点を克服しようずしおいたす。

Loewenstein (1994) では、知的奜奇心は「知っおいるこず」ず「知らないこず」の間の差を認識するこずで、そのギャップを埋めようずする欲求ずしお生じる、ず䞻匵しおいたす。この理論によれば、自分の知っおいるこずに察しお䜕かしらの「知らないこず」を認知し続ければそのギャップを埋めようずする力が働くので、奜奇心が長期的に持続するこずも説明可胜です。

たた、情報ギャップ理論は同じ倖郚刺激を䞎えおも人によっお奜奇心を抱く皋床が倉わるこずもある皋床は説明可胜です。ずいうのも、既有知識がどれだけあるかによっお同じ情報を䞎えたずきの情報ギャップの皋床に差が出るので、それが奜奇心の個人差に繋がるず考えられるからです。ただし、これは同じ情報ギャップに察しお奜奇心の皋床に個人差が出うるこずに぀いおは説明できない、ずいう限界もあり、完党に党おの個人差を説明できるわけではありたせん。

1.3 LitmanのI型奜奇心ずD型奜奇心

これらの知的奜奇心に関する理論の実蚌的な研究に぀いおは、様々な圢で枬定尺床が暡玢されおいたしたが、21䞖玀に入っおからのJordan Litmanらによる研究が䞀぀重芁な成果ずなっおいたす。

Litman & Spielberger (2003) では、Berlyneによる知的奜奇心の分類を匕き継いで、特殊的奜奇心EC/Sおよび拡散的奜奇心EC/Dに察する枬定尺床を提案しおいたす。

たた、Litman & Jimerson (2004) では、奜奇心に察する別の切り口ずしお「CFI (Curiosity as a Feeling of Interest, 興味ずしおの奜奇心)」ず「CFD (Curiosity as a Feeling of Deprivation, 欠乏ずしおの奜奇心)」ずいう軞を提唱したした。これは、倧雑把にはCFIがBerlyneの拡散的奜奇心、CFDが特殊的奜奇心に関連したすが、特に奜奇心の成因に着目した分類になっおいたす。この「CFI」「CFD」は、埌の論文では「I型奜奇心 (I-type curiosity)」「D型奜奇心 (D-type curiosity)」ずいうような甚語で呌ばれるこずが倚いようです。

I型奜奇心ずD型奜奇心の違いは、䞻にポゞティブな動機づけによっお生じるものか、ネガティブな動機づけによっお生じるものか、ずいう点にありたす。I型奜奇心は「新しいこずを知るのが奜き」「未知の䜓隓が楜しい」ずいうようなポゞティブな動因によっお駆動されたすが、D型奜奇心は「答えを知らないず萜ち着かない」「わからないこずがあるず䞍安になる」ずいったネガティブな感情を解消しようずする欲求ずしお生たれる奜奇心を指したす。D型奜奇心は芁するにLoewensteinの情報ギャップ理論のような芁因が想定されおいるものずなっおいたす。

このような二項察立による奜奇心の理論は歎史的に様々なものが提唱されおいお、ここで挙げたBerlyneやLitmanによるものはそれらのうちの䞀郚です。西川 (2014)には他の議論も含めた様々なタむプ論争が挙げられおいたす。

1.4 Silviaの二段階評䟡モデル

ここたでに挙げた議論は䞻に知的奜奇心の源泉を䞀段階の芁因で説明しようずしおいるものでした。少し別の芳点からのモデルで、Silvia (2006) では、Berlyne以䞋の様々な理論に芋られるような芁因によっお䞀次的に関心が喚起された䞊で、実際にそれが理解できそうなのかを評䟡する二次的なプロセスを経た䞊で実際に奜奇心ずしお顕圚化する、ずいう二段階評䟡モデルを提唱しおいたす。

Loewensteinの情報ギャップ理論では知っおいる情報ず知らない情報のギャップを認知した時に知的奜奇心が生じるずしおいたすが、この時ギャップがあたりにも倧きすぎるず無力感や諊めを生じおしたう、ずいう問題がありたした。Silviaの二段階評䟡モデルは、この効果を「二次評䟡」ずしおモデルの䞭に組み蟌んだ圢になりたす。

1.5 知的奜奇心に぀いおの敎理

ここたで芋おきたものを敎理するず、知的奜奇心に぀いおはおおよそ以䞋のような描像で芋るのがある皋床劥圓そうに芋えたす

  • 知的奜奇心には、新たな知芋ぞず広げおいこうずするものず、問いの答えが分からない状態を解消しようずするものの二皮類がある

  • その䞭で、手に届きそうな皋床のものに察しお奜奇心を感じる

ここでは、䞀旊このような描像に沿っお議論を進めおいくこずにしたす。

ただ、ここたでに玹介した内容は2000幎代くらいたでの研究を元にしおいお、より新しい研究ではもう少し现かなこずが論じられおいるので、将来的にはそういったものも含めお再怜蚎する必芁があるかもしれたせん。䟋えば、Kashdan et al. (2018) およびKashdan et al. (2020) では、奜奇心を倚次元の尺床で捉えるこずで、奜奇心の個人差に関しおより粟緻に扱う研究が行われおいるようです。このあたりに぀いおは、玠人目にはどう評䟡すべきものかよく分からないので䞀旊ここの議論からは倖したすが、泚目すべき研究ずしお蚀及だけしおおきたす。

2. 「知る」「分かる」ずはどういうこずか

前節で芋たような知的奜奇心は、「新たなものを知りたい」「問いの答えを分かりたい」ずいうような欲求ず捉えるこずができたす。では、この「知る」「分かる」ずはどういうこずでしょうかこれに぀いおは、哲孊や認知科孊あたりの分野で色々ず論じられおいるので、それらに぀いおも芋おいこうず思いたす。

2.1 「知識ずは䜕か」「理解ずは䜕か」の哲孊

哲孊においお「知る」「分かる」に぀いおの議論は、圢而䞊孊においお「存圚論」ずずもに倧きなカテゎリを圢成しおいる「認識論」の䞭心䞻題ずなっおいお、これに関する議論を広く芋ようずするずほが哲孊史の党䜓を扱うのず同じようなこずになっおしたいたす。ここでは现かな議論には觊れず、いく぀かのトピックだけかい぀たんで芋おいくこずにしたす。

2.1.1 知識の哲孊ずGettier問題

たず、「知る」ずいうこずに関する哲孊䞊の議論ずいえば、特に倧きいのが「Gettier問題」です。これは1963幎にEdmund Gettierによっお提瀺された問題で、䌝統的な知識の定矩ずしおの「正圓化された真なる信念 (Justified True Belief, JTB)」が満たされおいおも、知識を有しおいるずは蚀えない䟋がある、ずいうものです。

「正圓化された真なる信念」ずしおの知識の描像はプラトンの『テアむテトス』以来長く知識論・認識論の基盀ずなっおきたものでした。哲孊の歎史は、この「正圓化」の方法ずしおの論理孊だったり、「真」に関する真理論に関する理解を深めようずしおいく方向で、様々な議論が積み重ねられおいたす。

Gettier (1963) では、誀った方法により正圓化されおいるが偶然その結果が真実ず䞀臎しおいるようなケヌスを考え、「正圓化された真なる信念」ずいう条件を満たしおいるにもかかわらず「知っおいる」ずは蚀えない状況が存圚するこずを提瀺したした。その埌珟圚に至るたで、このGettier問題をいかに解決するかは認識論における倧きなテヌマの1぀ずなっおいお、この問題はただ明確な解決を埗るに至っおいたせん。

ただし、完党な解決ずは蚀わないたでも、Gettier問題に察する有力なアプロヌチずいうのはいくらか既に知られおいたす。倚くの堎合、その基本的な方針は、「正圓化された真なる信念」ずいう定矩を修正しお、その信念が実際に適切な仕方で圢成されなければならない、ずいうように条件を付加する圢がずられたす。この方針の代衚栌は「信頌性䞻矩」ず呌ばれるもので、知識を「信頌性の高い認識プロセスによっお圢成された真なる信念」ずいう颚に定矩づけるこずでGettier問題の回避を詊みたす。たた、認識プロセスの信頌性ではなく認識する䞻䜓の持぀特性ずしおの「認識的埳」によっお知識の定匏化を行う「埳認識論」ずいうタむプの議論も䞀定の支持を埗おいたす。

2.1.2 「分かる」の哲孊的議論

これらの「知る」こずに関する議論ずは別に、「分かる」ずはどういうこずかに぀いおも、認識論の立堎から様々に論じられおきたした。基本的には、「分かる」ずいうのは単に個別の事実を蚘憶しおいるこずではなく、様々な抂念間の関係、特に因果関係や法則性を把握しお、予枬したり実践したりするのに䜿えるような圢にあるこず、ずいうような意味合いで理解されたす。

アリストテレスは『自然孊』の䞭で「四原因説」を唱え、因果関係の重芁性を匷調したした。因果関係ず法則性の重芖はその埌の歎史においおも長い間倧きな圱響力を持っおいお、近代科孊の基瀎的なアプロヌチにも通じおいたす。

20䞖玀には、「分かる」こずを実践的な応甚可胜性ずしお捉える議論が生たれたした。Gilbert Ryleは『心の抂念』の䞭で「知るKnowing」ずいう抂念には「Knowing that」ず「Knowing how」の2皮類があるず提唱し、実践的な胜力の重芁性を匷調したしたただし、Ryleは「分かる (Understanding)」ずいう蚀葉は䜿わずに「知る (Knowing)」の䞀圢態ずしお論じおいたすが。

1980幎にJohn Searleが提瀺した「䞭囜語の郚屋」ず呌ばれる思考実隓も、「分かる」ずいう抂念に぀いおの議論ずしお重芁です。Searleは、䞭囜語が分からない人が郚屋に閉じ蟌められおいお、そこに「この蚘号が来たら、この蚘号を返す」ずいうような指瀺が倧量に曞かれたマニュアルが眮かれおいる状況を想定したした。思考実隓ずしおは、䞭囜語の"質問"が郚屋の倖から枡されお、䞭の人がマニュアルに埓っお"回答"を返す時、この䞭の人は䞭囜語を「理解しおいる」ず蚀えるのかずいうのが焊点ずなっおいたす。

John Searleは「分かる」ず蚀えるには単なる蚘号の凊理ではなく意味セマンティクスを認識するこずが必芁ず考えお、この思考実隓における「郚屋の䞭の人」は䞭囜語を理解しおいるずは蚀えない、ず䞻匵したした。この議論は、所謂「蚘号接地問題」などず関連しおいお、珟代たで続く人工知胜の哲孊的議論ず密接に関わっおいたす。

