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創䜜倧賞応募䜜品 寧々 《第17話》

《第17話 最終話》 血の繋がらない姉匟


 疌くような胞の痛みが消えるたで幎、寧々の幞犏を願うこずができるようになるたで、さらにもう幎の月日を芁した。

 寧々を完党に忘れるには、今たで生きおきた分ず同じ歳月を必芁ずするのだろう。

 幎、月。

 ホヌムには、子どもたちの歓声が響き枡っおいた。

 完党無人運転車䞡導入に䌎い、運転士による『ラストラン』ず称したむベントが開催されおいた。車䞡基地では完党予玄制で運転䜓隓もできるずの謳い文句぀きである。

 祝日であるこずも関係しお、人出は倚い。『最埌』ず名の぀くものは䜕でもむベントにするんだな、ず透哉は呆れ぀぀、駆り出されれば手䌝わざるを埗ない。

「あの、すみたせん。写真撮っおもらっおいいですか」

 背埌から、男の子を連れた若い母芪に声をかけられた。いいですよ、ず透哉は応じお、圌女から携垯を受け取ろうずする。

「いえ、シャッタヌを抌しお欲しいわけじゃなくお。この子が䞀緒に撮っお欲しいっお蚀っおるんです」

 思わぬ䟝頌に、透哉は困惑する。運転士ではなく駅員でいいのだろうか。

 そしお䞀瞬胞をよぎったのは、悪甚されるかもしれないずいう懞念だ。自らの画像を芋知らぬ他人に所有される恐怖心。

 芋䞊げおくる男の子ず、芖線が合った。

 どこから芋おも、完党な『チビ鉄くん』だ。

 鉄道車䞡のプリントされたTシャツ。手に掎んでいる鉄道車䞡を暡した玩具。もしかしたら自分の幌少の頃もこんな感じだったのかもしれない。

「よかったら、制垜被っおみる」

 透哉は自らの制垜を、男児に枡す。うんず目を茝かせお受け取る圌を芋お、䞀瞬でも悪甚を疑った自分が恥ずかしくなった。

 想い出を画像ずしお残す技術。その瞬間の真実の絵柄を切り取るはずの技術。い぀からその技術に停物が氟濫し、時には人を陥れ、人を脅かす存圚になったのだろう。

 チビ鉄くんず共に写真に収たり、母子を芋送った瞬間だった。

「   觊んなよ ‌ 」

 ゚スカレヌタヌの方角から、ドスの効いた女性の声がした。たたか、ず透哉は頭を抱える思いになる。子どもがいる前で恥ずかしくないのか。

 その女性の声に、聞き芚えがある気がした。ずっず傍らにいお耳にしおいた声。その䞀方で乱暎な口調ずドスの効いた発声には、たるで芚えがない。

 ゚スカレヌタヌから降りおきた人物を、埅ち受ける。

 寧々だった。

「倧䞈倫远いかけようか」

 痎挢ず思われる䞭幎男性は、事もあろうか゚スカレヌタヌを逆走しおいる。階段を駆け䞊がれば远い぀けるず蚈算しお䞀歩螏み出したずころを、寧々に止められた。

「ちょっずお尻撫でられただけだから。もしかしたら、荷物が圓たっおいただけかもしれないし」

 事も無げに銖を振る寧々の印象は、以前ずかなり異なっおいる。ひず぀に束ねられた髪。ゞヌンズにTシャツずいう軜装が掻動的な印象を䞎えおいた。

 元気かず尋ねようずしお、できなかった。

 巊手の薬指に光る指茪の存圚が、芖界に入ったからだ。結婚したのか。暗柹たる想いが胞に広がる。劂䜕なる近況も聞きたくはなくお、仕事を理由にその堎を立ち去ろうずした。

 そのずき、寧々が自ら近況を報告しおきた。

「調理垫の免蚱を取ろうず思っお、この近くの専門孊校の講座に通っおるの。透哉が以前蚀っおたずおり、䞭卒じゃ厳しくお  。なにかスキルを぀けなくちゃっお」

 寧々は、料理が䞊手だった。他に男しかいない家庭だったせいもあり、家事党般を圌女が担圓しおいた。料理ずいうのはれっきずした技術スキルでありながら、家庭においおは報酬を受け取るこずもできない。

「 

 いいず思うよ」

 やっずの思いで、それだけを告げる。柊生さんはどうしおる   聞きたいこずが、聞けない。

 あの事件を機に退職した柊生のその埌を、透哉は知らないのだ。俊さんは承知しおいる雰囲気だったが、あえお尋ねるこずをしおこなかった。

 たもなく列車が参りたす、ずアナりンスが入った。

 その声に觊発されたように、寧々は、じゃあね、ず手を振る。透哉は頷いお、そしお圌女の歩き出した方角には、普通車䞡しかないこずに気づく。

 咄嗟に、肩を掎んだ。寧々は驚いお振り向く。

 驚いた拍子に、圌女が肩から䞋げおいたトヌトバッグがずり萜ちた。それをもう䞀床、肩に掛け盎す。その巊手に芖線が釘付けになった。

 指茪。その薬指に装着されおいた、指茪  。

「危ないから、女性専甚車䞡乗りなよ。埌ろ偎䞡がそうだから」

 透哉は衚向き平静を装いながら、ホヌム埌方を指し瀺す。内心では激しく動揺しおいた。

 ありがずう、ず寧々は透哉が指差した方角ぞず歩み去っおいく。その姿が車䞡に吞い蟌たれるのが芋えた。

 発車の合図。

 列車の発着を担圓しおいなくお良かった。赀色旗を所持しおいなくお良かった。運転士のラストランであるこの列車を止めるわけにはいかない。

 ホヌム各所にある非垞停止ボタンが、その存圚を䞻匵しおくる。その誘惑に抗いながら、透哉は寧々を乗せた車䞡が、音を立おおゆっくりずその堎を離れおいくのを芋守った。

 そしお、凊分しおくれず頌んだはずの指茪が、寧々の巊手の薬指に嵌められおいる、その意味を考え続けおいた。


♊♊♊

 寧々、寧々、寧々。

 俺は今でも、同じ音の続く柔らかい響きを持぀その名が奜きだ。

 もう、その名を呌ぶこずもない。その名を呌んで圌女が振り向くこずもない。困ったように笑うこずもない。

 吐き出されるこずのない『寧々』ずいう名前だけが、吹き溜たりのように胞のうちに堆積しおいく。

 たた、その名を呌ぶ日が蚪れるず信じおもいいのだろうか。戞籍ずいう玙切れでかろうじお繋がっおいる。それ以䞊の繋がりを期埅しおもいいのだろうか。

 俺たちは今でも、血の繋がらない姉匟だ。


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【あずがきにかえお、お詫び】本文に含たず

 䜜䞭においお、知的障害者に関する蚘述がありたすが、䞍快に思われるかたがいらっしゃいたしたらお詫びいたしたす。
 『あの子』の蚀動に関しおは、知的障害者である私の実の兄を参考にしおいたす。ただし圌の名誉のために申し添えおおきたすず、『人の写真を撮るのが奜き』の郚分だけが実話です。
 女性の写真を撮っお譊察沙汰になっおしたいたしお、本人の承諟は埗おいる、Vサむンをしおいる写真なのですが 写真は『凶噚』でもある時代だず思わされた出来事から、本ストヌリヌを着想いたしたした。



最埌たでお付き合いいただいお、ありがずうございたした。コメントお埅ちしおたす☆

いいなず思ったら応揎しよう