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創䜜倧賞応募䜜品 寧々 《第7話》

《第話》 暗黒の思春期


 透哉の県前には、芋おはいけないような  できれば芋たくなかったような  シュヌルな颚景が繰り広げられおいる。

 俊さんず柊生が、添い寝しおいるのである。

 たず、䞀晩飲み明かすず宣蚀した匵本人である俊さんが朰れた。幎霢には勝おなかったらしい。そのあずは、自分の蚱容量を考慮せずに無茶な飲み方をしおいた柊生が。

 フロヌリングの床に豪快に寝転んで錟いびきをかきはじめた俊さん。柊生は壁に寄りかかるようにしお眠りに぀いおいたはずが、寝おいる最䞭に移動しおきお、気が぀くず俊さんに擊り寄るような姿勢になっおいる。

 ひずりで飲むこずにも飜きお、透哉はスマホを取り出しお、い぀ものルヌティヌンを完了させる。䜍眮情報怜玢アプリ。寧々の珟圚䜍眮を瀺すアむコンが、自宅を瀺しおいるこずに安堵する。

 寧々は眠っおいるはずだ。だが、透哉には眠りは蚪れない。よほど酒に匷い䜓質なのか䞀向に酔いはたわらず、酩酊するこずもなく今に至っおいる。

 酒は嫌いではないが、酒の垭は嫌いだ。

 仕事の話題ならただ耐えられるが、女の話ずなるず、透哉はその堎から逃げ出したい思いに駆られるのである。理由は明癜だ。恋愛匱者であるからに他ならない。

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 恋愛ができなかったのではなく、恋愛をしおこなかったず思うのは、負け犬の遠吠えに聞こえるだろうか。

 寧々に長い幎月、懞想しおいるから。報われない思慕に身を焊がしおいるから。それもある。

 はじめお性行為をした女ひずは、歳も歳䞊の女性だった。倧孊生のずきに、バむト先の喫茶店で知り合った。小孊生の女の子を育おおいる、シングルマザヌだった。

 歳䞊の女性が奜みだったわけではない。ただ圌女なら、壊れないだろうずいう確信があった。

 『Fragile』壊れ物の札が貌られおいない女性。

 いやもっず率盎に蚀うならば、既に汚れお・・・いそうな女性を遞んだ。経産婊が汚れおいるなんお、今思えばずんでもなく倱瀌なこずを考えおいたず反省する。

『透哉くんは、女の子を傷぀けるのが怖かっただけでしょうたあ私だったら  、逞しいずか、頑䞈だから、叩いおも壊れないだろうみたいな、そんな感じ』

 圌女は耇雑そうな、諊念を含んだ笑みを浮かべおいた。


 あの日、透哉はただ歳の子䟛だった。

 寧々が孊校に行かなくなり、合栌しおいた高校ぞの進孊を取りやめ、郚屋に閉じ籠るようになった。透哉が性の知識を埗おいく過皋は、「寧々がなにをされたか」の想像が具䜓的か぀凄惚になっおいくこずず同然でもあったのだ。

 圓然のこずながら、透哉の性に察する認識は歪みに歪んだ。愛情ず結び぀けるこずができない。䜕故、同䞀の行為がふた぀の偎面を所有するのか理解できない。

『こい぀さあヌ、女の裞にたるで、興味瀺さねえんだよ、おかしいだろ』

 今でも殺意を芚える、同玚生の声。

 あれは、いじめ以倖の䜕物でもなかった。異物の排陀。自分たちず同等の䟡倀芳を持たぬ者に察する粛枅。『治療』ず称しお、透哉のスマホに倧量のポルノ写真が送信されおきた。

 巷に溢れるグラビアアむドルのものではない。同玚生の女子の写真をAIで加工したものだった。即、削陀した。送信した同玚生のアドレスをブロック。するず、他の男子のアドレスから。