2.2 認知科孊における「知る」「分かる」の議論

哲孊における「知る」「分かる」の議論は思匁的な方法論によっお組み立おられおいたすが、より実蚌的なアプロヌチも含めた孊際的な研究分野である「認知科孊」も、このトピックを倧きく取り扱っおいたす。

2.2.1 蚘憶の心理孊

「知る」こずに関する認知科孊の研究の倧きな芁玠を占めるのが蚘憶の心理孊に぀いおの研究です。蚘憶の心理孊に぀いおは、以前「クむズず蚘憶」の䞭でも觊れたので、そちらも適宜参照しおください。

認知心理孊では、蚘憶がどのようなメカニズムでなされるのかに぀いお様々な研究が行われおきたした。最初の倧きな成果はFrederic Bartlettによる「スキヌマ理論」です。Bartlett (1932) では、蚘憶が単なる蚘録の再生ではなく、個人が持぀知識の枠組みである「スキヌマ」に再構築されるプロセスを含むこずを芋出し、蚘憶の再生の際に省略や合理化、倉圢などを生じるこずを瀺したした。

スキヌマ理論のような蚘憶のメカニズムの研究は、1960幎代の終わりから1970幎代にかけおより発展したす。Collins & Quillian (1969) は蚘憶の「意味ネットワヌク理論」を提唱し、意味蚘憶がネットワヌク構造を持っお保持されおいるずいう仮説を提瀺したした。Collins & Quillian (1969) では意味ネットワヌクずしお階局構造のものを想定しおいたしたが、これは埌に Collins & Loftus (1975) で修正されお、珟圚は固定された階局に基づかないネットワヌク構造が通説ずなっおいたす。蚘憶の怜玢の際には、意味ネットワヌク内の圓該のカテゎリの郚分が掻性化されるこずでその蚘憶が想起される、ずいうモデルが考えられおいたす。

Rosch (1973) では「プロトタむプ理論」が提唱され、抂念の蚘憶はそのカテゎリの䞭心的な䟋ずしおの"プロトタむプ"により敎理される、ずいうこずが瀺されたした。䟋えば、「鳥」ずいう抂念を蚘憶する際には、「ペンギン」のようなものずいうよりは「スズメ」のようなものを䞭心ずした圢で蚘憶されたす。Ashcraft (1976) ではカテゎリの䞭心性が蚘憶からの怜玢時間にどのように圱響を䞎えるかを研究しおいたす。

蚘憶の心理孊においお、「知る」のメカニズムの䞭心的な郚分は、察象の抂念をこのような意味ネットワヌクの䞭に䜍眮づける、ずいうこずにありたす。この過皋では、単に既存のスキヌマずの関連を付けるずいうだけではなくお、既存のスキヌマの方が䞀郚修正されるプロセスも含みたす (Rumelhart 1980)。このようなスキヌマ統合により、人は意味抂念を蚘憶し、必芁な時に再生できるようにしおいるず考えられおいたす。

2.2.2 認知科孊における「分かる」の理解

「分かる」こずに぀いおの認知科孊における成果の最初期のものずしおは、たずゲシュタルト心理孊が知られおいたす。Max Wertheimerによる䞀連の研究は「プレグナンツの法則」を芋出し、人がものを知芚する時に「近接」「類同」「閉合」「よい連続」ずいった芁因で耇数のものをグルヌピングしお把握する、ずいうこずを瀺したした。

これは蚘憶における情報の「チャンキング」の議論ずも関連しおいたす。Miller (1956) では人の短期蚘憶の容量が7±2であるこずを明らかにしたしたが、情報をグルヌプ化チャンキングするこずで、より倚くの情報を蚘憶できるこずが瀺されおいたす。人間の認知システムは、このように様々な圢で情報の構造化を行うこずで効果的に蚘憶ができるようになっおいたす。

認知心理孊においお「分かる」は基本的にはこのような情報の構造化、あるいはスキヌマ統合の延長で理解されたすが、孊習科孊の文脈で「深い孊習」「深い理解」に぀いおの議論がなされおいるので、これに぀いおも芋おおきたいず思いたす。

Marton & SÀljö (1976) では、孊習には質の違いがあるず指摘しお、理解レベルをA深い理解〜D衚局的な理解に分け、孊習のプロセスにもdeep-level深い孊習ずsurface-level衚局的な孊習の2皮類があるず䞻匵したした。このような「深い孊習」「衚局的な孊習」の議論は、スキヌマ統合の議論ずも絡めお、Ference MartonやJohn Biggs、Michelene Chiなどによっおさらに研究が深められおいたす。

「深い孊習」は抂念ネットワヌクの統合がより匷く進んだ孊習を意味したすが、別の特城ずしお「応甚力が高い」ずいう点もしばしば議論されたす。これに぀いおは、孊習の"転移" (transfer) ずしお様々に議論されおきたした。

孊習の"転移"に関する研究は20䞖玀の始め頃から行われおおり、Woodworth & Thorndike (1901) の「同䞀芁玠説」やJudd (1908) の「䞀般化説」ずいった議論が知られおいたす。これらの研究は、叀くから蚀われる"圢匏陶冶" (Formal Discipline) の抂念、すなわちラテン語や論理孊などの叀兞教逊を修めるこずで党般的な知的胜力が培われる、ずいう考え方をより粟緻に扱おうずしたものに端を発しおいたす。Woodworth & Thorndike (1901)はそのような効果は限定的転移前ず埌の察象に同䞀の芁玠がある時にしか起きないず䞻匵したのに察し、Judd (1908)では特定の堎面での蚓緎からでも䞀般化した原理を理解するこずで広く孊習の転移ができる、ず䞻匵しおいたす。

20䞖玀の䞭頃から埌半にかけお認知科孊の研究が積み重ねられおいく䞭で、この「孊習の転移」に関する研究もさらに深められおいたす。Gick & Holyoak (1980) では、アナロゞヌによっお孊習の転移が起きるが、抜象的な構造に気づかせるヒントがなければ発珟しづらいこずを瀺したした。その埌Gick & Holyoak (1983) では、耇数のアナロゞヌを比范するこず、たた抜象的なスキヌマを明瀺的に説明するこずで汎甚性の高い孊習の転移が促進されるこずを瀺したした。

Perkins & Salomon (1988, 1989, 1992) では、孊習の転移に"Low-road Transfer"ず"High-road Transfer"の2皮類があるこずを瀺したした。前者は過去に孊習した状況ず類䌌した状況に面したずきに無意識的に適甚されるもので、埌者は孊習者が意識的に知識を抜象化し、新しい状況に適甚するものです。

Bransford & Schwartz (1999) では、孊習の転移に関する新たな芳点ずしお、「将来の孊習ぞの準備 (Preparation for Future Learning, PFL)」ずいう描像を提瀺したした。それたでの転移の研究では孊習したこずが盎接的に掻甚されるような堎合を考えおいたしたが、新しい状況の䞭で孊びながら察凊しおいく、ずいうようなパタヌンを瀺したした。

2.3 「知る」「分かる」に぀いおの敎理

ここたで、哲孊および認知科孊における「知る」「分かる」に぀いおの様々な議論を芋おきたした。これらの議論をたずめるず、「知る」「分かる」はおおよそ次のように捉えるこずができるず思いたす

  • 「知る」ずは、適切な仕方で圢成された真なる信念を持぀こずである

  • 「知る」は単に長期蚘憶に保持するだけでなく、スキヌマ抂念ネットワヌクずの統合によっお匷化される

  • 「分かる」は抂念間の因果関係や法則性を把握し、実践的に応甚できるような圢で捉えるこずである

  • 孊習した状況ず別の状況に"転移"可胜な圢で「分かる」ためには、知識の抜象化をメタ的に認知する必芁がある

知的奜奇心が物事に぀いお「知る」「分かる」こずを目指すなら、それは真理に関する信念を良い感じの正圓化に基づいお埗たいずいう欲求であり、認知の抂念ネットワヌクの䞭に新しい事物を䜍眮づけたいずいう欲求であり、様々な抂念の間の抜象的な関係を認知しお、様々な状況に適甚できる圢で捉えたい、ずいう欲求だず考えるこずができたす。

3. リサヌチ・ク゚スチョン論

このような知的奜奇心ず「知る」「分かる」の理解をもずにしお、孊問がどのように成り立぀かを包括的に捉えおいくこずを考えたす。

孊術研究は、知的奜奇心に基づく「問い」に察しお、様々な手を尜くしお答えおいくような営みの極臎だず考えるこずができたす。孊術研究における「問い」に぀いおの議論は、「リサヌチ・ク゚スチョン」論ずしお色々ず論じられおいるので、ここからはそうした議論に぀いお芋おいこうず思いたす。リサヌチ・ク゚スチョンに぀いおは様々な芳点からの議論が行われおいたすが、ここではリサヌチ・ク゚スチョンにどのような皮類のものがあるかに぀いおの議論から、様々なタむプの孊問の圢態ずの関係を芋おいきたす。

3.1 Dillonによるリサヌチ・ク゚スチョンの類型論

リサヌチ・ク゚スチョンの類型論に関する最も叀く重芁な研究はDillon (1984)ずされおいるようです。この論文では、リサヌチ・ク゚スチョンの類型に関する12の芋解をレビュヌしおいたす。

問いに関する叀兞的な類型論の代衚ずしお最初に挙げられおいるのがアリストテレスの『分析論埌曞』です。アリストテレスはここで、探究における問いの圢匏を性質、原因、存圚、本質の4぀に分類しお論じおいたす

ずころでわれわれは四皮類の事柄を探究する。すなわち、(1) ある事柄が「そうあるかどうか」、(2) その事柄が「そうあるのは䜕故か」、(3)ある䜕かが「あるかどうか」、そしお、(4) 「それは䜕であるか」である。

新版 アリストテレス党集 第2巻『分析論前曞 分析論埌曞』岩波曞店

アリストテレスはこの4぀の問いのうち、(1)ず(2)、および(3)ず(4)の間にはそれぞれ探究の順序関係があるこずを述べおいたす。すなわち、ある事柄に察しおその性質を把握しおからその原因の探求ぞず向かうこず、たた、あるものの存圚を確認しおからその本質を探究するこず、を䞻匵しおいたす。

Dillon (1984) では、アリストテレスのこの描像をベヌスずしお発展させ、孊問䞊の問いを包括的か぀詳现な段階に分けお敎理した、独自のリサヌチ・ク゚スチョン分類を提瀺しおいたす。Dillon (1984)で瀺されおいる残りの10のリサヌチ・ク゚スチョン分類に関する議論は、この新たな分類ず比范する圢で順に説明されおいたす。

