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#10 2027年、「借りているモノ」がぜんぶ決算書に載る—新リース会計基準は、眠れる資産を掘り起こす号砲になる


連載「サーキュラーエコノミー最前線」第10回・前編。企業の環境活動と経済活動は両立するのか。資源循環経営プラットフォームを運営するPAX TOPOLOGYが、数字と事例からそのヒントを紐解いていきます。今回から3回にわたり、2027年に強制適用が始まる「新リース会計基準」と、企業に眠る遊休資産の関係を追いかけます。

本社オフィスの賃料。営業車のリース。工場のフォークリフト。コピー機。

2027年4月1日以後に始まる事業年度——3月決算の会社なら2028年3月期——から、上場企業などでは、こうした「借りているモノ」が原則すべて、資産と負債として貸借対照表に計上されるようになります。

根拠は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」。いわゆる「新リース会計基準」です。「2027年のリース法改正」と呼ばれることもありますが、正確には法律ではなく会計ルールの改正です。法律ではないから影響が小さいかというと、まったく逆で、対象企業の決算書の姿を大きく変えます。

そしてこの改正は、リースを借りている・貸している会社だけの話では終わりません。結論を先に言えば、企業に眠る「使っていない資産」が一斉に照らし出されるタイミングが来ます。今回はその理由を追いかけます。

なぜ「借りたモノ」を資産に載せるのか

これまでの日本基準では、リースは2種類に分かれていました。実質的に分割払いで買っているのと同じ「ファイナンス・リース」は資産計上する一方、それ以外の「オペレーティング・リース」やオフィスの賃貸借は、毎月の支払いを費用として処理するだけ。貸借対照表には載らず、注記で触れられる程度でした。

この「載らない借金」を問題視したのが国際会計基準です。IFRS第16号(2019年適用開始)の公表時、IASB(国際会計基準審議会)の試算では、世界の上場企業が抱えるリース契約は約3.3兆ドル、その85%超が貸借対照表に載っていませんでした。典型例が航空会社です。機材の多くをリースで調達すれば、身軽な決算書に見える。しかし実態としては、何年にもわたる巨額の支払義務を負っている。それが投資家から見えないことが、長年の課題でした。

新基準は、この世界の潮流に日本基準を揃えるものです。借手はリースの分類をやめ、原則すべてのリースについて「使用権資産」(借りて使う権利)と「リース負債」(将来の支払義務)を計上します。契約期間12ヶ月以内の短期リースや少額のリースには簡便的な扱いが認められますが、オフィスや店舗、倉庫の賃貸借といった不動産まで対象に含まれるのが大きな変化です。

適用されるのは、上場企業等の金融商品取引法の適用会社と、会社法上の大会社が中心です。非上場の中小企業は従来どおりの処理を続けられます。ただ、後で述べるように、中小企業にとっても他人事ではありません。

決算書はこう変わる——「分母」が膨らむ

オンバランス化の影響は単純です。資産と負債が同時に膨らみます。

これまで費用処理だけで済んでいた賃借やリースが資産に載るので、総資産が増える。同時に将来の支払義務が負債に載るので、自己資本比率は下がる。店舗を賃借で多店舗展開する小売・外食、倉庫を借りる物流、機材をリースする運輸など、「借りて使う」比重が大きい業種ほど影響は大きくなります。

ここで経営者が直面するのは、次の問いです。

「分母(総資産)がどうせ膨らむなら、利益を生まない資産を持ち続けていていいのか」

総資産利益率(ROA)は、利益を総資産で割った指標です。新基準で分母が自動的に増える以上、同じ収益力でもROAは下がって見える。これを放置できない企業は、分母の中身——つまり保有資産の一つひとつ——を精査し始めます。東京証券取引所が2023年から上場企業に求めている「資本コストや株価を意識した経営」も、まったく同じ方向を指しています。資産効率への圧力は、二方向から同時に強まっているのです。

「使っていない資産」への視線が、いちばん厳しくなる

ここからが本連載の主題です。

リース資産は、使うからこそ貸借対照表に載ります。一方、多くの企業には「使っていないのに載り続けている資産」があります。稼働を止めた設備、空いたままの倉庫、移転で余った什器。いわゆる遊休資産です。

連載第1回で紹介したとおり、米国のInvestment Recovery Associationのベンチマークでは、企業が保有する資産のおよそ1〜2割は、任意の時点で余剰化しています。総資産の管理が全社的な経営課題になったとき、真っ先に整理対象になるのはどちらか。「使うために新しく載る資産」ではなく、「使っていないのに載り続けている資産」であることは明らかです。

もう一つ、実務の面からも遊休資産は掘り起こされます。新基準の適用準備でいちばん重いのは、会計処理そのものではなく契約の全数調査です。「リースに該当する契約がどこに何件あるか」を、賃貸借契約からサービス契約に埋め込まれたものまで洗い出す必要があり、IFRS第16号を先に適用した企業でも最大の負担はこの洗い出しでした。2027年に向けて、日本の大企業はこれから「自社が何を借り、何を持ち、何を使っているか」の棚卸しを避けて通れません。その過程で使っていない資産が見つかるのは、副産物というより必然です。

ちなみに、資産をいったん売却して借り直す「セール&リースバック」で身軽に見せる手法も、新基準では売却益を全額計上することはできなくなります。決算書の見た目を整える余地は狭まり、問われるのは実態としての資産効率になっていきます。

会計が「所有」から「使用」へ動いた

新基準の中心概念は「使用権」です。会計が問うのは、もはや「持っているか」ではなく「使う権利を支配しているか」。

これは、サーキュラーエコノミーが掲げてきた「所有から利用へ」という考え方と、初めて会計基準が同じ方向を向いたことを意味します。使っていることに価値の根拠を置くなら、使っていない資産の扱いが問われるのは当然の帰結です。

非上場の中小企業に新基準は直接適用されません。しかし、大企業が資産の棚卸しと整理を本格化させれば、手放される設備や什器の受け皿、つまり「買い手」の出番が増えます。この構図は後編で詳しく扱います。

次回・中編は、経済合理性の話です。使っていない資産を持ち続けると、実際いくらかかるのか。「簿価1円の機械に税金がかかり続ける」仕組みから、数字で見ていきます。

PAX TOPOLOGYは、企業に眠る遊休資産を発掘し、企業間で循環させる資源循環経営プラットフォーム「遊休マーケット」を運営しています。


PAX TOPOLOGY株式会社は資源循環経営プラットフォーム「遊休マーケット」を開発・運営しています。

本記事は資源循環経営プラットフォーム「遊休マーケット」を運営する PAX TOPOLOGY株式会社が執筆しています。弊社に関する取材・営業のお問い合わせはコチラまで!
組織の遊休資産の有効活用については弊社のサーキュラーエコノミー事業「遊休マーケット」をご覧ください。


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