 女の裞に興味を瀺さない ── 実際にそこたで朔癖な粟神を保っおいられたのなら、ただ救われただろう。あれほど自己嫌悪の感情に塗たみれるこずもなかっただろう。

 『治療』は有効だった。同玚生の女子には興味がなかったが、写真の女子の顔を、脳内で寧々に眮き換えおしたった。䞋半身が反応した。欲望の赎くたたに自慰をしお、ベッドに突っ䌏しお嗚咜した。

 自分はこのたた、堕ちるずこたで堕ちおいくのだず。寧々に厭われる汚れた化物モンスタヌに成り果おたのだず。

 思春期にありがちな苊悶ず呌ぶには、深刻だった。それから脱华できたのは、シングルマザヌの圌女のおかげでもある。

 実際に肌を重ねお、愛情もしくは限りなく愛情に近いものを感じるこずができたのは、悪くなかったように思う。少なくずも、性行為が女を汚す行為ずいう極端な䟡倀芳からは、抜け出せた。


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 雀の囀さえずる声が、埮かに聞こえた。

 朝だ。こんな郜䌚にも雀はいるのか、ず透哉は小さな感動を芚える。声の䞻の姿を䞀目芋たくなっお、ベランダに続く窓を開く。

 降り泚ぐ陜射しに、柊生が目を芚たす気配がした。床から起き䞊がり䌞びをしお、そしお、うげっず悲鳎をあげる。

「なんで俺、俊さんに抱き぀いお寝おんの」

 眩しそうに目を现めながら、柊生は透哉の傍らに䞊ぶ。

「蚀っおおきたすけど。柊生さんが、寝おる最䞭に転がっお俊さんに抱き぀いたんですよ。俊さんは、最初からあの堎所で寝おたしたから」

「うぞヌ、そうですか。最初からっお  、おたえ、䞀晩䞭起きおたの」

 眠れなくお、ず透哉は告げる。

 あの日、寧々が蜢いおしたったずいう雀の死骞の話を思い出しおいた。雀の死骞ず、生きおいる人間では重みが違う。根本からしお違う。

「柊生さん  、蜢いおしたったのっお、子䟛ですか」

 静かに尋ねる。柊生が目を芋匵るのが芖界に入ったが、怖気付くこずはなかった。尋ねる暩利も資栌も自分にはあるず、䜕故かこの朝だけは思えたのだ。

 うん、そう  、ず柊生は頷く。

「その駅、ホヌムドアが蚭眮される寞前でさ。その子䟛  男の子だったけど、自殺じゃなくお事故。友達ずふざけおお足を螏み倖したのか、突然飛び蟌んできお防ぎようがなかった」

 そうですか、ず答えお、透哉は玺碧にはなりきらない郜䌚の空を芋䞊げる。

 ごめん、嘘  ず、柊生は埮かに笑う。

「俺、今、ものすごく重芁な郚分省略した」

 オヌバヌランしおたんだ、ず柊生は呻くように告癜する。寝䞍足でがんやりしおおさ、ず。

「ホヌムに進入するスピヌドが速すぎた。人の姿が芋えお、慌おお䞻幹制埡噚マスコン操䜜したけど、間に合わなかった。だから  」

 そうですか、ず透哉は繰り返す。オヌバヌランを起こしおいたこずで自責の念に駆られる柊生の気持ちは、わからなくもない。だが、事故は避けられなかっただろう。

 もしかしたら異なるのは、遺䜓の状況か。人肉ハンバヌグずは  、どこたで圌の朜圚意識は残酷で悪趣味な倢をもたらすのか。

 圌を救う蚀葉を、透哉は持たない。柊生も欲しおはいないだろう。蚀葉で救われるこずはない。

 電線にずたっおいた雀が、矜ばたく音がした。反動でゆらゆらず電線が揺れた。電線に切り取られた空は、やはり玺碧ではなく汚れ燻んでいた。



いいなず思ったら応揎しよう