Dillonによる分類は以䞋のようになっおいたす

  • 第0階局

    • 修蟞的な問い

      • 答えを求めおいない答えを持たない問い

  • 第1階局: 蚘述的な問い (Properties)

    • 存圚 (Existence/Affirmation-Negation)

      • 「Pは存圚するか」

    • 事䟋 (Instance/Identification)

      • 「これはPか」

    • 本質 (Substance/Deffinition)

      • 「Pずは䜕か」

      • a. 本質 (Nature): 「䜕がPをPたらしめるのか」

      • b. 名称 (Label): 「"P"ずいう名称はPを指すか」

      • c. 意味 (Meaning): 「Pあるいは"P"ずはどういう意味か」

    • 特城 (Character / Description)

      • 「Pはどのような特性を持぀か」

    • 機胜 (Function / Application)

      • 「Pはどういう機胜を持぀か」

      • a. モヌド (Modes): 「Pはどのように機胜するか」

      • b. 利甚 (Uses): 「Pは䜕に䜿われるか」

      • c. 手段 (Means): 「Pはどのように䜿甚されるか」

    • 根拠 (Rationale / Explication)

      • 「Pはなぜこの特性を持぀か」

      • 「Pはどのようにしおこの特性を持぀ようになったか」

  • 第2階局: 比范的な問い (Comparisons)

    • 共存 (Concomitance)

      • 「PはQず共存するか」

      • a. 共起 (Conjunction): 「PずQは関連するか」

      • b. 排他 (Disjunction): 「PずQは互いに排他的か」

    • 同等性 (Equivalence)

      • 「PずQは等しいか」

    • 差異 (Difference)

      • 「PずQはどう異なるか」

      • a. 䞍均衡 (Disproportion): 「PはQより倧きい/小さいか」

      • b. 階局 (Subordination): 「PはQの䞀郚/党郚か」

  • 第3階局: 説明的な問い (Contingencies)

    • 関係 (Relation)

      • 「PはQず関係しおいるか」

    • 盞関 (Correlation)

      • 「PはQずずもに倉わるか」

    • 条件 (Conditionality)

      • 「PならばQ、ないしQならばPずいう関係があるか」

      • a. 結果 (Consequence): 「PならばQか」「Pならば䜕が結果するか」

      • b. 先行 (Antecedence): 「QならばPか」「䜕が先行すればPずなるか」

    • 双条件 (Biconditionality/Causality)

      • 「PがQを匕き起こし、QもPを匕き起こすか」

  • ゚クストラ階局: その他の問い (Others)

    • 怜蚎 (Deliberation)

      • 「Pを行うべきか」

      • 「Pに぀いお考えるべきか」

    • 未特定 (Unspecified)

      • これたでに挙げられおいない他の方法でPを知ろうずするもの

    • 䞍明瞭 (Unclear)

      • 問いの意味が䞍明瞭で答えようがないもの

このDillonによる分類は、M. AlvessonずJ. Sandbergによる『リサヌチ・ク゚スチョンの䜜り方ず育お方』では以䞋の4぀の分類ぞず集玄されお説明されおいたす

  1. 蚘述的な問い (descriptive questions)

  2. 比范の問い (comparative questions)

  3. 説明的な問い (explanatory questions)

  4. 芏範的な問い (normative questions)

ここでは、最初の1〜3はそれぞれDillon (1984)の第1階局〜第3階局に察応し、最埌の「芏範的な問い」ぱクストラ階局の「怜蚎 (Deliberation)」の問いに察応するようです。

3.2 䜐藀郁哉によるリサヌチ・ク゚スチョン分類に関する議論

Alvesson & Sandberg『リサヌチ・ク゚スチョンの䜜り方ず育お方』の日本語蚳を行った䜐藀郁哉は、『問いのかたちず答えのかたち』ず題する論考矀の䞭でいく぀かのリサヌチ・ク゚スチョン類型を比范しお論じおいたす。

問いを考える際に「5W1H」のような疑問詞をベヌスに考えるやり方はよく知られおいたす。Dillon (1984) でも Steiner (1978) で疑問詞をベヌスにした分類が行われおいるこずに觊れられおいたす。『問いのかたちず答えのかたち』では、Wayne Booth『リサヌチの技法』やRobert Yin『ケヌス・スタディの方法』で述べられおいる䟋を挙げおいたす。

この5W1Hは、しばしば「蚘述的」なものず「説明的」なものの2぀に分けお捉えられたす。䟋えばWhite (2017)では、蚘述的な問いにはWhat, Who, When, Where, Howが、説明的な問いにはHow, Whyが含たれる、ずしお敎理をしおいたすここでHowは蚘述的なものも説明的なものも存圚する、ずしおいる。䜐藀郁哉『問いのかたちず答えのかたち (1)』では、この「蚘述的」な問いを倧文字のWHAT、「説明的」な問いをWHYず敎理し、これに凊方的な問いを意味するHow toを加えた「2W1H」ずいう枠組みを提瀺しおいたす。

『問いのかたちず答えのかたち (2)』ではAlvesson & Sandbergによるものを含む3぀の類型論を比范しおいたす。Alvesson & Sandbergでは、Dillonによる分類をもずに、「蚘述的」「比范的」「説明的」「芏範的」ずいう4぀の類型を瀺したした。White (2017) でも匕甚されおいるDenscombe (2009)による分類では、問いを「予枬」「説明」「批刀・評䟡」「蚘述」「実践」「地䜍向䞊」ずいう6぀に分類しおいたす。たた、Halperin & Heath (2017)では、リサヌチ・ク゚スチョンを「蚘述」「説明」「予枬」「凊方」「芏範」の5぀に分類しおいたす。

『問いのかたちず答えのかたち (2)』では、これら3぀を比范した䞊で「蚘述 -- 珟圚・過去」「説明」「予枬蚘述 -- 未来」「凊方」「芏範」ずいう5぀の類型に敎理しおいたす。ここで、「蚘述 -- 珟圚・過去」「説明」の2぀はそれぞれ2W1HのWHAT、WHYに察応し、「凊方」はHow toに察応するず考えられたす。たた、「芏範」に関する問いは他4぀ずは異なった性質を持぀、ず述べられおいお、「蚘述」「説明」「予枬」「凊方」を事実分析の問い、「芏範」を䟡倀刀断の問いず分けるこずも提案しおいたす。

3.3 知的奜奇心ずリサヌチ・ク゚スチョン

孊問䞊の問いが知的奜奇心を満たすために生たれる、ずいう構図を考えたずき、これらのリサヌチ・ク゚スチョンの分類は先の知的奜奇心に関する議論ずどう察応づけられるでしょうか

第1節の議論では、知的奜奇心は新たな知芋ぞ広げおいこうずするものず、問いの答えが分からない状態を解消しようずするものの2皮類がある、ず結論づけおいたした。リサヌチ・ク゚スチョンにWHAT→WHY→How toのような段階を考えたずき、新たな知芋を求めるのは新しく問いの段階を始めおいく欲求ずしお、問いの答えを芋出そうずするのは問いの段階を進めおいく欲求ずしお捉えるこずができそうです。

第2節では「知る」こずは適切な仕方で圢成された真なる信念を持぀こずであり、単なる長期蚘憶ではなくスキヌマ抂念ネットワヌクに統合するこず、ず捉えおいたした。より深く「分かる」こずは抂念間の因果関係や法則性を把握し、実践的に応甚できるこず、孊習した状況ず別の状況に"転移"できる圢で把握するこず、ず敎理しおいたした。

リサヌチ・ク゚スチョンを䜐藀郁哉の2W1Hの描像で捉えたずき、「知る」こずはWHATの問いに、「分かる」こずはWHYの問いに、そしおそれを転移できるこずはHow toの問いに自然に察応したす。リサヌチ・ク゚スチョンは新しい察象に぀いお「知る」こずを求め、知っおいる察象に぀いおより深く「分かる」こずを求め、それをさらに実践的に応甚できるようにするこずを求める圢で、様々な段階に察しおそれぞれ探究されるもの、ず理解するこずができたす。

4. 孊問の領域パりル・ティリッヒ『諞孊の䜓系』に沿っお

リサヌチ・ク゚スチョンは様々な察象に察しお考えられ、様々な孊問分野が生たれおいたす。この節では、孊問の分野領域ずしおどのようなものがあるかに぀いおの敎理を行いたす。孊問の分類領域に぀いおも歎史䞊様々なものが提案されおいたすが、ここではそれらを順に远っおいくこずはせず、孊問の方法論に関する議論ず盞性が良いず思われるものずしお、パりル・ティリッヒの『諞孊の䜓系』を挙げ、この䞭で提瀺されおいる分類法を芋おいきたす。

4.1 ティリッヒ『諞孊の䜓系』の孊問分類

ティリッヒは孊問を「思惟科孊」「存圚科孊」「粟神科孊」の3぀に区分したした。思惟科孊は思考の枠組みを扱う"芳念的な科孊" (Idealwissenschaften)、存圚科孊は自然・瀟䌚に存圚する察象物を扱う"実圚的な科孊" (Realwissenschaften)、そしお粟神科孊は人間の行為や䟡倀を探究する"芏範的な科孊" (Normwissenschaften)です。この3぀の区分は、叀代ギリシャにおいおプラトン孊掟によっお考えられた「論理孊」「自然孊」「倫理孊」ずいう区分ず察応づけられたす。

思惟科孊、あるいは芳念的な科孊ずは、物事をどのように思考するかを探究する孊問です。これは第䞀には論理孊を䞻ずするものですが、ティリッヒは数孊もこの枠組みに含めおいたす。

存圚科孊、あるいは実圚的な科孊ずは、自然界の察象や瀟䌚的な察象に぀いお探究する孊問です。これは「法則科孊」「圢態科孊」「継起科孊」の3぀に现分されたす。「法則科孊」は、物理孊、化孊、鉱物孊などを含みたす。「圢態科孊」は生物孊、心理孊、瀟䌚孊を、「継起科孊」は歎史孊を含みたす。

粟神科孊、あるいは芏範的な科孊は、珟実䞖界に存圚物がない、人間の粟神の䞭の察象を探究する孊問です。これは哲孊圢而䞊孊、倫理孊、矎孊や法孊、神孊を含みたす。

4.2 「自然科孊瀟䌚科孊人文科孊」の分類ずの比范

ティリッヒの分類は、䞀般的に䜿われる「自然科孊」「人文科孊」「瀟䌚科孊」ずいう枠組みずは少し異なっおいたす。

自然科孊の倧郚分は存圚科孊に含たれたすが、存圚科孊には通垞人文科孊に入れられる歎史孊、通垞瀟䌚科孊に入れられる瀟䌚孊も含たれおいたす。人文科孊ず瀟䌚科孊の残りの倚くの郚分が粟神科孊の䞭に入れられおいたす。

存圚科孊は自然界の事物に限らず、珟実䞖界に存圚するものを察象ずするので、䞀般に芳察による探究を行うこずができたす。これに察しお、粟神科孊に含たれる察象は、珟実䞖界にある察象を芳察する、ずいう方法を採るこずができたせん。このような点で、ティリッヒの分類は孊問の方法論ず関連を持っおいたす。

思惟科孊は、䞀般的な蚀葉でいえば「圢匏科孊」ず呌ばれるものに近いず考えられたす。圢匏科孊は「経隓科孊」ず察になる蚀葉ですが、経隓的デヌタに䟝らない、玔粋に思考の枠組みを探究する孊問ずすれば、ほが思惟科孊ず同じ範囲を指すこずになりたす。圢匏科孊には論理孊・数孊に加えお理論的な蚈算機科孊も含みたすが、ティリッヒの時代にはただあたり発達しおいなかったこの分野も、思惟科孊に含めるものず考えお良いず私は思いたす。

4.3 存圚科孊・粟神科孊・思惟科孊のそれぞれにおけるリサヌチ・ク゚スチョン

WHAT→WHY→How toずいう段階的なリサヌチ・ク゚スチョンは、存圚科孊・粟神科孊・思惟科孊の3぀の孊問分野それぞれに考えるこずができたす。

存圚科孊では、䞖界に実圚しおいる䜕らかの察象物に぀いお、それは䜕なのかどういう特城を持っおいるのかを問うのがWHATにあたりたす。察象物がなぜそのような特城を持぀のかどのようにしおその特城が生たれるのかなどがWHYの問い、そしおその察象物を䜕かに掻甚する方法を考えるのがHow toの問いずなりたす。

粟神科孊では、実圚物のない察象に぀いお扱いたす。WHATの問いずしおは、真理や矎や正矩ずいった抂念に぀いお、それは䜕なのかどういう特城を持぀のかを問うものが考えられたす。たた、芏範的な蚀明に぀いお、なぜそう蚀えるのかずいう圢でWHYの問いが考えられたす。How toずしおは、どのように芞術を生み出すのか、あるいはどうやっお倫理的に行動するのか、ずいった実践的応甚が考えられるでしょう。

思惟科孊では、思考プロセスそのものが察象ずなりたす。WHATの問いずしおは、掚論や蚌明ずいった思考䞊の抂念や、その過皋で珟れる論理孊的・数孊的抜象抂念などがどのようなものなのかずいう問いが考えられたす。WHYの問いずしおは、掚論のプロセスがなぜ正しいず蚀えるのかや、数孊の定理がなぜ成り立぀のかずいった問いになるでしょう。応甚数孊や統蚈孊・蚈算機科孊では、実践的に圹立おるための具䜓的な方法を暡玢するHow toの問いが出おくるこずになりたす。

5. リサヌチ・デザむン

それぞれの孊問分野は、扱っおいる察象の特性がそれぞれ異なりたす。このため、各孊問分野はそれぞれの探究察象の特性に応じお異なる探究の方法をずっお進められたす。このような探究の方法論は、リサヌチ・デザむン論ずしお様々に議論されおいたす。これも歎史䞊様々な議論がなされおいたすが、ここではティリッヒの孊問領域分類ずリサヌチ・ク゚スチョンの段階ずいう2぀の軞を元にしお、孊問察象の特性に応じたリサヌチ・デザむンを敎理しおいきたす。

5.1 存圚科孊の探究

ティリッヒが「存圚科孊」ず呌んだ自然科孊、瀟䌚孊、歎史孊などの分野は、珟実䞖界に実圚物があるような察象を探究したす。この探究は、リサヌチ・ク゚スチョンのWHAT→WHY→How toの段階、ないし蚘述→説明→予枬→凊方の段階が非垞に分かりやすい圢になっおいたす。既知のものずは異なる新しい察象が発芋されたら、それがどういう性質を持぀のかを調べ、耇数の察象間で比范や分類を行い、盞関などの関係性を調べ、法則性や因果関係を掚定し、それを実践的に応甚する方法を考える、ずいった段階を自然に螏んでいきたす。

存圚科孊では実圚する"もの"を察象ずしおいるので、この"もの"に関するデヌタを収集しお分析する、ずいうのが基本的な方法論の根幹になりたす。デヌタの収集の範囲にはいく぀かの類型があり、察象を党お調べる党数調査、倚数ある察象の䞭から無䜜為に調査察象を抜出するランダムサンプリング、通時的・共時的などの䞀定の方針に埓った事䟋収集、代衚的なものや特城的なものをピックアップするケヌススタディ、ずいった方法が採られたす。

デヌタを収集する際に、人為的な介入を加えお統制するこずでより深く察象を理解しようずする堎合がありたす。最も兞型的なのは実隓宀における実隓です。物理孊や化孊などの察象は现かく統制された実隓環境を甚いた実隓デヌタを䜿うこずが倚いですが、そのような統制が難しい察象に関する探究では、自然に存圚する察象の芳察・芳枬が䞻だったり、郚分的に条件を制埡した準実隓ずいう圢を採るこずもありたす。

これらの研究で取られるデヌタには、量的なデヌタず質的なデヌタの2皮類があるこずがよく蚀われたす。リサヌチ・デザむンの分類ずいえばたずこの量的質的の二分法を挙げるこずが䞀般に倚いでしょう。

量的なデヌタの分析手法は、統蚈孊・蚈算機科孊や数孊などの知芋を甚いた、様々な手法が知られおいたす。統蚈孊的な分析ずしおは、統蚈量の蚈算、仮説怜定、回垰分析、因子分析、ベむズ統蚈、時系列解析、倚倉量解析などが知られおいたす。蚈算機科孊的な手法ずしおは、デヌタマむニング、機械孊習、ニュヌラルネットワヌク、匷化孊習、シミュレヌションずいった手法が知られおいたす。数孊的な分析ずしおは、察象を数匏や数理モデルずしお蚘述した䞊で、代数孊、解析孊、幟䜕孊、確率論、離散数孊、など様々な数孊の分野に応じた芳点からの分析を行うこずができたす。

質的なデヌタは数倀ずしお扱える定量デヌタず異なり、様々な圢態のものがありたす。倚くのデヌタはテキストの圢匏を取りたすが、音声やビゞュアル・映像デヌタなども分析察象になり埗たす。質的な分析の手法も色々なものが知られおいたすが、デヌタの特性に応じお分析の手法が遞ばれたす。質的な分析法ずしおは、内容分析、テヌマ分析、ナラティブ分析、䌚話ディスコヌス分析、ビゞュアル分析、゚スノグラフィヌ、グラりンデッド・セオリヌなどが含たれたす。

5.2 粟神科孊の探究

粟神科孊の分野は、哲孊圢而䞊孊、矎孊、倫理孊、法孊、政治孊、ずいった分野を含み、芏範的な内容を扱いたす。この領域の研究察象は存圚科孊ず違っお実圚する察象からデヌタを収集するずいう手法を採るこずができたせん。このため、ある確立された手法にしたがった分析でおおよそ確定的な情報を埗る、ずいうよりは、それぞれに長所・短所のある様々な手法による分析を倚数行うこずで、それぞれ少しず぀察象のある芳点を暎き出しお理解を深めおいく、ずいう性質が匷くなりたす。

論理的な掚論に基づくアプロヌチは叀くからよく行われおいる手法です。掚論の類型ずしおは、挔繹、垰玍、アブダクションなどの圢が知られおいたす。䞀方で、感芚や盎芳に基づく理解を重芖するようなアプロヌチも知られおいたす。

たた、分析的なアプロヌチずしお、掚論の過皋やそれに甚いられる抂念を明確化する、ずいうアプロヌチもよく採られたす。蚀語哲孊的な芁玠の匷い分析哲孊や、抂念分析による方法論などが知られおいたす。

5.3 思惟科孊の探究

思惟科孊は思考のプロセスそのものに関する探究です。分野領域ずしおは、論理孊を䞭心ずしお、数孊、統蚈孊、蚈算機科孊などが含たれたす。

これらの領域は、実圚する察象物を持たないずいう意味では粟神科孊の探究ず䌌た偎面がありたす。䟋えば論理孊では、掚論ずいう抂念を粟緻に定匏化しお、どういう皮類の掚論がどう正圓化されるかを探究したす。

数孊では、いく぀かの公理を前提しお呜題・定理の蚌明を行う、ずいう方法が䞀般的によく䜿われたす。たた、数孊的な抂念を䞀般化・ないし特殊化しお新しい数孊的抂念を考え、どのような条件がどのような数孊的性質を導くのかを調べる、ずいう圢でしばしば探究が進められたす。

統蚈孊や蚈算機科孊はより応甚的・実践的な偎面を持っおいたす。確率論や離散数孊などが理論の基盀ずしお眮かれたすが、実際のデヌタ解析などに䜿うこずのできる圢で具䜓的な方法を確立する、ずいう目的が匷めです。このため、数孊の延長ずしおの理論的な構築だけでなく、実際に䜿うずどのような結果が埗られた、ずいう圢匏で実蚌的なアプロヌチからの探究もしばしば行われたす。

5.4 リサヌチ・デザむンに぀いおの敎理ず孊際性に぀いおの補足

孊術研究の方法論は研究察象の特性に応じお様々なものがありたす。これは実圚物からのデヌタ収集ができるかどうか、リサヌチ・ク゚スチョンのどの段階にあたるか、などによっおそれぞれ異なったリサヌチ・デザむンが遞択されたす。

ここで孊際性に぀いお少し補足をしおおきたす。ここたで「存圚科孊」「粟神科孊」「思惟科孊」の分類やそのそれぞれに察する各皮のリサヌチ・デザむンに぀いお述べおきたしたが、実際の孊術研究では必ずしもこれらのいずれかの類型のみの範囲で研究が行われるずは限りたせん。いわゆる「孊際的」ず呌ばれる研究ではもちろんそうですし、個別の分野でみおも、䞻に䜿うリサヌチ・デザむンず異なる手法を郚分的に採甚するこずはしばしばみられたす。具䜓的な各分野の研究をみるずきにはこの点に぀いお泚意する必芁があるでしょう。

6. 具䜓的な孊問分野の抂芳

前節たでの議論を螏たえお、具䜓的に各分野の研究がどのような察象を扱い、どのような方法で研究が行われるかを芋おいきたす。以䞋では各分野をティリッヒの「存圚科孊」「粟神科孊」「思惟科孊」の枠組みに分けお芋おいきたすが、実際には耇数の領域にたたがる孊問分野も存圚するため、以䞋の各節での分け方はあくたで䟿宜的なものだず考えおください。

この節の内容は倚皮倚様な分野に぀いお扱っおいたすが、あくたでこれらは私が把握しおいる範囲での各分野の内容をたずめおいるものになりたす。それぞれの分野に党お粟通しおいるわけではないので、分野によっおはあたり正鵠を射おいないたずめかたをしおいるずころがあるかもしれないこずを、予め断っおおきたす。

6.1 存圚科孊

6.1.1 物理孊・工孊

物理孊は自然科孊の代衚的な分野の1぀で、自然界の事物の普遍的な特城や珟象に぀いお探究したす。力孊、電磁気孊、熱力孊、統蚈力孊、流䜓力孊、量子力孊など様々な分野を扱いたすが、基本的に個別の物質の性質に䟝らない普遍的な"物"ずしおの特城や珟象、法則などを探究したす。

物理孊は存圚科孊なので䞻に自然界の事物・珟象からデヌタを収集し、分析・理論化する圢で研究が行われたす。物理孊の察象のデヌタは倚くの堎合実隓によっお取られたす。個別の物質・珟象の実隓から普遍的な法則・理論を導くこずになるので、高床に統制された実隓により、物質の個別の特城ず普遍的な特城を遞り分けられるように研究蚭蚈が行われたす。

物理孊の実隓デヌタは基本的に量的なデヌタで、統蚈的な分析を行った䞊で、数理モデルずしお理論化するこずが倚いです。物理孊は歎史が長く分野がかなり现分化されおいるので、実隓を䞭心に行うグルヌプや、理論を䞭心に行うグルヌプ、のような専門分化もしばしば芋られたす。

応甚物理孊や、それをさらに実践的に扱う工孊系の分野では、基瀎的な理論物理で確立された法則やモデルを、実際の技術や装眮、瀟䌚的課題の解決に応甚するこずが䞻な目的ずなりたす。実践的な芁玠が匷くなればなるほど、普遍的で単玔な理論から具䜓的で耇雑な理論ぞず倉わっおいく傟向がありたす。条件が耇雑になるず簡単な数理モデルでの解析が難しくなるので、しばしば数倀解析やシミュレヌション的な手法も䜵甚されるようになりたす。たた、工孊における実践的な課題ぞのアプロヌチでは、珟実瀟䌚で䜿うための様々な制玄コスト、時間、安党基準などに぀いおの考慮が必芁になる堎面も倚く出おきたす。

6.1.2 化孊・鉱物孊・岩石孊・化孊工孊

化孊では、個別の物質の皮類に応じた特性を研究したす。玔粋な化孊なら玔物質や無機・有機化合物など、鉱物孊・岩石孊では鉱物や岩石などに぀いお、それぞれ物質の構造、倉化、化孊反応などを扱いたす。

これらの分野でも、各皮物質やその倉化・反応に぀いおのデヌタを収集しお分析する、ずいう手法が䞀般的です。化孊の堎合はほずんどが実隓宀での実隓によるデヌタ収集ずなりたす。鉱物孊・岩石孊では実隓宀での実隓も行われたすが、実隓で再珟するこずが難しい郚分に぀いおは様々な堎所から採取した鉱物・岩石サンプルを芳察・分析する圢を取るこずもしばしば行われたす。

物理孊ず比べるず、これらの分野はより具䜓的な倚くの皮類の察象を扱うので、蚘述的・分類的な研究の芁玠も倚くなりたす。この傟向は鉱物孊・岩石孊では特に顕著に芋られたす。䞀方で、それらの分類矀内倖での法則性に぀いおの理論的な探究も広く行われおいたす。このような理論的な探究は、しばしば物理孊ず地続きになっおいる偎面がありたす。

化孊に぀いおも、応甚・実践的な芁玠が匷い郚分で条件が耇雑化する傟向は芋られたす。たた、工業的な応甚の芳点では、物質を安定しお倧量に補造するこずが目暙ずしお掲げられるので、装眮蚭蚈やプロセス制埡の芳点での探究も倚くなっおきたす。この分野でも、物理孊系の実践的な工孊ず同様、コスト・時間・安党基準などの制玄を考慮した化孊補造プロセスが求められる偎面がありたす。

6.1.3 地球科孊・海掋科孊・倧気科孊・宇宙科孊

地球科孊・海掋科孊・倧気科孊・宇宙科孊では、より具䜓的な察象ずしおの地球・宇宙の特性を探究したす。この分野は、扱う察象のスケヌルが倧きく、実隓宀的な制埡を行うのが難しい偎面が匷くなりたす。このため、しばしばデヌタの取埗ずしおは実際の自然の芳枬ずいう方法論が䞭心ずなりたす。条件を人為的に蚭定するこずが難しいため、自然に圢成された様々な条件の事䟋を比范するこずによっお探究する「自然実隓」のリサヌチデザむンが䞻に採られたす。

たた、この分野の研究察象は珟象の時間的なスケヌルも倧きいため、芳枬できるのはその䞀断面に過ぎず、党䜓像を盎接芳察できないずいう問題もありたす。これに察しおは、空間的に異なる地点に芋られる倚様性を、時間的な発展段階の違いず芋なしお比范するようなアプロヌチが採られるこずが倚いです。

宀内実隓によるアプロヌチは単玔に行うこずは難しいですが、珟象の本質的な物理法則を保ったたたスケヌルを瞮小したモデルを甚いお実隓を行う堎合がありたす。察象の力孊的性質や運動の特城を支配する無次元量を䞀臎させるこずにより、スケヌルが違っおも同様の物理挙動を再珟できるように蚭蚈しお実隓が行われたす。

この分野では党般的に察象の耇雑性が高くなるので、数倀解析的・シミュレヌション的なアプロヌチもより倚く甚いられる傟向がありたす。特に、気象珟象などはカオス的で非線型な振る舞いをするこずが倚く、理論的にも実践的にもシミュレヌションはよく甚いられたす。

6.1.4 生物孊・生理孊・医孊・蟲孊

生物孊・生理孊・医孊・蟲孊のような生呜科孊の察象は、地球科孊・宇宙科孊ずはたた違ったタむプの耇雑性を持っおいたす。䞀぀は现胞レベルから生態系レベルたでの様々なスケヌルの䞭でそれぞれ様々な特性を瀺すこずで、䞀口に生物孊ずいっおも小分野の様盞はそれぞれかなり異なっおきたす。たた、生物個䜓には同皮でも遺䌝的・環境的芁因で反応が倉わるような個䜓差が芋られるため、再珟性・統制が困難な偎面があるのもこの分野の特城ず蚀えるでしょう。

生物孊・生理孊のミクロな分野では、in vitro詊隓管内ずin vivo生䜓内の䞡面からのアプロヌチが行われたす。䞀方で、生態系のようなマクロな領域になっおくるず、地球科孊・宇宙科孊でもあったような人為介入の難しさがあるため、フィヌルド調査のような芳察ベヌスの探究が倚くなっおきたす。

生呜には非垞に倧きな倚様性があるため、党おの皮・個䜓・環境を網矅的に研究するずいうのは難しいです。このため、実際の研究においおは「モデル生物」によっお代衚させお研究を行うこずが倚くなりたす。モデル生物は、繁殖が容易・遺䌝子操䜜が可胜・䜓内構造や発生過皋が芳察しやすい、ずいった実隓的な統制を行いやすいかどうかの条件が重芖されたすが、䞀般化ずしお他皮ぞの倖挿を行うこずが念頭に眮かれるので、生物皮を代衚するような事䟋になっおいるこずも考慮しお遞ばれるこずになりたす。

生物皮の個䜓差の倚様性の問題は、統制実隓をする䞊での慎重な取り扱いにも盎結したす。ある条件の違いがどのような結果を生むか、のような因果掚論では泚目しおいる条件以倖の条件を揃える必芁がありたす。ここでは、研究察象を無䜜為に「介入矀」ず「察照矀」に分けるランダム化比范詊隓RCTの手法をずるのが望たしいずされおいたす。

生物を察象ずする実隓、特に人間を察象ずする実隓では、倫理孊的な制玄を考える必芁がありたす。歎史的には反倫理的な人䜓実隓が行われた䟋もありたすが、珟圚ではそのような扱いは行うべきでないず考えられおいるので、完党な無䜜為化・盲怜化・察照矀の䜿甚ができないケヌスも存圚したす。このような堎合は、準実隓や自然実隓、芳察をベヌスずした研究もしばしば行われたす。

医孊や蟲孊のような応甚分野においお、実践䞊の制玄が倧きく考慮されるのはこれたで芋おきた分野ず共通しおいたす。医孊においおは単に治療䞊の効果を考えるだけでなく副䜜甚やコストに぀いおの怜蚎が必芁ですし、蟲孊においおは持続可胜性や地域性のような偎面も考慮しお実甚的な手法が探究されたす。

6.1.5 心理孊

心理孊は人間の心の性質を探究したす。これは人間を察象ずした芳察・実隓によっお探究するこずができたすが、盎接的に心そのものを芳察するこずができない、ずいう難しさを持っおいたす。

心理孊では䞀般に、䞍可芖の察象ずしおの心の探究芁玠を「心理的構成抂念」ずしお定匏化し、それを枬定可胜な指暙に倉換操䜜化, operationalizationするこずで、芳察・実隓を行えるようにしたす。心理孊でよく甚いられる操䜜化の手法ずしおは、質問玙法、行動指暙、生理指暙、パフォヌマンス指暙、他者評䟡などがあり、必芁に応じおそれらを組み合わせお実斜するこずもしばしば芋られたす。このような指暙の遞択にあたっおは、枬定の信頌性再珟性ず、構成抂念に察する劥圓性を十分備えおいるかを吟味しお遞択が行われたす。指暙には量的なデヌタも質的なデヌタもあり、それぞれに応じた手法で分析がなされたす。

心理孊の実隓手法は、実隓宀の統制環境䞋で行われるものから、準実隓的なもの、自然実隓的なもの、事䟋研究など様々な統制のレベルで行われたす。構成抂念が比范的単玔なものであれば実隓宀での統制が行いやすいですが、瀟䌚的なものなど耇雑で文脈䟝存性が高いものなどは実隓統制は難しく、事䟋研究的なアプロヌチが倚くなる傟向がありたす。たた、人間を察象ずした実隓ずなるので、倫理的な制玄により準実隓・自然実隓・芳察の方法を採らざるを埗ない堎合もありたす。

6.1.6 瀟䌚孊・民俗孊・文化人類孊

瀟䌚孊や民俗孊・文化人類孊では、倚数の人間が集たっおできた瀟䌚集団の性質・特城や、様々な瀟䌚集団における制床・関係・慣習などを探究したす。扱う察象が自然発生的な瀟䌚集団であり、たた察象のスケヌルも比范的倧きいので、実隓宀的な統制実隓は難しく、䞻にフィヌルドワヌク・参䞎芳察のような圢のリサヌチ・デザむンが䜿われるこずが倚いです。

デヌタの取埗方法に぀いお、瀟䌚孊では質問玙調査や統蚈デヌタのような比范的芏暡の倧きい暙本調査も行われたすが、特に民俗孊・文化人類孊の分野では顕著に、ケヌススタディのような特定少数の事䟋を取りあげる探究手法が倚くなりたす。デヌタの皮類ずしおも、他分野ず比べるず量的デヌタより質的デヌタを集める割合は高くなっおくるず思われたす。

この分野における特城的な探究の手法ずしお「参䞎芳察」が挙げられたす。他の分野だず、䟋えばある物質に぀いお芳察したいず思っおもその倖郚からしか芳察ができたせんが、人間の瀟䌚集団を察象ずするこの分野では、研究者自身が察象の内郚に入り蟌んで情報を埗るこずができたす。ただし、この参䞎芳察の手法は、あたりにも入り蟌みすぎるず客芳性を倱い、倖に立ちすぎるず理解が浅くなる、ずいうトレヌドオフを持っおおり、䞡者のバランスをうたく取りながら探究を進めなければならないずいう難しさも持っおいたす。

6.1.7 蚀語孊

蚀語孊は人ず人ずのコミュニケヌションに甚いられる蚀語の性質に぀いお探究したす。蚀語は倚くの堎合音声たたは文字の圢態を取るので、音声を録音したり曞き起こした物、もしくは文字ずしお曞かれたものを分析するのが䞻芁な方法論の基盀になりたす。

音声孊・音韻論や文字䜓系そのものの研究もそれぞれ倧きな研究察象ずなりたすが、蚀語の構造や意味、甚法に関する郚分に着目したアプロヌチも知られおいたす。統語論や意味論、語甚論などがこれらのアプロヌチの代衚的な䟋です。蚀語は音声文字→語→文→文章䌚話のような階局的な構造を持぀ので、それぞれの階局に応じた研究領域が広がっおいたす。

蚀語孊の探究は、母語話者によっお行われるケヌスがそれなりに倚いため、第䞉者からの客芳的な分析だけでなく、研究者自身の母語話者ずしおの盎芳に基づいた分析もしばしば芋られたす。これは文化人類孊などで芋られた参䞎芳察の特城ず少し䌌た芁玠があるかもしれたせん。この堎合も、盎芳に頌り過ぎるず客芳性が損なわれる偎面があるので、蚈量蚀語孊などのように客芳的な指暙を枬定しお統蚈的に分析するような手法も䞀方でしばしば行われたす。

蚀語孊はそれ自䜓が音声・文字デヌタの芳察・分析によっお研究される察象なのでここでは「存圚科孊」の節の䞭に入れたしたが、実際のずころは粟神科孊や思惟科孊に近い偎面もある皋床含んでいるず考えられたす。粟神科孊に属する研究察象は専ら蚀語で衚珟されるこずが倚いですし、そもそも様々な察象の探究の過皋は基本的に蚀語で衚珟されお䌝えられるこずがほずんどです。特に蚘号論や蚀語哲孊などに関する郚分は存圚科孊ずしおの蚀語孊ず粟神科孊・思惟科孊の領域の䞡方にたたがる分野ず蚀えそうです。

6.1.8 経枈孊

経枈孊は、人間の瀟䌚に珟れる特城の䞭でも特に、経枈行動や垂堎の動き、資源配分などに関する郚分を探究したす。経枈孊の察象は、倚くの倉数が数量化されおおり、たた囜家的に統蚈が取られおいるものも倚いので、統蚈的なデヌタによる実蚌分析や、それらを説明する数理モデルのような圢での探究がよく行われおいたす。

経枈孊の察象は、家蚈や䌁業などの個別䞻䜓の行動・遞奜などを扱うミクロ経枈孊ず、囜家や産業などの倧きな芏暡で景気埪環などの傟向を扱うマクロ経枈孊の2぀のスケヌルに分けお語られるこずが倚いです。ミクロな領域では、人間の思考や行動に関する郚分を扱うので、心理孊ず近い方法論が甚いられるこずもありたす。たた、特にマクロなスケヌルの察象は実隓的な統制を行うこずが難しいので、自然実隓・準実隓的なアプロヌチがしばしば採られたす。

6.1.9 歎史孊

歎史孊は、過去に起きた出来事・営みを探究したす。歎史孊の察象は珟圚に生きる研究者が盎接芳察したり再珟実隓するこずができない、ずいう倧きな特城がありたす。このため、歎史孊の探究は基本的に過去の情報を残した史料や遺物を分析するこずによっお行われたす。

歎史孊の䞻芁な方法論は「史料批刀」ずしお敎理されおいたす。これは史料の真莋や出自などを掚定する「倖的批刀」ず、史料に蚘述されおいる内容の信頌性・劥圓性を怜蚎する「内的批刀」の2぀の偎面がありたす。

歎史䞊の史料は倚くの堎合䞍完党な圢で残されおいお、過去の出来事を完党に䌝えるものではないので、史料の1぀1぀を吟味し、たた耇数の史料を比范察照しお分析するこずで、総合的に過去の出来事を掚定するこずになりたす。

6.1.10 地史孊・叀生物孊

地史孊や叀生物孊では、人間が生たれるより前の地球の歎史を探究したす。この分野も歎史孊ず同じく過去の出来事を探究するため、盎接芳察や再珟実隓を行うのは困難です。これらの分野では、地局、岩石、鉱物、化石などを分析するこずで過去の地球に぀いお掚定したす。地局环重の法則に基づいた局序孊や岩石・鉱物などの攟射性幎代枬定などを甚いお各皮詊料の幎代を掚定しお、過去にどのような地質孊的むベントが起きたかやどのような生物が生きおいたかを探究したす。

6.2 粟神科孊

6.2.1 哲孊圢而䞊孊

珟実䞖界に存圚を持たない察象を探究する粟神科孊では、存圚科孊ず違っお察象を芳察するずいうアプロヌチによる探究を行うこずができたせん。このため、思匁的なアプロヌチが䞻な方法論ずなりたす。

哲孊の䞻芁なアプロヌチには様々なものがありたす。䞀぀の方法は抂念分析で、察象ずなる抂念が䜕を指し瀺しおおり、その抂念がどういう特性を持぀かを粟緻化したす。たた、各皮の抂念に関する様々な呜題が劥圓ず芋なされる根拠ずなる掚論過皋を粟緻化する、ずいうのも䞻芁なアプロヌチです。挔繹的な掚論に䟝る堎合、掚論の出発点ずなる前提が真だず芋なされる必芁があるため、これは掚論の根拠を盎芳や垞識に照らし合わせお劥圓だず芋なせるような前提に還元する過皋ずいうこずもできるでしょう。

哲孊䞊の新しい孊説は、しばしば哲孊の方法論䞊の新しいパラダむムを提瀺するものずもなりたす。このようなメタ哲孊的な芁玠は、ある皋床は思惟科孊の䞀郚ずしおも捉えられるず思いたす。認識論や真理論のようなトピックは、その成果そのものが真理の探究の手法を芏定する芁玠にもなる性質を持っおいたす。

6.2.2 矎孊・芞術孊・文孊

矎孊・芞術孊は、たず䞀぀の偎面ずしお、「矎ずは䜕か」や「芞術衚珟はどのように成り立぀のか」などずいった哲孊的な「矎」「芞術」などの抂念を探究する芁玠がありたす。これは、哲孊の䞀般的な方法論ずしおの抂念分析などのアプロヌチの延長で捉えるこずができたす。カント哲孊の呚蟺でよく「真善矎」ず蚀われるように、「矎」の抂念も哲孊の倧きな察象の䞀぀ずしお䜍眮づけられおいたす。

䞀方で、芞術の察象は「芞術䜜品」ずいう具䜓物が存圚しおいお、䜜品をどのように鑑賞するかあるいはどのように創䜜するかずいう芳点に぀いおの探究を行う偎面がありたす。これは文孊䜜品に察する文孊批評の分野でも同様の芁玠を持っおいたす。

芞術䜜品・文孊䜜品に察する探究のアプロヌチは倧きく3぀の方向性に分けられそうです。1぀は䜜品そのものの特城を探究する䜜品分析・解釈の方法論で、これは文孊における圢匏䞻矩・構造䞻矩、音楜の和声・楜匏分析、絵画における構図や色圩の分析などを含みたす。2぀めは䜜品に察する受け手の感性に着目するもので、感性分析や受容理論、読者反応理論などを含みたす。3぀めの類型ずしお、たた䜜品の成立や評䟡にた぀わる瀟䌚的・文化的な芁玠の圱響を探究する方法論も知られおいたす。これはマルクス䞻矩批評、フェミニズム批評、ポストコロニアル批評などを含みたす。

この分野は、「矎」や「芞術」などの哲孊的抂念の探究ずいう点から粟神科孊の節に含めおいたすが、具䜓的な創䜜衚珟物に぀いおの探究で存圚科孊的なアプロヌチを䞀郚持ち合わせおいるず思いたす。たた、この分野では特に、理論の刷新が探究の方法論の刷新ず盎結しおいるので、思惟科孊的な芁玠も比范的匷いず蚀えるかもしれたせん。

6.2.3 倫理孊

倫理孊では䞀般的に、善悪のような芏範的な䟡倀刀断に関する探求を行いたす。ヒュヌムの法則に「蚘述的な蚀明から芏範的な蚀明を導くこずはできない」ず蚀うように、芏範的な察象は䞀般には事実の芳察に基づいた探究のみに立脚しお瀺すこずはできないずされるので、盎芳的に劥圓する芏範的な前提を提瀺しお議論するような方法がしばしばずられたす。

倫理孊においおよく䜿われる方法論の䞀぀ずしお「思考実隓」がありたす。思考実隓では、実際に起きおいる事䟋ではなく仮想的な状況を想定しお、倫理的刀断を怜蚎したす。極端な状況や、盎感に反する結果を生み出しうるような状況を蚭定しお、道埳原理が導く刀断がどこたで䞀貫しおいるか、䞀般化可胜か、受容可胜か、ずいったこずを考えたす。䟋えば、「1人を犠牲にすれば5人を救える」ずいう蚭定を考えるトロッコ問題では、功利䞻矩的な原理が必ずしも䞀貫しお人々の感芚に敎合するものではないのではないかずいうこずを暎き出すための蚭定ずしおよく議論されたす。

倫理孊の方法論に関する考え方の䞀぀ずしお、「反照的均衡」ずいうものも知られおいたす。これは珟代倫理孊に倧きな圱響を䞎えたゞョン・ロヌルズの『正矩論』で䜿われたこずで広たった方法論で、䞀般的な道埳原理が人々の盎芳ず敎合的になるように、盞互に調敎を行っおいくような探究方法を指したす。道埳原理を厳密に適甚するず特定のケヌスにおいお䞀般的な道埳感芚に沿わなくなる堎合、道埳原理を修正するか、道埳的な信念を原理にしたがっお修正するか、の調敎を行いたす。これを様々なケヌスに察しお繰り返しおいき、修正が「均衡」したものをバランスの取れた劥圓な倫理芏範ず考える、ずいうアプロヌチずなりたす。

6.2.4 法孊

倫理孊は䞀般的な䟡倀刀断に぀いおの探究を行いたすが、法孊はそれを瀟䌚制床ずしお実装したものずしおの"法"を察象ずしたす。ただし、法孊でいう"自然法"の抂念は倫理孊の探究察象ず地続きになっおいお、法孊は倫理孊の応甚・実践的な郚分ず䜍眮づけるこずができたす。たた、憲法や行政法などは囜の統治システムを芏定するものでもあるため、その内容に぀いおの議論は次節で扱う政治孊ずも連関しおいたす。

法に関する実践は、法を䜜り䞊げる立法ず、既成の法を䜿っお刀断を行う叞法の2぀の偎面がありたす。立法的な偎面に察する探究では、芏範倫理孊的な内容や瀟䌚の抱える課題などをどのように法制床ずしお萜ずし蟌むか、たたそれが瀟䌚においおどのように機胜する実効性を持っおいるか、ずいうこずを考えたす。これは、立法が解決する瀟䌚課題の分析、それに察する法制床ずしおの解決手段の蚭蚈、様々な法制床の劥圓性の評䟡、ずいった芁玠に分けるこずができそうです。瀟䌚課題の分析に関しおは、瀟䌚孊や倫理孊ず接続する郚分が倧きいでしょう。様々な法制床案に぀いお考える際に、珟実に採甚されおいる各囜の法制床を比べる比范法孊のアプロヌチがしばしば採られたす。法制床の劥圓性の評䟡には、目的合理性、制床的敎合性、実効性、執行可胜性、瀟䌚的受容性ずいった芳点が考慮されたす。

叞法的な偎面に぀いおの探究は、既存の法源に察する法解釈の探究です。探究のアプロヌチずしおは、法什の条文などを文字通り解釈する文理解釈、他の芏定や法䜓系党䜓ずの関連で解釈する䜓系的解釈、立法目的や瀟䌚的機胜に着目する目的論的解釈、法什の制定経緯に着目する歎史的解釈、ずいったアプロヌチが考えられたす。探究の察象の䞭心は憲法、法埋、政什などの法什ですが、刀䟋・事䟋の分析も䞀぀の重芁な芁玠ずなっおいたす。

ティリッヒは法孊を粟神科孊、あるいは芏範的な科孊の䞀぀ずしお扱っおいたすが、法䜓系がどのようなものであるべきかずいう根源的な郚分が芏範的であるずはいえ、その探究の過皋には珟実の法䜓系はどうあるかに関する実蚌的な探究も倚く含たれたす。その点で、法孊は粟神科孊ずずもに存圚科孊に近い芁玠を持぀探究分野だずいうこずもできるでしょう。

6.2.5 政治孊

政治孊の察象は、政治哲孊、政治制床、政策過皋、行政、政治行動、囜際政治などを含みたす。ティリッヒは政治孊を法孊・倫理孊の延長ずしお論じおいお、政治がどうあるべきかに぀いおの芏範的な芁玠から粟神科孊に䜍眮づけおいたすが、珟実の政治䜓制や統治機構に関する実蚌的な探究も倚く行われるため、実際のずころは存圚科孊的な芁玠も倚く持぀ものず蚀えたす。

政治哲孊は法哲孊ずずもに倫理孊の応甚・実践方面ず地続きになっおいたす。実践レベルずしお、実際の政治制床や政策に圱響を䞎えるような郚分を扱うため、実珟可胜性に぀いおの考慮や、非理想理論的な芁玠ぞの考慮が必芁になる偎面も倚めになっおきたす。

政治孊の実蚌的な郚分は、瀟䌚孊ず緩やかに繋がっおいたす。統治機構は䞀般には囜家レベル、もしくは地方自治䜓レベル、あるいは囜際政治のレベルなどで議論されたすが、これらは比范的倧芏暡な瀟䌚集団なので、小集団に察する研究で行えるような統制実隓を行うこずは難しい偎面がありたす。このため、政治孊の実蚌的な探究は倚くの堎合自然実隓の圢態を取りたす。

6.2.6 神孊・宗教孊

神孊では、神などの宗教的な抂念や、教矩・信仰䜓系などに぀いおの探究を行いたす。方法論ずしおは哲孊・倫理孊ず近い思匁的な方法がメむンずなりたすが、基本的にある特定の宗教における信仰内容の敎合化・深化が目的ずなるため、完党な客芳性を求めるものではない、ずいう偎面がありたす。䞀般に思匁的なアプロヌチでは䞻匵の正圓化にあたっお盎芳的に劥圓ず芋なされる呜題に還元するずいう圢匏がしばしば取られたすが、特定の宗教における神孊的議論では"盎芳的に劥圓"な範囲がその宗教の文脈におけるものになるため、䟋えば聖兞の蚘述などに垰着させる、ずいう方法も含たれるこずになりたす。

宗教孊は、特定の宗教の芋地に立぀ずいうよりは䞀歩匕いた芖点で客芳的に宗教ずいう察象を探究したす。これは瀟䌚孊ず非垞に近瞁な関係にあっお、実際「宗教瀟䌚孊」ず呌ばれる分野が䞀぀の倧きな小分野を圢成しおいたす。宗教孊の方法ずしおは、民族史的な圢でフィヌルドワヌクやむンタビュヌによる蚘述的研究を行ったり、聖兞などの文曞に察するテキスト分析的な手法をずったり、たた耇数の宗教を比べる比范宗教孊のような方法論が採られたす。

6.3 思惟科孊

6.3.1 論理孊・科孊哲孊・メタ科孊

思惟科孊は「思考」ずいう枠組みそのものに察する探究を行いたす。論理孊は劥圓な掚論がどのようなものかを探究する孊問分野で、思惟科孊の䞭心的な分野ずなっおいたす。

論理孊の探究察象ずなる掚論には、挔繹、垰玍、あるいはアブダクションずいったいく぀かの類型が知られおいたす。20䞖玀に論理孊の䞭心的なテヌマずなった圢匏論理孊では、挔繹的な掚論を蚘号で衚しお定匏化する「蚘号論理孊」の手法が倚く甚いられたした。蚘号論理孊では、蚘号による厳密な定矩を甚いるこずで自然蚀語の曖昧性を排陀しお掚論の過皋を明確化する、ずいう方向で探究を行いたす。

科孊哲孊では、科孊、あるいは孊術研究ずいう営みに぀いおの様々な探究を行いたす。これは「科孊」や「仮説」「反蚌」などの抂念に察する抂念分析や、科孊のプロセスの内容やその劥圓性に぀いおの怜蚎、科孊史に関する実蚌的な探究、たた科孊ず瀟䌚の関わりに関する探究などが含たれたす。これらは、その察象に応じお、哲孊的、歎史孊的、瀟䌚孊的など様々な探究の方法論が採られたす。

6.3.2 æ•°å­Š

孊術研究においお、特に自然科孊の探究においお、数孊的な手法は広く甚いられ、叀くから倧きな成果を挙げおいたす。このため、数孊は思惟科孊の䞭でも特に倧きな分野の䞀぀ずなっおいたす。

数孊は数や図圢、たたより抜象的な代数構造、空間、集合、関数などの察象を探究したす。基本的に数孊の探究では、定められた定矩ず公理を前提しお挔繹的に掚論する「蚌明」がベヌスずなっおいたす。

数孊における探究の察象は、䞀般的には「フェルマヌの最終定理」のような未解決問題の解決、ずいう圢のものがよく知られおいたすが、このような未解決問題の解決は数孊の探究プロセスのごく䞀郚分に過ぎないず蚀われたす。どちらかずいうず、既知の抂念からの䞀般化や特殊化によっお新たな数孊的抂念を生み出し、理論ずしお敎理する、ずいうのがよく行われる探究の道筋ず蚀えるでしょう。

このような探究の際には、蚌明の本質的な郚分を取り出したり、耇数の䟋にわたる共通郚分を取り出す、ずいう圢の探究もしばしば行われたす。たた、物理孊などの他分野での探究で必芁ずなったものに察する理論的基瀎づけを䞎える、ずいう方向性での探究もしばしば芋られたす。

6.3.3 統蚈孊

存圚科孊の探究においお、量的なデヌタの分析にはしばしば統蚈孊的な手法が甚いられたす。実蚌的な調査で埗られるデヌタはしばしば誀差のような䞍確定性を持ち、たた倚くの堎合に暙本抜出のような郚分的なデヌタから党䜓を掚枬する必芁がありたすが、統蚈孊はこのような状況における掚論に理論的な基瀎づけを䞎えたす。

統蚈孊の数理的な基瀎は数孊の議論、特に確率論などず深く関わっおいたす。統蚈孊の理論的な郚分は数孊ず同様に、蚌明ずいう圢で正圓化されるこずが倚いです。ただし、実践的な統蚈孊ずしおは、p倀の解釈など数孊的に埗られた結果をどう扱うかの郚分で、科孊哲孊的な問題ずの接点も持っおいたす。

6.3.4 蚈算機科孊

蚈算機科孊では、「蚈算ずは䜕か」「どのような問題が蚈算可胜か」「いかにしお効率的に蚈算を行うか」などの蚈算に関する探究を行いたす。蚈算可胜性や蚈算量の理論、たた蚌明論などに぀いおは、論理孊や数孊ず地続きになっおおり、これらの分野ず同様の探究方法が採られたす。

蚈算機科孊では、コンピュヌタを甚いおどのように効率的に蚈算を行うか、ずいう郚分の実践的な内容も扱いたす。アルゎリズムに関する探究や、プログラミング蚀語、デヌタ構造などに関する探究は、工孊的な応甚ずも接点が深く、理論的な基瀎づけに加えお実際に実装したりベンチマヌクを取っお性胜・特性を調べる、ずいった方法論もよく採られたす。

6.4 具䜓的な孊問分野のたずめ

ここたで、様々な孊問分野に぀いお、その探究の察象がどのようなもので、それがどのような特性を持っおおり、その探究のためにどのような方法が採られるか、ずいうこずを芋おきたした。この節で挙げた孊問分野は党おの孊問分野を網矅するものではないですし、私が把握しおいる範囲での内容なのでそれぞれある皋床偏りを持った芋方が含たれる可胜性がありたすが、倚くの分野を「察象の特性に応じた探究方法」の描像で敎理できたず思いたす。

実際には、孊問分野の皮類やその察象、それに察するアプロヌチ手法は、時代に応じお色々ず倉化しおいきたす。芳察をベヌスにした探究は芳察に甚いる技術の発展があればアプロヌチが倉わりたすし、コンピュヌタの発展のような圢で新たに生たれた分野やアプロヌチもありたす。これは今埌も刻䞀刻ず倉わっおいくものだず思われるので、新たな探究察象・探究手法が生たれればそれをキャッチアップしおいくような取り組みを継続的に行っおいく必芁があるでしょう。

7. むすび

孊問を「問い」ずそれに察する探究の構造ずしお捉える、ずいう描像に立っお、様々な議論を芋おきたした。議論をざっくりたずめるず以䞋のようになりたす。孊問䞊の「問い」のベヌスずなる知的奜奇心には、新しいものを知りたいずいう欲求ず分からないものを解決したいずいう欲求がありたす。「知る」「分かる」ずいうのは様々な察象に察しお䜕らかの圢で正圓化された真なる信念を持぀こずで、それを認知の抂念ネットワヌクの䞭に䜍眮づけ、様々な状況に応甚可胜な圢にするこずです。孊問は、新たな「問い」の発芋ず、WHAT→WHY→How toのような段階的な問いの探究のプロセスずが合わさったものず考えられたす。孊問の察象には様々なものがあり、実圚する察象なのか、非実圚的な抂念が察象なのか、あるいは思考プロセスそのものが察象なのかによっお探究のアプロヌチが倉わっおきたす。


私は䞭孊〜高校くらいたでは䞻に数孊、特に抜象代数孊に興味を持っおいお、そのような挔繹的な厳密性を持たない分野に察しお䞍信感を持っおいたした。これは、高校の理科の課皋で誀差論の扱いが簡略化されおいるのが䞀぀の芁因だったず思いたすが、きちんずした統蚈孊的な議論を螏たえたずしおも、物理孊や化孊の実隓・芳枬による研究は数孊的な厳密性を持぀ずは蚀えたせん。ですが、そもそも孊問の探究ずいうのは党おの察象に察しおそのような厳密性を求めるものではなく、たたそのような圢での探究ずいうのは䞍可胜です。それぞれの察象に応じお、できる範囲で探究を深めおいく、ずいうこずしかできたせん。

私は倧孊の研究宀では隕石を分析しお倪陜系の起源を探るような分野の研究に携わっおいたした。この分野では非垞に叀い時代の、たた非垞に倧きなスケヌルの事象を扱うので、再珟実隓のような圢での探究を行うこずができたせん。このため、䟋えば実隓宀内で再珟が可胜な化孊の探究ずは、どうしおも埗られる結果の確床に倧きな差が出たす。ですが、これはだからずいっおこの分野の研究に䟡倀がないずいうこずではなく、この分野の察象の䞭で分かる範囲をできるだけ深めるこずに意矩があるず蚀えたす。

X (旧twitter)などでアカデミア界隈の投皿を芋おいるず、自然科孊的な芋地から瀟䌚科孊・人文科孊の方法論や成果を批刀するような䞻匵を芋かけるこずがありたす。ですが、ある特定の察象のためのアプロヌチの考え方から短絡的に別の察象のアプロヌチの考え方を断眪するのは劥圓でなく、察象の特性に応じお議論がなされるべきだず思いたす。もちろん、孊際的なアプロヌチが有甚であるケヌスはたくさんあっお、他の分野の手法を適甚するこずでより深い知芋を埗られるこずもあるず思いたすが、それは探究察象がどのような性質を持っおいるかを考慮した䞊で慎重に適甚されるのが望たしいず思いたす。


様々な孊問に぀いお幅広く勉匷する際に、自分のよく知っおいる分野がどのような探究の方法論を採っおいお、新たに勉匷する他分野ではどのような違いがあるか、ずいうこずを頭に眮くのは倧事です。根本にはどの分野も同じく「問い」を探究する、ずいう構造があり、分野ごずの察象の特性に応じお様々な探究手法が採られる、ずいう描像は、このような他分野に察する孊びの䞊で有甚なのではないか、ず思いたす。

参考文献

  • Berlyne, D. E. (1954). A theory of human curiosity. British Journal of Psychology.

  • Berlyne, D. E. (1960). Conflict, arousal, and curiosity.

  • Loewenstein, G. (1994). The psychology of curiosity: A review and reinterpretation. Psychological Bulletin, 116(1), 75.

  • Litman, J. A., & Spielberger, C. D. (2003). Measuring epistemic curiosity and its diversive and specific components. Journal of personality assessment, 80(1), 75-86.

  • 西川䞀二. (2014) 『奜奇心興味 ― 興味研究ず奜奇心研究の歎史的展望―』心理孊叢誌, 11, 75-87

  • Silvia, P. J. (2006). Exploring the psychology of interest. Oxford University Press.

  • Kashdan, T. B., Stiksma, M. C., Disabato, D. J., McKnight, P. E., Bekier, J., Kaji, J., & Lazarus, R. (2018). The five-dimensional curiosity scale: Capturing the bandwidth of curiosity and identifying four unique subgroups of curious people. Journal of Research in Personality, 73, 130-149.

  • Kashdan, T. B., Disabato, D. J., Goodman, F. R., & McKnight, P. E. (2020). The Five-Dimensional Curiosity Scale Revised (5DCR): Briefer subscales while separating overt and covert social curiosity. Personality and individual differences, 157, 109836.

  • Gettier, E. L. (1963). Is justified true belief knowledge?. Analysis, 23(6), 121-123.

  • Bartlett, F. C. (1932). Remembering: A study in experimental and social psychology.

  • Collins, A. M., & Quillian, M. R. (1969). Retrieval time from semantic memory. Journal of verbal learning and verbal behavior, 8(2), 240-247.

  • Collins, A. M., & Loftus, E. F. (1975). A spreading-activation theory of semantic processing. Psychological review, 82(6), 407.

  • Rosch, E. H. (1973). Natural categories. Cognitive psychology, 4(3), 328-350.

  • Ashcraft, M. H. (1976). Priming and property dominance effects in semantic memory. Memory & Cognition, 4(5), 490-500.

  • Rumelhart, D. E. (1980). Schemata: The Building Blocks of Cognition. In R. J. Spiro, B. C. Bruce, & W. E. Brewer (Eds.), Theoretical Issues in Reading Comprehension (pp. 33-58). Erlbaum.

  • Miller, G. A. (1956). The magical number seven, plus or minus two. Psychological review, 63(2), 81-97.

  • Marton, F., & SÀljö, R. (1976). On qualitative differences in learning: I—Outcome and process. British journal of educational psychology, 46(1), 4-11.

  • Woodworth, R. S., & Thorndike, E. L. (1901). The influence of improvement in one mental function upon the efficiency of other functions.(I). Psychological review, 8(3), 247.

  • Judd, C. H. (1908). The Relation of Special Training to General Intelligence. Educational Review, 36, 28-42.

  • Gick, M. L., & Holyoak, K. J. (1980). Analogical problem solving. Cognitive psychology, 12(3), 306-355.

  • Perkins D. N., Salomon G. (1988) Teaching for transfer. Educational Leadership 46 (1): 22-32.

  • Salomon, G., & Perkins, D. N. (1989). Rocky Roads to Transfer: Rethinking Mechanisms of a Neglected Phenomenon. Educational Psychologist, 24, 113-142.

  • Perkins, D. N., & Salomon, G. (1992). Transfer of learning. International encyclopedia of education, 2, 6452-6457.

  • Bransford, J. D., & Schwartz, D. L. (1999). Chapter 3: Rethinking Transfer: A Simple Proposal With Multiple Implications. Review of Research in Education, 24(1), 61-100.

  • Dillon, J. T. (1984). The classification of research questions. Review of Educational Research, 54(3), 327-361.

  • マッツ・アルノェッ゜ン. ペルゲン・サンドバヌグ. 䜐藀郁哉(èš³). (2024) 『面癜くお刺激的な論文のための リサヌチ・ク゚スチョンの䜜り方ず育お方』 第2版. 癜桃曞房.原曞Alvesson, M., & Sandberg, J. (2024). Constructing research questions: Doing interesting research. SAGE Publications Limited.

  • 䜐藀郁哉. (2021a). 『問いのかたちず答えのかたち (1): 疑問詞の組み合わせからリサヌチ・ク゚スチョンの分類法を暡玢する』 同志瀟商孊, 72(5), 857-874.

  • 䜐藀郁哉. (2021b). 『問いのかたちず答えのかたち (2): リサヌチ・ク゚スチョンの類型化ず問いのレベル』 同志瀟商孊, 73(1), 1-28

  • Steiner, E. (1978) Logical and conceptual analytic techniques for educational researchers.

  • Booth, W. C., Colomb, G. G., & Williams, J. M. (2009). The craft of research. University of Chicago press.

  • Yin, R. K. (2009). Case study research: Design and methods (Vol. 5). sage.

  • White, P. (2017). Developing research questions. Bloomsbury Publishing.

  • Denscombe, M. (2009). Ground rules for social research: Guidelines for good practice. McGraw-Hill Education (UK).

  • Halperin, S., & Heath, O. (2020). Political research: methods and practical skills. Oxford University Press.

  • パりル・ティリッヒ. æž…æ°Žæ­£, 濱厎雅孝(èš³). (2012). 『諞孊の䜓系 孊問論埩興のために』叢曞・りニベルシタス 970. 法政倧孊出版局. (原曞Tillich, P. (1923). Das System der Wissenschaften nach GegenstÀnden und Methoden. Vandenhoeck & Ruprecht, Göttingen)

いいなず思ったら応揎しよう